福利厚生は、制度として用意されているだけでは届かない。日常的に使われ、従業員の役に立ってはじめて意味を持ちます。
一方で、福利厚生サービスには「導入されていることは知っているけれど、実際にはほとんど使ったことがない」「気づけば使わなくなっている」といった課題が長くありました。
ウォンテッドリーが2020年から提供している「Perk(パーク)」は、そうしたあり方をアップデートするために生まれた、パッケージ型の福利厚生サービスです。
Perkが目指しているのは、単にお得な特典を届けることではありません。福利厚生を、企業と従業員の信頼関係を育てるものへと変えていくこと。その理想に向けて、Perkはこの数年間、特典数の拡充、プロダクト体験の改善、顧客の声を起点にした機能開発などを、一つひとつ積み重ねてきました。
華やかなビジョンだけでは、事業は前に進まない。遠くにある理想を見据えながら、目の前の課題をひとつずつ解いていく。その泥臭さまで含めて、Perkという事業のおもしろさがあります。
今回は、Engagement Suiteの事業責任者である橋屋、Perkのプロダクトマネージャー小関に、Perkがどのような背景から誕生したのか、現在向き合っている課題、プロダクトづくりへのこだわり、そしてビジネス・開発それぞれの視点から見たPerkチームで働く醍醐味について聞きました。
登場人物
写真左:Engagement Tribe / Tribe Leader /事業責任者 │ 橋屋 優理(はしや ゆたか)
2009年4月、シャープ株式会社に新卒入社。法人営業や営業企画を経験したのち、エムスリーキャリアへ転職し、医師領域の人材紹介事業に従事。HR系スタートアップ2社では新規事業の立ち上げを経験し、2022年にウォンテッドリー株式会社に参画。現在は、同社が展開する福利厚生サービス「Perk(パーク)」、モチベーション・マネジメントツール「Pulse(パルス)」、社内報プラットフォーム「Story(ストーリー)」の3つのプロダクトを管掌する、Engagement Suite事業の責任者を務めている。
写真右:Engagement Growth Squad / Product Manager │ 小関 弾(こせき はずむ)
早稲田大学商学部卒業後、アビームコンサルティングに入社し、ITコンサルタントとしてシステム導入の要件定義や業務プロセス改革に従事。その後グッドパッチにてグロースや新規事業立ち上げにおけるPdM・UXデザインを経験し、2025年6月にウォンテッドリーに入社。Engagement Growth Squadにてプロダクト戦略策定や施策の遂行を担う。
「使われない福利厚生」に、ウォンテッドリーらしいプロダクト体験を持ち込む
──Perkがスタートした2020年当時、福利厚生サービスにはすでに大手プレイヤーが存在していました。その中で、ウォンテッドリーがこの領域に参入した背景を教えてください。
橋屋:当時の福利厚生サービスは、もともと特典の数や提携先の幅広さを強みにしているものが多く、企業にとっても従業員にとっても、一定の価値を提供している領域でした。
一方で、サービスが導入されていても、従業員に十分に活用されていないケースも少なくありませんでした。使える特典があっても、日常の中で自然に使われる体験になっていない。そこにはまだ、改善の余地があると感じていました。
ウォンテッドリーはこれまで、採用サービスを中心に、プロダクトの使いやすさやデザイン、体験づくりに強くこだわってきた会社です。福利厚生の領域でも、そうしたプロダクトづくりの視点から、新しい価値を提供できるのではないかと考えていました。
現在のPerkのトップページ
──既存の大手サービスがある中で、当初のPerkは、何を強みにしていたのでしょうか。
橋屋:当時のPerkの強みは、プロダクトとしての使いやすさやウォンテッドリーらしい世界観にあったと思います。
Perkは、福利厚生サービスの中でも「パッケージ型」のサービスに該当します。パッケージ型の福利厚生サービスは、優待を受けられるサービスや特典を集め、それをお得に使える形で提供するものです。つまり、特典数や使えるサービスの多さがかなり重要になります。
その点でいうと、当初のPerkは既存サービスに比べて、物量には大きな差がありました。率直に言うと、福利厚生サービスとして提供できる価値は、まだ十分ではなかったと思います。
それでも、まだ使える特典が少なかった時期から、画面のデザインや使い心地に対して、「今までになかった」「ワクワクする」「すごく使いやすい」と言っていただくことがありました。提供できるものが限られていた段階でも、そうした反応をいただけたことは、Perkにとって大きかったと思います。
