ワンキャリアでは、就活支援サービス「ワンキャリア」や転職支援サービス/中途採用サービス「ワンキャリア転職」など、キャリアデータを軸としたサービスを展開しています。個人と企業、双方の意思決定を支援するHRサービス企業として、ここ最近は行政の事業も受託も開始しています。
そうした事業成長の中で、中途領域の拡大を牽引しているのが、執行役員の伊藤です。社長室長を務めながら「ワンキャリア転職」のメディア領域の責任者も兼任し、さらなる価値創出に挑戦しています。彼は、キャリアから教育のあり方を変えたいという想いを胸に2019年にワンキャリアへ新卒入社し、2022年には事業部長・執行役員に抜擢された異色の経歴の持ち主です。
大学時代の原体験やHR業界の醍醐味に加え、「創業ストーリーの真っただ中」にある今のワンキャリアで、ミドル世代が働くことの意義について率直に語ってくれました。
▼こんな人に読んでほしい
・HRマーケットに関心のある方
・スタートアップでのリアルな働き方を知りたい方
・ワンキャリアの事業のあり方やサービスの根底にある思いに興味のある人
キャリアのあり方を見直すことが、教育を変えることにもつながる
ー 自己紹介もかねて、これまでのキャリアについて簡単に教えてください。
伊藤:2019年に新卒でワンキャリアへ入社し、7年目を迎えました。大学時代、自身のキャリアを考える中で、「人生において、重要な意思決定に関わる領域で仕事をしたい」と思っていました。中でも興味があったのは教育です。
今の教育は、「いい学校・いい会社が正解」という前提で設計されているため、この領域だけにアプローチしても限界があると感じています。そのため、出口にある仕事のあり方から見直さないと、手前にある教育は変わらないと考えていました。そこで、これからの働き方や採用を変えていく会社を探したところ、最も自身の考えとフィットしたのがワンキャリアでした。サービスも魅力的で、ここならやりたいテーマに挑戦できると思い、入社を決めました。
ー さまざまな領域がある中で、教育に興味を持ったきっかけは何でしたか?
伊藤:きっかけは、学生時代に出会ったある高校生です。当時、塾講師としてアルバイトをしており、大学受験を目指す学生を指導していたのですが、その子は美術系の大学と四年制大学を併願していました。
結果的にどちらも合格し、四大へ進学したのですが、どうも周囲の大人から「絵では食べていけない」「四大の方がつぶしがきく」と言われて決めたようでした。せっかくリスクを取って美大に挑戦したのに、本人の意志ではない選択のように見えて、すごくもったいないと感じたんです。
四大を出ないと絶対に就けないという仕事は、実際のところほとんどありません。それなのに、進路が安心かどうかで決まってしまう社会って何なんだろうと、疑問が湧きました。「どうすれば子どもたちが、やりたいことに素直になれる社会になるのか」を考え抜いた末、キャリアや仕事の構造そのものを変えることが、自身が取り組むべきテーマだと確信したんです。
「人を通じて、社会を動かす」それがHRビジネスの醍醐味
ー 伊藤さんから見て、HR業界の面白さは、何だと思いますか?
