2025年6月、「しゃべることで始まる就活」をコンセプトに開催された「しゃべる就活フェスタ」には、延べ404名の学生が参加しました。会場は熱気と本音の会話に包まれ、大盛況のうちに終了しました。
本記事では、このイベント開催の背景や仕組みに込められた想いを、弊社 取締役・舘石さんへのインタビューを通して紹介します。舘石さんは、「就活の“当たり前”を変えたい」「もっと自分らしく未来を語れる場をつくりたい」という思いから、この挑戦をスタートさせました。
次回の「しゃべる就活フェスタ」は2025年9月2日に開催予定です。興味のある方は、ぜひエントリーをご検討ください。
人材領域13年ーー採用の現場から問う “就活のかたち”
──舘石さんは人材領域で13年、新卒採用の現場にも長く携わっていらっしゃいますが、今の就活にどんな問題意識を感じていますか?
就活市場は、僕が学生だった頃と比べて本当に様変わりしていると感じます。
特に僕の時代はリーマンショックの影響で採用枠が縮小されており、僕自身も100社以上不合格になってしまった苦い経験があります。
それに対して現在は、社会全体として学生よりも企業側の採用ニーズの方が高く、企業が人材獲得に必死になっています。その影響で、学生側は「働かせてください」ではなく「働いてもいいよ」というスタンスに変化してきており、企業を ” 選ぶ ” 意識が非常に強くなってきています。
──学生が自分の意思で業界や企業を絞る動きが強くなっているということですね。
そうですね。その一方で、受ける企業数が極端に少なくなっており、結果としてマッチングの精度が下がっているとも感じます。
実際、優れた能力を持つ学生が、本来であればフィットしていたかもしれない業界を「興味がない」と初めから排除してしまうケースもあります。また、オンラインで得られる企業数という情報量が増えたことも、ある意味で弊害になっているのではないでしょうか。
企業の雰囲気や、働く人がどのような価値観を持っているのか、どんな水準の目標を掲げているのか、そうした情報は実際に会ってみなければ分からないものです。それなのに、表面的な情報だけで「この会社は自分に合う/合わない」と判断してしまっている現状があります。
入社後に「思っていたのと違った」と感じてからでは遅いです。だからこそ、偶然の出会いや人との相性、そして自分の何に評価してもらえたのかを知ることができる場が、今後ますます必要になると思います。
──社会構造としての課題も見えてきますね。キャリア教育にも問題意識はありますか?
ありますね。日本の教育は「どう思う?」と問うより「正しく答えなさい」と求められる文化が根強くあります。
意見ではなく事実を述べるだけで終わってしまう傾向があるため、「自分らしさを出してもいいのか」という不安が、自己分析にも影響しているように感じます。
さらに、就活の時期は年々早まっているにも関わらず、キャリア教育がそれに追いついていない。表面的な自己分析だけで、十分に準備が整っていないまま就活を始める学生が多い印象があります。
「お金より、愛がある採用を」採用現場に潜む企業側のジレンマ
──企業側はどんな課題を抱えているのでしょうか?
結局、今の採用は“資金と数”の勝負になってしまっていると感じます。採用ツールで上位表示させるには資金が必要で、オファーツールも配信数に応じて課金される仕組みです。つまり、資金力のある会社が採用面でも有利になる構図があります。
だからこそ資金が少なく、多くの学生と出会うことが難しい企業は、マッチしているかどうかをじっくり見極めるのではなく、辞退されないことを優先した選考対応や内定出しを行ってしまう……なんてこともあると思います。
──そうした構造が学生と企業のミスマッチを生んでいる?
そうですね。昔は「やりがい」というより「この会社で勤め上げるんだ!」という終身雇用を前提とした時代でしたが、今はその終身雇用意識よりも、自分にとって働きやすい環境を重視して職場を変える人が増えています。
そのため、自分の目標や能力にマッチしたフィールド探しができないと、離職につながりやすい時代になっているのではないかと思います。実際、退職代行サービスの記事を見ても「思っていた仕事と違った」といった声が多く見られます。
だからこそ、僕たちが果たすべき役割は、資金力だけではなく、入社後の活躍を願った“愛”のあるマッチングの精度を高めることだと思っています。
聞く就活から、話す就活へ。しゃべる就活フェスタが提示した新しい就活
──従来の就活イベントについては、どのように感じていますか?
これまでの説明会は、普段行っている会社説明会を20分程度に短縮したものをイベント向けに提供しているケースが多かったんです。その後、「もっと詳しい説明はオンラインで聞いてください」と案内される流れも多く見られます。でも、それだとわざわざ会場に足を運んだ意味が薄れてしまうと感じます。
今の学生がイベント会場で求めているのは、昔とは違っていて、1対1で人事の方と直接話す機会なんです。ネットや記事には載っていない情報を得たいからこそ、現場に来ているはずなんですよね。でも、いまだに講演形式が主流というのが現状です。
──しゃべる就活フェスタは、どのようにその形式を変えていったのでしょうか?
