*本記事は、以下noteの転載になります。
https://note.com/yuyasan/n/n13f92551a9ca
2021年は、数年前からCryptoにベットしてきた僕にとって激動の1年であり、本格的にWeb3.0が展開していくはじまりの年であったように思います。
まず、年初から話題となったNFT。TwitterのCEOを先日退任したジャック・ドーシーが自身の初ツイートをNFT化、3億円超で落札したことは世間を驚かせました。また最近では、FacebookがMetaへと社名変更し、メタバースに投資する経営方針を表明したことも記憶に新しいのではないでしょうか。
NFT、メタバース、Web3.0といったキーワードが次々に出現してきた2021年。この潮流は一過性のものではなく、これから発展していく歴史の1ページ目だと捉えています。
さらに、こうした流れと並行して、toCサービスで広まりを見せているのが「クリエイターエコノミー」です。すでに多くの有識者が語っていることではありますが、これらが同時期に盛り上がりを見せているのは、単なる偶然ではありません。相互に関係し合う、新しい時代のはじまりです。
(Crypto投資に注力するa16zのパートナーも今後の発展性を示唆)
一方で、僕はこの世界が、海外主導であるものに危機感を抱いています。クリエイターエコノミー関連のサービスを提供するユニコーン企業は、世界で複数存在しますが、日本の企業はひとつもありません。また、現在のクリエイターエコノミー自体にも、実態として課題があると感じています。
そこで今回、僕がこのnoteで伝えたいことは、Web3.0とコミュニティを活かした「日本らしいクリエイターエコノミー」の提唱です。
この領域をGaudiyが事業として展開しているため、弊社の事例を一部用いて説明しますが、中立性を意識した内容を心がけました。今、世界で何が起こっているのか。それに対して、日本発で何ができるのか。Web3.0をあまりよく知らない人に向けて書いたので、ぜひご一読いただけると嬉しいです。
クリエイターエコノミーが注目されるワケ
クリエイターエコノミーがなぜ注目されているのか。それを理解するには、インターネットの歴史を紐解く必要があります。
1990年代に始まったインターネットは、情報を集めたポータルサイトが中心でした。この時代は、Web1.0と呼ばれます。その後、ユーザーが投稿・編集できるようなWeb2.0へと進化を遂げ、2004年頃からはFacebookやTwitter、InstagramなどのSNSが誕生。スマホの普及とともに、一気に加速しました。
※先日のOff Topicに詳しいので、興味ある方はぜひ聴いてみてください。
さらにWeb2.0時代が進み、大手テック企業が台頭してきます。いわゆるGAFAです。ユーザーのデータを取得し、アルゴリズムを高め、広告主から収入を得る。このビジネスモデルで急成長を遂げ、人々はあらゆるコンテンツに効率的にアクセスできるようになりました。一方で、GAFAをはじめとするプラットフォーマーが、巨大な力を持つことの弊害も生じてきました。
ことクリエイターの文脈で言えば、コンテンツもフォロワーも収益も、すべてはプラットフォーマーに運命を握られているという問題があります。
※エンタメ課題については、こちらのnoteもよければご参考ください。
たとえばTwitterやInstagramでいくらフォロワーを増やしても、仮に「明日からフォロー機能を停止します」となれば、他の手段でつながっていない限り、もはやアプローチすることができません。またYouTuberとして現在稼いでいるクリエイターも、広告収益の取り分をYouTubeが変更してしまえば、来月から収入が半減するかもしれません。
こうしたプラットフォーマー主導の経済から脱し、クリエイターに主権を移そうとする動きが、クリエイターエコノミーです。
クリエイターエコノミーとは、簡単に言うと「クリエイターが熱量の高いファンから直接お金を稼ぐことのできる仕組み」のことを指します。
※こちらのNewsPicksさんの記事が非常にわかりやすいです。
たとえば海外では、クリエイターをファンが直接支援できる会員制サービス「Patreon」や、インフルエンサーに動画メッセージを直接依頼できるサービス「Cameo」などが、ユニコーンの仲間入りをはたしています。
僕自身もPatreonを通じて好きなクリエイターさんを支援していますし、ファンから直接稼げる仕組みを通じてクリエイターが創作活動を続けられるようになったことは、本当に素晴らしい発明だと思っています。
