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「それを諦めたら経営者として終わり」個の強みを模索する、ワンキャリアの組織カルチャー(代表インタビューvol.2)

第2回の代表インタビューは「人・組織編」です。

コアバリューの1つに「個の強みの模索」を掲げるワンキャリア。メンバーの才能を見つけて投資する組織カルチャーは「人が変わる瞬間を見たい」と人への投資を惜しまない宮下の姿とも重なります。

創業以前から変わらない人への向き合い方やこだわり、組織への考え方を聞きました。

【第1回】

「無理」と言われても突破する。ワンキャリアがHRのクチコミサービスを伸ばせた理由とは?(代表インタビューvol.1) | 株式会社ワンキャリア
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創業期から変わっていない“異常さ”

―ワンキャリアでは「この人の強みは何か」「どこに投資すれば成長するか」といった議論がよく交わされます。コアバリューの1つである「個の強みの模索」を象徴するシーンの1つですが、宮下さんの人との向き合い方が反映されているのでしょうか。

宮下:そうですね、人との向き合い方は昔から変わっていないと思います。学生時代から付き合いがある高木新平(NEWPEACE代表取締役CEO、ワンキャリア社外取締役)も「人に対して異常に可能性を模索するのは創業期から変わっていないね」と話しています。



―具体的には、どのように向き合うのでしょうか。

宮下:私が人に対してこだわりを持つときは「いいお節介」を徹底的にします。

 

―「いいお節介」ですか?

宮下:これはある方が話していたことなのですが、その人と向かう先が同じときにするのが「いいお節介」で、そうではない場合に関心がないことを無理にさせるのは「ダメなお節介」。私は、ミッションが同じ人に対して、強いこだわりを持つのです。

例えば、本来は適性があるのにマネージャーへのチャレンジに尻込みしている人に対して「マネジメントを経験した方が早くミッションを達成できるし、あなたのキャリアを考えても絶対にいい」と背中を押すことは、よくしています。

 

 

人の10倍の能力を開花させる。それを諦めたら経営者は終わり

―とはいえ、その人の強みや可能性を見いだすことは簡単ではありません。難しさは感じませんか?

宮下:難しさは昔から感じています。今ではさまざまなイベントやメディアに登場して活躍している寺口も、1年くらい模索していた時期がありました。

寺口は入社当初は営業だったのですが、花が開きませんでした。理由は、当時は折衝が苦手で、契約を取ることが難しかったから。でも、お客さまとは信頼関係を築けていました。彼にしか聞き出せない情報がありましたし、私たちがアプローチできなかった人ともコミュニケーションを取れている。それなのに受注できない。

はじめは理由が分からなかったのですが、やがて「寺口さんは仲良くなるのが得意な人なのだ」と理解できました。それならば、人と仲良くなる才能が求められる仕事をすれば、輝ける可能性があるなと。実際にその強みを生かせる業務にアサインしたら、KPIの10倍近くの実績を叩き出しました。

 

―強みの生かし方が分かったのですね。

宮下:強みを発揮できるよう、得意なことにどれだけ注力してもらえるか。それを模索するのが経営者の仕事だと、彼に教わりました。

会社という組織において「得意ではないが、やらないといけないこと」を抱えている人もいるでしょうが、そのことが本人の才能をブロックする要素になるのであれば、取っ払える方法がないか模索したい。一般的な人の10倍の能力を開花させられる領域を探す。これを諦めてしまっては、経営者として終わりだと思っています。



―「経営者として終わり」と言えるまでの強い思いがあるのは、なぜなのでしょうか?

宮下:これには、過去の反省もあります。

学生時代に自分でビジネスをしていたとき「なぜ、これほど仕事を取ってこれるのだろうか」と思う人がいました。

その人は、経営者と他愛のない世間話ばかりをしているような方でした。当時の私は「もっと意思決定をシャープに伝える方が、経営者の心をつかめるのでは」と思っていました。でも、それこそがその方の特異な才能で、経営者の好みに合わせて、いろいろな話ができるから好かれ、仕事につなげられたのです。

 

―人の能力や優劣は、単純に分かるものではない、と。

宮下:当時は自分の視野が狭かったのだと思います。「人にはいろいろな才能の生かし方があるのだな」と学ばせてもらいました。

ワンキャリアを創業してからも、隠れていた才能を発揮した人が周囲からの評価を変えていく瞬間を見てきました。だからこそ、良い才能を生かせる環境をつくる。それが人を預かる経営者としての責任だと考えています。

 

 

人が舞台に立つ瞬間は、本当にかっこいい

―お話を聞いていると、宮下さん自身が「その人が才能や能力を花開かせる瞬間を見たい」と強く思っているのではないでしょうか。

宮下:そうですね。「その人が輝く瞬間を見たい」という欲求は強いです。

 

―「人が変わる瞬間をデザインしたい」という言葉をよく使っています。

宮下:おこがましい表現かもしれませんが、中学生の頃から「人が変わる瞬間をデザインしたい」と言っていた記憶があります。大学生になっても、口ぐせのように周囲にそう話していたそうで…。ずっと体に染み付いている欲求なのだと思います。

 

―何か原体験のようなものがあるのでしょうか? 