UI/UXだけでは「Perkにしかできない価値」とは言えなくなってきた
──当初から現在にかけて、市場や競争環境にはどのような変化がありましたか。
橋屋: 当時は、新しく福利厚生サービスに参入する企業はまだ限られていました。しかし現在は、この領域で新たに事業を展開する企業も増えています。
当初はUIの使いやすさで評価をいただいていましたが、今はそれだけで「Perkにしかできない価値」とは言い切れなくなってきています。
だからこそ、私たちがどんな独自のポジションを取るのかを、改めて考える必要があります。
──では、現在の「Perkにしかできない価値」とは何なのでしょうか。
橋屋: 正直に言うと、まだ「絶対にこれだ」と決めきれているわけではありません。プレイヤーが増えてきている分、独自のポジションを見つける難易度は上がっています。
その中で改めて考えているのが、ウォンテッドリーがこれまで採用領域で向き合ってきた「共感採用」というテーマとPerkの価値をどう接続できるか、ということです。福利厚生サービスを提供する企業の中で、採用サービスも展開していることは、ウォンテッドリーならではの強みだと思っています。
私の解釈では、「共感採用」の本質は、企業と従業員が信頼関係を築いていくための起点をつくることにあります。採用の段階で、お互いの価値観や目指す方向をすり合わせることが、その後の関係性の土台になっていくと考えています。
福利厚生は、「働きやすさ」や「従業員が喜ぶかどうか」という文脈で語られることが多い。もちろんそれも大事な要素ではありますが、採用の段階で生まれた共感を、入社後の信頼関係につなげていくものとして福利厚生を位置づけられると「Perkらしい価値」になるのではないかと考えています。
──「企業と従業員との信頼関係をつなげるもの」として、福利厚生を位置づけていきたいと。
橋屋: はい。福利厚生は、会社が従業員にどう向き合っているのかが表れる接点でもあると思います。
どんな特典を用意するのか。どれだけ使いやすく届けられるか。誰にとっても公平に使えるのか。そうした一つひとつに、会社の従業員への配慮や思いやりが表れる。
福利厚生は単なるオプションやツールとして見られがちですが、本来は、従業員に対して会社がどう向き合っているのかを伝えられるものでもあると思っています。
福利厚生で信頼を育てるために必要な「日常性」と「公平性」
──その信頼関係を福利厚生で支えるために、Perkではどのようなことを大切にしていますか。
橋屋: 信頼関係を構成する要素としては、「信用」「尊重」「公正」「誇り」「連帯感」があると言われています。
これらを福利厚生で実現するため、Perkとして大事にしているのは「日常性」と「公平性」、そして企業が掲げるパーパスとの連動です。加えて、従業員への配慮や思いやり、つながりの創出も重要になります。
たとえば、公平性は、福利厚生が誰にとっても使いやすいものであることにつながります。また、福利厚生の中でコミュニケーションが生まれる仕掛けをつくることができれば、従業員同士の連帯感も構築できる。
その前提として特に大切になるのが、日常性です。まずサービスが使われるものでなければ、福利厚生を通じて会社の思いやりや配慮を届けることは難しいと考えています。
──なぜ、日常的に使われることが重要なのでしょうか。
橋屋: 福利厚生サービスのシンプルな課題は、そもそも利用されにくいことだと思っています。どれだけ会社が制度を用意しても、従業員に届いていなければ、会社からの配慮として受け取られにくい。
だからPerkでは、この4年間、日常性や利用率を大事にしてきました。
今後さらに取り組んでいきたいのは、企業のパーパスとの連動や、従業員への配慮・思いやりをより具体的に届けることです。そこまでできるようになると、従業員は会社のことを好きになると思うんです。
「この会社でよかった」と思えたり、いい福利厚生があれば友人に自慢したくなりますよね。Perkを導入することで、そういうことが起こるといいなと思っています。
“探せる人”だけでなく、“受動的な人”にも届くプロダクトへ
──プロダクトづくりの面ではどのようなことを意識しているのでしょうか。
小関: いろいろな年代層や、利用への温度感が異なる人たちが使うサービスであることは、かなり意識しています。
福利厚生サービスには、自分に合う特典を探して使うという性質があります。そのため、ポイ活やクーポン探しが得意な人とは相性がいいんです。
