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会社生活の中で、“競争のルール”は2回変化する

一般的な出世のルールは学問的に理論づけられている。経済学者のエドワード・P・ラジアーがその理論を発表したのは、1980年代のことだ。ランクオーダートーナメント。トーナメント理論ともいわれるが、それが組織における出世の基本ルールだといわれている。

日本語で要約するとこうなる。

「同じ階層(ランク)にいる人たちで、次の出世順位(オーダー)を競い合う、勝ち抜き戦(トーナメント)」

それが繰り返されて、やがてトップにまでたどり着く。それがルールだ。

なるほど。それだったら別に課長だろうが部長だろうが、競争のルールは変わらないんじゃないか。そう思うだろう。確かに、「誰かが選ばれる」という一点においては同じかもしれない。

でも、選ばれる際の基準が、会社の中で2回、大きく変わる。

最初の昇進基準の変化は、課長になるときに起きる。

あなたがすでに課長になっているのなら、その基準の変化は実感しているだろう。

例えば同期で一番早く係長に昇進した人が、課長のポストを前に足踏みすることがある。

その理由が、課長になるときの基準の変化であり、管理職への昇進基準の実態だ。

同期トップで係長になった人を思い出してみよう。彼あるいは彼女が選ばれた理由は、もちろん仕事ができるから、ということではあるだろうけれど、それをさらに具体的に考えてみれば、「仕事が速い」「仕事が正確だ」というものじゃなかっただろうか。もちろん実際はそんなあやふやなものではなく、各社に詳細な昇進基準があるが、総じて主任や係長に早く昇進する人にはそんな特徴がある。

人事制度的に言えば、一般社員層の間の昇進基準は、今担当している仕事での評価結果に基づくのだ。平社員から主任、主任から係長に昇進するときなどだ。一般社員の間は、今担当している仕事で、周囲の人たちよりも優れている人が早く出世する。

しかし管理職になるときには、別の昇進基準が用いられる


◆目の前の仕事で結果を出しても、ある日昇進できなくなる

人事用語で言えば、一般社員の間(主任、係長などを含む)は「卒業基準」で昇進判断がされる。小学校のカリキュラムを終えたから中学校へ、中学校のカリキュラムを終えたから高校へと進む、というのと同じ理屈で、平社員を卒業して主任や係長になる。

しかし、大学は違う。入試を経て、大学生としてふさわしい学力があるかどうかを判断される。

管理職に昇進するときも大学入学と同じような判断がされる。これを「入学基準」と言う。


拙著『うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ』(東洋経済新報社)にも書いたが、この時の視点の変化に対応できる人が管理職に昇進しやすくなる。目の前の仕事でいくら結果を出したところで、「上の役職」の考え方ができそうになければ、彼、彼女が出世することはない。一般社員と管理職との間にはそのような壁がある。


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