はじめに
こんにちは。株式会社HajimariでCTOを務めている岡田幸紀(おかだ こうき)です。私はこれまで、北欧フィンランドでの開発チームの立ち上げや、Googleでのエンジニアの経験を経て、現在は人材業界のベンチャー企業HajimariでCTOをしています。
「なぜGoogleを辞めて、ベンチャーを選んだのか?」
その理由と、私がCTOとしてどんな開発組織を目指しているのかをこの記事ではお伝えします。特に、「AI時代の自走型チーム」というテーマに焦点を当てています。もし今、キャリアや組織の在り方に少しでも疑問を感じているなら、この記事が何か新しい視点を得ていただくきっかけになれば幸いです。
Google時代
根底にある価値観 「安定」よりも「成長」を
私のキャリア選択は、常に一つのシンプルな問いに基づいています。
「安定か成長か?」
そして、私は迷わず成長を選びます。
成長は、コンフォートゾーンを抜け出し、不馴れな環境に身を置くことで促されるものだと考えています。新しいことにチャレンジすれば、最初は上手く行かないことばかり、失敗だらけでストレスも溜まります。しかし、そういう状態でなければ人は本質的には成長しない。そう考え、あえて安定を捨てて、挑戦の側に身を置いてきました。
この価値観が形成されたのは、19歳の時に経験した大きな交通事故です。1ヶ月の入院期間の中で半生を振り返り、「人は簡単に死ぬ。後悔はしないように生きよう、常に成長を目指そう」と固く心に誓いました。それ以来、安定よりも成長を目指し、挑戦的な環境に躊躇せずに飛び込んできました。海外に挑戦したことなど、自分が取った「成長のための選択」を後悔したことは一度もありません。
今回のGoogleからベンチャーへの転職も、私にとっては特別なことではなく、ごく自然な「成長のための選択」だったのです。
私がHajimariにジョインした、3つの理由
その上で、なぜ「Hajimari」という会社だったのか。理由は3つあります。
1つ目の理由:ビジョンへの深い共感
最大の理由は、代表の木村と出会い、「自立した人材を増やし、人生の幸福度を高める」というHajimariの企業ビジョンと自分の原体験が重なったことです。
フィンランドの街並み
私は7年間フィンランドに住んでいましたが、日本との間に大きなギャップを感じていました。海外に出ると、日本の良さに改めて気づきます。ご飯は美味しいし、電車は時間通りに来る。人々も穏やかで心優しい。製品やサービスも一つ一つの品質が本当にしっかりしている。それなのに、海外に比べて日本の人々は何故か幸福感が少なく、必要以上にお互いに傷つけ合っているように感じることがありました。世界幸福度ランキングでフィンランドが常に1位なのに対し、日本は50位や60位あたりを推移している事実も何となく理解できました。
世界幸福度ランキング
「これほど良い国なのに、なぜみんな幸せそうではないのだろう」その理由を考える中で、一つの仮説にたどり着きました。
それは「人々の自立」の差ではないだろうか?
