2025年4月1日に施行された育児介護休業法の改正により、男女とも仕事と育児・介護を両立できるように、柔軟な働き方を実現するための環境がさらに整備されました。仕事に全力で取り組みたい、でも新しい家族との時間も大切にしたい──「仕事か家庭か」そんな二者択一を迫られる時代はもう終わりです。「RITでは、フルリモート環境と充実した福利厚生を整え、メンバーが仕事と家庭の両方に向き合える柔軟な働き方を実現しています。今回のインタビューでは、「仕事人間」と呼ばれたエンジニアの喜多さんが育休を取得するまでの背景や、不安をどう乗り越えたのか、さらに育休を通じて得た気づきや復帰後のキャリアについてお話しいただきました。
―育休を取得しようと思った理由や動機は何ですか?
一つ目は上長の福田さんから『ぜひ取ってください』と勧められたことです。福田さん自身も育休を取得していたので、上長が実践しているのを見ることで『自分も取っていいんだ』という後押しを感じました。さらに、自分が育休を取ることで、他のメンバーにも良い影響を与えたいという思いもありました。福田さんが育休を取ってくれたことで僕が取りやすかったように、僕が取ることで「育休を取りやすい環境」という文化が社内にもっと根付いてくれたら良いなと思ったからです。
もう一つは家庭の事情です。僕の両親も妻の両親も遠方に住んでいるため、サポートは期待できなかったことと、妻が里帰り後も一人で育児を担うのは相当な負担になると思い、少しでも支えたいという気持ちが強かったですね。
実は最初、まるっと2か月休むことに抵抗感がありました。そのため、週3〜4勤務にして週の間に休みを増やして対応できないかと考えていたんですが、福田さんから「育児はそんなに甘くないよ」と言われ、育児の負担をより深く理解するきっかけになりました。ネットで育児の大変さについて調べても個人差が大きい話で、正直それまでピンと来ていなかったんです。でも実際に育休を取ってみることで、育児にどれだけの時間や体力が必要かを身をもって知ることができました。
―育休を申請する際、どのような不安はありましたか?
大きく分けて2つ、思うところがありました。
1つ目は金銭面で不安だったっていうのはありますね。『育休取得する=働かなくなる=収入が少なくなる』ので、不安がありました。でも、RITには福利厚生で、育児休業給付金と今もらってる給与の差額を最高100万までは会社が負担してくれるという制度があるので、金銭面的なところは解消されましたね。
2つ目は、プロジェクトのことです。プロジェクトが落ち着いたタイミングで育休に入るとはいえ、やはりリリースした後にバグや改善要望が出てきたり、お客さんとのコミュニケーションの部分で自分が抜けて大丈夫かなという不安は正直ありました。そのため、育休を取ると決めてから、プロジェクトマネージャーを僕から別のメンバーに変更し、引き継ぎも1か月ぐらいかけて入念にやったこともあって、育休中に呼び出しということは特になかったですね。
―育休を取得してよかったですか?
もちろんよかったです! 妻も育休中だったので、毎日出かけていました。もう何か大人の夏休み的な感じで。そしてその2か月が修行期間だったと思います。その時はまだ離乳食になる前だったのですが、来たる日に備えて離乳食の作り方や、子どもの面倒の見方を考えたりとか、できるだけ妻の負担ににならないように、どうコミュニケーションとったらいいのかとか、あとは子どもの教育について考える時間だったりとか、保育園どういうところがいいよねとか、とにかく、子どもを見る時間・一緒に過ごす時間がすごく増えたことがよかったと思います。
―育休後、事業部長に就任されたとのことですが、その決断にどのような思いがあったのでしょうか?
育休は2024年5月〜6月に取って、7月に復帰、その後9月に事業部長に就任しました。
この話は以前、上長の福田さんから打診をいただいていたんですが、一度お断りした経緯があります。その理由として、ゆくゆく起業したいという目標があったので、事業部長になるとその動きが制限されると思ったんです。でも、育休からの復帰後に改めて組織を見たとき、現状維持の状態が続いていることに危機感を覚えました。「このままではいけない」と感じたのと、福田さんがCTO・CHROと多忙な役割を兼務していて、十分なリソースを割けない状況があったので、自分が役割を引き受けることで事業部をより良い方向に進められるのではないかと考え、事業部長を引き受けることにしました。
―実際に育休を取得してみて、会社やメンバーからのサポートや理解はいかがでしたか?
