小さな習慣が思考を支える
コーヒーを淹れて、机は三割だけ片づける。完璧にはしない。
散らかっていても仕事は進むし、アイデアはたいてい、動いている手から生まれる。
ここに書くのは、僕が毎日まわしている「観察→収集→編集」の導線だ。
かっこいい理論ではなく、思考を呼び戻すための習慣と、アウトプットを強くするための仕組みをまとめた。
目を温めるところから一日を始める
良いものに触れない日は、判断が鈍る。僕は毎日話題になっているデザインをつまみ食いする。
特に話題がないときは、デザイン投資に熱い会社の記事やアウトプットなどを週1以上パトロールするのが基本。検索は「spotify icon rebranding」とか。
保存するかどうかは、主観でいい。
良いものを見て、目が温まると、その日つくるUIの解像度が一段上がる。
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ブックマークはその場で終わらせる
収集は、積み残すと負債になる。だから気になったら即保存、分類で完了させる。
週末にいらないものを捨てる
スクショは、Figmaやnotionに適当にまとめる。余裕があったらフレームに命名するcommand + f で検索できるように。
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思いつきは湯気で消える
風呂、移動、寝起き。ひらめきは熱いうちに消える。
僕は一人LINEグループに口語で投げる。整形しない。
検索して探せるように行頭に ヒットするワードを入れるだけ
禁止事項は後追い要約。鮮度が落ちるうえ、言葉が無難になるから。粗いまま残した断片が、あとで編集の芯になる。
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片隅に、思考を残す
戦略やUI、UXのことを考えているときは、頭の中をいったんプレーンなテキストに落とす。
構造化も整形もいらない。FigmaでもMiroでも、ただのテキストボックスを置いて、思っていることをそのまま書く。
「この案は一回ユースケースから考えてみる」「A案のほうが整合性が取れてそう」
そういう正直な言葉を、他人に見せる前提じゃなくて残す。
(恥ずかしくなかったら見せてもいい。それぐらいの距離感でいい。)
こうして書き溜めておくと、思考を再開するための“座標”が残る。
連休明けでも、声をかけられて作業が途切れても、
そのテキストを見返せば、自分自身の思考の言葉なので、すぐに深いところへ潜り直せる。
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リサーチは言語を変えて検索する
言語が変わると当たる事例が変わる。
EN: onboarding flow "first run" pattern
KO: 온보딩 UX 사례
ZH: 引导 流程 设计 案例
site:medium.com "case study" などの絞り込みと併用。
違う文化の光が入るだけで、手元の案が急にほどけることがある。
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USランキングを10分だけ触って、すぐ離れる
トレンドはだいたいUS→JPで来る。週1でApp Storeのトップ無料/売上を眺め、良さそうなら10分だけ触る。続けるコツは、触りすぎないこと。熱があるうちに、学びと、こういうアプリがあった。だけ抜き出して次へ行く。
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下記のような便利なサイトもあるので、US以外も見ると面白い。
UI知見は録画とスクショ
オンボーディングや良いUIはもちろんのこと、ABっぽい変化はすぐにスクショ。
あとは適当に自分が管理するファルダに保存。
差分を並べて「なぜこう変えたのか」を考える。その小さな反復が、判断の筋肉をつくる。良いUIは、感覚ではなく観察の蓄積で起きる。だからこそ、記録が武器になる。そうやって積み重ねておくと、デザインレビューの会話が“感想”から“理由のある対話”に変わっていく。
広告は教材だと思って30秒で斬る
電車広告、街頭広告、刺さった広告は、30秒だけ言語化して終わり。
僕は下記で考える
Clarity(伝わったか) / Utility(役立つか) / Beauty(惹かれるか) / Identity(そのブランドらしいか)。
正解探しではなく、瞬間評価の筋トレ。積むほど、デザインの第一印象が磨かれる。
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異物を入れて、観察の焦点距離を変える
同じ経路ばかりだと、観察の解像度は落ちる。旅行でなくてもいい。帰り道を1本ズラす、興味外の本を1冊だけ拾う。
ノイズは雑音じゃない。日常のパターンから外れることで、保存したくなる対象が増える。そして、外に目を向けるほど、最後に行き着くのは“人”だ。
結局、UIもコピーも、最後は人をどう理解できているかに尽きる。
表情、間、言葉の選び方。人が何に動かされ、何に誇りを感じるのかを、日常の中で観察する。
それはユーザーテストでも、行動データでも拾いきれない領域だ。
僕は映画やインタビュー、街中のちょっとした仕草の中に、人の行動の理由を探す。探す。「この人はなぜこれを選んだんだろう」「なぜその瞬間、笑ったんだろう」。
感性を鍛えることは、最強のトレーニングだと思っている。
どんなにUIのルールを磨いても、最終的に良い体験をつくるのは「人を見る力」だからだ。
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映画を“動くデザインの教科書”として見る
映画は、ただの娯楽ではなく観察の練習台になる。
構図・音・光。この3つを意識して見るだけで、デザインへの理解が深まる。
まずは構図。主要な被写体がどこに置かれているか、
人物の位置や背景のバランスを見てみる。
「なぜ落ち着くのか」「なぜ緊張感が出るのか」がわかってくる。
次に音と映像の呼吸。音楽や台詞の間、カットのタイミング。
良い映画ほど、音が映像の“動き”を支えている。
UXでいえばトランジション設計に近い。
最後に光と影。明るさと暗さの対比が、空間の温度や感情をつくる。
照明の角度や反射を意識するだけで、「語られない部分」が浮かび上がる。
映画を物語ではなく、動くデザインとして見る。
それだけで、観察の焦点距離が一段変わる。
思考を止めないための雑設計
続けるには、仕組みを先に決めておく。
気合いよりも、回路を先に決める
例えば僕は、外部管理しているインボックスは1つだけ。一次保存はLINEに集約する。
考えた断片も、見つけたリンクも、全部そこへ投げ込む。
週に1度、15分だけ棚卸しする。
捨てる・統合する・もう一度見る。この3つだけを繰り返す。
道具やプラットフォームは何でもいい。
大事なのは、自分が迷わない導線を固定しておくこと。
思考が止まったとき、どこから再開すればいいかを、
あらかじめ決めておく。それが、続けるための雑設計だ。
才能ではなく、回路で強くする
新しいアイデアは、日常のほつれから顔を出す。だから、特別な才能を持ち出す前に、
保存して、並べて、少しだけ捨てる。この地味な三手を、気合いではなく導線で回す。すると、アウトプットは毎日少しずつ強くなる
コーヒーが冷める前にまずは、今日の1ブックマークから。