※こちらの投稿は実際にあったエピソードを耽美的・ポエティックに書いたものです。
電話帳の数字をひとつ見つめ、息を吸う。
一件目。
あっさりと断られる。
二件目も、三件目も、
受話器の向こうで音が途切れるたび、
胸の奥に静かなノイズが残る。
まるで、モノクロのフィルム。
自分の声だけが、淡く再生されていく。
でも、切らなかった。
受話器の向こうに誰もいなくても、
この“一本”が明日を変えるかもしれないと信じた。
昼過ぎ。
四件目。
受話器の向こうの声が、少しだけ柔らかかった。
言葉を重ねるうちに、
モノクロの世界に少しずつ色が戻ってくる。
「よく粘るね(笑) 一度、話してみようか。」
たった一言。
それだけで、世界が音を取り戻した。
――これが、“一件目”。
呼吸が深くなる。
心臓の音が、少しだけ速くなる。
机のメモに残った走り書き。
震えるペン跡が、確かに何かを掴んでいた。
…後半に続く。