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「ANDPAD引合粗利管理」と「ANDPAD受発注」は建設事業者の基幹システムを担い、作業短縮化・業務効率化などの現場DXから、損益管理や経営状況の把握・アクションへ繋げる経営DXへと前進させるプロダクト群です。これらのプロダクト群の機能開発やオンボーディング・カスタマーサクセスの企画実装を担い、顧客の経営課題の解決に踏み込んでいるのが、ERP/EDI事業本部という組織です。ERP/EDI事業本部が手掛ける業務内容やミッション、組織カルチャー、見据えている組織の未来について執行役員 本部長の渡部、部長の小林、為房にインタビューしました。
執行役員 ERP/EDI事業本部 本部長 渡部 耕太郎
大学卒業後、東京国税局に入局。主に法人税などの税務調査に従事。その後、 ワークスアプリケーションズに転職。会計システムの導入などを担当。新卒採用の責任者も経験。 国内コンサルティングファームを経て、2021年にアンドパッドに入社。 「ANDPAD引合粗利管理」および「ANDPAD受発注」における事業責任者を担い、セールス、カス タマーサクセス、サポートなどの各チームを統括。各社のデータ一元管理を達成し、その先の業務効率化や経営改善をご支援できるよう事業を推進中。
経営指標となるデータを“見える化”し、適正な判断につなげるプロダクト
──まずERP/EDI事業本部の概要と、扱っているプロダクトについて教えてください。
私たちの事業部は、お客様に対し「ANDPAD引合粗利管理」と「ANDPAD受発注」の導入支援・運用活用支援を行う部門です。私たちが扱うプロダクトの特徴は2つあります。まず1つ目は、売上や原価利益などの数値データを明確にして可視化できる点です。それによって、データドリブンな経営の実現につながると信じています。例えばある建設業態では、まだまだ紙媒体での管理が一般的で、パートナーから請求をもらった段階で原価登録している慣習がありますし、工期が長期になると原価や支払い予測などが困難な状況も発生しています。また昨今では原価が高騰し、原価コントロールに苦慮している企業様も多い中、勘定項目のデータ化・可視化によって、無駄を省いて効率的で強い“筋肉質な経営”を実現するための一つのインフラとして活用いただけていると考えています。
2つ目は、キャッシュフローの可視化により、資金繰りや投資といった中期の経営判断の材料となる点です。「ANDPAD引合粗利管理」と「ANDPAD受発注」を導入いただくことで経営指標や事業継続に必要十分なデータが見えるようになるため、適正な判断ができます。それによって現場の業務効率向上や、会社の福利厚生といった働きやすさの拡充、新規事業や事業拡大などへの投資も可能になり、より会社の発展につなげていけるかと思います。ある工事会社様では、従業員さんの給与引き上げを実現できた、という例もでています。健全な経営をしていくためには、キャッシュフローマネジメントが欠かせません。まだまだ開発予定の機能が多くあり、お客様にはより一層価値を感じていただけるプロダクトになると考えています。
──経営に欠かせないプロダクトを提供していると。ERP/EDI事業本部が迎えているフェーズや、掲げるミッションは何ですか?
アンドパッドには、ハウジングからゼネコン、専門工事、エンタープライズなど、多種多様の業態に合わせた事業部が存在しています。ハウジング領域についてはすでにセールスの型が出来上がっており、ハウジング事業本部内のフィールドセールス職が「ANDPAD引合粗利管理」と「ANDPAD受発注」の提案を行っています。一方で、ゼネコン・サブコン、専門工事などの領域においては、まだまだPMF(プロダクトマーケットフィット/製品やサービスが市場のニーズに合致し、顧客から受け入れられている状態)には達しておらず、プロダクトをより磨き込んで事業開発していく段階にあります。
今期のERP/EDI事業本部は、ゼネコン、サブコン、専門工事、エンタープライズ領域のお客様に対し、基幹システムを支えるプロダクトを作り上げ、部内目標を達成していくことをミッションにしています。
──事業部ごとにPMFのフェーズは異なりますか?