理解はあったと思います。多分男性が育休取得するという事に違和感を持つ人はそんなにいないと思うんですよね。どちらかというと、上長に対して理解を求めるみたいなことのほうが一般的にはあるのかなと思います。ただ、RITの場合は、その上長がぜひ育休取ってくださいというスタンスなので、別に何も苦労はなかったです。
一方で、お客さんに対して理解を求める所については、さっきも申し上げた通り、自分はPMとしてお客さんとコミュニケーションを取るというポジションだったので、いきなり人を変えてしまうと、やはりひずみが生まれてくると思うので、お客さんにも育休取得を理解してもらう、変わるにあたってもフォローアップがきちんとできる体制を作るということをやりました。そのために、前もってお客さんには育休を取得する話をしていて、徐々に後任にバトンタッチしていきました。あとはCEOの安武さんもその案件に関わってたので、フォローアップも安武さんにしていただきました。
―周囲のサポートや会社の制度が役立った具体的な場面があれば教えてください。
僕も含めてだと思いますが、子どもがいるメンバーは、だいたいみなさん17時半でいったん業務終了してるんですよね。会社の制度として決まっているわけではなく、カルチャー的に子どもがいる方だと、このタイミングでお迎えに行ったりとか、僕の場合はご飯作ったり家事したり、子どもと一緒に過ごす時間を作ったりしています。意図的ではないんですけど、17時半ぐらいにみんないったん仕事を切り上げる習慣は、これからも続いてほしいです。
あと、フルリモートです!すごく助かっています。通勤時間がない分、精神的な余裕も生まれますよね。例えば17時半であがっても、結局通勤で1時間ぐらいかかって18時半ぐらいに帰るとなると、子どもの生活ペースを守るためにかなり時間を気にしないといけないじゃないですか。なので、本当に子どもがいる家庭にとって、たった1時間かもしれないですけれど貴重な時間なので、フルリモートって家庭をより円満にしてくれるんじゃないかなと思います。
―仕事と家庭の両立に関して、どのような工夫をしていますか?
そうですね。割と自分の家庭だとルーティン化はしっかりしていると思います。さっきの17時半でいったん仕事を切り上げることで、妻も動きやすいと思うんですよね。だいたいこの時間で終わってくるだろうから、その前にあれやこれを用意してというような感じで。今は子どもが夜中に起きるので、寝る時間が短くなって僕も妻も体がしんどくなったりします。そのため、朝はだいたい僕がミルクをあげて面倒見て相手をしてる間に妻に寝てもらっています。夜も子どもが寝るまではできるだけ家事をして、子どもが寝てからのゴールデンタイムは、僕も妻も自由に過ごすように心がけています。
―これまでの経験を踏まえ、会社にさらに望むサポートや改善点はありますか?
そうですね、大きく分けて2つあります。1つ目は、メンバーへの情報共有です。僕自身、子どもが生まれるまで育児の大変さや生活のリズムがこんなにも変わるとは思っていませんでした。例えば「なぜ育児中のメンバーが17時半で仕事を一度切り上げるのか」といった背景を言語化して共有しておくと、育児経験がない人にも理解が広がると思います。そうすることで、不必要な連絡や誤解が減り、お互いに働きやすくなるのではないでしょうか。
2つ目は、育休中でも会社とのつながりを持てる仕組みがあると嬉しいです。僕の場合、育休中に人事の眞壁さんと雑談したり、全社会議にこっそり参加していたんですが、それがすごく励みになりました。復帰時の不安が軽減されてスムーズに復帰できるだけでなく、「会社とつながっている感覚」が持てるのはありがたいからです。例えば、イベントや他のメンバーとの交流が育休中にもあれば、もっと気持ちが楽になるのではないかと思います。
あと一点だけ付け加えると、僕はプロジェクトの節目で育休を取得できたのでスムーズでしたが、もし長期案件を担当している場合の対応がどうなるのかは少し気になるところです。この点をクリアにしておくと、さらに育休が取得しやすい環境になるのではないかと思います。
―育休を取りたいと思っている方に伝えたいことやメッセージがありましたらお願いします。
育休は本当に価値のある経験になると思います。僕も育休を取ってみて、育休期間中そのものだけでなく、終わった後にこそ、その影響を強く感じました。育休期間中に自分でワンオペして育児の大変さを実感することで、仕事を優先したい場面があっても、今は妻がワンオペでやってくれてるんだから、もう少し家事育児を手伝った方がいいな、なんて、自分の中でバランスを取る感覚が身につきました。
育休は単なる休暇ではなく、『育児を知り、自分の未来を見つめ直すための大切な時間』だと思います。僕も育休のタイミングで将来設計を改めて考えたり、それこそマンションを買ったりしましたので。だからこそ、迷っているならぜひ取ってみることをお勧めします。それに、単純に育休は楽しいです。子どもの成長を間近で感じながら、日々新しい発見がありますから。育休を取ることで、子どもとの関係が深まり、人生設計にもプラスの影響がありますので、この貴重な時間をぜひ皆さんにも経験してほしいです。