リブランディングを検討するべきタイミングは?
このタイミング!というのは難しいですが、やっぱり一番は事業継承のタイミングですね。あとは、色々な外部環境によって、自社の提供する価値が変わっていくタイミングなどでしょうか。
一言でリブランディングと言っても、方向性は様々あります。
単純に社名を変更したり、ロゴを変えるなどといった表面的な切り口もあれば、自社の価値を見直して、提供するサービス自体が変わっていくことも勿論あると思います。
ワクスマが行ったリブランディングは、『オフィス用品を売る』という“モノ売り”から『オフィス用品を通してより良い働き方をしていただく』という“コト売り”であり、本質的な価値観の見直しを行いました。
結果それに伴い、「石井事務機センター」から「ワークスマイルラボ」へ社名を変更し、提供する価値と社名が融合した形になったんです。
見た目だけを変えて「あの会社派手になったな」「格好良い雰囲気になったな」という周りからの感想はあったとしても、提供する価値が変わっていなければ『リブランディングに成功した』とは言えないと思いますね。
リブランディングを進めていく上で、社内で推進したことはなんですか?
やはりそこは、会社の変化に伴って従業員のマインドも変えていく、というところです。
「私たちはこれからオフィス用品を売るだけではなく、それらを通してより良い働き方を提案していくんだ」と、きっちりマインドセットして、更には行動に移してもらわないといけない。
そのために、まずはお客様が真似したくなるようなモデルに、ワクスマ自体がならなくてはいけなかったんですね。なので、まずはオフィスを改装したり、ITツールをどんどん活用したりと、とにかく新しい働き方にチャレンジしていきました。
でも、新しい取り組みとかチャレンジって、結構面倒くさいじゃないですか。昔から働いてくれている従業員の中には、色々な理由をつけて反対してくる人もやっぱりいたんですよね。ワクスマみたいに、事業承継のタイミングで社長が変わった時なんかは、特に。
しかしそこで、じゃあリブランディングやーめた、としてしまうと、本当に変わろうと思ってくれた社員が辞めてしまう可能性がありました。
リブランディングとはいわゆる会社の変革です。なので、なぜこのタイミングで変革のチャレンジをしなければいけないのか、ということを明確に伝え、理解してもらえるように話し続けました。
10年後、ワクスマがこんな会社になっているために、どのタイミングで新規事業を起こすのか、社名はいつ変更するのか、と、ロードマップを引いて逆算していくんです。
それでも、「チャレンジできない、したくない」と、今やるべきことを否定してしまうのであれば、それはもう会社のビジョンを否定することと同義ですよね。そういう方とは、これからも一緒に働いていくのは難しいなと判断しました。
反対に、社外に向けて推進したことはありましたか?
かなり早い段階で、広報担当を採用しましたね。
私たちの活動や取り組みがどれだけ素晴らしくて、いろいろなお客様に喜んでいただいていたとしても、広く知って貰えなければ意味がない。
社長に就任した当初はプレスリリースなんかも自分で書いていましたが、もう全然追いつかないし、新しくポジションを作ろうと。
当時はまだ社名が変更前で、従業員も15名弱程度。
社内からは「広報って何?人を増やすなら営業にしてよ」と散々言われましたが、今のワクスマがあるのは、このタイミングで広報担当を採用できたからだと思っています。
今は広報だけではなく、マーケティング全般を担ってもらっていますね。
自社の商品が売れやすい環境づくりだったり、効率的に売れる土台を整えるといった、ワクスマになくてはならない機能です。
苦労されたポイントどういったところでしたか?
今だから言えますが、当時、合わないと言って人が辞めてしまうことは正直大変でしたし、辛かったですね。でも、諦めなかったから今の結果がある、信念を貫いたことは間違っていなかったんだとも、同時に思います。
あとは、ワクスマのサービスが『働き方支援』という目に見えないものなので、お客様に価値を伝えることには苦労しました。マインドセットした、その後の行動ですよね。
今でこそ『来社体験型オフィス』が定着してきましたが、これについても、「この見えない価値を最大限に伝えるにはどうしたらいいか」を、全員で突き詰めたからこそ、生まれた発想なんです。
成功パターンを生み出すために、私たちは何百とトライアンドエラーを重ねています。やるためにはどうしたらいいか、次はあれをやろう、これをやろうと、成功するまで繰り返すんです。
なので、今のサービスの基盤を作るのは簡単ではなかったですね。ただ、新しいサービスや支援を生み出すということはこれからもずっとやっていくので、この苦労に終わりはないと思っています。
リブランディングにおいて、変わるべきこと、反対に変えてはいけないことはどういったことがありますか?
自社の持っている強みそのものは、絶対に変えるべきではありません。
ワクスマの強みは『顧客基盤』、『顧客との関係性』、『Face To Faceでの対応』だと考えています。でもこれって、私たちからすると当たり前なんですよね。でも、この当たり前も、見る角度や視点を変えてみると、すごい強みにもなるんです。
いくら優れているDXやIT商材でも、地方の中小企業の社長がどこからか勝手に見つけてきて、さぁ導入しよう!とはならないじゃないですか。やっぱり誰かの案内があって、その上サポートまでしてくれるなら、と導入に踏み切るわけです。
これは、『顧客基盤』、『顧客との関係性』、『Face To Faceでの対応』における強みがあるから成り立つと考えていますね。
今は、新しく立ち上げた『働き方支援協会』に、同じ強みを持つであろう全国の事務機業界の同業者を集めて、一気に拡大、流通させていこうと取り組んでいるところです。ですので、自社の強みをあらゆる角度から見て、どう活用するかという発想は、非常に大事だと思っています。
自分たちには見えてない強みが、あるってことですね。
反対に、変えてよかったのは社名ですね。
100年の歴史がある会社なので、当時は散々色々言われましたが。(笑)
地元ではずっと「石井さん、石井さん」って言ってもらっていて、それが突然、横文字の『ワークスマイルラボ』に変わるなんてなったら、お客様からも「え?大丈夫?」って言われましたし。
確かに、岡山のエリアだけでやっていくのであれば、『石井事務機センター』の方がビジネスをしやすかったのかもしれません。しかし、これから全国に向けて展開していく上で、やっていくことや提供する価値がその社名では噛み合わないので、今の形に変えてよかったと思っていますね。