みなさま、お盆のお休みはいかがお過ごしでしょうか?
わたしはYouTubeで長尺の動画を見てダラダラと優雅な日々を過ごしております。最近、「アート」や「新しい資本主義」、「人間とは何か」といった視座の高い系の動画がリコメンドされるようになってき、活字にも当たらねばと名著を引っ張ってきました。
福原 義春さん(元 資生堂 社長・会長)の『文化資本の経営』は1999年の著作ながら、ESGやパーパス経営、人的資本といった現代の重要キーワードを先取りして示してくれています。2023年には松岡正剛さんやデービッド・アトキンソンさんの豪華コメント付きリニューアルバージョンとして復刊されたそうです。
表題にもある「文化資本」はご想像の通り、「経済資本」(お金・物質)のアンチテーゼとして提唱されている概念です。感性・知性・歴史・文化など、人々に共有され生成発展する非物質的価値も含めた「資本」であると定義されています。従来の大量生産・画一化された「抽象的商品」から、地域や歴史に根差した「具体」を活かした価値創造へと舵を切るべきだということですね。
さまざまな切り口で企業経営やキャリアビジョンへ応用してみたくなる本なのですが、ここでは私たちのバーと繋げてみたいと思います。
訪日外国人は文化資本を体験できているのか
文化資本経営は「地域や文化が持つ固有の具体性」が鍵だと説きますが、訪日外国人はまさにその具体—「日本らしさ」「土地の歴史」「独自文化」に魅せられて来日する存在です。伝統工芸、街並み、祭りや食、温泉などの文化的体験が、そのまま文化資本として機能します。
文化資本経営における「想像生産」は、文化資本から新たな価値を生み、経済にも結びつく流れですが、外国人訪問者はその媒介者となります。体験を通じて得た価値が、口コミやリピート、SNS発信などを通じて文化を世界へ拡散し、経済効果だけでなく新たな文化が創出されます。この意味で、いまの日本は本当に素晴らしいチャンスに溢れていると思います。
JIDAIでは”ホンモノ”をキーワードにしています。よく考えれば”ニセモノ”なんてものは滅多に存在せず、外国人からすれば日本にあるもの全ては”ホンモノの日本”であるとも言えると思います。では何故、あえて”ホンモノ”を掲げるのか、それは言葉による媒介、場としての媒介で”ホンモノ”を感じることをサポートしたいからです。
初めて日本酒を飲んで、その味だけに感動できる人は少ないと思います。また、酒場で英語を話す人はほとんどおらず、リアルなインタラクションのない「体験」は本当に「文化体験」と言えるのか疑問です。
でも、「味の違いをその醸造背景から知ることができる」「作り手の思い、地域の歴史とともに味の深みを感じられる」「日本のリアルな日常を些細な会話から感じることができる」という体験は、よりリッチで、未来の文化を創造するものになるはずです。
銀座という場所の力
JIDAI -The Japan Experience bar-は銀座の中央通りに面したビルの11階にお店を構えています。資生堂は銀座の商店として創業したこともあり、福原氏の銀座という街への思いも『文化資本の経営』には言及があります。僭越ながら一言でまとめるなら、「銀座らしさってあるよね」ということだと思います。銀座は今や世界的に知られる都市ブランドであり、週末には歩行者天国でも人を避けて歩かなければいけないほどです。
銀座は経済活動と文化形成が同時に行われる象徴的な「場」として、これからも機能していくことが求められていると思います。ここで培われる教育・信頼・美意識が、次の豊かな社会・文化を形成していくことに、われわれも貢献できるよう、日々の取り組みに一層力を入れてまいります!