伊藤:1つは、採用という「マッチング型のビジネス」を扱うことです。特にワンキャリアが手掛けるB2C型サービスは、企業と個人でお金の出し手が異なるために構造が複雑で、ビジネスとしての難易度も高くなります。
もう1つは、「人を扱う仕事」であることです。「どの企業がどのタイミングで採用を成功させるか」「どの業界が盛り上がっているか」など、採用は雇用の調整弁としての役割も果たします。そうした意味で、経済や社会と密接に結びついた影響力の大きい領域だと実感しています。
事業がある程度の規模まで成長すると、国や行政と連携する機会も生まれます。例えば、人事院の意見交換会に取締役執行役員CSOの北野が呼ばれたり、2025年7月には「国家公務員採用試験志望者層に対するWEBを用いたセミナーの実施業務」の事業者にも選ばれたりしました。こうした機会を通じて、人口という国家のリソース配分に関わることができるのも、HRの面白さだと思います。
伊藤:新卒から中途まで、キャリアの時間軸を一貫して押さえている点です。さらに私たちは、企業と求職者の両面に関わるBtoBtoCという立ち位置でHRサービスを展開しています。これだけの規模で運営できている点も、他社にはない強みだと思います。
この取り組みを支えているのは、豊富なキャリアデータとユーザーとの継続的な接点、そして何より「エンドユーザーファースト」という価値観です。キャリアデータを提供してくださる求職者の存在こそが、私たちのビジネスの土台です。だからこそ、その信頼を裏切るような行動は決して取りませんし、こうした価値観は、ある意味で私たちを律するルールにもなっています。
ー 短期、そして中長期的に目指す目標を教えてください。
伊藤:短期的には、新卒領域で現在2番手のポジションからNo.1を目指すこと、中途領域でも同様にトップを狙うことが目標です。
中長期的には、就活で「ワンキャリア」を使ってくれたユーザーが、転職を考えた際に再び「ワンキャリア転職」を選んでもらえる状態をどうつくるかが鍵になります。現状では新卒と中途の接点がまだ弱いため、「転職」という選択肢が思い浮かんだときに、真っ先にワンキャリアの名前を浮かべてもらえるようにすることが重要です。そのため、ブランドへの信頼や愛着をどう育てていくかも、今後のポイントになります。
ワンキャリアで活躍しているのは「やりたいことが明確な人」
ー ワンキャリアはどのようなスピード感で進んでいますか?
伊藤:上場を機にガバナンス体制が整ったこともあり、会社全体としては、いわゆるザ・スタートアップのような自由度の高いフェーズにはありません。 ただ事業のスピード感という点では、今も勢いよく成長しています。2025年12月期の決算では、売上高は約75億円、年間40%の成長でした。
市場の成長ポテンシャルも高く、新卒採用領域で約1,500億円、中途採用領域で約6,000億円の規模が見込まれます。ワンキャリアはこれらの市場で、3桁〜4桁億の売上を目指しているフェーズにあることからも、まだまだ挑戦の余地がある会社です。
2025年12月期 第1四半期決算説明資料より
伊藤:一見、すでに安定した組織に見えるかもしれませんが、実際は発展途上です。何かを起案する際も、会議で出た論点を「来週の定例で」では遅い。早ければ当日、遅くとも3日以内にはアクションを起こすといった感じで、スピード重視の文化があります。小さく完結した事業をつくりたい人には合わないかもしれませんが、スピード感を持って事業を大きくしていきたい人にとっては、面白い環境だと思います。
ー 未開拓の領域についてはどう考えていますか?
伊藤:当社の今の市場シェアはまだ約1%です。マーケット全体から見れば、開拓の余地は圧倒的に残っています。だからこそ、「何を任せてもらえますか?」というスタンスよりも、「自分は何をやりたいか」を持っている人のほうが、組織との相性は良いと思います。
現在は、新卒・中途をクライアントにつなぐ領域を主戦場としていますが、将来的には別の採用領域へ広がっていく可能性も十分にあり得ます。ただ、どこまでチャレンジできるかは、その人の意志と行動にかかっています。
ーー挑戦を後押しする風土について、印象的なエピソードを教えてください。
伊藤:ワンキャリアでは、「この人なら」となれば、その人に合ったチケットを用意してくれる環境があります。
私自身、2022年に事業部長・執行役員を任されたときは、マネージャー経験はわずか1〜1.5年でした。課長・部長ポジションを経験せずの抜擢で、明らかに身の丈以上の役割でしたが、その経験は今の自分につながっています。
ワンキャリアは、単に優秀な人だけではなく、ある種の外れ値ともいえるような個性を持つ人にも挑戦の機会を与える会社です。
もちろん、こうした抜擢を制度としてどう根づかせるかは、これからのテーマです。ただ少なくとも、「やりたい」「挑戦したい」という意志を持った人に対しては、真正面から応えてくれるカルチャーがあります。
「10年後のHR業界に何を残せるか」を一緒に考えられる人と働きたい
ーワンキャリアは「人の数だけ、キャリアをつくる。」をミッションとしています。その達成率を教えてください。
伊藤:まだまだ道半ばです。日本の人口は約1億人。そのうち、私たちの登録会員数は約200万人と、カバー率はわずか2%です。全人口を対象とするサービスを目指す以上、現時点ではまだ数%の世界にとどまっているのが現実です。
大学生に限れば、60〜70%のシェアを獲得していますが、私たちのミッションは「大学生のキャリアをつくること」ではなく、「人の数だけ、キャリアをつくる。」ことです。だからこそ、ユーザー層をさらに広げていく必要があります。
ーワンキャリアは業界的にまだまだ若い会社です。今後、経験豊富なミドル層が参画するとしたら、その面白さは何だと思いますか?