また最近では、TwitterやFacebook、Instagram、Tiktokなどのプラットフォーマーも「投げ銭」機能を追加するなど、クリエイターエコノミーを後押ししており、この流れは確実に加速していくものと思います。
クリエイターエコノミーの問題点
一方で、問題点もあります。こうしたサービスを通じて、クリエイターであれば誰もが稼げるようになったのか? その答えはNOです。
クリエイターエコノミーには、以下4つのレベルがあると言われています。
出典:https://future.a16z.com/creator-economy-levels/
まず、99%のクリエイターは、趣味としての創作活動を行っています。創作は好きではあるけれど、そこで生計を立てることができない人々です。
逆に言えば、そもそも創作活動を仕事にできるクリエイターは、全体の1%しかいません。さらに、Influencer Marketing Factoryの調査レポート(2021)によれば、ある程度の収入を得られるFull-time Creatorになるまでにおよそ3年かかり、$1M以上の収入を得るためには6年以上かかるそうです。
つまり、テクノロジーの発展によってクリエイターが直接収益を得られるようになっても、実際にそれで生計を立てられる人は1%程度しかいない。トップクリエイターが恩恵を受ける一方で、それを夢みてお金と時間を注ぎ込んだ結果バーンアウトしてしまう人や、結局はプラットフォーマーが権力を持ってしまっていることが、新たな問題として言われています。
もちろん、才能あるクリエイターが今までよりも報酬を得られやすくなったり、ファンと直接繋がれるようになったことは素晴らしいことです。しかし、現状の「クリエイターが稼げる」という文脈でのクリエイターエコノミーには、一定の限界があると感じています。
日本で発展してきた「仮託」の文化
ではどうすれば、クリエイターが疲弊せず、持続的に発展するエコノミーを作っていくことができるのか。
そこで僕が提案したいのが「仮託のクリエイターエコノミー」です。あまり聞き慣れない言葉だと思うので補足すると、「仮託」とは、以下のように定義されています。
「仮託」…他の物にかこつけること。ことよせること。
大辞林より
少し難しい概念ですが、日本は、実はこの「仮託文化」が発展している社会だと考えています。たとえばカラオケやコスプレ、コミケなどの二次創作。これらはすべて仮託の文化だと言えます。
どういうことかと言うと、たとえばカラオケに行ったとき、歌がたとえ上手くなくても盛り上がったり楽しめたりするのは、アーティストや曲そのものの魅力がベースにあったりします。また、コスプレやコミケなども、元のキャラクターやそのファンが集まるからこそ、互いに楽しむことができる。
つまり、クリエイターの創造性や作品を使って自らの創作を行うことで、自身がエンパワーメントされる状態。これは「仮託」だと思います。
他にも、ひろゆきさんの切り抜き動画や、同人誌、音楽アーティストのカバー曲、ミームなど、誰かのクリエイティブにかこつける「仮託」の文化が日本では育っており、実際に「karaoke(カラオケ)」や「cosplay(コスプレ)」などは、世界共通言語にもなっています。
Web3.0とコミュニティが「仮託のクリエイター活動」を加速する
そして、Web3.0と呼ばれるブロックチェーン上のネットワークが、そうした「仮託のクリエイター活動」を加速させると考えています。
出典:https://note.com/sota_watanabe/n/n0211541a0325
なぜかというと、二次創作でよく問題視されるのは、著作権などのライセンスと、違法転売などのガバナンスの観点です。従来の物理空間やWeb2.0の世界では、その規制コストが高いために、基本的にNGにせざるを得ない状況にありました。
しかしながら、ブロックチェーン技術は、上記のライセンス(真偽性)とその手数料の問題を解決します。NFTを使ったデジタルアセットとして提供すれば、二次流通の売買における版権者に対する収益還元や、その制御などが可能になるためです。
※このNFTの所有と移転の概念は、別のnoteに書いたのでご参考ください。
また、もうひとつの要素として重要なのが、コミュニティです。
たとえばファンが二次創作をする際、ただトラッキングするだけでは違法を感知できても直接規制することが難しいですが、公式コミュニティ内であれば、このガバナンスが効きます。