宮下:これは母親の存在が大きく影響しています。母はピアニストだったのですが、演奏会でステージに上がった瞬間、かっこよかったんです。家で見ている普段の姿からがらりと変わり、自分の母親だとは分からないくらいに。

人が変わった瞬間、人が舞台に立った瞬間というのは、本当にかっこいい。私自身はピアノも音楽も興味が持てなかったし、才能がなかったけど、そう思わせてくれました。

だから、ワンキャリアでその人が変わる瞬間があるならば、そのステージを見てみたい。デザインしたいというよりも、できれば私も末席に加えてほしい。そんな気持ちですね。

 

 

嫉妬してしまうほど、みんなが才能を見つけてくれる

―人に対するこだわりは、採用にも出ています。社員の中には、年単位でアプローチして入社につながった人もいますよね。

宮下:頑張ってやっているつもりは1ミリもないんです。自然とやっている感覚ですね。

 

―「何年かかってもいいから、うちに来てほしい」とラブコールを送り続けて、入社につなげているのでしょうか。

宮下:どちらかというと、相手との確認作業に近いですね。

私が「入社してほしい」と思うのは、明確にその人の強みを生かせる環境がある場合です。その方の強みが分かっていて、それが発揮できる場所や上司もイメージできている場合は、何の迷いもなくアプローチします。

ただ、その人自身も、事業も常に変わります。だから半年〜1年ごとに会いに行って、ワンキャリアの現状を確認していただくのです。私も「以前に会ったときから事業の状況も変わっているけど、この人は今入っても輝くな」「やっぱり、この人は面白いな」と確認させていただいています。

 

―宮下さんにとっての「面白い人」とは、どんな人なのでしょうか?

宮下:私にとっての面白いというのは、その人の才能を一緒に伸ばしていけるかどうか。この1点です。

私にとっての興味関心事はミッションである「人の数だけ、キャリアをつくる。」の実現です。「ミッションを実現する上で、こんな人がいてくれたら」「こんな人が入ったら、ミッションの実現に近づくし、面白いのに」とずっと頭の中で考えています。

 

―まずはミッションの実現のために事業があり、その上で輝く人たちを探しているんですね。

宮下:そうですね。この先も永久にやっていくと思います。

 

―ワンキャリアは正社員の人数が197人(2024年6月末現在)となり、今も組織の規模は拡大中です。社員の人数が増える中で、オーダーメイドでそれぞれの才能を伸ばしていくことは、大変ではありませんか?

宮下:人が多くなれば、社員がキャリアで大切にすることも多様になります。そうすると、才能の伸ばし方も多様化・複雑化するため、これまでの成功体験だけでは通用しないでしょう。

ただ、私が気付いていなかった才能を他の経営陣やマネージャーが伸ばしている事例が何件もあるので、心強いです。「そういう活躍のさせ方があるのか」「この人の才能は、こんな所にあったんだ」と驚きます。自分ができなかったことが悔しくて、嫉妬心を覚えるくらいうれしいですね。


ワンキャリアが必ずしも1番だとは思わない

―事業だけでなく、組織としての成長も感じているんですね。

宮下:そうですね。ワンキャリアでは人事ポリシーをミッションと同じ「人の数だけ、キャリアをつくる。」に設定しており、その浸透を感じます。

一方で、「うちの環境が1番だ」とは必ずしも思わないですね。

 

―どういうことでしょうか?

宮下:その人にとってベストな環境が社内にあるとは限らない、ということです。

例えば、ある人の強みが見えたとしても、事業でインパクトする領域が分からないことがあります。あるいは、その領域は分かっても上司がそこまで育てられない可能性も。上司が別のスペシャリティーを持っていて、うまく噛み合わないことも。さまざまなケースが考えられます。この点に関しては、私たちの会社としての実力が出るなと感じています。

もちろん、その人がワンキャリアにいる間は、一番輝く環境をつくりたい。でも、活躍できる領域がワンキャリアの外にあったのであれば、チャレンジしてほしいなと思います。

 

―その人のキャリアにとってベストな選択であれば、ワンキャリアを「卒業」してもいい、と。

宮下:そうですね。例えば、自分で事業を立ち上げるために退職された方々もいます。彼ら彼女らからは将来やりたいことを聞いていたので、退職の意思を伝えられたときは「ついに、そのタイミングが来たか」と思いました。止めることはできない、応援したいという気持ちでした。


―仲間と別れる寂しさはありませんか?

宮下:もちろん、あります。経営者としては、人材がいなくなるのは痛い。個人としても寂しい、悲しい…。でも、やはり個人としても経営者としても応援したい気持ちがあります。


一方で、また一緒に働きたいとも思っています。そういう意味では、学生インターンだった人たちが社会人になってからワンキャリアに転職してくる「出戻り」やリファラル(社員の紹介)で入社された方は全社員の約30%に上ります。これだけの方がワンキャリアとの関係を深めてくださっているのは、非常にありがたいですね。

 

―長いキャリアの中で、ワンキャリアで働く期間もあれば、離れる期間もあっていい、と。

宮下:言葉を選ばずに言うと、一生一緒に働くとは思っていません。でも同時に、もし離れたとしてもいつかまた一緒に働きたい。これが私の正直な気持ちです。ずっと一緒じゃなくても、一緒にいる間は最大限いい環境を用意したいし、最大限のパフォーマンスを発揮してほしいな、と思っています。

第3回へ続く)


今回はワンキャリアの組織カルチャーについて、宮下にインタビューしました。ワンキャリアのことが少しでも気になった方は、ぜひ以下のリンクから気になるポジションをのぞいてみてください。


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企画・取材・編集:吉川 翔大
ライター:松本 浩司
撮影:mikico


【第3回】

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