株式会社NonaCanvas / 代表取締役・エグゼクティブコーチ
日本経済新聞「NIKKEI The STYLE」文化時評に取材・掲載
2025年11月9日、日本経済新聞 日曜版「NIKKEI The STYLE」の文化時評「AIが深める日本人の孤独 悩みが切実であるほど、人を頼れない憂鬱」に、エグゼクティブコーチとして取材・掲載されました。 2025年は、経営者や社長であるクライアントの皆さんと対話する中で、生成AIへの相談が当たり前になったからこそ起きる新しい経営課題を何度も目にしました。 AIに相談すると、論理的で、もっともらしく、実行できそうな答えがすぐに返ってきます。一方で、その答えが「その会社に本当に必要なことなのか」「経営者自身が本当にやりたいことなのか」までは、自動的には担保されません。 実際、クライアントの中でも、AIとの対話を続けるうちに、自社の本質的な課題から少しずつ離れ、やらなくてもいい施策や、今は考えなくてもいいテーマについて2時間、3時間と考え続けてしまうケースが増えていました。 私自身も、まったく同じ失敗を経験しました。 ある時、「SEOをもっとやった方がいいのではないか」と思い、生成AIに相談したところ、「野中さんはSEOを絶対にやった方がいい」と背中を押されました。そこから約3週間、SEO施策について調べ、考え、かなりの時間を使いました。 しかし、その後メンターとの対話の中で、 「野中さんのお客様って、そもそも検索して探す人なんですか?」 と聞かれました。 その一言で、自分がかなり優先順位を間違えていたことに気づきました。 SEOそのものが悪いわけではありません。AIの回答が間違っていたとも限りません。ただ、当時の自分にとって本当に重要だったのは、「一般的に有効な施策は何か」ではなく、「自分の顧客は誰で、どういう経路で出会い、自分はどんな価値を届けたいのか」という、もっと根本的な問いでした。 AIは非常に優秀です。だからこそ、相談すればするほど、ロジカルで筋の通った「正しそうな選択肢」が大量に出てきます。その結果、経営者自身の違和感や直感、本来の強み、顧客との関係性よりも、“正しそうな答え”に引っ張られてしまうことがあります。 日経新聞の記者の方には、こうした現場での実体験をもとに、 「AIに相談しやすくなった時代だからこそ、自分の本音や違和感を人に話すことの価値が高まっている」 「経営者がAIを使いこなすには、AIから答えをもらうだけでなく、自社の本質や優先順位へ戻してくれる対話相手も必要になる」 という話をさせていただきました。 私自身、2020年から継続的にコーチングを受けてきました。コーチとの対話を通じて、数字やロジックだけではなく、「なぜか気になる」「本当はやりたくない」「こっちの方がワクワクする」といった、まだ言葉になっていない感覚も経営判断の材料として扱うようになりました。 AIが高度になるほど、情報整理や仮説生成はAIに任せられるようになります。一方で、「そもそも何を考えるべきか」「自分は本当はどうしたいのか」「この会社らしい選択は何か」を一緒に問い直す、人間同士の対話の価値はむしろ高まっていく。 そんな問題意識を、現場の一次情報と自分自身の失敗体験を交えてお話しした取材でした。 このテーマは現在のエグゼクティブコーチングや、YouTube「AI時代のコーチングラジオ」での発信にもつながっています。AIを否定するのではなく、AIを積極的に使いながら、人間の違和感・本音・直感も失わない。そんなAI時代の経営と対話のあり方を、これからも考え続けていきたいと思っています。

