こんにちは!ウォンテッドリー コーポレート担当執行役員の兼平(プロフィールはこちら)です。
今回は、最近話題のNFTとスニーカーについて見ていきたいと思います。
現在、ウォンテッドリーでは従業員エンゲージメント領域に力を入れており、Engagement Suiteの正式版を先日ローンチしたばかりです。一方で、新規事業のタネ・ビジネスチャンスの探索、新しい技術やトレンドが経営環境に与える影響の把握などを日々行っております。今回のテーマは社内のメンバーとの雑談で話題に挙がったものです。リモートワークだとなかなか難しいですが、雑談ってやっぱり大事、と思う今日このごろです。
NFTとは
NFT(Non-Fungible Token)とは、代替可能性のないトークンでブロックチェーン上で発行されます。コピー、偽造できない証明書が付与されたデジタルデータとも言え、ユニークなデータの作成が可能になりました。それにより、デジタルなデータは無料で簡単にコピーをできるという概念を変え、デジタルデータに資産価値を付与できるようになることが期待されています。実際にデジタルアートやトレーディングカードが売買されています。最大級のマーケットプレイスであるOpenSeaを見ると、実に様々なコンテンツ(NFT)がやり取りされており、日本人アーティストの作品が1,000万円以上で落札されるなどのニュースも出ています。
https://opensea.io/
バーチャルスニーカーが売れる
一部のスニーカーの人気の高まりから1990年代には路上で靴を奪われる「エア・マックス狩り」という言葉がありましたが、現在ではスニーカーブームは世界中に拡がり、投機目的の購入も増えているといいます。これを支えているのがStockXで、スニーカーを中心に服や時計、トレーディングカードなどの売買が行えるマーケットプレイスを運営しています。StockXは2020年には750万件以上の取引を行い、流通取引総額(GMV)は18億ドル、グローバルでのサイト訪問者数は2億人以上に成長しています。
株式市場のようにこれまでの取引実績をチャートで公開し価格の透明性を高め、本物かどうかの真贋判定を行うことで取引の品質を保証したことが取引拡大を支えています。
https://stockx.com/news/ja-jp/current-culture-index-2021-ja-jp/
実物のスニーカーが1足10万円、100万円という価格で取引される一方で、NFTを活かしたバーチャルスニーカーも売れるようになっています。実際に履くことはできないバーチャルスニーカーですが、実物のスニーカーであっても履かないコレクターはいるので、バーチャルでも問題ないということでしょうか。バーチャルスニーカーでも100万円以上の値がつけられているものもあり、市場の盛り上がりを感じる一方で、投機的な価格への懸念もあります。
NFTの法的な位置づけ
暗号資産(仮想通貨)については資金決済法などで規制されていますが、NFT上のアートやバーチャルスニーカーに対する権利関係については扱いが曖昧です。
民法上では、所有権は有体物に対してのみ発生するとされているため、デジタルデータであるNFTには所有権が観念できません。よって、NFTの取引にあたっては具体的に何を取引しているのかをしっかり考慮する必要性があります。
実際に、前述の日本人アーティストの作品自体も検索で簡単に見つけ出し鑑賞することができますし、バーチャルスニーカーも同様です。
しかしながら、新しい技術、新しい価値観に法律が対応していなくとも、実際に市場が形成され既に多くの取引が発生しているケースは多々あります。
現状では投機的な側面があるかもしれませんが、様々な作品が生み出され、それに価値を見出し実際に取引が行われている現状は正しく認識しておく必要があります。
ビジネスにおいても、現状の法律・規制の中で正しく行うことは重要ですが、技術革新や環境変化によってユーザーが得られる価値が大きくなるのであれば、ルール自体をより良い方向へ変えていく議論は必要です。
最近ではスタートアップでもPublic Affairs領域に力を入れる企業が増えてきているのがその事例と言えるでしょう。ウォンテッドリーでもユーザーにとってよりよいプロダクトにするため、各省庁が主催する検討会や委員会への参加、規制省庁との定期的な情報交換、グレーゾーン解消制度の活用などを通じて、継続的にルールそのものの創造や提言を進めています。
NFTの会計処理
前述の通り暗号資産(仮想通貨)は資金決済法で規制されているため、会計基準についてもそれに準拠した形で「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する 当面の取扱い」が公表されています。誤解を恐れずに簡略して言うならば、市場価格が存在する場合は時価評価するということになります。また、購入目的によって勘定科目が変わることにも注意が必要です。
一方で、NFTについては、そもそも資金決済法に定める暗号資産なのかどうかの判定から検討する必要があります。取引実態によっては、有価証券、ポイント、為替、前払式支払手段などと捉えられるケースもあります。
また、デジタルトークンという特殊な性質は持つものの、アートとして検討することも可能かもしれません。その場合、税務上は100万円未満であれば減価償却資産にできます。
会計上、税務上ともに多くの検討すべき事項を有していることからも、法的な位置づけ同様に未整備の部分が多いと感じます。
ウォンテッドリーでは、上場しており会計監査を受けているため会計基準をしっかり遵守するのは当然ですが、取引の実態を正確に表すことができる処理を行うことが大切だと考えています。そのため、監査法人に指摘される処理を鵜呑みにするのではなく、事業内容、価値の内容を正しく伝え、必要であればプロダクト上の特徴も共有することで相互理解を図っています。
最後に
今回は雑談をきっかけに、事業に関連の無いNFTについて調べてみました。このような多くの論点があり、様々な解釈ができる素材を考えてみると、日頃の業務の根底に横たわっている思想を再確認できるのが良いことだと感じました。メンバーそれぞれがどういう想い、考え方を知るきっかけづくりとして、みんながフラットに話せる題材は大切ですね。
NFTについて議論を戦わせたい!Public Affairs領域に興味があるんだけど、という方がいたらぜひお話しましょう!
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