こんにちは。
セプテーニのPR担当の江里です!
セプテーニグループでは、CSRの重点テーマのひとつとして、「ダイバーシティ&インクルージョン」を掲げ、さまざまな取り組みを行っています。
先日、その取り組みの一環として、「ダイバーシティ&インクルージョンの重要性」と「女性が活躍するためのキャリア構築」をテーマとしたワークショップ「D&I WORKSHOP 2020」をオンライン配信にて開催しました。
「D&I WORKSHOP 2020」では、当社社外取締役でもある経営チーム強化コンサルタント、リーダー育成のプロ 岡島氏による講演と、「ニューノーマルなD&I」をテーマに岡島氏と当社代表佐藤とのトークセッションが行われました。
今回は、そのイベントレポートの前編として、第1部の岡島氏による講演の内容をお届けします。ぜひご覧ください!
岡島悦子
株式会社プロノバ 代表取締役社長
三菱商事、ハーバードMBA、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、
2002年、グロービス・グループの経営人材紹介サービス会社であるグロービス・マネジメント・バンク事業立上げに参画、2005年より代表取締役。
2007年、プロノバ設立、代表取締役就任。
2015年より株式会社セプテーニ・ホールディングス 社外取締役。
経営チーム強化コンサルタント、ヘッドハンター、リーダー育成のプロ。
「日本に"経営のプロ"を増やす」ことをミッションに、経営のプロが育つ機会(場)を創出し続けている。成長ステージに合致した経営チーム組成のための「経営チーム診断/強化コンサルティングサービス」を提供。
何のためにD&Iに取り組むのか?
本日は「多様性を活かす組織開発とキャリア開発」についてお話しします。
価値観の強要をするつもりは全くありませんので、みなさんの視野の選択肢を増やしていただく機会になればいいなと思っています。
また、みなさんにもきっとアンコンシャスバイアスというものがあるんじゃないかなと思いますが、これがD&Iを阻害する要因のひとつだったりするので、この時間を通じてそのような自分の無意識のバイアスにも気づいていただけたらと思います。
D&Iもサステナブルもそうなのですが、あまり正義感をかざして「こうあらねば」と言っていると長続きしません。仲間と価値観を共有しながら楽しく進めていく、というかたちになれば良いですね。
さてみなさんは、新型コロナウイルス感染拡大という危機で、働き方などにも色々変化が起きていると思います。今まで個人としての価値観をあまり意識していなかった人も、働くこと、あるいは会社に行くということも含めて、いろんな価値観が顕在化してきたのではないでしょうか。
同時に、生活環境において、ワークライフバランスという言葉はだんだん死語になってきて、ワークアズライフ、つまり仕事とプライベートが混然一体となった生活をwithコロナで経験するようになったと思います。そういった中で、「D&Iって何のためにやってるんだっけ」というところから、もう一回確認していきたいと思います。
今まで多くの企業では、新卒や中途で新しく入ってきた人たちに対して、企業文化を浸透させていくことで、なるべく均質な、同じような人をつくっていく、ということをやっていました。長時間労働をベースに、メンバーの間で「暗黙の前提」が共有されるこうした育成の仕組みは、「あうん」の呼吸が通じるのでコミュニケーションコストを減らすという意味では非常に有効でした。
ところが、昨今のコロナも含めてですが、環境の変化があるときにはそのような単一的な文化の組織というのは非常に弱いんです。
ではどういう組織が変化に強いのかというと、多様性がある組織です。ここで言う多様性とは、性別や年齢、国籍など、属性の多様性ということではなく、視点の多様性、経験の多様性のことです。企業が変化に適応し非連続な成長を続けていくためには組織の中に多様性が必要であり、だからこそ経営戦略としてD&Iが成長のカギとなっているんです。セプテーニグループでは行動規範「Septeni Way」の中にもDiversityが掲げられていますね。
セプテーニグループの強みは、変化に適応できる多様な人材が多くいること、また、変化と仕組み化のサイクルを繰り返してきたスタイルにあると思います。そういった意味では、セプテーニグループが目指すべきは、多様な視点を活かすD&I、ということなんだと思います。
