八百屋がプロダクトを自社開発?ベトナムオフショア開発奮闘記 | プロダクト
こんにちは、ベジクルの河口です。入社してからあっという間に2ヶ月が経ちました。今回も、ベジクルのプロダクト開発における取り組みについて発信したいと思います。ベジクルでは現在、kozocom社と連...
https://www.wantedly.com/companies/vegekul/post_articles/995415
八百屋のベジクルでプロダクトマネージャーをしている河口です。入社して約3ヶ月が経ちました。
前回の記事ではベトナムでのオフショア開発について触れました。
今回は「アナログ業界のDXにおけるプロダクトマネジメントの肝」について、最近考えていることを整理してみます。
食品流通の世界はデジタル化が遅れていると言われますが、その理由は「現場にまだアナログが残っているから」という単純な理由だけではありません。ある種アナログであることの合理性が成立しているからです。
なぜアナログなのか、どうしてDXが難しいのか、そして私たちがどのようにプロダクトを設計しているのか。そんな話を現場の視点でお伝えできればと思います。
ここでいう「アナログ」とは、単純に古いやり方という意味ではありません。人間が直接、目や手や感覚を使いながら業務を進めることを指しています。
例えば、こんな風景です。
こうした業務は「なぜアナログのままなのか?」と思われがちですが、理由があります。
FAX伝票の手入力
私が現場を見てきて強く感じるのは、「例外処理がとにかく多いから」ということです。
目検で品質確認
こうした業務はすべて一律にルール化することが難しく、その場その場で人が判断した方が早いのです。
だから食材流通はなかなか完全にはデジタル化されません。効率化の余地はあるのに「例外処理が多い」という壁が立ちはだかる。この特性を理解せずにシステムだけ入れても、現場には根づかないのです。
だからこそDXの文脈では、「アナログ業務をそのままシステム化すること」が落とし穴になります。
どちらにせよ結果として、現場で使いにくいシステムができあがります。
一見「正しいこと」を「正しくやれば」進むように見えますが、実際にはそうはいきません。現場の文化や慣習を理解せずにプロダクトを作っても、かえって非効率になってしまうのです。
こうした背景があるため、DXの取り組みで失敗するケースも少なくありません。
では、どう取り組むべきか。私が大事にしているのは次の考え方です。
例外処理の文化を許容しながら、効率化できる部分から着実にプロダクトに落とし込むことです。
プロダクトはできるだけシンプルに設計することが大事です。なぜならシンプルであればあるほど、後から機能追加や改善をするときに開発・テストの工数が膨れ上がらず、拡張性(アジリティ)を保つことができるからです。
社内ではこれを「柔らかいプロダクト」と呼んでいます。いきなりシステム制約が多い“固い”プロダクトを作るのではなく、まずは例外処理も受け入れられる柔らかいプロダクトをつくる。そして現場に使ってもらいながら、プロダクトを使った業務フローが固まってきた段階で、少しずつ制約を設けてシステムを「固く」していく。このプロセスを踏むことで、現場に寄り添いながらDXを浸透させることができます。
ここで、私たちベジクルの事業を例にとってみましょう。
こうした背景があるからこそ、「一律のフローを押し付けないこと」が大事になります。業種や規模に応じて柔軟にフローを整備する。その柔軟性を支えられるプロダクト設計が必要になるのです。
ラクシーレは2025年5月に実ビジネスとしてスタートし、仕入れパートナー数も徐々に増えてきました。
ただし、過去の事業で積み重ねた複雑なプロダクトを流用しているため、使いづらさや制約も多く残っています。
そのため、現在は次のような方針をとっています。
つまり、「柔らかいプロダクト」から始め、少しずつ洗練された形へ育てていくアプローチです。
入社してからの3ヶ月間、私は一貫して「プロダクトのシンプル化」に取り組んできました。これは単なる仕様整理ではなく、現場にとっても、プロダクトチームにとっても、大きな意味を持つ方向転換だと感じています。
たとえば、以下のような部分を一つずつ見直しています。
こうしたシンプル化は、先ほどまで述べてきた通り、現場への浸透という意味でもとても重要です。
ただ、それだけではなく、プロダクトチーム側にも大きなメリットがあると強く感じています。
この方向に舵を切ったとき、開発を担ってくれているベトナムチームからは、こんな反応がありました。
また、プロダクトマネージャー側にも変化がありました。
これまでは要件定義を始める前に、まず「複雑な現状仕様をすべて把握する」という高いハードルがありました。
そこからようやく設計に入れる…という状況だったのですが、シンプル化が進むにつれてキャッチアップのコストも下がり、結果として生産性が向上してきています。
ECやIT業界の方から見ると、食材流通の「阿吽の呼吸」で進む業務フローは驚きの連続かもしれません。欠品や不良品も日常茶飯事ですが、そのぶん人と人との理解や調整で成り立つ、人間味あふれる世界でもあります。
だからこそ私たちは、人の判断や例外を完全に排除するのではなく、それを許容しながら効率化を進めていくことを大切にしています。人や商慣習に寄り添いながら、少しずつ生産性を高めていく。そのようなプロダクトをこれからも育てていきたいと考えています。
まだまだ事業も模索しながら進めています。一緒に事業開発してくれる人を探しています!
一緒に“業務用八百屋の未来”をテクノロジーで切り拓いていきませんか?
少しでも興味を持っていただけたら、ぜひカジュアルにお話しましょう!