連載「安武社長、本音聞いてもいいですか?」第12弾は、「また頼みたい人」と「もういいかな、な人」の差についてです。コンサルも営業も、結局は人対人のビジネス。スキルの差より、信頼の差のほうが大きく結果を分けることだってあります。では、その信頼はどこで生まれ、どこで壊れるのか。「また頼みたい」と「もういいかな」が分岐する瞬間のリアルを、安武さんに語ってもらいました。
ー リピートされる人とそうでない人、現場で差を感じることはありますか?
正直、頭の回転が速いとか、資料がきれいとか、そういう話かと思うかもしれないんですが、意外とそこじゃないと感じています。
たとえば、コンサルとしてお客さんの現場に入っていると、「また安武さんにお願いしたい」と言ってもらえるときって、何か特別なアウトプットを出したときよりも、困ったときにすぐ連絡してくれたとか、こちらが気づいていなかった課題を先に言ってくれたみたいな時が多かったんですよね。
結局、コンサルも営業も、「この人から買いたい」「この人に相談したい」という感覚が土台にないと長続きしないと思っています。頭の回転や論理的な分析力はもちろん大事なんですが、それだけではなくて、人の懐に入り込めるかどうか、一緒に仕事をしていて気持ちいいかどうか、そこが決定的に大きいと思います。
そういうことができる人って、実は意外と少なくて。だからこそできるだけで圧倒的に重宝されます。スキルの差より、そっちの差のほうが長期的には影響が大きいと感じています。
あとは、関係ありそうでない話をちゃんとしてくれる人ですね。お客さんや相手の話を引き出すのが上手い人というか。業務の話だけじゃなくて、相手が今何を考えているのかとか、何に困っているのかとか、そういう空気を読みながら話を広げていける人。そこから信頼関係が生まれていく、という実感があります。
ー逆に、「もういいかな」と感じるのはどんな瞬間ですか?
一番感じるのは、売り込みが透けて見えるときですね。
自分がコンサルや営業として人に会うとき、「目的意識を持って会うことが大事」と思っていた時期がありました。何のために会うか、何を提案するか、ちゃんと準備してから行く。それは正しいんですが、あるとき自分、売り込みすぎてるなと感じた時があったんです。相手との会話の中で、どこかで提案のポイントに繋げようという意識が出てしまっていたんですよね。
そういうのって、相手に伝わるんですよ。会話しているときに「あ、この人、何かを売ろうとしているな」と感じる瞬間って誰でも経験があると思うんですが、そうなると一気に距離ができちゃいませんか。信頼関係を作りに来ているのか、売り込みに来ているのかが見えてしまった瞬間に、関係の質が変わってしまうんですよ。
あと、関係性より結果を先に取りに行こうとする姿勢も、やっぱり気になります。初回で「提案資料を送ります」と言って終わる人、相手の状況を聞かずに自社サービスの説明から始める人。悪気はないと思うんです。でも、順番が逆なんですよね。相手が何に困っているか、今何を優先しているか、そこを先に理解しようとしない限り、どれだけいい提案をしても刺さりにくいと思うんです。
一般論として言うと、「あなたの役に立ちたい」という姿勢より「実績を出したい」という姿勢のほうが先に見える人は、一緒に仕事をしていてどこか疲れるし、長い関係にはなりにくいと思います。
ーでは信頼って、どうやって作ればいいのでしょうか?
これは「こうすれば作れる」という明確な答えがないんですよね。ただ、自分が経験してきた中で言うと、やっぱり目的を持ちすぎない接点から生まれることが多いと感じています。
起業してからしばらくして、メンターになってくれた方がいます。最初は壁打ちの相手として話を聞いてもらっていたんですが、そこでこの事業はどうですか?という話より先に、自分の現状とか悩みとか、うまくいっていないことを素直に話せたんです。そのやり取りの中から、自分では気づいていなかった視点が出てきたり、その方から別の人を紹介してもらったりして、新しい事業のアイデアが生まれていった。
関係の始まりって、そういうところにある気がするんですよね。何かを得ようとか提案を受けようじゃなくて、自然な会話の積み重ねの中から信頼が生まれていく。食事をしながら話すときとオンラインのミーティングのときで、出てくる話の深さが全然違うというのもあって。業務の話だけで終わるのか、その人が何を考えているのかまで聞けるのかって、場の作り方でかなり変わると思っています。
だから「信頼を作りたい」と思っているなら、まず相手の話をちゃんと聞いて、自分の話も正直にする。売り込みや結果を急がずに、相手との接点の質を高めていく。やることは地味なんですが、そこを外してしまうと何をやっても信頼には繋がらないと思います。
ーAIの時代に、信頼の価値は変わりますか?
むしろ上がると思っています。コンサルの仕事でAIが担える部分はどんどん増えていて、情報収集も資料作成も分析も、AIからのアウトプットの質がどんどん上がっています。そうなるとこの人じゃなくてもいい仕事が増えてくる分、「この人だから頼みたい」という関係がどれだけ作れているかが、ますます重要になってくると思います。
これからは二方向に分かれていくと思っていて、人と直接会って信頼関係を築く方向か、AIを使いこなして一人でアウトプットの量を出す方向か。どちらも有効ですが、意識的にどちらかに振っていかないと中途半端になってしまう。クリエイティブな発想や新しいアイデアって、多くの場合は人との接点から生まれるものなので、信頼を作るための接点はなくならないと思っています。
AIが何でもできるようになるからこそ、「AIにできないこと」の価値が相対的に際立ってくる。「この人と話したい」「この人に相談したい」という存在になれているかどうかが、AIの時代の仕事の根っこになっていくんじゃないかと思っています。
ー若手へのメッセージをお願いします。
知識や技術を磨くことは大事です。でも、その前にまず一緒に仕事をしたいと思われるかを意識してほしいですね。
コンサルとして頭が切れても、論理的な分析ができても、「またこの人とやりたい」と思われなければ次の仕事が生まれない。これはスキルの話じゃなくて、人との向き合い方の話です。若いうちにそこを意識できている人と、そうでない人では、5年後、10年後の積み重ねが全然違うと思います。信頼って、一度の成果で作れるものじゃなくて、日々の接点の積み重ねで生まれるものなので。
あと、自分の興味関心や問題意識を持ち続けることが大事です。「この人に聞いてみたい」「この分野をもっと知りたい」という感覚があると、自然と人との接点が生まれてくる。信頼を作ろうとして人に会うより、本当に知りたいことがあって会いに行く方が、ずっと自然でずっと相手に伝わりますから。「また頼みたい」と思われる人の共通点を一言で言うと、相手を自分の目的のための手段にしていない人、だと思います。
バックナンバー
Vol.1 Vol.2 Vol.3 Vol.4 Vol.5 Vol.6 Vol.7 Vol.8 Vol.9 Vol.10 Vol.11
特別編はこちら
\\ 情報発信中 // 安武さんSNSアカウントはこちら