一方で、多様な視点を持つ人たちを束ねるマネジメントは非常に複雑です。非連続の成長のためにはD&Iが大事、均質な人たちを作るだけではこれからは厳しい、でもマネジメントが複雑化するのは避けたい。そうなると「見た目は多様だが、実は中身は均質な人」を増やせばいいのでは、という、いわゆるアリバイ工作のような議論が出ることもあります。ですが、それでは本当の意味での多様化には寄与しませんよね。非連続の成長につながらない。大事なのは、属性が多様化することではなく、視点が多様化することだと思います。
女性活躍推進は、D&I推進の「1つ目の矢」
セプテーニグループではこれまで、様々な女性活躍推進の取り組みを行ってきています。それは、女性はマイノリティの中の一番のマジョリティなので、D&Iを進めていくきっかけとして女性活躍推進から入っていると理解していただければいいかと思います。女性活躍推進は、D&I推進活動の第一歩目であり、女性の活躍も進まないのに他の多様化も進むとは思えない、ということです。
しかし本来は、それぞれの企業に固有の「最小多様性」があると思います。どれくらいの割合で、どういった多様性を持つ人材がいれば、その企業が最もイノベーションを起こせるのか、その配合は各社によって異なる、ということです。セプテーニグループがイノベーションを起こしていく、成長を続けていくには、どんな要素・視点が、ダイバーシティとして入っているといいのかということを、もっと個別で規定していかなければならないなと思っています。
なので、よりD&Iが進んだ近い将来、セプテーニグループで「ダイバーシティ推進って、昔は女性活躍推進のことを指していたんですか!?」と驚かれる時代が来るんだろうと思います。
女性活躍推進には、個人の意識、上司の理解、経営の覚悟の3つが必要
また、女性活躍を推進する上では、「女性個人の意識変革」「上司の方々の理解」「経営トップの覚悟と啓蒙の意識」の3つが揃わないとなかなか進まないんですね。女性個人が頑張ろうと思っても、上司の方に理解してもらえないと進まないですし、上司の方が引き上げようと思っても、個人の方にやる気がなかったらできません。何より経営トップの方々が、女性活躍推進は成長戦略と捉え、コミットしてやっていただかないと進まない。女性個人、上司、経営トップの三位一体での推進が必要ということです。
次に、D&Iや女性の活躍を推進する上では、女性そのもののマインドセットの変革が必要になってくるということをお話ししていきます。
私は多くの企業で、3万人を超える女性の方々とワークショップをやってきましたが、女性たちからは
「私、スペシャリストになりたいんです」
「私は別に管理職になりたくてやっている訳じゃないんです、お客様の一番近くにいたいんです」
「ロールモデルがいないんです」
という声をよく聞きます。どうしてみなさんがそういったことを言っているのかな、と分析した結果、「妙齢女性のかかりやすい10大疾病」にかかっているからではないかと考えています。
実際、私自身もこの10代疾病のうち、一つを除いて全てにかかり、かなり重篤な患者だったと思います。そして36歳くらいまではまったくここから解脱することができていないという状況でした。
~妙齢女性がかかりやすい10大疾患~
1、アクセサリー勝負病
若さとかわいさでちやほやされて仕事をしてしまうために、スキルの構築ができないまま20代後半を迎えてしまう。
2、嫌われたくない病
周囲の人に嫌われたくないために、なんでも仕事を拾ってしまうが、その分本質的に生産性や能力を上げることができない。
3、体力過信病
残業や休日出勤などでとにかく長く働こうとする。体力を過信し、生産性の低さを長時間労働でカバーする。
4、過小評価病
昇進や抜擢の機会があっても「まだまだ私には早いです」といって遠慮してしまう。
5、出世嫌悪病
プレイヤーとして、お客様と向き合って働くことが一番だと考え、出世を嫌悪してしまう。
6、キャリア迷子病
自分のキャリアについて、本当にこれでいいのか、自分が何に向いているのか悩んでしまう。正解を求めるために行動するが迷走してしまい、占いなどに走ってしまう。
7、白馬の王子待ち過ぎ病
「こんなに私は頑張っているのだから誰か見ていてくれる」と、キャリアアップの機会が来ることを待ちすぎてしまう。
8、努力安心病
キャリアに悩んだ末に、何らかの資格を取ろうとする。資格の内容や得るスキルよりも、努力している自分が好き、努力することが目的になってしまう。
9、燃え尽き逃避病
1~8の病気にかかった末に、仕事に燃え尽きてしまう。
10、チャック女子病®
外見は女子の着ぐるみを着ているが、背中のチャックを下ろすと中身はおじさん、という状態。女性が視点も思考パターンもおじさんと同一化してしまう現象。
これらの疾病にかかってしまう真の要因は、「自信のなさ」です。そこでみなさんには今日ぜひ、未来の自分に対する自信=「自己効力感」の大切さを知っていただきたいと思います。