はい、異なります。専門工事領域向けは先行してご案内していましたが、ゼネコン・サブコン領域に関しては、昨年からPMFをスタートしたばかりです。具体的にどのような提案をしているかというと、専門工事領域については営業管理のみ、もしくは原価管理だけ、というように機能を制限したパッケージを用意しています。ゼネコン領域は構造上、ハウジング領域に近く、営業方法の型化も見えてきている段階です。専門工事領域とサブコン領域はまだ型化ができていません。現状として請求管理と歩掛管理と原価管理だけでご提供することもあれば、EDIは不要なのでERPだけ導入されるケースもあり、まだまだ手探り状態です。
──各領域で商流が変わるので、同じERP/EDIのプロダクトであっても使い方は異なりますよね。
そうですね。例えば、工期が長いゼネコン向けプロダクトの実行予算管理機能では、一年後の原価の着地が見えないといけません。しかし、ハウジング向けに出している実行予算管理機能ではそこまで把握できないので、マスター設定を切り替えることで、2パターンの実行予算管理ができるようにしています。基盤は同じですが、クライアントのニーズによってある程度調整できるようになっています。
──SaaSビジネスモデルでありながら、業態によって提供する機能が変わるとなると、提案の難易度は高くなりそうですね。
少しずつ型化はできているのですが、それが市場に受け入れられるのかを検証しながら、現在はお客様と一緒にプロダクト・サービスを育てているという状況です。
ニーズをプロダクトへフィードバックする方法については、プロダクトブリッジチームという、事業横断的なプロジェクトチームを組んで対応しています。各事業本部のカスタマーサクセス担当やプリセールス担当などが集い、お客様の要望やオンボーディングネックを集約して、開発チームと連携しながらプロダクトに活かしています。
経営の根幹に関わるプロダクトだからヒト・モノ・カネの流れが見える
──ERP/EDI事業本部で働く面白さについて教えてください。
この仕事はお客様や社内の事業本部など、さまざまな人と接点を持つ機会が多いので、プロジェクトマネジメント力を磨くことができます。また、お客様の経営の根幹に関わるヒト・モノ・カネの流れを可視化するプロダクトだからこそ、経営に関する知見も広がりますし、視座も上がっていく環境だと思います。
──経営の根幹に触れる機会が多いからこそ、キャリアにおけるマーケットバリューは上がると。一方でどのような仕事の難しさがありますか?
プロダクトの性質上、経理部や経営部門への提案が多くなるため、建築・建設業界ならではのお金の流れを知っておかないとお客様への提案は難しくなります。また、業態が異なると商流やペインポイントも異なるので、その中で何を優先して機能を追加するのか、といった点は非常にハンドリングが難しいと思います。
失敗は重要な資産
──次に、組織についての話を伺います。ERP/EDI事業本部のカルチャーについて教えてください。
全部で3つの特徴があります。まず一つは、「失敗を恐れない」というカルチャーが根付いている点です。というのも、未知の領域にチャレンジしているフェーズなので正解はありませんし、自分で正解を作っていくしかないからです。失敗はマイナスなことではなく会社にとっての資産。「小さく」「早く」「多く」失敗することで資産化できますし、失敗は成功の素になるので、どんどん失敗していいと思っています。もちろん気軽に相談ができる環境ですが、自分で考えて動ける余地が充分にある環境です。
──具体的にはどこまで自由に活動できるのでしょうか?
例えば「このセグメントにはこの提案が合っていそうだ」と自分で仮説を立て、提案することもできますし、色々な機能を組み合わせたパッケージを作って販売することもできます。実際に動いてみて、あまり提案の感触がつかめないようであれば、全く新しいパッケージを作ることも可能です。仮説を立てて、施策を実行して、仮説通りになったのか、ならなかったのか。もしパッケージが売れなかったのであれば、「このマーケットにおけるニーズはなかった」という資産になる。それが分かれば、その次の仮説検証に行けますよね。
リーダーやマネージャーがある程度、仮説のテーマや方向性を定めてはいますが、各現場では「これが受け入れられて、これが受け入れられない」「この機能は必要だ」というリアルなニーズが出てくるので、どんどん提案して実行してチャレンジすることが大事だと思っています。個人個人の挑戦とその結果については、課題管理表に記入したり、月次総会で共有するようにしています。
──失敗に寛容な環境があるからこそ、自主的に挑戦しようと思えるのかもしれないですね。
そうかもしれません。2つ目の特徴として、心理的安全性が担保されている点が挙げられます。「失敗しても大丈夫」と言っているからには、それを受け止められるセーフティーネットが欠かせません。チームメンバー同士がサポートし合えるような関係性を築くべく、コミュニケーションを取る機会を大切にしています。若干昭和的な印象を持たれるかもしれませんが、クォーターごとの打ち上げの他、業務外では各メンバー同士での飲み会、バーベキューなども開催しています。参加の強制力はありませんが、積極的に参加していますね。
3つ目は、カスタマーサクセスを完遂する情熱です。プロダクトのPMFを実現していくためには、とにかくサクセス事例を数多く積み上げていくしかありません。当然、プロダクト内だけで完結しないケースもあるので、その場合は当社側で代理対応を行いサポートするケースもあります。そのニーズもプロダクトに昇華していかないといけないので、開発チームへのフィードバックは必要です。「その機能がないからできません」ではなく、「どうしたらお客様のニーズを満たせるのか?」を考え、対応していくことを良しとしています。
──セールス担当もサクセス担当も、SaaSサービスの一つということですね。
そういうイメージですね。現段階では、業務の生産性よりもとにかくサクセス事例の積み上げを目標にしているので、オンボーディング成功率・成功数を指標にしています。
──ERP/EDI事業本部は、どのようなメンバーが活躍していますか?