伊藤:設立から約10年の若い組織だからこそ、変化に柔軟に対応できるスピード感があります。それがこれまでの成長を支えてきた要因の1つです。
この成長フェーズに、経験を持つミドル層の人が加わることには、大きな意味があると感じています。ワンキャリアがこれまで培ってきた価値観やカルチャーに、新たなメンバーの視点を取り入れることで、仕組みやオペレーションをさらにアップデートすることができるからです。むしろ、そうした変化を一緒に起こしてほしいという期待すらあります。
実際、社内で活躍している人には共通点があります。それは、「短期的な成果だけでなく、それが本当に求職者にとってプラスになるか」という視点で物事を判断していること。また、「長期的かつ本質的な視野を持ち、ワンキャリアのバリューに強く共感していること」です。
HRは「重い産業」とも言われていますが、何かアクションを起こしたところで1〜2年で劇的に変革を起こすということは難しいです。私たち自身も、約10年かけてようやく「クチコミ」という文化を企業の採用活動に根づかせてきました。それだけ、本質的な変化を起こすには、短期ではなく、長期的な視点が欠かせません。「この業界で10年後に何を残せるか」という問いに真正面から向き合い、企業の採用の本質を変えることに、自分の人生の時間をかけたいと思える人と、ぜひ一緒に働きたいです。
ー伊藤さんご自身は、今ワンキャリアで働く魅力をどこに感じていますか?
伊藤:社会や国という単位に対して影響を与えられる会社に関われる機会は、そう多くありません。けれども、ワンキャリアにはその可能性があると感じています。
私は「どんなスキルが身につくか」よりも、「どんな質的な体験を積めるか」のほうが重要だと考えています。ワンキャリアをグレートカンパニーにするという挑戦そのものが、まさにその体験です。自身が関わることで300年続く会社の実現に貢献できるかもしれないーーそんな手応えを感じながら日々働いています。
正直、HR領域に最初から強い関心を持っている人は多くはないと思います。でも、採用というのは本来、企業と求職者が「目指す方向が重なるなら、一緒に進もう」と手を取り合う営みです。私はそれを、コストではなく投資と捉えています。だからこそ、一緒に働くメンバーにもウォーレン・バフェットの言葉にあるような「ロングホールド」の視点を持ってもらえたら嬉しいですね。
創業者の本を読むと「創業初期にこういう出来事があった」といったエピソードがよく出てきます。今のワンキャリアは、まさにその創業ストーリーの真っただ中にあると感じています。その1ページに加われるタイミングであることも、今、ワンキャリアで働く魅力の1つです。
今回の記事では、伊藤の話から、事業を通してワンキャリアで働く魅力をお届けしました。「ワンキャリアでの仕事に少しでも興味が湧いたかも」と思った方は、ぜひ下のリンクから募集ポジションをチェックしてみてください!
企画・取材・編集:山下 麻未
執筆・撮影:スギモトアイ