執筆者:株式会社UPSIDER CLO 逵本 憲祐
はじめに:ビジョンを語れない自分が、今語る理由
突然ですが、私は自分自身のことを、良く言うと「地に足がついている、目の前のことに集中するタイプ」だと見ており、裏を返すと、「将来の展望を語るのは大の苦手」だと分析しています。
だからこそ、具体とルールを扱う弁護士という職業を選んだのだとはら落ちしていたりもします。
今回、そんな私に対して「決意表明」という白紙委任に近いお題が振られたときは、正直とても困惑しました。「無理や、何を書いたらええか分からん!」と何度も投げ出しそうになりました。その度にPRやHRの仲間が「自然体で思っていることを書けばいいよ。」などとなだめすかし、あることないことを言って励ましてくれたので、何とかこういう形で結実させることができました。持つべき者は仲間ですね。
そんなわけで本noteでは以下の2つのテーマについて、CLO(Chief Legal Officer)としての私の考えをお話したいと思います。
①UPSIDERのリーガルチームがどんなことを考えて業務に励んできたか
②みずほグループとの提携案件のど真ん中にいた人間として、みずほグループとの提携により、どのような展望が広がっているか。私が大きなワクワクを感じずにはいられない理由
散々悩んだ割に、随分と普通のお題に落ち着いたな、というツッコミが聞こえて来そうですが、いろいろと逡巡した結果、原点に返ったのだと理解して最後までお付き合いいただけますと幸いです。
一人ひとりに求められる覚悟
UPSIDERのこれからの挑戦については、Toruさんがカッコいいnoteを書いてくれているので詳細はそちらに譲るとして、この挑戦においてUPSIDERを構成する一人一人に求められるのは、一言で言うと「より大きなステージで挑戦する覚悟」だと思っています。
より具体的には、「自分の持ち場で最大のアウトプットを出すこと」と、「持ち場の外でも自分の強みを発揮すること」(別の言い方をすると、ステップアップすること)という2つに分解できると思います。
リーガル・コンプライアンスチームでは、従来からこの二軸を意識してきましたが、今後は、より大きなステージで勝ち抜くために、より一層、これらの意識を徹底することが重要になると思っています。
そこで、今後の展望に入る前に、まずは私たちUPSIDERのリーガルチームが従来から意識してきた二軸につき説明させていただきます。
UPSIDERにおけるリーガルの「持ち場」
プロダクト開発を加速させるリーガル
会社によってリーガルと事業部には、それぞれの事業の特性に応じていろいろな関わり方があり、唯一無二の正解があるという性質のものではありません。UPSIDERのリーガルの最大の特徴は、フィンテックという事業の特性と同時多発的に新規事業を展開していく宿命との関係上、事業部とリーガルが一体となって動く場面が多い点にあります。どういうことかをもう少し詳しく説明させてください。
レギュレーションが複雑に絡み合う金融業界で、UPSIDERのように次々と新規事業を立ち上げるためには、必ずリーガル観点での検討が必要になります。それも、従来の延長線上の論点ではなく、全く新たな法律の新たな論点を検討しなければならないことも珍しくありません。
さらに、通常の事業会社のように、新規事業の形が見えてきてからリーガルが関与して(契約書への落とし込みといった貢献で)形を整えていくのではなく、UPSIDERでは、新規事業の立ち上げを検討する最初期の段階からリーガルは関与します。
というのも、事業の構想を練ってからリーガルに相談してもらったのでは、そもそもレギュレーションとの関係で実施が難しかったり、当初考えていたのとは違う形で事業を再構築してもらうといった手戻りが発生する可能性も十分にあるからです。そうなってしまうと、「事業部のリソースを無駄にしてしまう」ひいては、「目の前のお客様が必要としている価値を届けることができない」といった事態が頻発しかねません。
これでは、圧倒的なスピードを志向するUPSIDERには致命的です。
結果として、UPSIDERのリーガルは、事業構想の段階から議論に入り、レギュレーションとの関係を整理したり、起こり得るリスクやその回避方法を一緒に考え、オペレーション設計から利用規約の策定までを一気通貫で事業部と協働しています。そして、このような新たな事業の構想が常に複数同時に走っているのがUPSIDERの特殊性であり、醍醐味でもあります。
リーガルとして「息つく暇もない」とも言えますが、ルーティーン化された業務が少なく、次々に新しいことに挑戦したいメンバーには理想的な環境と言えます。
そして、新規事業の立ち上げは、物事がダイナミック、かつ、迅速に変化する環境です。極端な話、前日まで数週間かけて作り込んできた構想が今日には大転換することもないと言えば嘘になります。
リーガルもそれらの急な変化に対応できるように、担当者をアサインし、その新規事業を自身の「持ち場」としてベッタリと事業部と並走する体制を取っています。私を含む他のメンバーは、プロジェクトの進捗について共有を受け、不可逆な判断は協議の上で行うものの、可逆的な判断は担当者がどんどん下していく仕組みとしています。
このように、UPSIDERのリーガルは、事業部との距離が極めて近く、新ビジネスを実装する時には種の段階からどっぷりと入り込み、かつ、新規事業のあり方自体に影響を与える判断の中心にいることができるーこれこそがUPSIDERのリーガルの大きな魅力の一つだと感じています。
もっとも、担当制を採用しているとはいえ、チームはサイロ化していません。
Slackで「この論点どう思う?」と相談すれば、他メンバーが自分の担当プロジェクト以外の課題にも真剣に向き合ってくれる。Slackやミーティングで議論が白熱することもしばしばです。この高い自律性と専門性を前提としたコラボレーションの土壌は、私たちの誇りです。
意思決定の「現場」にいる法務:
リーガルが加速装置になる
リーガルというと「止める人」「遅らせる人」というイメージを持たれることもあるかもしれませんが、UPSIDERのリーガルは真逆の存在でありたいと思っています。
我々が目指すのは、「意思決定の現場にいて事業の推進力になるリーガル」です。