責任感を強く持ち、ホスピタリティ溢れるメンバーが活躍しています。他責思考ではなく、顧客のため、自分の仕事をやりきるという意思を強く持っているのがメンバーの共通項です。
また、共通しているのは「じゃあ、どうする?」思考です。例えば、受注時に誤ってプロダクトの機能上実現できない提案をしてしまうような課題が発生したとします。提案内容に間違いがあると、プロダクトのオンボーディングの成功率が上がりませんし、お客様との間に齟齬が生まれてしまい、期待されている結果につながらない可能性があります。では、「じゃあ我々としてはどうすべきか?」というと、受注受け入れのジャッジラインを決め、それに則っていない受注にはNGを出しますし、案件受注時の適正なフィードバックでの連携強化、ERP/EDI事業本部が主体の勉強会を行い、受注品質向上のための啓発活動の実施など、社内への働きかけを行っています。まず事象を捉えた上で、他責NGの考え方で、「自分たちで解決できることは何か?」「他人に働きかけられることは何か?」と発想する。それはカルチャーとして根付いてきていると思います。
目指すのは、現場DXから経営DXを実現する企業
──ERP/EDI事業本部の目指す未来について教えてください。
私たちが目指しているのは、フィナンシャルマネジメント領域のプロ集団。そのためにはまず、現状のPMFをしっかり完遂し、その後、各プロダクトとの連携にも着手する予定です。まだまだやることは山積みです。それが実現できるようになったら、利益率の改善やキャッシュフローの改善、経営の心臓にヒットするような価値提供ができるようになると考えています。その行く先には「アンドパッド」自体も現場DXだけではなく、経営DXが実現できる企業として認知いただけると思います。現場DX、経営DXを叶える「ANDPAD」──その最前線にいるのは我々だと考えているので、業界の発展を力強く支える組織でありたいと思っています。
生産性よりカスタマーサクセスの追求が優先。経営判断につながるデータを蓄積していくため顧客と伴走する。
ここからは、現場で活躍する小林と為房に具体的な業務アクションや組織カルチャーについて聞きました。
ERP/EDI事業本部 部長 小林 亜斗武 (写真左)
大学卒業後、2017年に新卒で総合コンサルティングファーム入社。東証1部(当時)上場製造業向けへの基幹システム刷新PJ等に従事。基幹システム刷新においては製造/販売/物流とサプライチェーンに幅広く関与すると同時に会計を学習。課題の多い建設業界において自社で難易度の高い基幹システムを構築し、業界を変えていく姿に共感し2021年4月よりアンドパッド入社。
ERP/EDI事業本部 為房 香澄 (写真右)
大学卒業後、2015年より国内産ERPパッケージベンダーに入社し、グループウェアおよびローコード開発ツールの導入・保守運用サポートコンサルとして従事。不動産、製造、建設など幅広い企業の主に経営企画室や情報システム部とともにプロジェクトを推進。インストール型サービスにおける機能改善スピードの限界を感じSaaS領域へチャレンジすべくアンドパッドへ入社。
経営に関わる業務フロー全体をサポートしていく
──ERP/EDI事業本部が手掛ける、具体的な業務の流れを教えてください。
小林 私たちはERP/EDI導入支援としてプリセールスからカスタマーサクセスに至るまでを担当しています。具体的には、まず各事業本部のセールス担当からバトンを受け取り、お客様の現状業務を丁寧にヒアリングするところからスタートします。そして、業務フローや利用システムの分析を行い、課題解決に向けた最適なフローの設計、運用設計、ERP/EDIの導入と運用サポートを実施しています。
提案先はすでに「ANDPAD」をご利用いただいているお客様で、「ANDPAD施工管理」であれば工務部だけというケースもありますが、私たちの主に扱うプロダクトでは、提案活動を通して経営に関わる部署それぞれに関わっていくイメージです。そのため各事業本部のセールス担当と週次で定例ミーティングをしながら、販売戦略をブラッシュアップしています。
──お客様の導入ニーズはどういったところにあるのでしょうか?