一方で、実際には自分から積極的に探しに行く人ばかりではありません。多くの人は「教えてくれれば使う」という、どちらかというと受動的な使い方になると思っています。
だからこそPerkでは、自分から探しにいける人にとって使いやすいだけでなく、受動的な人にも自然に情報が届く状態をつくりたいと考えています。
──受動的なユーザーにも自然に届く状態をつくるために、どのような工夫をしているのでしょうか。
小関: 大事なのは、「何があるかわからない」「どこにあるかわからない」という状態をできるだけ減らすことです。
たとえば、Perkではトップ画面の上部にカテゴリを大きく並べています。あえて見える場所に置くことで、ユーザーがまず認識しやすく、タップしやすい状態をつくっています。
今後は、その人にぴったりの特典をおすすめする「AIレコメンド機能」など、ほしい情報が自然に届く機能をどんどんつくっていきたいです。
個人の好みに合った特典を提案する「AIレコメンド機能」
小関:わざわざ探しに行かなくても「これ、自分に合いそう」と思えるものが見つかる。そうした体験を増やしていきたいと思っています。
理想を掲げながら、現実には泥臭い改善を積み重ねてきた
──リリースからの4年間、福利厚生サービスとしての土台づくりでは、どのようなことに取り組んできましたか。
橋屋: 大手の既存サービスと比べて、Perkはかなり劣勢な部分があったので、この4年間は、まず福利厚生サービスとして真っ当に価値を届けられるよう、必要な機能を拡充してきた期間でした。
たとえば、どんなに使いやすいサービスでも、その中に使うものがなければ意味がありません。なので、特典の件数や網羅性をしっかり押さえ、ポイント機能のように汎用的に使える機能も整えていく。
遠くにある理想は見据えながらも、まずは福利厚生サービスとしての基盤をつくることに向き合ってきました。
──地道に一歩一歩、基盤を整えてきた期間だったのですね。
橋屋:はい。この4年間は、遠くにある未来を見据えながらも、現実にはビジネス側も開発側も、すごく泥臭い改善を続けてきました。
競合に勝つために必要なこと、エラーを防ぐために必要なこと、サービスとして当たり前にできなければいけないこと。そうしたことを、みんなが歯を食いしばってやってくれたから、今ここまで進捗していると思っています。
──「泥臭い改善」とは?
橋屋: 一言でいうと、当たり前のことをちゃんとやりきることです。
たとえば、リードが登録されたらできるだけ早く電話をする。商談をしたら、その日のうちに必ず対応する。定期的に追いかける。期日を守れるように開発を進める。
一つひとつは特別なことではないかもしれません。ただ、そうした積み重ねをチームとしてやりきれるかどうかが、事業を前に進めるうえではすごく大きいと思っています。
Perkでは、3カ月ごとにロードマップを引いて、「この3カ月はこれをやっていきます」と決めるサイクルを続けています。毎回、振り返ったときに「計画したことができたな」と思えるチームなんです。
決めたことを、ちゃんとみんなでやる。「泥臭い」というのは、そういう執行の積み重ねだと思っています。
BizとDevが近いから、事業を“自分たちでつくっている”実感がある
──そうした取り組みを続けてきたPerkチームには、どのような特徴がありますか。
橋屋: 構造的には、ビジネスと開発がかなり密にやっているチームだと思います。
今のPerkは、全体で12〜13人ほどのコンパクトなチームです。だからこそ、ビジネスと開発が定期的に集まり、お互いの進捗や課題を共有する場を持つことができています。
そうした場があることで、単に役割ごとに分かれて仕事を進めるのではなく、お互いが今どんなことに向き合っているのかが見えやすくなります。たとえば、ビジネス側が苦労している姿を見て、開発側が「頑張って開発しよう」と思うこともある。逆に、開発陣がつくってくれたものを見て、ビジネス側が「絶対に売らなきゃ」と思うこともある。
お互いの顔が見える状態で、同じ事業を一緒につくっている感覚を持てる。この4〜5年、そうした関係性を続けられていることは、Perkチームの良さだと思います。
──ビジネスと開発の距離が近いことで、事業にはどのような影響がありますか。
小関: 一番大きいのは、意思決定のしやすさだと思います。
営業やCSが向き合っている顧客の困りごとや、「こういうものがあれば導入したい」という声を、開発側も直接聞くことができます。
お互いの状況が見えているからこそ、「次はこういう判断で、この機能をつくろう」といった議論が進めやすくなるんです。もちろん、すべてがすぐに実装しようとなるわけではありません。ただ、顧客の声や事業の状況をチーム全体で共有できていることで、事業を前に進めるスピードはかなり上がっていると思います。
