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これまでのビジネスモデルを破壊してまでリクルートがイノベーションを起こす理由

就職活動/新卒採用プラットフォームのリーディングカンパニーであるリクルート。しかし、市場の変化は激しく新卒採用の現場には、解くべき新たな課題が次々と生まれていることも事実です。その課題により一層向き合うべく、現在あらゆるチャレンジをしようとしています。

今回はHR領域新卒プロダクトマネジメントユニット長の大西に、その取り組みについて話を聞きました。今まさに向き合うべき新卒採用の課題と、リクルートが目指す理想のサービスについて語ってもらいました。

ビジネスモデルから抜本的な改革と時代の先取りへの意志

―リクルートのHR領域のサービスに、どのような課題を感じているか教えて下さい。

大西:急速に変化するビジネスの潮流に、今のリクルートのHR領域のサービスは追いつけていません。

紙の時代から中途・新卒含めさまざまな採用媒体を展開してきたリクルートは、デジタル化にもいち早く乗り出しました。当時は紙の求人票をWebに載せたサービスでしたが、それでも大きな成功を収めたのです。

しかし、次々にITサービスが生まれ、カスタマーニーズが多様化・ニッチ化する中で、すべてのニーズにマッチさせるようなプロダクトに進化させきることは、まだできていない状態です。

経営陣も今の状況に危機を感じ、抜本的なビジネスモデルの変革に取り掛かっています。

―抜本的な変革とは、具体的にどのような変化でしょうか。

大西:新卒採用は、基本的に1年単位での活動となるため、これまでのリクルートは、企業に対して当年での採用を支援し、ビジネスとしては当年で利益を回収できることに投資をしてきました。つまり「単年」サイクルのモデルだったわけですが、SaaSに代表される今のネットサービスの考え方は、いかに長期的に契約し続けてもらうかが重要であり、そのために単年で売上が見込めるサービスではなく、顧客に継続的に求められるサービスを作らなければいけません。

さらに、これから新卒採用の仕方も大きく変わっていくので、それに合わせたサービスを提供していく必要があります。

―新卒採用はどのように変わっていくと想定しているのでしょう。

大西:例えば今は横並びの新卒一括採用が一般的ですが、一部の企業では新卒1年目から年収1,000万円を提示するような、ターゲットを絞った採用を行うケースも増えてきました。そのような企業は新卒採用でも通年で優秀な学生を探しています。

一方で、新卒一括採用がすぐになくなるかというとそんなことはありません。例えば採用数が多い大手企業の製造や物流、サービス業界などでは、人材を一括で採用し育成することが重要な人材戦略だからです。

つまり、ターゲットを絞った採用と新卒一括採用の2極化が進んでいきます。どちらがいいというわけではなく、どちらの方法でも学生と企業が納得して出会えるサービスを私たちが提供していかなければなりません。

時代に合ったサービスを作るための3つの取組み

―今の時代にあったサービスを作るために、どんなことに取り組んでいくのでしょうか。

大西:直近で力を入れる取り組みは、大きく「面接調整の効率化」「オンラインセミナーの拡充」「スカウトサービスの強化」の3つです。

今の面接の日程調整は学生にも企業の人事にとっても非効率です。複数の新卒サービスを活用している学生たちは、面接の日程を管理するために未だに紙の手帳を使っています。それぞれのサービスの情報が統合されていないため、Googleカレンダーなどのカレンダーサービスより紙の手帳のほうが楽なのです。

人事にとっても面接調整は大変な仕事です。通常業務をしている現場の社員に面接日程の調整をしてもらわなければいけませんし、多くの学生を採用フェーズに合わせて面接調整するのは一苦労です。

面接調整にパワーが掛かってしまうことで、本来出会えるはずの人と企業が出会えなくなってしまいます。面接調整を効率化することは、多くの出会いを作ることに繋がります。

―どのように面接調整を効率化するのでしょう。

大西:1クリックで面接の調整から日程変更、キャンセルまでできるサービスを作っています。既にβ版も完成し、何社かにテストをしてもらっています。無料とは言え、提案した企業の9割が導入してくれており、多くの企業が課題に感じていることが分かりました。

将来的には『リクナビ』利用企業にかかわらず、全ての面接を管理できるシステムにしていく予定です。

―オンラインセミナーについても教えて下さい。

大西:コロナ禍で普及したオンラインの就職セミナーを今後の主流にしていきたいです。昨年、北海道の学生と話したのですが、オンラインセミナーは学生にとって大きなメリットがあると感じました。

これまで地方の学生は、東京の企業を受けるためにマンスリーマンションを借りて就職活動をしている人もいました。しかし、オンラインセミナーが実施されるようになったことで、時間的にも経済的にも負担が軽くなったのです。

地方の学生だけでなく、東京の学生がIターン・Jターンする際にも同じです。人と企業の接点がオンライン化することで、多くの出会いが新たに生まれるはずです。

しかし、まだオンライン化に対応できていない企業も少なくありません。そのような企業をサポートし、コロナ禍が終息した後もオンラインセミナーを一般的にしていきたいですね。

