「BOTCHAN AI」や「BOTCHAN AICALL」など、生成AIを活用したプロダクト開発に力を入れているwevnal。プロダクト開発のみならず、業務においても生成AIの活用を積極的に行っています。
今回は、wevnalの既存プロダクトの事業戦略、セールス、マーケティングを管掌するCOOの久川さん、AIを活用した事業開発を担う森川さんによる対談を実施。それぞれの立場から見る、生成AIの可能性や今後の取り組みについて語ってもらいました。
目次
- 火種は2018年、確信は2025年。AIで組織を動かした二人の軌跡
- もはやAIは“研究仲間”。ビジョン起点でネタを生み出す日々
- AIに頼る部分と、人間に残された価値を見極めること
火種は2018年、確信は2025年。AIで組織を動かした二人の軌跡
──お二方それぞれが管掌しているチーム・事業の概要、またそれぞれの現在のフェーズを教えてください。
久川さん(以下、久川):私は現在、wevnalが提供しているプロダクトのうち「BOTCHAN Payment」「BOTCHAN EFO」「BOTCHAN Engagement」の事業戦略全般を担っています。また、マーケティングとセールスチームの統括も任されており、両軸で事業推進を行っているところです。
BOTCHAN Paymentは、「チャットボットといえばBOTCHANだよね」と業界でも受け入れられるような、成熟したプロダクトに成長してきたと感じています。BOTCHAN EFO、Engagementは、直近ではD2C以外の業界にアプローチをして伸ばしている最中のプロダクトです。これまでと業界もクライアントの規模感もガラッと変えて、エンタープライズ向けのセールスにも力を入れている段階です。
森川さん(以下、森川):私は0→1フェーズの新規プロダクト「BOTCHAN AI」「BOTCHAN AICALL」の2つを担当しています。どちらもAIを用いてコミュニケーション領域を再現性高くアップして、コスト削減およびCVR向上につなげるプロダクトです。現在、まさにマーケットを作りに行っている最中ですね。
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──AIに本格的に取り組み始めたのは、いつ頃から、どのような流れだったのでしょう?
森川:AIというキーワードが世間に出始める前の2018年頃から、実はAI領域×チャットボットへの挑戦はしていたんです。しかし当時は、wevnalのプライシングモデルとマッチしなかったこともあり、上手くいかなかったのが現実でした。それが言うなれば第一フェーズ。
第二フェーズとして、ChatGPT3.5が出始めた2023年11月頃から改めて触り始め、2024年3月あたりからPoCとしてスタート。当時は社内の5名くらいでAIを触って、プロダクトの再構想をしていました。
その後2025年1月頃から、組織としてもAIを使っていく流れになっていったんです。会社として初めてAIの研修を実施したのもその頃です。研修を行うと同時に、業務の中でAIを使える環境を整えていきました。たとえば、Slack上でAIについて積極的にシェアできるようなチャンネルを作ったり、業務でAIを利用したら「使ったよ」ボタンを押してもらうように仕組みを整えたり。それにより効果が可視化され、組織としても盛り上がりを見せていったと思います。
そこに久川さんが「これはいけるぞ」と匂いを嗅いでくれ、現在は全社としてAIを通して目指したい状態を定めて歩き始めたところです。たとえば、全社のOKRとしてもAIを通した業務の総削減時間を設定するなどしています。
久川:こうやって辿ると懐かしいですね。
最初にAIの火を付けてくれたのが森川で、企業として体現するにはどうすればいいのか、全社の目標として何を置くべきなのかとよく話してきました。企業として取り組むには、何よりも経営陣が本気にならなければならない。そのため、今では必ず毎回の全社会でもAIの活用について取り上げるようにしています。
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──久川さんが全社として取り組んでいくゴーサインを出したタイミングには、何か背景や意図があったのでしょうか?
久川:最初は、森川をはじめとする一部のメンバーでいろいろなツールを試すところから始まりました。いろいろ共有し合う中で、少しずつ様子を見ていった感覚です。次第にAIに興味があるメンバーも増えてきて、メンバーが使う様子からも確信を得て、次は組織全体で取り組んでいこうと舵を切りました。
──その後から現在までで、全社としての浸透はいかがですか?
久川:Slack上にも「AIを使ってみた」といったチャンネルができて、できる人を中心に積極的にAIのあれこれをシェアしていくカルチャーができてきましたね。とはいえ、最初はできない人や分からない人が大半。やりたいことがあっても、何をどうすればいいのか分からない人がほとんどなんですよね。そこで、AIの使い方を気軽に聞いたり手助けを求めたりできるチャンネルができました。「こんなプロンプトは作れないのか」「資料作成に活用するのはどうすればいいか」などを気軽にコミュニケーションできるようになりましたね。
そうして、以前は「何かあれば森川さんに聞いてみよう」となっていたところから、だんだん組織内でコミュニティ的に回せるようになっていったと思います。
森川:属人化を排除できたことは個人的にもありがたく感じていますし、組織としてもそちらのほうが強くなっていくのではないかと思います。いい傾向ですよね。
もはやAIは“研究仲間”。ビジョン起点でネタを生み出す日々
──AIを活用することで事業にはどんな変化がもたらされましたか?まずは既存事業を中心に担当する久川さん、いかがでしょうか?
