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ネクスタ代表の永原です。
ネクスタは、製造業向けの生産現場を効率化する生産管理クラウドシステム「スマートF」の開発・販売をしており、関西から世界を代表する製造業のバーティカル SaaS 企業になるべく、日々奮闘しています。
前回は、ネクスタの創業ストーリーを書きましたが、
今回は、実際に起業してからプロダクトリリースまでの過程を書きたいと思います。
本格的にプロダクト開発を始めてから、2021年10月の正式なプロダクトリリースまでは約2年。本当に時間がかかってしまいましたが、ようやく生産管理の一通りの機能がそろい、お客様への提供価値が出せるようになりました。
実際の商談でも好評頂くケースが急増し、実際に様々なお客様の現場で稼働し始め、数字も急上昇中です。
※MRR(月額使用料)の進捗
レガシー産業の業務システムのバーティカル SaaS は、とても大変です。
でも、だからこそ可能性はとても大きいと思っています。
ようやくプロダクトができたので、これからはどんどんと仕組み作りと組織作りを行っていく、拡大フェーズに突入します!
この製造業の大きな DX の挑戦に興味を持って頂ける方は、是非お気軽にご連絡ください!
目次
- 決死の思いで、受託開発からの決別
- 業界の常識を打ち破り、カスタマイズしないプロダクト開発へ
- 製造現場のシステム導入の壁、競合はエクセルか1,000万円以上のシステムベンダー
- リーンスタートアップと真逆の決断、より高く険しい山へ
- お客様の要望を聞いてシステム開発しても、良いものはできない
- ようやく見え始めたPMFと目指すべき道
- ネクスタのミッション「製造業の教科書を、デザインする」
- 採用を加速し、仲間集めを本格化
決死の思いで、受託開発からの決別
ネクスタを創業した当時は、正直スタートアップというものがどういうものかも全然わかっていませんでしたし、エクイティでの資金調達など全く知りませんでした。
ただ、自社プロダクトを開発したい!という気持ちはありました。
しかし実際には、起業前に見積・受注していた案件が約7,000万以上あり、既に納品したシステムの追加要望案件などが継続的に入ってくるため、全く自社プロダクトの開発が進められていませんでした。
よくある話なのですが、受託で開発したものを少しずつ自社製品にしていこうと思っていましたが、全然そんな甘くなかったというのが現実です。
当時、200件以上のシステム導入実績がありましたが、全て別々の個別カスタマイズのシステムになっていて、どうしてもお客様個別の要求に応えざるを得なかったのです。
「製造現場の業務をシステム化するのだから、現場で運用できなければ元も子もない。現場には従業員が何十人もいて、いままでのやり方があり、できるだけいまの業務フローを変えたくない。」
これがお客様の声でした。
このままではまずい...。
いつまで経っても自社のプロダクトが完成しない。
お客様の個別の要望に応えたシステムを作っているだけでは、日本の製造現場の IT 化など到底実現しない。
このような考えで、2019年7月頃。
ようやく「もう受託案件は受けない」と決断しました。
それまでに販売パートナーから受けていた受託開発の案件は、全て断ることに。すると、3ヶ月後にはほとんど紹介がもらえない状態になりました。
HP からの問い合わせも多くは受託案件で、それらをほとんど全てを断ることにしたため、新規商談件数はみるみる減っていきました。
その間に、今までのシステム導入の経験を全てつぎ込んで、どんな機能にするか、どんな順番で開発するか、どんなお客様がターゲットになるのか、どう事業を作っていくのか。色々考えながら走り続けました。
その結果、まだ構想段階でしたが、登壇したピッチではいくつかの賞をもらうことができました。
しかし、、、
業界の常識を打ち破り、カスタマイズしないプロダクト開発へ
自社プロダクトの開発は、2019年5月頃から少しずつ進めていました。