日本は会社や家族など、何かの集団やコミュニティに強く依存し合いながら生きている側面があるように思います。一方で、北欧の人々は一人ひとりが個人主義で自立している。自立しているからこそ、自分の人生に自分で責任を持っている。そういった北欧の価値観と、「Hajimari」が目指しているビジョン「自立した人材を増やし、人生の幸福度を高める」との間にとても近しいものを感じ、強く共感を覚えました。
2つ目の理由:チームメンバーの「人間力」と無限の可能性
ビジョンだけでなく、実際に働く「人」も大きな決め手でした。
意思決定するまでの過程で開発メンバー全員と1on1をさせてもらいましたが、本当にみんなの人間力が高く、未来志向な人たちばかりでした。
Hajimari開発メンバー
例えば「小さい頃に育ててくれた親に感謝している」や、「地域のために何か貢献したい」といった話が自然に出てくるんです。若い時は自分のことばかりを第一に考えるのが普通だと思いますが、家族や地域社会といった周りのことにも目が向いている。本当に素晴らしいメンバーだなと思いました。もちろん良いことばかりだけでは無くて、例えばGoogleの様なビッグテックと比べて技術力や組織力など、まだまだ洗練されていない部分もあります。だからこそ「自分が入ることで、この素晴らしいチームをもっと良くできる」という貢献のイメージが明確に持てたのです。
3つ目の理由:「日本の未来図」である人材業界の成長ポテンシャル
日本の少子高齢化による労働人口不足は、私が長年過ごした欧州とも共通する社会課題です。欧州では、女性の社会進出、活発な転職市場、フリーランスの活用などが進んでおり、人材の流動性を上げることで社会全体で労働人口不足を補おうとする動きがありました。日本でも今後欧州のように人材流動性が高くなっていくことはほぼ間違い無いと感じておりますし、その変革の中心である人材業界の成長に大きな可能性を感じました。特にHajimariが展開する、フリーランスと企業のマッチング事業は、まさにこれからの日本の「働き方」をアップデートしていくものであり、エンジニアとしてその中核を担えることにワクワクしたのです。
女性の社会進出が進む北欧(イメージ)
私が目指す 「自走型組織」
CTOとして私が目指す組織の姿は、一言で言うと「自走型組織」です。
私が細かく指示するのではなく、メンバー全員が自分たちで考えて「良い」と思うことをどんどん実践していく。究極的には、マネジメントが不要になる組織が理想です。では、どうすればそのような自走型組織が実現できるのか。
・全員が同じ目的・ビジョンを深く共有できていること
・互いに信頼し合い率直な意見交換が出来ること
・全員が強いリーダーシップを持っていること
加えて、私が特にこだわって根付かせようとしているのが「最上主義」、つまりみんなが常にベストを目指す文化です。
- 「スタートアップだから、自分たちは一流のエンジニアにはなれない...」
- 「自分たちは良いサービスは開発出来ない...」
こうした考えは、単なる思い込みに過ぎません。私は、本気で全員にGoogleのエンジニアにも負けないようなエンジニアになってほしいと思っています。「最上主義」という高い基準を全員が共有して初めて、個々が自律的に考え、行動する力が生まれるものと考えています。例えば、自身のプロジェクトや事業に強いオーナーシップを持ったり、徹底した品質基準を策定・順守したり、最先端のAI技術を導入したり、自動化や効率化のプロセスを常に改善し続けたり、スキルアップへの飽くなき追求を持ち続けることが「最上主義」の表れです。
Google勉強会にて
そのために、まずは「一流」に触れる機会を設けることが手っ取り早いと考え、Google時代の元同僚たちのエンジニアチームに勉強会を定期的に開催いただいています。去る2025年5月にはHajimari社としてGoogle Cloudの公式パートナーにご認定いただき、さらに活発に交流の機会を持たせていただいています。実際に一流の技術や考え方に触れることで、メンバーの意識は変わり、以前にも増して主体的に学び、動いてくれるようになりました。
大企業では、文化を変えるのに何年もかかりますが、ベンチャーではこうした本質的な文化の変革も数ヶ月で実現できる。このスピードこそが、私たちが「自走型組織」という理想に最速でたどり着くための、最大の武器だと感じています。
AI時代の開発組織とエンジニアに訪れる未来
そして「自走型組織」を語る上で、避けては通れないのがAIとの共存です。
巷では「AIに仕事が奪われる」といった否定的な見方をされがちですが、私は全くそうは思いません。むしろAIを使いこなせば、生産性が格段に向上し、将来的には「1人1プロダクト開発」が実現できると考えています。それは、一人の人間がAIを駆使して、プロジェクトリードから、企画、仕様定義、設計、プログラミング、テストまで全ての役割を担う。Gemini CLI、Claude Code、CursorのようなAI開発ツールを当たり前に使いこなし開発ライフサイクルを一人で高速で回すイメージです。そうすれば、全員がプロダクトマネージャーとなり、少人数でも複数のプロダクトを並行開発することが出来て、一人当たりの事業収益が格段に向上し、それはやがて社員一人ひとりの待遇の改善にも繋がると考えています。
一方で、「AIによる開発は品質が低いのでは?」、「AIで自動化して任せてしまうのは不安」と懸念する声を聞きます。私はそれを「回転寿司」と「高級寿司」のような違いだと考えています。
回転寿司は登場当初は衛生面、味、イメージの課題などがあり、市場規模は大きくなかったそうですが、今では品質が上がり、当たり前のものとして消費者に受け入れられています。いまや市場規模では既に高級寿司を上回っているそうです。私はこれと同様に、ソフトウェア開発も自動化が進み、いずれAI中心の開発の方がメインストリームになると考えています。
では、人間のエンジニアは不要になるのか?