久川:セールス、マーケティングはかなり効率化できたと感じています。たとえばセールスは、これまで1日ほどかけていたデータ収集・整理が10分ほどでできるようになりました。そのぶん、整理したデータをどう活用するのかというウェットな作業に時間を割けるようになった感覚があります。セールスとして、AIが発展しても残るであろう人間の業務にすでにしっかり振り切れているのではないかと思うのです。
プロダクト単位では、たとえばBOTCHAN Engagementであればプッシュ配信のパターン出しなどにもAIを活用しています。圧倒的に速いかつ自分では思いつかないパターンも出せるのでとても助かっていますね。
──森川さんは新規事業の立ち上げにもAIを活用されたと聞いています。
森川:予算も人もいない中で新しい芽を育てなければならない新規事業開発で、「人手が欲しければAIを使おう」という姿勢でチャレンジを試みました。クライアントの課題・ニーズの整理から最小単位のプロダクト設計、開発要件定義までをAIに書かせて、それをさらにAIのモックアップツールに打ち込んでデモを作成。ここまで、まだエンジニアは出てきていません。できたデモをもとにクライアントにフィードバックをもらい、ブラッシュアップしていきました。
ここまでを約1ヶ月で終え、その後2ヶ月ほどでエンジニアに形にしてもらいました。AIをフル活用することで、プロダクトや事業を作るプロセス自体が破壊されたという印象を覚えましたね。
──その他に、AIを活用している中で特に役立っている部分・助かっている部分について教えてください。
久川:個人的には、AIとよく喋っていますね。打つより喋るほうが早いし、インタビュー形式にしてもらってAIに問いを立てられることで、自分自身の思考が整理され、なんとか答えを導き出そうとするんですよね。とりあえず喋ってアウトプットしたものをNotebookLMでまとめて、自分の考えをNotionに溜めていく作業をしています。
森川:個人としては、私も久川さんと同じ使い方をしています。先ほどお伝えしたBOTCHAN AICALLを作る過程もまさしくそうでした。
wevnalのビジョン「コミュニケーションをハックし、ワクワクするブランド体験を実現」をぶらさなければ、事業のネタになりそうなことは他にもたくさんあると思っています。新たなネタになりそうなものを、いろいろなAIツールを組み合わせながら自由研究的に作ってみる、ということもよくしていますね。
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AIに頼る部分と、人間に残された価値を見極めること
──AIによって、これからのサービスの提供価値にはどんな変化が起こると考えていますか?
森川:最終的には、マーケティングとセールスにどれだけ胆力を込められるかだと思っています。私たちのビジネスはBtoBtoCで、最終的には企業の担当者がこのサービスを使いたいと思うかどうかが決め手になります。となると、wevnalのセールスに対して「この人と仕事をしたい」というロジックと感情が生まれるかどうかが大事なんです。
そう思ってもらえるサービスを提供するためにも、決めたカテゴリに対してマーケティング予算と人的資本をどれだけ充てていけるか。それが、今後勝ち残っていくために重要なのではないかと思います。
そのために、たとえば0→1フェーズのプロダクトであれば、ジュニアエンジニアを雇うことなく最小限の人数でまずは作り上げる。それから、そのぶんセールスにしっかりと投資をするという方法もあると思います。
CSであれば、プロダクトの改善サイクルはAIに任せられる仕組みを作りたいですね。とはいえCSという役割がいらなくなるわけではなく、AIに任せられるところは積極的に任せつつ、人に残された価値にリソースを割いていきたいです。
──最後に、「AIを使いこなす組織」として、今後大切にしていきたいことを教えてください。
森川:AIツールが数ある中で、目的と手段がちゃんとリンクするように情報収集していくことが大事だと考えています。あとは、今の時点で知識がないのは問題ないので、怖がらずにまずはどんどんトライしていこうよというスタンスも大事ですね。
人間に残された価値として大事になってくるのが、問いを立てる力。AIを使うにしても、必ず最初は人間から問いを立てる必要がありますからね。そして、複数出た課題をどの順番で解いていく必要があるのかを決める力と、決めたことを最後までやり切る力も大切になってくると思います。
久川:経営目線でお話しすると、経営陣が誰よりもAIの可能性を信じなければならないと思っています。経営陣が一番詳しくなくてもいいですが、価値があるものだということは一番に理解しておかなければならないなと。
他の経営者と話していても、一度AIを難しいと感じるとそのまま触らなくなる人が多いように思います。もったいないなと思うんですよね。私たちには、幸いにも森川のようにAIと向き合い続けてくれる人が近くにいました。だからこそ可能性を信じることができたし、掬い取ることもできた。とてもありがたいです。今後もそういった最前線を走る人たちからのメッセージをちゃんと受け取って、前に進めていく姿勢を持ち続けることが大切なのではないかと思います。
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取材協力:CASTER BIZ recruiting