飲食、流通、アウトドア、そしてクラウドファンディングに成功したアパレル事業。多事業展開を続ける羊SUNRISEですが、一周回ってジンギスカン屋でもっと成長したいという思いに戻ってきたといいます。今後のジンギスカン屋の事業展開と羊の普及にかける思いについて、関澤社長にお話を伺いました。
普及には価格が重要
-クラファンを終えて羊の普及についてはどのような思いを抱いていますか
「Waste not, Want not」の商品はバッグにしてもジャケットにしても20万円を超える価格帯なので、おいそれとは手が出せる商品ではありません。これは、現時点では完全受注生産なのでコストを考えると仕方ないのですが、この価格でやっていても羊の普及にはつながらないでしょう。ゆくゆくは購入しやすい価格でリリースするための製造も行っていかなければならないと考えています。
-普及には価格が重要ということですか
そうです。やはり消費者の皆さんが手にとって購入してくれることでしか、物や文化は普及していかないので。その点では羊SUNRISEのジンギスカン・飲食事業もより普及しやすい価格を実現しなければならないと再認識しました。
-羊SUNRISEの既存の高級路線からギアチェンジすると?
麻布十番のお店はレガシーとしてこれまでの流れは守りつつ、新しい直営店を増やしていかなければならないと思うようになりました。その中でリーズナブルな価格設定のお店があってもいい。客単価で言うと3,000〜5,000円程度でおさまるようなお店ですね。
飲食事業の経営者としてスクラップ&ビルド
-以前のインタビューで、直営店はもうやらないとおっしゃってたと思うのですが、心境が変わるきっかけはあったのですか?
はい。飲食業界大手の社長さんとお食事させていただく機会があり、そこでかなり勉強させていただきました。
自分としては麻布十番がうまくいったので、手腕には正直自信があった。ただその分見えなくなっていたものがあって、そこを見つめ直すことができました。
なぜ違う業態で神楽坂に出店したのか、なんで直営店をもっと出さないのか、今のやり方で普及につながると思ってるの等、結構けちょんけちょんにやられまして。ちょうどクラファンの支援額が伸び悩んでいるタイミングでもあったので、今年の自分を全て壊して再構築するような体験でしたね。
-具体的にはどのような内容で見直せたのでしょう
まずは閉店した神楽坂店を失敗だったと言い切れるようになった。これまでは「自分がお店に立っていたらもっとうまくいったはず」みたいな言い訳を心のどこかでしていました。でも社長としては、自分がいなくてもお店をどううまく運営するか、スタッフをどう動かすかを考えるのが仕事です。そこをしっかり見つめられていなかったと今なら言えます。
あとは、あえて違う業態で出す意味があったのかということ。神楽坂は鉄板焼きの業態から始まり、途中でモダンオーストラリア料理にシフトしましたが、ジンギスカンではダメだったのか。さらに言えば神楽坂というエリアは出店に適切だったのか。「関澤くん、マーケティングができてないよ」とその社長からはぶった斬られてしまいました。
直営店を増やすことで普及を目指す方向へ
-立地や業態は今後どのように展開していきたいですか
これまでは麻布十番店の希少性を守りたいと思っていたので、近くに出店をすることは考えていませんでした。しかし、これからは都内に直営店の出店を増やしていきたいと考えています。
「希少性を守りたいっていうけど、羊SUNRISEの価値って近くにジンギスカン屋が複数できただけで失われてしまう程度のものなの?僕にはそうは思えないんだけど」
これを食事会で言われて衝撃を受けました。確かにその通りで、羊SUNRISEが他のジンギスカン屋に負けるとは全く思わないし、直営店が近くにあっても価値が薄まるということはない。むしろ普及という視点からすると希少性を守るよりも店舗を増やしていく必要があります。今なら当然の論理だと思えるのですが、他事業展開や遠くのゴールを見ていたためにシンプルな理屈が目に入らなくなっていたんです。
2021年はジンギスカンへ原点回帰
-2021年の関澤さんの目標を教えてください
2020年は様々な新しい挑戦を行い、一周回ってやはりジンギスカン屋が自分の根幹にあるものだと再認識した年でした。2021年は再出発する気持ちでお店の運営に本気で取り組みたいと思います。最近入社したアルバイトのスタッフがすごくいい子たちが多いので、ジンギスカン屋を始めたばかりのフレッシュな気持ちを取り戻すこともできている。2021年は初心に帰って現場にも極力顔を出そうかなと。
さらに、2021年は都内に2店舗出店を目標にしたいです。最初はある程度高級路線になると思いますが、まずはこれまでのコンセプトを踏襲した店舗を増やしたい。店舗が増えればよりリーズナブルな価格設定もできるようになると思います。最終的には羊文化を普及させることが僕らのミッションですし、そのためにはたくさんの人にジンギスカンを日常的に食べてもらいたいですね。