※このストーリーは、noteで発信した記事を転載しています。
まえがき
カンリーでシニアプロダクトマネージャーをしている越智(X : @ochi__san)です。前職のSansanから転職し、早いもので1年が経過しました。環境の変化もあり、プロダクトや事業の見え方が大きく変わった1年だったと感じています。 今回は、最近さまざまなところで話題にされている「SaaS is Dead」という言葉について、私なりのスタンスを書いてみたいと思います。 あくまで一つのスタンスとして読んでいただければ嬉しいです。
本記事の内容は、会社を代表する見解ではなく、あくまで私個人としての市場考察です。
SaaSは死んだ?
「SaaS is Dead」というワードを最初に見たとき、なかなかのパワーワードが生まれたな、と思いました。
正直、当時は結構ショッキングでした。
AIの進化によって実現できることの幅と深さは、ものすごい速度でアップデートされています。ソフトウェアの開発コストも確実に下がっています。
そんな状況の中で、「SaaSは死んだのか?」と聞かれたとき、私の答えはシンプルです。
Noです。
SaaSプロダクトの責任を担う立場として、多少ポジショントークも入っているかもしれません。それでも、何回聞かれても答えは変わらず「No」です。
ただ、この問いの答えは立場によって変わる気もしています。
- エンジニアとして
- 営業/CSとして
- プロダクトマネージャーとして
- 経営者として
- 投資家として
それぞれの立場で見えているものは違います。私はプロダクトマネージャーの立場から「No」と考えています。
何を作っているか
確かに、「システムを作る」「機能を作る」という部分だけを切り出した場合、その仕事の一部はAIによって代替されていくかもしれません。
しかし、SaaSプロダクトが提供しているものは、本当に「ただのシステム」や「ただの機能」なのでしょうか。
機能ではなく価値を売る
これは、私が色々なところで繰り返し言っていることです。
自作のアプリケーションやソフトウェアで、安心・安全に、法を遵守しながら、自社の課題を継続的に解決していく。
これを本当に実現できるでしょうか。
個人的には、かなり厳しいと思っています。
最近の議論を見ていると、「見えるもの」と「見えないもの」で戦っているような印象を受けることがあります。そこに少し違和感を感じています。
より本質へ
勤怠を簡単に入力できるようにすること。
紙をデジタル化すること。
経費を自動で計算できるようにすること。
採用業務を手間なく実行できること。
世の中にある多くの優れたSaaSプロダクトは、こうした機能そのものを価値として提供しているわけではありません。
価値を追求し続けるか、機能に依存するか
プロダクトの意思決定者として、そのどちらを選ぶのか。
ユーザーが本当に欲しかったものは何なのか。
深い洞察と考察をもとに定義する。
AIは、その予測精度を高めてくれるかもしれません。しかし、価値を定義する意思決定そのものを代替してくれるわけではないと思っています。
ビジネスとプロダクトの両輪で事業を加速させる。その中心にあるのは、やはりユーザー理解と体験設計です。AIの進化を見ていて、むしろそこがより重要になるのではないかと感じています。
作るだけなら簡単になった今、これまで以上に「作らない意思決定」が重要になると思います。
リスクを背負う
例えば、
このような絶対に漏れてはいけない情報を扱うシステムを自作し、スケールさせ長期運用していく。少なくとも私には、それを安全にやり続ける自信はありません。
表面的なアプリケーションであれば作れるかもしれません。しかし、複雑でセキュアな基幹システムと連携しながら安定して運用し続けることは、想像以上に困難です。知らない間に法に反しているかもしれません。 SaaSプロダクトは、こうした「見えないリスク」を背負いながら、お客様に価値を提供しています。
ユーザーの課題を特定し、状況に合わせて体験を磨き続ける。そして、安心して使えるプロダクトとして提供し続ける。それらすべてを含めて、価値として提供している。
それを「AIを使えば簡単に作れる」というもので代替できるかというと、やはりかなり厳しいと思っています。
意味合いの変化
SaaS ≠ 目に見えて動いているもの
ただ、「SaaS is Dead」という言葉そのものを否定したいわけではありません。
もし、「SaaS = 目に見えて動いているもの」として世の中に捉えられ、それが死んだと言われているとすると、その勘違いは我々プロダクト従事者の責任だと思います。
私の中では、この言葉は「SaaSという言葉が表している意味が変わり始めている」というメッセージとして受け取っています。
もしかすると、これまで「SaaS」と呼ばれていたものは、AI時代の中で別の言葉に置き換わっていくのかもしれません。そのときには、また新しい意味を持った言葉として定義され、世の中に広がっていくと思います。
AI時代に再定義されたとき、SaaSプロダクトはより業務や生活に浸透し、もっと魅力的なプロダクトになるのではないかという期待もしています。
あとがき
プロダクトやサービスを否定するのではなく、AIをうまく活用し、プロダクトにAIを浸透させ、価値提供をさらに加速させていく。
それを個人ではなく、組織として体現すること。
それが、SaaSプロダクトを提供する企業の使命だと思っています。
もし、こんなスタンスを持つメンバーがいるプロダクトチームに興味や共感がありましたら、ぜひお気軽にお声掛けください。