―スカウトに関してはいかがですか。

先にも触れたように、今はターゲットを絞ってバイネームで学生を採用する企業も増えています。『リクナビ』は、機能はあってもこれまで力を入れてきませんでした。

今後はスカウトサービスを強化し、企業が優秀な学生を探そうと思ったときに、1年を通して学生にアプローチできるプラットフォームにしていきます。

古き悪しき習慣を壊す仕事にやりがいを感じる

―大きく事業を転換していく上で、壁になることがあれば教えて下さい。

大西:これからやることは、私たちがこれまでやってきた成功体験をある意味壊していくことです。心情的には抵抗があるかもしれません。しかし、やる時は徹底的にやらなければなりません。リクルートはこれまでも多くのサービスを作り、世の中に受け入れられるサービスだけを残してきました。今回もその流れの一つだと思っています。

しかし、今回の転換は過去と比べても大きな変革です。これまでの「単年」サイクルだけでなく「長期継続型」にモデルを加えるということだけでも、営業の仕方から経営の考え方まで意識を変えていく必要があります。

従来の考えが邪魔をすることもあると思いますが、数年後にはこの道を選んで良かったと思えるはずですし、社会への貢献を考えてもインパクトが大きくなると思います。

―大きな壁を乗り越えなければいけないと思いますが、どこに面白さを感じていますか。

大西世の中の古くて悪しき習慣を壊せることに面白さを感じています。新卒採用の現場には、古いしきたりが数多く残っています。例えば、学生が新卒採用の面接のためだけにリクルートスーツを着るのもそうです。その後の職業人生において二度と着ないスーツに、高いお金を払うのは合理的とは言い難い慣習の一つだと思っています。

余談ですが、約25年前の『就職ジャーナル』(リクルートが発行している大学生向け就職雑誌、現在はWEBで発信)には「ライバルに差をつけよう!」と題したリクルートスーツの特集がありました。そこで紹介されていたのは、チェック柄など今では考えられない目立つスーツばかりです。しかし、ITバブルが弾けて就職氷河期になると、目立つことが悪となって没個性的なリクルートスーツが主流になってしまいました。

個性を消してまで職を求めるのはもったいないと思っています。他にも学歴至上主義など、今の新卒採用には不合理なことが多くあります。それらを壊して「もう学歴にこだわらなくてもいい」と提案できるようなサービスを作っていきたいですね。

―この仕事の意義はなんだと思いますか。

大西:自分で納得した会社に就職することは、日本を元気にすることだと思っています。少子高齢化によって労働力が減少していく日本において、国際競争力を保つにはファーストキャリアが重要です。その後、転職をするにしても、新卒で入った会社で生き生き働いた経験はキャリアに大きく影響します。

毎年、新卒で就職する学生の数は約51万人(※1)です。年間で正規雇用形態の転職者数が約126万人(※2)であることを考えると、とても大きな数字です。それだけの人数の就職活動を支えるのは、とても意義を感じます。

プロダクト作りに最も重要なのは「ユーザー目線」

―採用をするにあたって、どのような人材を求めているか教えて下さい。

大西:理想だけをお話するならば、プロダクトを考える際にカスタマーとクライアントのリアルを理解し、どんなプロダクトを作り、どんな戦略を立てればいいか考えられる人です。そのためにはカスタマーとクライアントとチャネルに、それぞれに100人くらいヒアリングできなければいけません。

かつ、予算などの制約条件に縛られずに考える人です。

―とてもハードルが高いですね。

そうですね。そんな人がいたら、既に経営者だと思います。最低限求めるとすれば、ファーストユーザーの声をしっかりプロダクトに反映できる人です。マネタイズに関しては後から他の人でも作れますが、ユーザーの声を基にプロダクト作れる人は大変貴重です。

―リクルートで働いていると、プロダクト作りも磨かれるのでしょうか。

大西:とても磨かれると思います。リクルートでプロダクトマネージャーをしていると、とにかくユーザー視点を重要視します。上司と話していても「それは誰のニーズなの?ファーストユーザーは誰なの?」というミクロな視点を厳しく求められます。

一方で「そのサービスでマーケットシェアをどれくらいとれるの?」というマクロな視点も重要です。リクルートでプロダクトづくりに関わっていれば自然と虫の目(ミクロ視点)と鳥の目(マクロ視点)でサービスを作る力が磨かれていくと思います。

―ミクロの視点を取り入れるにはどうすればいいですか?

大西:カスタマーやクライアントだけでなく、チャネルの声もちゃんと聞くことです。例えば営業も重要な顧客チャネルの一つです。リクルートは営業が強いことで有名ですが、近年営業の強さを活かしてプロダクトも強くなっています。

顧客に一番近い営業が、プロダクト改善のアイディアを出してくれるからです。いいプロダクトを作ることが、営業の生産性を上げる一番の方法だという意識があるため、営業とともにプロダクトづくりをしています。

―最後にリクルートの仕事に興味のある方にメッセージをお願いします。

大西:私たちの仕事は古くて悪い習慣を壊していく仕事です。古いものを何でも壊せばいいとは思いませんが、悪しき習慣のせいで非効率や不合理なことが起きているなら改善しなければいけません。

古くて不合理な習慣を一緒に壊していきたい方は、ぜひ気軽に応募してください。

※1 文部科学省 学校基本調査を参照(学部卒、修士課程修了、博士課程修了の就職者合計)

※2 総務省統計局の統計トピックスNo.123を参照(非正規雇用から正規雇用、正規雇用間の転職者数合計)

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