■ 今年3月、少し驚くニュースがありました
高市首相とプラボウォ大統領の首脳会談で、日本がODA(政府開発援助)を活用し、インドネシアでAI分野の高度人材を育成するという協力枠組みが正式に動き出したんです。
「日本がインドネシアにAIを教える」。一見すると従来型の支援に聞こえるかもしれません。
でも、よく読むとちょっと違います。この枠組みの前提にあるのは、「育った人材が、将来、日本企業と一緒に働く」ということ。つまりこれは援助ではなく、投資です。
日本とインドネシアの関係が、「教える側・教わる側」から「対等なパートナーシップ」へ。静かに、でも確実に変わり始めていると感じています。
■ 「日本で働きたい」71万人の若者たち
インドネシアで日本語を学んでいる人の数をご存じでしょうか。
71万人。世界第2位の規模です。
しかも、その多くは高校生や専門学校生。アニメやマンガが入口になった人ももちろんいると思います。でも、いま増えているのは「日本で働きたい」という明確な目標を持った若者たちです。
最近、インドネシアに全寮制・5カ月集中型の日本語教育機関が新たに開校しました。1日7時間の日本語授業に加え、寮生活を通じて日本の生活習慣やビジネスマナーまで徹底的に身につける。言葉だけではなく、「日本で生きていく力」を叩き込むプログラムです。
そこまでの覚悟を持って日本を目指す若者が、インドネシアにはたくさんいます。この事実を、もっと多くの日本の経営者の方に知っていただきたいと思っています。
■ 「帰国人材」という、まだ見ぬ可能性
もうひとつ、私が注目しているのが「帰国人材」の存在です。
日本で3年、5年と働いた後、母国インドネシアに戻った人たち。彼らは日本語が話せて、日本の仕事の進め方を知っています。品質管理の考え方、報連相の文化、チームワークの大切さ。それらを身体で覚えている人たちです。
在インドネシア日本国大使館とJICAが共催する「帰国人材ジョブフェア」では、そうした元技能実習生・元EPA人材と、インドネシアに進出する日系企業とのマッチングが行われています。
これが意味するのは、人材の流れが「一方通行」から「循環」に変わりつつあるということです。
日本で育てた人材が、帰国後もインドネシア国内で日系企業を支える。その実績が、次にインドネシアから日本を目指す若者たちの背中を押す。人が行き来することで、両国の間に「信頼の循環」が生まれ始めています。
■ 「人を送って終わり」にはしたくない
少しだけ自社の話をさせてください。
私たちStarBoardは、インドネシアに特化した人材紹介・支援を行う登録支援機関です。この仕事をしていて、常に自分に問いかけていることがあります。
「この人は、5年後に幸せだろうか?」
日本に来て、技術を身につけ、人として成長し、いずれインドネシアに戻っても胸を張れる。あるいは日本に残って、キャリアを積み上げていく。どちらの道を選んだとしても、その人が「日本に来てよかった」と思えること。そんな支援がしたいと考えています。
だからこそ、「人を送って終わり」にはしたくない。入国前の教育支援から、日本での生活サポート、そして将来のキャリアパスまで。一人ひとりに丁寧に向き合うことが、結果として受け入れ企業の成長にもつながると信じています。
■ 「対等なパートナー」の時代へ
AI人材育成の枠組みも、71万人の日本語学習者も、帰国人材のジョブフェアも、すべてが同じ方向を指し示しています。
日本とインドネシアが、「人」を通じて対等につながり、互いに成長していく未来。
その流れの中で、私たちにできることは大きなことではないかもしれません。でも、目の前の一人ひとりに誠実に向き合うこと。その積み重ねが、両国の未来をつくっていくのではないでしょうか。
少なくとも、私はそう信じています。
株式会社StarBoard 代表取締役 矢部将勝