従来型のイベントの在り方に変化が生まれ始めたのが、いわゆるマッチングイベントという形式です。そこにさらに密度と規模を加えて生まれたのが、しゃべる就活フェスタです。
コンセプトは「しゃべることで始まる就活」。学生が企業と話し込んで、気づいたら30分話し込んでいたなんてことは多く、僕らもびっくりしたのは1時間以上会話して『最終面接をやるからオフィスにおいで!』なんてことも起きていました。
1対1でじっくり話すことで、会社のことを深く理解できますし、記憶にも強く残る。それがこのフェスタの強みです。
加えて、その場で「うちに合いそう」と企業に思ってもらえた学生には、スカウトが届くシステムもご用意しています。ここまで双方向の理解を促せるイベントは、他にないと思っています。
──企業と学生、双方の理解が生まれているんですね。
そうなんです。企業は学生の魅力を“見つけてあげる側”にもなっています。学生側も、「自分はこの業界しか考えていなかったけど、話してみたら意外とこっちの方が向いているかも」と気づくことがある。
自分の“やりたい”だけじゃなく、“求められている”という視点が加わることで、就職に対する考え方が大きく変わる場になっています。
マイク1本で始まる。「就活生の主張」が生んだ出会いと成長
──「就活生の主張」も非常にユニークなコンテンツですね。
はい。これは、学生がスライドなしで、3分間マイク1本だけを使って自分の未来について語る場です。個人的に、マイク1本で想いを届けるという姿勢は、街頭演説に近いと感じていて。その人の言葉だけで、どれだけ伝えられるかを大事にしています。
人事としても、学生の過去の実績や数字的な成果より、「なぜその目標を立てたのか」「それを実現するためにどう動いてきたのか」といった部分のほうが見たいと思うんですよね。そういった“中身”にこそ、人柄や意志の強さが表れると考えています。
──学生たちの成長も見えましたか?
ありましたね。主張登壇の学生とは事前に面談していますが、最初は自信がなさそうだった学生が、面談や発表を重ねるうちにどんどん言葉が磨かれていったり。逆に、もともと自信満々だったけれど「自分って実は浅かったのかも」と気づいて成長していく学生もいました。
──「就活生の主張」には、どのような想いを込めているのでしょうか?
自分の未来について語ることができる場をつくる。そして、そういう場に立つことがきっかけで、「自分はどんな未来を目指したいのか」を考え始める。そんなきっかけを提供したいという想いがあります。
過去の実績で評価されるだけの就活ではなく、未来の自分に近づけるフィールドを見つけるための選択をしてほしい。それが僕たちの願いです。
しゃべる就活フェスタで描く、就活イベントの未来
──6月のイベントを終えて、率直な気持ちはいかがですか?
正直に言うと……一番の感想は「疲れた」ですね(笑)。開催中はずっと不安でした。「人事の皆さんはうまく学生さんと話せているかな」「学生は楽しめているかな」と、ずっと気を張っていました。
ただ、イベント中盤からは、学生や企業の方々から「よく話せた」「思っていた以上に充実していた」といった感想をいただきました。振り返ってみると、「時代に合ったものをちゃんとつくれたな」と実感しています。
──実現したかった就活の形は、どんなものでしょうか?
ブースの中だけに閉じ込められた採用活動ではなくて、自分たちの努力次第で可能性が広がっていくようなフィールドを作りたかったんです。
就活の入り口では、福利厚生やワークライフバランスといった条件面を重視する人が多いですよね。でも、最終的に内定を承諾する理由を聞くと、多くの学生が「その会社にいる人」「人事の方の雰囲気」など、“人”を挙げています。
だからこそ、人やカルチャーの魅力を入口からしっかり伝えられる。そんな機会を提供できたと思っています。
──達成感はありましたか?
もちろんあります。ただ、やっぱり「もっとできたな」と思う部分もありますね。
企業によっては、従来の就活イベントのようなイメージで参加されていて、場の空気にうまくなじめていなかったところもありました。どうしたら濃度の良い接触機会を提供できるか、もっと工夫していかないといけないなと感じています。今後の大きな課題です。
──今後の展望を教えてください。
今の就活は、受動的な姿勢が強くなってしまっていると思います。だからこそ、自分の考えを言葉にしてアウトプットすることの重要性を、全国の学生に届けていきたい。
僕たちは、自己理解に関してどこまでも学生に寄り添っていきたいと考えています。そのうえで、そういった学生ときちんとマッチする企業の採用のあり方も一緒に模索していきたいです。
就活を通じて、日本を元気にしたい。この採用イベントのあり方が社会の当たり前になるまでは、何度でもこの取り組みを続けていきたいですね。
──9月にも、しゃべる就活フェスタの開催が予定されていますね。
はい、9月2日に開催いたします。6月の開催にしても、9月に向けても当日を迎えるまでは正直不安な気持ちばかりです、毎日夢にみます(笑)
でも、良いイベントにできればできるほど、納得のいく就活ができた学生が増えると思えるんですよね。
だからこそ、9月は6月以上に良いイベントにしていきたいと、チームみんなで一生懸命準備を進めています。
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