──顧客の声が機能になり、その機能がまた顧客に届く流れを、チーム全体で見られるということですね。
橋屋: そうですね。まさにそこが、事業をちゃんと自分たちでつくっている感覚につながっていると思います。
ビジネスと開発が分断されていると、自分たちの仕事が事業全体にどう影響しているのかが見えにくくなります。たとえば営業側であれば、商談数が数件増えた、という話に終始してしまう。
しかしPerkでは、プロダクトがこう変わった、ユーザーの声がこういう機能になった、その機能を届けたらこういう反応が返ってきた、今Perkはこういうところにいるんだ、という流れをみんなで感じることができます。
事業フェーズが浅いからこそ、チームのメンバーには苦労をさせてしまっていることも多いと思います。ただ、その分、利用者の声を受けてプロダクトや事業の形が少しずつ変わっていく過程を、チーム全体で実感できる。それは今のPerkチームで働く大きな魅力だと思っています。
──事業の形が変わっていく過程に関われることは、職種ごとのやりがいにもつながりそうです。
橋屋:そうですね。Perkは今、福利厚生サービスとしての基盤を整えてきた先で、改めて独自の価値をつくっていく段階にあります。
お客さまと向き合う営業では、Perkの価値をどう言語化し、提案に落とし込むかを考え続ける必要があります。競争環境が変化する中で、どの訴求が響くのか、どのようなサポートが必要なのかを、お客さまの反応を見ながら見極めていく。すでにある価値をただ説明するのではなく、価値の伝わり方そのものをつくっていけるところに、この仕事ならではの手応えがあると思います。
小関:プロダクトづくりにおいても、既存の価値を磨くだけでなく、新しい価値をどう形にするかが問われているタイミングだと思います。
これまで積み上げてきた使いやすさや特典数をさらに伸ばすことも大事ですし、今後はビジョンの実現や事業拡大に向けて、一般的な福利厚生にとどまらない領域でも新しい価値をつくっていきたいと考えています。今あるものをより良くする改善と、これからのPerkらしさをつくる挑戦の両方に関われることは、開発側にとっても大きな醍醐味だと思います。
変化を楽しみ、正解をつくりにいける人と働きたい
──現在のフェーズのPerkでは、どのような人が力を発揮できるのでしょうか。
橋屋: 変化を楽しめる人だと思います。
Perkでは、事業が移り変わる中で、常に新しいものを考えて打ち出していくことになります。一見ルーティンに見える仕事でも、実際には全然ルーティンではありません。半年後には、今とは少し違うことをやっていることも十分ありえますし、役回りをまたぐことも多いです。
だからこそ、事業が変わっていくこと自体をおもしろがれる人は、力を発揮しやすいと思います。逆に、その変化を楽しめないと、少し大変に感じるかもしれません。
一緒に働く人としては、正直な人がいいですね。変化が大きい環境だからこそ、状況や課題に対して誠実に向き合えることは大事だと思っています。
──小関さんはいかがですか。
小関: 「正解をつくりにいける人」かなと思っています。
まず、仮説を自分で立てて進められること。事業環境的に、「やってみたけど違った」ということが頻繁に起こります。また、チームで議論をしている時に、「こっちの方がいいんじゃないか」という意見が出てきたら、それを素直に受け入れられること。そして、それを踏まえて最後まで粘れること。この三つが、「正解をつくりにいける」ということにつながると思っています。
今のPerkチームには、こうした要素を持ったメンバーが揃っていると思います。だからこそコミュニケーションが取りやすく、率直に意見を交わしながらも、お互いを尊重して仕事を進められる環境になっています。
──最後に、Perkチームで働く魅力を教えてください。
橋屋: やっぱり、事業をちゃんと自分たちでつくっている感覚が持てることだと思います。
Perkは、まだ事業として変化の大きいフェーズにあります。プロダクトも数字も、注力ポイントも、1年経つと全然変わっている。大変なことも多いですし、泥臭いこともたくさんあります。
だからこそ、ユーザーの声が機能になり、その機能を届けたらまた新しい反応が返ってくる。その積み重ねの中で、「今Perkはこういうところにいるんだ」とみんなで感じながら進めることができる。
遠くにある理想を掲げながら、現実の課題をひとつずつ解いていく。決めたことをちゃんとやりきって、事業を前に進めていく。Perkに携わるおもしろさは、まさにそこにあると思っています。