自己効力感をもって、変化に適応していく
おそらく全ての企業で働く上で、これから重要な能力になってくると思うのが、「自己効力感」です。これは、やったことがないことにチャレンジするときに、何となく「自分ならやれそうだな」と思える自信のこと。近年スポーツの領域でも、いかに自己効力感を高めるか、がかなり研究されています。
自己効力感を高めるには、小さめの相似体験をする、身近なロールモデルを見る、上司や周囲に「君ならできるよ」と言語的に励ましてもらう、心身共によい状況である、といった要素が必要なので、なんといってもOJTが大事になってきます。
これからの上司に最も必要とされるのは、仕事を通じて「部下の自己効力感をいかに高めるか」ということではないかと思います。
今の時代はみなさん100歳くらいまで生きることができる一方で、ビジネスモデルの寿命は20年を切ってきていると言われています。なので、仮に80歳近くまで働くとしたら、その60年の間に3つくらいのビジネスモデルを超えていかなければなりません。10年後、みなさんがどんな仕事をしているかは誰にもわかりません。一つだけ言えることは、「変化は必ず来る」ということです。
そうなった時に一番重要なのは、変化に適応し「いつでもどこでも稼げる自分」になっておくことですね。
また今の時代は「VUCA(※)な時代」と言われています。先々のことは本当にわからない。そういった中で重要視されるのは、「戦略の正確性」ではなく、「戦略の納得性」です。変化の兆しを読み取り、変化に適応して、納得性の高い戦略を掲げられる人になることが非常に重要だと思います。
※VUCA:「Volatility(激動)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(不透明性)」の頭文字をつなげた言葉。
前倒しのキャリア®のすすめ
ここからは少しだけ、女性のキャリア構築についてお話しします。私は以前より、特に女性には「前倒しのキャリア®」をおすすめしています。
キャリアの作り方は、プロフェッショナルという意味では女性も男性も全く変わりません。ところが、出産という女性特有のライフイベントを考慮すると、時間差がでてきます。
早回しでキャリアを積み上げている人たちは、20代でインプット、30代でインプットとアウトプットが拮抗し、40代で実現期を迎えるという方が多いと思います。
しかし先ほどの10大疾病にかかってしまうと、女性は「まだまだ」と言っている間にどんどん昇進の時期が後ろ倒しになっていきます。管理職になることが全てではないですが、意思決定をする側になる時期と、出産の時期が重なってくるのが問題です。
多くの企業で女性の管理職定着が進まない理由は、管理職になった途端に出産時期を迎えてしまい、復帰した時には以前のポジションが埋まっていて、職種が異なる部署に配属され、その職種も管理職も子育ても初めて、という「3つの初めて」が重なる状況を生み出してしまうことにあると思います。その結果、これまでの日本では6割近くの女性が、第一子を産んだタイミングで仕事を辞めてしまう、ということが起きていました。
そこで、私が提案しているのが、この「3つの初めて」をバラバラにしませんか、ということです。このことを「前倒しのキャリア®」と呼んでいます。女性だけ管理職登用を早めたり、或いはライフイベントの時期を早めたり、というのは現実的には難しいので、多くの企業で「初めての職種」を減らすところから着手していただいています。できれば20代のうちに3つくらいの職種、またはプロジェクトを経験していただいて、産後復帰した時に戻れる職種の選択肢が3つくらいある状況に持って行きませんか、ということです。また、複数の職種で小さな成功体験が積み上がれば、別の部署に行っても適応できるという健全な自信がついてきますので、復帰へのハードルがより下がると思います。
ただ間違ってはいけないのは、これは若いうちに仕事ばかりを頑張って、ライフイベントを疎かにしろといっているわけではありません。むしろ、キャリアの早い段階で会社との間に信頼貯金を積み上げて、「あの人なら戻ってきて欲しいよね」と言われる人材になっておく。そうすることで、ライフイベントのタイミングを自分で選べるようになるのがいいと思います。
タグを複数持ち、時代に応じて変化させていく
先ほどの「小さな成功体験」を表現する手段として、私は「キャリアのタグ®」、というものを推奨しています。タグについては、ハッシュタグのようなものをイメージしてください。あなたの名刺に、強みとなるタグを複数書くとしたら、何を書きますか?
