飲食事業部責任者の林田です。
私は町工場の末っ子として育ちました。
生まれ育ったのは東大阪市。この街には5,000を超える工場があり、その密度は日本一とも言われています。小さな工場がひしめき合い、音と熱と油の匂いが日常にある、そんなインダストリアルな環境でした。
父は研磨業を営む職人でした。
厳格で、礼儀に厳しく、正直かなり怖い存在。でもその背中は、誰よりも真っ直ぐでした。黙々と仕事に向き合い、目の前の素材を磨き続ける姿。そこには派手さはないけれど、「仕事とは何か」が詰まっていました。
町工場の仕事は、決して表に出るものではありません。
けれど、その精度やこだわりがなければ、世の中の多くの製品は成り立たない。
私は幼い頃から、「本質は目立たないところにある」という価値観を自然と学んできた気がします。
そんな環境で育った私が、なぜ飲食の道を選んだのか。
理由はシンプルで、飲食もまた“ものづくり”だからです。
近年、人工知能の進化によって、多くのサービスが置き換えられていくと言われています。効率や合理性が求められる時代の中で、人の仕事はどんどん減っていくかもしれません。
でも私は、それを悲観していません。むしろチャンスだと感じています。
なぜなら、人間のエネルギーの源は「食べること」であり、
そして人にしか生み出せない感動が最も色濃く現れるのも「食」だからです。
恋人同士が愛を語り合う時間。
仕事仲間と未来を語る瞬間。
初めて出会った人と距離が縮まるひととき。
その中心には、必ずと言っていいほど「食」と「空間」があります。
料理の味だけではありません。
誰と、どこで、どんな空気の中で食べるのか。
そのすべてが重なって、記憶に残る体験になります。
町工場が精度を磨き続けるように、
飲食もまた、目に見えない部分をどこまで突き詰められるかの勝負です。
一皿の温度、提供のタイミング、スタッフの一言、店の空気感。
それらを磨き続けることで、誰かの大切な時間をつくることができる。
私は、そこに強い価値を感じています。
派手ではなくてもいい。
でも、確実に誰かの心に残るものをつくりたい。
町工場で育った人間だからこそ、
“見えない価値を磨き続けること”にこだわりたいと思っています。
そしてこれからも、
人と人がつながるきっかけを、食を通じて生み出していきます。