小林 例えば、中小企業では「表計算ソフトでの管理をやめたい」という要望からERPを導入いただくケースがあります。一般的な表計算ソフトは誰でも編集ができてしまうので、何が“正”か分からなくなったり、二重入力になっていたり、正しい見積単価が最新化されていないこともあるため、システムを入れることで解決したいというニーズがあります。
為房 建築・建設業界は現場だけでなくバックオフィスの人材難も発生していて、経理スタッフやファイル管理者の退職に伴い管理できなくなってしまったケースもよく見受けられますね。
また大手企業では別の基幹システムが入っていることが多く、サーバ型のフルスクラッチのサービスだと5ヵ年ほどで見直しが入り、サーバも古くなるので、メンテナンスの手間を考えるとSaaSが良いのではないかということから当社にお声掛けいただくケースもあります。
──導入支援はどのくらいの期間をかけるのですか?
小林 ERP/EDIの運用がスタートするまでは、約半年ほどかかります。「ANDPAD施工管理」と比較すると、長い期間を要します。というのも、「ANDPAD施工管理」の場合は工程表や写真、図面管理など業務の特定の領域を切り取って作られている仕組みなので、お客様にお渡しして割とすぐに使えるという特徴があるのですが、ERP/EDIは業務のフロー全体を抑える仕組みになるので、最初に、「誰が」「どのタイミングで」「どの操作をするか」の定義が重要です。
──その定義に時間を要すると。
小林 その通りです。例えば、お客様企業の営業担当の方が「ANDPAD引合粗利管理」と「ANDPAD受発注」に案件を立てて見積を作成した後に、現場監督がその見積を使って予算を作る。そして購買部や監督が予算を見て発注書を作成する。発注書を作成した後は経理が処理をする…といったように複数の部門に横断してプロダクトが利用されるので、どの部門が何の業務を担当するのかを分析し、割り振りする一定の時間が必要です。
──業務フロー全体を抑えた仕組みであることが大きな肝なんですね。
小林 1~4ヵ月をかけて、複数ある機能の操作を割り振った後は、5ヵ月目に説明会を実施し、使い方のレクチャーを行います。そして6ヵ月目から運用開始というケースが大半です。「ANDPAD引合粗利管理」と「ANDPAD受発注」は、前工程において担当部門が操作してくれないと次の工程の担当部門が操作できず、詰まってしまう、という特徴的な性質を持っていますし、さらにお客様企業の中にはITが不慣れな方もいらっしゃるので、しっかり我々が主導で使い方のレクチャーをさせていただくようにしています。
私たちは、オンボーディング成功率という指標をKPIの一つに設定しており、運用開始日から3ヵ月後に利用状況を確認して、案件が全て記入されているか、見積が作られているかを確認しています。利用率を高めていくために月次の定期フォローを兼ねて、お客様と打ち合わせをしていく。定着するまでに1年単位で見ていくことになるので、最初の3ヵ月では8割くらいご利用いただけていれば入り口として良いと判断しています。
──プロダクト導入後順調にご利用されている企業様にはどのような提案をしていますか?
小林 利用状況の定期フォローだけでなく、「ANDPAD Analytics」により、お客様のご利用状態がさらに細かく把握できるようになっています。その中で見えてきた課題が、経理の業務効率化です。例えば、お金に関する情報は締め切りギリギリにまとまってくるのが一般的ですが、それに伴い「この入金は何から発生したものなのか分からない」というケースも多々発生しています。ERPを使ってデータが蓄積されれば、過去のデータを活用して税理士や経営への提出書類作成の簡素化も図れますアンドパッドには会計連携機能もあるので、よりお客様の業務効率を向上させるための提案を行っています。
──お客様の業務課題を一つひとつひも解く、業務コンサルティングのような一面があるんですね。ちなみに、新しく入社される方はどのような仕事からお任せする予定ですか?