会社から戻ってきてほしいと言われる人材になるということは、たとえば何か新しいプロジェクトが立ち上がる時に、「この分野だったらこの人をアサインしよう」、と想起される存在になるということです。
タグの種類を多く持っていれば、それらをかけ合わせることで「自分にしかできない仕事」が明らかになり、想起/抜擢されることが増えるので、強みを活かしながら長く働いていくことができるようになります。しかもタグはずっと一定ではなく、どんどん変化させていく、ということも大切だと思います。
これからの時代はAIが台頭してきますが、みなさんはAIと張り合うのではなく、協働していくことになります。AIは、みなさんの弱いところを補完してくれる存在になると思います。なので、みなさんがやるべきことは、より自分の強みを磨き、時代に応じて変化させることだと思います。そのためにも、意思決定の場数を増やして自分を鍛え、その経験によってさらにタグを増やすということを意識して欲しいと思います。
ボスにお願いしたいこと
上司の方々は、メンバーに早く自己効力感を持たせるためにも、前倒しのキャリア®をすすめ、意思決定の場に立つ機会を与えてあげてほしいなと思います。しかし、留意していただきたいのが、キャリア面談などで、覚悟を求めすぎないでほしいということです。
例えば、上司が「あなたには覚悟があるのか」と質問したときに、メンバーから「わかりません」と答えが返ってくることがあります。この「わかりません」を「意欲がない」と解釈してしまいがちですが、これは昭和翻訳ですね。そうではなく、「わかりません」は「できるかどうか自信がない」という意味なんです。これが令和翻訳です。
なので、「わからない」と言われたら、「君ならできるから、とにかくやってみよう」と健全に承認し、背中を押していただきたいと思います。
そして管理職の方は、「忙しすぎて大変」アピールをするのは避けていただきたいです。管理職は大変そうで、どんなメリットがあるのかわからないから目指す気がしない、というのは若手の素直な意見だと思います。「管理職はバラ色」と誇張する必要はないですが、管理職という立場になることで、メンバーの成長に貢献できる、お客様の期待に応えやすくなるなど、きちんとやりがいを開示していくことが大事です。
また、ワーキングマザーの方へ配慮・遠慮をしすぎて、機会を減らしてしまうということはよくないと思います。例えば、第2子をもうける希望があり、そのためにも積極的に仕事をして早めに信頼貯金を積み増したい、と考えている人も多いと思うので、本人の意思や選択肢を奪わないことが重要なのかなと思います。
その他、管理職の方々にお伝えしたいのは、よく出てくる「ロールモデルがいない」という議論についてです。ロールモデルは、必ずしも女性でなくてもいいと思いますし、一人の人である必要もないと思います。ロールモデルがいないと悩んでいるメンバーを見かけたら、自分の理想とするパーツを集めた「パッチワーク型」のロールモデルという考え方も紹介してほしいと思います。
おわりに
女性活躍推進には、女性個人の意識変革、上司の理解、経営の覚悟の3つが必要というお話をしました。第2部では佐藤さんと一緒に「D&Iってセプテーニグループにとってどんな意味があるのか?」という話をしていくのですが、こういった対談にグループのトップが登壇するということ自体が、経営が非常にコミットしている、ということなのだと思います。
それでは第2部ではニューノーマルなD&Iについてもお話ししていきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。