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ビジョン浸透の企業事例4選! 自社の経営課題や浸透の目的に合った施策を選ぶ方法もご紹介

Photo by FORTYTWO on Unsplash

ソフィアには多くのクライアントより「自社のビジョンを社員に浸透させるために、どのような施策が有効か」「他社ではどのような施策を行っているのか」という問い合わせが日々寄せられます。しかし、事業内容や企業規模、また企業の歴史と文化、そしてビジョンの制定背景などの違いによって、それぞれの組織に適したビジョン浸透の取り組みは異なります。

ソフィアではこれまで、さまざまなクライアント企業のビジョン浸透の取り組みを支援してきました。この記事では、私たちソフィアがビジョン浸透の支援を行った4つの企業・グループについて、具体的な事例をご紹介します。それぞれの企業は、歴史や社員数、事業内容などが異なり、またビジョンの策定や理念の見直しの背景も異なります。そのため私たちは、使用するメディアや取り入れる仕組み・制度などをそれぞれの組織やターゲットにあわせて適切に選択し、組み合わせて、状況に応じたコミュニケーションのプロセスを計画してきました。

事例を通して、ビジョン浸透の効果的なプロセスを押さえていきましょう。

取り組み事例1:トップの影響力を活かしたメッセージ発信、経営と現場との対話でビジョンを体現

はじめにご紹介するのは、存在感のある企業トップの影響力を活用し、「対話」を重視した施策を展開した事例です。

  • 創業30年以上
  • 社員数1,000人未満
  • 単一事業

背景

同社にはこれまで、社是や経営理念、事業単体でのビジョンが存在していましたが、「会社としての目指す姿」が明確に定義されてきませんでした。時代とともに事業環境が大きく変わるなかで、事業ドメインを拡大し、新たな事業に打って出るためにも「ビジョンを明確化」する必要が生じ、ソフィアとともにビジョン策定と浸透の取り組みを実施しました。

同社ではトップが人と人との関係性を大切にしていたことから、強いトップダウンの風土がありながらも、経営に対する現場からの信頼が厚いという特徴がありました。そこで、トップを中心に新たなビジョンの策定を行うとともに、トップの影響力を最大限に活用したビジョン浸透施策を展開しました。

施策

この事例のキーワードは「対話」です。前述の通りトップは人と人との関係性を大切にしており、以下の2点が重要であると認識していました。
・新たな商品・サービス開発を行うにあたって、お客さまと対話すること
・お客さまに求められる商品・サービスを開発する際には、最前線で取り組む従業員同士がお互いを認め合い、より良い関係性を構築すること
そこで、お客さまとの対話を重視すること、そして社員同士がお互いを認め合い切磋琢磨できる関係性を構築することの重要性を盛り込んだ行動指針を作成し、ビジョンとともに発信しました。

ビジョン浸透の最初のステップとして、ビジョンと行動指針の発表に合わせて「ビジョンブック」を全従業員の手元に届けました。そして、このビジョンブックを社員が座右に置いて熟読し、会社として目指す姿やありたい状態について常に考え、職場内で共有できるように促しました。

次に、経営層がビジョンブックを片手に日本全国の職場を回って、社員との対話を行いました。会社の将来像や、会社をより良くする改善アイディア、ビジョンを実現するために社員に求められる行動、現場の困りごとなど、さまざまなトピックについて、経営陣と現場の社員とが膝を突き合わせて対話しました。

さらに、行動指針の浸透に向けて「表彰制度」を新設しました。行動指針を実践している社員を他薦投票する仕組みで、1票でも票を獲得した社員は表彰の対象となるため、受賞する従業員の数は年に300〜400名以上にのぼります。毎年実施する表彰式の場は経営陣と従業員との対話の機会として活かし、ビジョンや行動指針の浸透だけでなく、従業員のモチベーション向上にもつなげています。

取り組み事例2:抽象的なビジョンを現場の業務まで落とし込むために、メディア活用+対面で多方向からアプローチ

続いてご紹介するのは、組織再編を機にビジョンを刷新し、抽象的なビジョンを現場の社員が「自分ごと」として受け取れるようにするために、多面的なアプローチを採用した企業の事例です。