ただ、既に見積・受注してしまっていた受託案件の開発をやり切るのに時間がかかったことと、自社プロダクトを作る上での基盤をしっかり整えておく必要があったこともあり、開発に取り掛かるのには時間がかかりました。
そんな中で、2019年11月頃。
ようやく念願の自社プロダクト「スマートF」の本格的な開発が始まりました。
受託案件を断りつつ、「スマートF」がどんなものかパワポで資料作成し、形すらないプロダクトをひたすら営業していたのがこの頃です。
「さすがにカスタマイズを1つもしないのは、難しいと思います…」
社内の営業担当からでさえも、何度も言われた言葉です。
商談に行けば、お客様からは必ずと言ってよいほどカスタマイズ要求が出てくるし、この業界は自社に合わせて「カスタマイズすること」が常識でした。
でも、カスタマイズしてしまうと、意味がない。
製造業の IT 化を推進させるために、低価格でスモールスタートでシステム導入できるようにしたい。そのためには、なんとしてもカスタマイズなしに多くのお客様が現場で使えるシステムを作らなければいけない。
その汎用的なシステムを開発するために、私自身の学生時代のエンジニア経験とキーエンスや父の会社での営業経験、受託開発でのシステム導入経験を基に、汎用性と使いやすさを考えながら、重要なDB設計から画面推移、どんな項目にするのかなど、都度エンジニアと相談しながらも、最初はほぼ全て一人で決めていきました。
まだこの時点ではパワポの資料しかありませんでしたが、それでもプロダクトが形になる前に何件か受注もでき、順調な滑り出しができたと思います。
製造現場のシステム導入の壁、競合はエクセルか1,000万円以上のシステムベンダー
プロダクト開発開始から約半年の2020年4月。
ようやく一部の機能でα版リリースができました。
でもここからが本当に大変な始まりで、リリースしたプロダクトは思うようには売れませんでした。
そもそも製造業の現場の業務フローは複雑です。あらゆる業務フローが一連の流れで行われ、様々な部署が関わって日々ものづくりをしています。
製造現場のオペレーションは非常にアナログだけれど、現場の方々は熟練の神がかった属人的なオペレーションで回しています。
この製造現場の日常業務をシステム化する生産管理システムは、そもそも、今の現場の運用に対応できなければ、逆に非効率になってしまうので、いくらスモールスタートできても、導入なんてできません。
現場の日常業務をシステムに落とし込むことは簡単にはできませんし、それをうまく使ってもらうことも簡単ではありません。
さらに、現場の効率化や改善はしたいと思っている一方で、実際に導入するとなると、今の慣れた運用が少し変わったり、データを整理したり、様々な部署の人や実際の作業者を巻き込んで検討しないといけないので、簡単にできるものでもありません。
システム導入を検討する時間が取れず、今の業務フローを変えることに反発する人も多く、IT リテラシーが低い人も多い。
なので、ネクスタの提案は「良い」と言ってくれるものの、結局商談としては全然進まない案件も多かったのです。
一方で、この業界では20年以上、生産管理システム開発に特化して提供する会社がいくつかあるので、本格的に導入検討しているお客様にとっては、「スマートF」ではまだまだ機能が足りないことが多く、その場合は1,000万円以上の費用がかかったとしても、他社システムを選ぶのです。
要するに、本格的に導入検討しているお客様にとって「スマートF」では機能不足。それ以外のお客様には導入までのハードルが高く、なくてはならないものではないので、安くても導入まで至らないというのが実情でした。
その上、まだ一部機能のリリースだけだったにも関わらず、案件が増えれば増えるほど、運用に必要な細かな機能、使い勝手がよくなるような開発が必要でした。
開発にどんどん投資しつつも、受託の売上は徐々に減っていき、製品の売り上げは思うように伸びず...。
本当に、カスタマイズなしで使えるシステムになるのか?