小林 新しく入社される方にはまず、カスタマーサクセスから担当していただきます。私たちが扱う製品がどういうものなのか、どういう業界でどんな提案が求められているのか、という引き出しを増やしてもらうためです。カスタマーサクセスが一人で完結できるようになった後は、プリセールスへのチャレンジや、運用開始後のお客様に対してよりスティッキネスを上げるためのアダプションなど、新しいことにチャレンジしてほしいと思っています。
ヒト・モノ・カネといった経営資源の循環を肌で感じられる
──業務のフローやタスクが理解できました。続いて業務のやりがいについて教えてください。
小林 営業管理や受発注管理といった特定のモジュールに絞らず、お客様全体をフォローする提案になるので、お客様の経営に深く入り込んでいく面白さがあります。ERP/EDIは営業や経理、工務などさまざまなファンクションに関わるプロダクト。業界や業務知識、お金の流れについて知見が広がっていく醍醐味があると思います。経営知識のインプットは正直大変なことも多いですが、お客様が直面している課題を「ANDPAD」の機能に落とし込んで解決していく中で、コンサルティングスキルを磨くことができ、経営者の方々と対等に話せるようにもなります。
為房 私が考えるERP/EDI事業本部で働く面白さは、プロダクトがPMF段階にある中で、スタンダードの機能に落とし込んで型を作っていくところにあると思います。ERP/EDIの機能を育てて、お客様と共に検証して提供していくという、ある種、新規事業開発的な側面を持っているところにやりがいを感じます。
──伸びしろがあるプロダクトだからこその面白さですよね。一方で、仕事の難しさについても教えてください。
小林 私が考える仕事の難しさは、全部で3段階あります。1つ目が契約から運用開始までの壁、2つ目が運用開始してから定着するまでの壁、3つ目が定着した後の壁です。
1つ目の壁は、SaaSという仕組みであるという点です。他社様だと追加費用をかければカスタマイズができますが、「ANDPAD」は今あるパラメータを調整して提供する形になるので、どうしてもお客様が「できると思っていたのにできなかった」ということが出てきてしまうケースもあります。
──その場合はどのように対処しているのでしょうか?
小林 「表計算ソフトでの管理をやめたい」「システムのリプレイスをしたい」といったプロダクト導入の大目的に立ち返って、妥協点と譲れないポイントを整理して合意を取りに行くようにしています。また、プロダクト導入の決裁者は経営陣ですが、ツールを使うのは現場社員の方なので、導入後、ふたを開けてみたら新しい課題が見つかる場合もあります。そういうケースは上司や経営者から説得していただくよう働きかけを行うのも仕事の一つです。
2つ目の壁については、入力というタスクが増えるという点です。例えば今までは口頭報告だけだったものをシステムに入れるという作業工程になるので、「業務効率化を進めるためにツールを導入したのに業務が一時的に増えた」と不満を持たれるケースがあります。しかし、経理など現場の方が入力していただけないと始まらないシステムなので、根気強く取り組んでもらえるようサポートしています。
──顧客の事業成功に向けて伴走する姿勢が欠かせないんですね。3つ目の壁について教えてください。
小林 3つ目の壁は、プロダクト導入のメリットを感じていただくまでに時間がかかる点です。ERP/EDIは地道にデータを蓄積してこそ効果を実感いただけるので、効果を認識してもらうまでに「なぜ費用を払って導入しているのだろう?」と疑問を持たれるケースもあります。それに対しては、1つ目の壁のときと同じで、プロダクトを導入した目的にしっかり立ち返るようにしています。「1年間使ってみたけれど、入力の負荷が大きすぎる」という場合はプロダクトの機能を絞るのもひとつの手法です。例えば、営業部は従来通りの方法で管理を継続いただき、工務部は「ANDPAD」を使っていただく。他にも監督さんが発注書作成まで手が回らず、その後の経理部に情報が回ってこない場合は、発注は従来通り電話やFAXで、請求書の受け取りは「ANDPAD」を利用いただくよう提案することもあります。
──お客様の状況によって柔軟に運用方法を変化させていくと。
小林 そうですね。プランの見直しという形で、お客様との接点を継続できるように工夫しています。
──為房さんはいかがですか?