  • 創業30年未満(企業再編のため。事業体の一部は100年以上の歴史を持つ)
  • 社員数1,000人以上
  • 複数事業

背景

この事例では、グループ全体に対する包括的・抽象的なビジョンを、いかに個別の事業に関わる社員が「自分ごと」として実感できるようにするか、が大きな課題となりました。

企業再編とともに刷新したビジョンは、複数の事業体からなるグループ全体の事業を包括するものであったため、現場の従業員から見るとその意図や目指すところが漠としていて具体的に理解しにくいという問題がありました。しかし、ビジョンには各事業体の最終顧客となる生活者への想いが込められており、業務において生活者との直接的な接点を持つ社員も多いことから、現場で働く社員の日々の行動の中にビジョンを染みわたらせることが不可欠であるとトップは考えていました。そこで、ビジョン浸透を担当する事務局とソフィアは、従業員が日常の業務とビジョンとの結びつきを考え、ビジョンに基づくアクションを意識的に行えるような施策を検討しました。

施策

この事例のキーワードは「納得感」です。まず、ビジョンブックやポスターなどを作成し、日々の業務の中でビジョンが従業員の目に付きやすいようにしました。また、ビジョンに沿った行動を従業員同士の職場内で褒め合い・認め合うことを推奨するために「Good Jobカード」の活用を開始しました。職場内で贈られた「Good Jobカード」は月末ごとに計測し、事務局でその推移を定点観測しています。成果を可視化することによって、取り組みの活性化につなげました。

さらに、職場内でビジョンを振り返るワークショップを年に1度実施しています。ワークショップの開催に先駆けて、前年度の優れた取り組みの動画や、ワークショップ開催をサポートするハンドブックや記事コンテンツを社内向けて発信するなどのサポートも実施。そして、職場内のワークショップで振り返った1年間の活動結果を事務局に報告することが、表彰制度へのノミネートを兼ねており、表彰された社員は “事業横断的”にビジョンを実現するための施策を考える年に1回のワークショップに招待されます。

これら一連の取り組みは紙・Webの社内報を通じてリアルタイムで社内に共有され、ビジョンに対する社員の納得感醸成や、自分ごと化に寄与しています。

取り組み事例3:経営ビジョン刷新と社員参加による行動指針作成を通して、組織の求心力を取り戻す

3つ目にご紹介するケースは、事業ドメインの拡大に向けてビジョン体系を再構築することになった企業の事例です。企業として次なるステージに進むために、求心力の中心を「創業者」から「企業ブランド」へと転換することを目指し、社員全員参加による理念・ビジョン・行動指針策定をソフィアのサポートで実施しました。

  • 創業30年未満
  • 社員数1,000人未満
  • 単一事業

背景

同社は大手グループ会社の子会社として創業しましたが、創業社長の異動と社員数の増加により、社内の求心力が著しく低下していました。そこで、企業の次なるステージに向け、事業ドメインの拡大を視野に入れた施策を実施しました。
それは、“組織の全員が関与する”理念・ビジョン・行動指針の策定です。それまで同社は「ブランドビジョン」をすべての判断軸として組織運営を行ってきました。創業者がつくりあげてきたこのブランドビジョンを社員参画によって進化させることで、取り組みを通じた社員の意識・行動の変革、そして組織風土の改革を目指しました。

施策

この事例のキーワードは「参画」です。具体的には経営陣によるビジョンの検討と並行して、社員による行動指針策定ワークショップを実施しました。本来であれば、理念・ビジョンを策定した上で、行動指針に落とし込むプロセスがスタンダードです。それを同時並行で進めた背景には、上層部が示した行動指針を社員が理解してその通りに動くのではなく、社員がディスカッションを通じて当事者意識を形成し、アウトプットを経営層と共有することでビジョン検討との同期を図っていく、という狙いがありました。

