スイッチメディアでは、2022年6月にテレビCM効果改善DXを実現する新プロダクト「TVAL(ティーバル)」をリリースしました。このTVALの登場により、これまでは実現不可能だとされてきた「テレビCMと商品購入の可視化」、そして「デジタル広告と近しい指標での分析やKPI管理によるテレビCMの効果改善」ができるようになりました。
テレビCMは1.8兆円規模の市場規模でありながらも、デジタル広告とは違い定性的な数値分析が難しいとされており、長年多くのマーケッター達を悩ませ続けてきました。この課題をTVALはどのようなアプローチで解決することに成功したのか。執行役員 データソリューション企画部 部長の前川さんにお話を伺いました。
執行役員 データソリューション企画部 部長 前川 佳輝
京都大学卒業後、野村総合研究所にてマーケティング関連のビジネスコンサルティング業務に従事し、その経験を活かしてシングルソースデータを用いた広告効果測定ビジネスの立ち上げを担当する。その後、エンタメ領域のスタートアップにて執行役員としてデータを活用したマーケティング・ダッシュボード型のサービス開発、データ分析組織の構築を経験。2021年に当社入社。
── まず、今回リリースしたTVALとはどのようなプロダクトなのでしょうか。
前川:
TVALとは、テレビCMの効果改善ができるSaaSツールです。TVALで具体的に実現できることとしては、
①デジタル広告と近しい指標での分析やKPI管理
②商品ターゲットのペルソナと同じ属性ターゲットを設定した分析
③テレビCMの視聴と商品購入の関連分析
となっています。つまり、CM視聴と商品購入の関係を分析し、テレビCMを売上につなげるためのネクストアクションが分かるツールとなっています。
── これまでにTVALのようなサービスに対する事業会社側のニーズは非常に高かったと思いますが、こうしたサービスがなかなか生まれなかった背景にはどのような課題があったのでしょうか。
前川:
その理由として考えられるのは、テレビCM分析における2つの大きな課題があったからです。
1つは、指標の課題です。
マーケティングにおいてテレビCM単体で考えられることは少なくなり、テレビCMとデジタル広告を統合的に考えることは当たり前になっています。しかし、デジタル広告では広告の視聴回数や視聴単価といったわかりやすい指標を追うことができるのに対して、テレビCMではGRP(Gross Rating Point、延べ視聴率)、TRP(Target Rating Point、ターゲットの延べ視聴率)といったテレビCM独自の指標が用いられており、デジタル広告とテレビCMとの効率を横並びで比較することは非常に困難でした。
2つ目は、テレビCMが売上に貢献しているのかどうか分からないという本質的な課題です。
今まではテレビ視聴データと購買データを掛け合わせて分析できるツールがなく、テレビCMを視聴した人が実際に商品を購入したのか分析することは非常に困難でした。また、自社商品を購入する可能性が高いターゲット層が、どんな番組を見ているのかを可視化し、出稿量を調整することも難しいとされていました。露出量を増やすことで一定の効果はあるかもしれないものの、その数字を定量的に示す方法がとぼしく、テレビCMにいくら投資すると何が得られるのか、定量的に投資判断するための軸を持つことができない状態が長く続いていたのです。
── そのような課題が長く続いていた中で、TVALだからできることや特徴はどんなものなのか、お伺いしてもよいでしょうか。
前川:
まずはじめに、デジタル広告と近しい指標での分析やKPI管理ができるようになったとお伝えしましたが、具体的にどのような画面イメージなのか見ていただくのが良いかと思います。
この画像は主要なKPIのダッシュボードの画面イメージとなります。出稿金額やターゲットなどを入力することで、自動で主要なKPI状況が表示されるようになっており、想定される効果や各種指標を一目で確認することができます。視聴回数や推計人数とそれらに対応する単価に着目することで、デジタル広告に近しく、比較しやすい指標となっています。こうした数値や指標はこれまで事業会社側で取得することが難しいとされてきたものです。
この中でも、「有効リーチ単価(円/人)」という指標は、TVALで注目している重要な指標です。
「有効リーチ単価(円/人)」とは、
「有効」=ターゲット(=見込み顧客)に対する適切な視聴回数の
「リーチ単価」=CM接触1人当たりのコスト
を指しており、「見込み顧客に効率的にたくさんCMを届けられているか」を測る指標となっています。当たり前のことにも思えますが、デジタル広告でも、テレビCMでも広告出稿の本質は「見込み顧客に効率的にたくさん広告を届けられるかどうか」であり、今までテレビCMではこれが簡単に可視化できませんでした。
テレビCMでも、興味を持ってくれている「見込み顧客」に効率よく、多くの人にテレビCMを届けることができれば、商品の売上が上がる可能性が高まると思っています。
── 具体的に「見込み顧客」はどのように定義するのでしょうか?
前川:
当社がかつてから得意としてきた領域になりますが、テレビ視聴パネルの方々のアンケートデータに基づき、様々な属性や志向性のデータの中から「見込み顧客」を定義することができるようになっています。
TVALでは、当社の今までのサービスより多く、全国規模で約26,000パネルのデータから「見込み顧客」を定義することができ、また今までできなかった購買行動やメディア接触行動などのデータに基づいた「見込み顧客」のセグメントも可能です。例えば、「SNSのチェックを日々怠らず、自らも積極的に投稿している1人暮らしの20代後半女性」や「健康に気遣いビールは控えながらも、日々の間食はやめられない40代サラリーマン」のような「見込み顧客」のセグメントをすることができるイメージです。TVALでは、このように商品のターゲットのペルソナと同じ属性ターゲットを定義した上で、分析を行うことができます。
さらに、TVALでは購買の実データと同一対象者のテレビ視聴パネルからデータを取得することで、長らくブラックボックスであったテレビ視聴と商品購入の関係を解き明かすことに取り組んでいます。
このデータ活用方法として、大きく2つの方向性があります。1つは、実際にそのカテゴリの商品を購入している「見込み顧客」の行動パターンや嗜好性を可視化して出稿プランニングに活用すること。もう1つはテレビCMを視聴した人が実際にその商品を購入したかどうかを分析することで、延べCM視聴回数と購買量との相関性があるかの判断に活用することです。
このテレビCM視聴と商品購入の関係を明らかにする取り組みこそが、インテージ社との協業の価値であり、インテージ社と共同で広告主の皆さまの長年の課題に向き合っていきます。
── ありがとうございました。改めてTVALによってどのようなことが実現できると思いますか。
前川:
TVALを活用することで、従来できなくて当然とされていた「届けたい相手に届くテレビCM」を実現させたいと考えています。広告主の方々からすれば、テレビもインターネットも広告媒体の一つでしかありません。データドリブンなテレビCMとデジタル広告に共通するモノサシを持ちながら、事業成長に直結する最適な広告出稿のプランニングが「当たり前」にできる世界にしていきたいと考えています。