弊社の事例にはなりますが、あるマンガIP(知的財産)のファンコミュニティサービス内で、二次創作権を持つNFTアイテムを配布しました。この際、ファンに二次創作する権利を提供しながらも、公式コミュニティ内で校閲を入れられるようにすることで、作者が安心してファンの二次創作を支援する形を実現することができました。
またWeb3.0とコミュニティがあれば、二次創作の幅も広がっていきます。たとえばファンがIPを使ったコンセプトカフェを開設したり、IPを使った新しいサービスを開発したり、コンテンツの域を越えて様々なビジネスが生まれる世界を実現できると考えています。
全人類がクリエイターであるファンエコノミーの創造
総括すると、仮託のクリエイターエコノミーとは、IPというクリエイターエコノミーの中に、ミニクリエイターがたくさんいるような状態とも言えます。「クリエイター in クリエイターエコノミー」みたいなイメージです。
僕たちはそれを、ファン主体の経済圏として「ファンエコノミー」と呼んでいて、エンタメIPを中心としたファン国家づくりに取り組んでいます。
実は海外では、a16zのパートナーLi Jinさんが書いた「The Passion Economy and the Future of Work」で、2019年に近い概念が提唱されていたりします。
僕は、クリエイター個人が稼げる仕組みではなく、クリエイターを応援する人たち全員がクリエイターだと思っていて、その人たちも稼げる仕組みを作りたいと思っています。
たとえばYouTubeがYouTuberという職業を生み出し、その人たちがプラットフォームを支えているように、ジャニオタやガンプラ職人も職業になるはずです。人々がコンテンツや好きなものを「消費」するだけでなく、それを「共創」し、応援や貢献する活動がその人の生活の支えにもなる。そんなファンエコノミーを実現していきたいと考えています。
さらに言えば、僕はそのエコノミーを作るには、やはり「DAO(ダオ:Decentralized Autonomous Organization)」が最適だと思っています。
※DAOについては、別のnoteに書いたのでご参考ください。
ここでは詳しくは割愛しますが、共感するものに人々(ファン)が自律分散的に集い、その実現や価値向上のために活動し、個々の価値貢献に対してフェアにインセンティブが還元される。そうしたwin-winの関係を構築することが、ファンエコノミーの形成では重要です。
いまのクリエイターエコノミーは、個人のクリエイター支援の文脈が強いと感じていますが、僕はクリエイターを支援する人もまた、クリエイターであり、価値の還元を受けるべきだと思っています。
なぜなら、ファンがクリエイターの力を借りて二次創作を行うように、クリエイターもまた、ファンの熱量を借りることで、ひとりでは到達できないような地点までたどり着くことができるからです。
たとえば人類初の月面着陸「アポロ計画」は、宇宙飛行士、ロケット開発や研究者、応援するすべての人の力が結集したからこそ実現しました。そのアポロ計画で、大統領がNASAオフィスを訪問視察したときのエピソードが、僕はすごく好きです。
ある日、NASAのオフィスは、数日前から続いた嵐の後始末に追われていました。ジョンソン大統領は廊下を歩いていて、モップを手に忙しく働く清掃員を見かけ、ふと声をかけました。
「君は、私が出会ったなかで最高の清掃員だ」
すると、清掃員は言いました。
「いいえ、大統領閣下、私はただの清掃員ではありません。私はこのオフィスを掃除することで、人類を月に送ることに貢献しているのです」
清掃員もまた、いちクリエイターです。壮大なビジョンをもとに自律分散的に集う人々が、それぞれの価値を発揮して、大きなことを成し遂げる。
僕はファンエコノミーを通じて、そんなクリエイターの人たちが共創し、大きな夢を成し遂げる社会を実現したい。Web3.0が到来した今、まさにその時代が始まっています。
さいごに告知
Gaudiyでは、ファンエコノミーの実現をめざして、Web3.0時代のファンコミュニティサービスを開発・提供しています。
まだ30名ほどの組織ですが、エンタメの未来を担う大きな挑戦をしています。「ファンと共に、時代を進める」仲間を絶賛募集していますので、少しでも興味持っていただいた方は、ぜひカジュアルにお話ししましょう!
おまけ:Web3.0をもっと知りたい人へ
Web3.0を説明し出すと、それだけで数万字のnoteになってしまうので笑、おすすめの記事をさいごに貼っておきます。(英語ソース多くて恐縮です🙇♂️)
クリエイターエコノミーは、こちらの記事もおすすめです。