経営陣と社員がともに、答えのない中で模索を続け、各プロセスにおける議論の内容を適宜共有し、相互の考えを確認し合う。そして相互にヒントを得ながら進めることにが、双方の学びにつながり、議論に参加した社員の視座を上げることにも結びつきました。また、将来における自社のありたい姿や、社会に提供したい価値について話し合うプロセス自体が、組織へのエンゲージメント強化につながりました。

策定した経営ビジョンと行動指針はハンドブック化して、社員やステークホルダーに配布しました。また、社外の有識者を招いて経営陣とのパネルディスカッションを開催した際にもハンドブックを用いて対話を行い、自社のビジョンや事業に対する社員の理解をより深めることにつなげました。

さらに、定期的に開催する全社ミーティングでは、ビジョン・行動指針を振り返るワークショップを取り入れ、継続的にビジョンや行動指針について考える機会を設けています。これらの場では、他社で活躍する社員を招き、その経験を聴いて意見交換するなど、活発な議論が展開されています。

取り組み事例4:社員が見に来たくなる・参加したくなるコンテンツで、ビジョンと行動指針の必要性を訴求

最後にご紹介するのは外資系グローバル企業の事例です。社員が各々興味を持ち、思わず参加したくなるような仕組みづくりに注力することで、海外の本社から降りてくるビジョンをただ受け止めるのではなく、日本支社ならではの解釈を行い、現場への浸透を実現しました。

  • 創業30年以上
  • 社員数1,000人以上
  • 外資系、単一事業

背景

この事例は、グローバル本社で策定されたビジョンを日本支社に浸透させる方法を検討することから出発しました。当時国内においては、小さな事故やヒヤリハットが続けざまに起きており、企業グループとして目指す姿を示すことで、あらめて社員に日々の行動を見直してもらうことが狙いの1つでした。

これを実現するためには、グローバルビジョンを単に日本語へ翻訳するだけでなく、ビジョンや行動指針が会社にとって必要不可欠であることを社員に理解してもらえるような仕掛けが必要でした。

施策

この事例のキーワードは「仕組みづくり」です。ひとつは職場のキーマンとなる管理職を動かすための仕組み、もう一つは現場社員が興味を持って自ら見に来るような仕掛けや仕組みが必要と考え、ターゲット別に複数の施策を展開しました。

まず、日本オリジナルの行動指針を策定し、ビジョンと行動指針をセットにして社員の理解と浸透を図る活動を展開しました。具体的にはポスターやパネル掲示、イントラネット上でのコンテンツ配信といった、社内メディアを活用したコミュニケーションです。そのうえで、上級管理職を集めてのワークショップを定期的に開催しました。

ワークショップでは、ビジョンや行動指針が「ある時」と「ない時」で、管理職の意思決定や行動・発言がどう変わるのかを、参加した上級管理職自らが寸劇で表現しました。そして、ワークショップの模様を撮影してイントラネット上に公開することで、社員の興味喚起を狙いました。

また、社員向けにはイントラネット上の特設サイトに部署ごとに社員のアバターを設置して、取り組み事例の共有や、他部門の投稿へのリアクションによってポイントが加算される仕組みを導入しました。ポイントが増えるとアバターが成長するため、社員はゲーム感覚で参加し、結果として日常的にビジョンや行動指針に関わる情報に触れることになります。社員の心理的ハードルを下げてビジョンや行動指針を身近なものとして感じられる、日本独自の好事例となりました。

まとめ

以上、4つの事例を見ていただきました。これらの事例を見てわかるように、組織の課題やビジョン浸透の目的、得たい効果、経営と現場の関係性などによって、どのような浸透策が適しているのかは変わってきます。つまり、「この施策を打てば必ずビジョン浸透に成功する」といった万能薬は存在しない、ということです。

ビジョンの浸透を成功させるためには、ビジョン浸透をリードする部門や担当者が「なぜそれが必要なのか」「何のために行うのか」という自社の課題や目的を明確にし、社内の現状をしっかり把握したうえで自社にあった取り組み方法を検討することが必要です。

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