為房 私が入社してまず実感したのは、経営に関する知識を学ぶ大変さと面白さです。ERP/EDI事業本部では入社時点においては会計や簿記の知識・理解は必須ではありませんが、クライアント業務の理解や適切な提案を行なっていく上で、建設業経理士2級の取得を推奨しています。この観点で、簿記3級以上の資格をすでに持っているとアドバンテージにはなります。私自身は会計初学者だったため、入社してから必死に学んで身につけました。挫折しそうにもなりましたが、経営者の方からお困りごとを聞き、「経営者はこういう数字が見たいのか」「だからプロダクトの機能ってこうなっているんだ!」という点がつながりだすと、急にお客様の話が理解できるようになり、面白くなっていきました。「学ばなければいけない」ではなく、お客様を知るために必要な知識であると視点を変えることで、捉え方も変わってくると思います。
一人ひとりがオーナーシップを持って動ける環境
──ERP/EDI事業本部で活躍するメンバーの共通点について教えてください。
小林 まずは、契約後の責任を追う覚悟を強く持っている点です。責任を追うというのは、お客様の発言の意図をくみ取り、お客様の立場、ニーズを理解できる人。お客様の求めるものを達成するために、自分は何をすればいいのかを考えられる人のことです。
──表層的な言葉だけを捉えず、相手の真意をくみ取り、配慮できる力ですよね。
小林 それがないとオンボーディング成功率はなかなか上がってこないと思っています。例えば、業務の割り振りを含めた運用設計が実は少しズレていて、Aという操作は営業にお願いしているけれど、実は工務にお願いすべき操作だった、というケースもあるのですが、なぜそうしたのかをメンバーに聞くと、「お客様の〇〇様がこういう発言をしたから」という言葉が出てくる。お客様の発言を文字通り受け取って提案しているけれど、少し深堀していくと実は違う意図がある場合もあるので、そういったクライアントごとの特殊なポイントをしっかり思考して、把握する必要があります。
また、細かい配慮も欠かせません。オンボーディングを実施する際、資料を見ながら説明会を進めていくだけでなく、システムが変わることに対して抵抗がある方に向けて、システムを入れると業務でどんな変化が現れるかというところまで伝えられる。そういった気遣いができるメンバーが活躍しています。
為房 他にも、お客様からの要望を受けて、実現できないことを「できません」と答えるのではなく、「なぜそれを求めているのか?」「今プロダクトでできないのであれば、代替案はないだろうか?」を考えられる人が多いと思います。言われたことに対して「Yes」か「No」で答えているだけだと、そこで止まってしまいます。私たちが扱うプロダクトに関しては、代替案が出せるかどうかはとても大事な要素です。
それには、人に対する興味、業務に対する興味があるかどうかが関わっていると思います。自分は何も知らないという意識を持って、分からないことがあればお客様に「それはなぜですか?」と聞いたり、先輩の商談後に「なぜこういう提案をしたんですか?」と質問できる。それによって活躍度が変わってくると思います。
──それは人に興味がないとできないことですよね。
為房 そうだと思います。あとは、自分の範囲を決めず、落ちているボールは全部拾う、というマインドの人も多いです。プロダクトがかたまり切っていないPMFフェーズなので、提案の型もまだ変更の余地があります。手探りで正解を見つけていくために、自分で考えながら動いていかないといけません。「これをやったら良さそう」「誰も手を付けていないから自分がやらなきゃ」と思って動ける意識が大事です。「ANDPAD引合粗利管理」と「ANDPAD受発注」はクロスセル製品だからこそ、セールス担当など、他部署メンバーと連携しながら動くことが多く、「自分はここまでしかやりません」と言っていると、目の前にいるお客様への価値提供が止まってしまいます。社内メンバーと一緒にコミュニケーションを取りながら、自ら手を挙げて業務を担おうとするマインドは結構重要なのかなと思います。
小林 確かに。きっとそれはオーナーシップを持っている人が多いからですよね。他にも、新人メンバーから質問を受けたら、そこに対してみんなが寄り添って数多くの事例を出し、「こういう理由から、こういう提案をしたよ」という会話が普段から飛び交っています。カスタマーサクセス一人ひとりがお客様の事業成功のための責任を負って、必死に考えているからこそ、オーナーシップが生まれているのだと思います。
──失敗を歓迎する風土も、そういったオーナーシップを育む要素の一つになっているのではないでしょうか。
小林 それはあると思います。チームごとに夕会などでメンバーとコミュニケーションを取る場があるのですが、そこで失敗事例をシェアすることもあります。失敗事例の共有はメンバーの学びにもなるし、本人も失敗した話を聞いてもらうことで心理的安全性も感じやすいと思っています。
そういった場での共有だけでなく、類似の案件が同じ要因で失敗しそうな案件があったときに、同じ過ちをしないよう先輩がサポートとして現場に入るケースもあります。こういった風土があるからこそ、新しいことに挑戦しようという意識につながっているのだと思います。