いいえ、高級寿司の需要がなくならないように、人間による開発の価値は形を変えて残るはずだと考えています。ここから、エンジニアのキャリアは大きく二つの道に分かれていくのでは無いか、そんな風に考えています。
一つの道は、AIを大いに使いこなし、生産性を最大化する一人プロダクトマネージャーとしての道。こちらを勝手に回転寿司モデルと例えます。もう一つの道は、AIには書けない高度で芸術的・独創的なコードを極めていく職人の様なシニアエンジニアとしての道。こちらは高級寿司モデルと例えられるかも知れません。
残酷な言い方ですが、「簡易なコードを書けるだけ」のジュニアエンジニアの価値は、相対的に下がっていくことが考えられます。しかし、「AIには書けない創造的なコードが書ける」シニアエンジニアの価値は、むしろ上がっていくと考えています。だからこそ、私たちの組織では、ジュニアエンジニアで留まるのではなく、プロダクトマネージャーなのか、シニアエンジニアなのか、そのどちらかの道を極めていくキャリアを明確に提示したいと考えていますし、これは決して遠い未来の話では無いとも考えています。すでにAIを活用したコード開発は当たり前になりつつあり、この流れは今後さらに加速していくことが予想されます。だからこそ、今から明確なキャリアの方向性を持って、それに向かって最上主義で成長を目指していくことが重要だと思うのです。
今、一歩を踏み出せないあなたへ
ここまで長い文章を読んでいただき、本当にありがとうございます。もし今、あなたが現在の環境にモヤモヤしていたり、挑戦したいけど一歩を踏み出せずにいるなら、考えられる「小さなアクション」を起こしてみてほしいと思います。私自身、19歳の交通事故以来、「後悔しない成長の人生」を送ることを最優先にして、何か自分にできることをと考え行動してきました。その結果として、フィンランドで開発拠点を立ち上げる機会や、Googleでエンジニアとして最先端の技術に触れられる経験や、また今回成長が期待される有望なスタートアップHajimariでCTOをお任せいただくという機会をいただくことができました。
自分自身もそうでしたが、行動できない人の多くは、「自分には合っていない」とか、「きっと失敗してしまう」という、自分自身による「決めつけ」に縛られているのではと考えています。自分の限界を決めているのは、自身のメンタルブロックに他なりません。
もちろん、全ての人がチャレンジングな環境に身を置く必要は無いと考えますし、安定を求めることが悪いはずがありません。ただ、もし「安定よりは成長したい」という気持ちがあるなら、その気持ちを大切にして行動されると良いのかなと思います。
私が今いるHajimariという企業は、業界トップでもなければ、長い歴史と伝統がある会社でもありません。会社自体が挑戦者なのです。
Hajimari 10周年パーティにて
逆に言えば、失うものは何もありません。
若手であろうと関係なく、成長を望む人、新しいチャレンジをしたい人に機会を与えることが出来ます。これほど良い環境はないと信じています。Hajimariで働くことにご興味をお持ちいただいた方は、ぜひ採用ページを覗いてみていただければと思います。
この記事が、あなたの「後悔しない人生」のための一歩を踏み出すきっかけになれたら、これほど嬉しいことはありません。