そんな気持ちをずっと抱えながら、走り続けていました。
リーンスタートアップと真逆の決断、より高く険しい山へ
本来のベンチャーでは “リーンスタートアップ” としてできるだけターゲットを絞り、そのターゲットの課題を解決する機能に絞ってスモールスタートさせ、そこから横展開するのが定石です。
ただ、受託開発の経験から、製造業の中でも特定の業界に絞って機能開発してしまうと、別業界への横展開が非常に難しいことも知っていましたし、生産現場の一部の業務効率化だけでは、高い付加価値が提供できないとも感じていました。
今の一部の機能でも売れるかどうかわからない状況 かつ 少ないリソースの中で、どの道を選ぶのかすごく悩みました。
そんな中で、私はリーンスタートアップとは真逆の決断をしました。
「今の機能をブラシュアップして PMFさせていくよりも、最初から幅広い業界で使うことを想定し、生産管理全体の機能を開発していこう」と。
マーケや営業活動はほとんど力を入れず、できるだけ少ないチームで、ずっと顧客と向き合いながらプロダクト開発に注力。開発の中でも、デザインや使い勝手よりも、機能をそろえることを最優先で開発しました。
全然数字が出ていない中で、さらに投資を行って、さらにもっとカスタマイズなしで売れるかどうかわからないプロダクト開発への決断。この決断をした理由は、シンプルに一つだけでした。
「日本の製造業に、大きなインパクトを与えられるプロダクトにしたい」
この頃に自問自答を繰り返して出てきた気持ちで、自分が今まで見てきた製造業を変えるためには、この決断しかありませんでした。
「自分の思い描いているプロダクトができれば、必ず多くの製造業を変えることができる。」と信じて。
そして、「絶対に大手 SIer には負けない!」という自信もありました。
日本の IT 業界の業界構造も知っているし、大手 SIer への就職活動やその業界の友人もいて、どんな人が働いているか知っていて、実際の大手SIerの商談に同席したことも何度かあるので、どんな提案をしているかは知っている。
さらに、ほとんどの会社は顧客毎のカスタマイズで開発していますが、ネクスタは今の1つのプロダクトだけをずっと開発を続けています。この開発を続けていけば、いつか必ず「カスタマイズなしのシステム」が、「従来型のオンプレカスタマイズで数千万するシステム」よりも良いものにできる確信がありました。
それに加えて、製造業の生産性向上は今後、間違いなく伸びていく大きな市場。
ターゲットも絞って今の機能をブラシュアップして売上を少しずつ積み上げるのではなく、少ないリソースをプロダクト開発に集中させ、さらに高くて険しい山を登る決断をしたのがこのときでした。
お客様の要望を聞いてシステム開発しても、良いものはできない
それまでは社員に営業を任せていましたが、全ての案件に同席するようになり、直接お客様の課題や要望を聞き回りました。
ターゲットや機能を絞らずに、より一層様々な業界の様々な課題を聞いた結果、聞けば聞くほど様々な要望が出てきました。ただ、この要望は自社の運用をベースにした課題のため、その通りに機能開発しても汎用的なシステムはできません。
さらに、そもそもが現在が非効率な業務フローで、かつ、システムに詳しくないため、お客様の要望が最善な解決方法でないことの方が多いです。
そのため、この時に常に考えていたことは、たった一つだけです。
「お客様の要望を聞くよりも、どうするのが最適な現場改善なのか」
まず、現場のどこが課題(非効率)かを明確にし、その根本原因を理解します。それを踏まえて、どんな機能のシステムによって解決するのか、その機能をどのような運用方法にすれば一番現場に負担がないか。
様々な業界の課題や運用を理解し、自分自身がお客様よりも現場に詳しくなること。
それを意識しながら、汎用性を持たせた機能とどのように運用するのかをイメージし、システム設計していきました。
今までの受託開発の経験があったからこそ、どんな機能にすると、どんな運用になるかもイメージがついていました。
前職のキーエンスでは、どんな会社がどんなお金の使い方をするかのイメージもあるので、それを踏まえて、どの機能を優先的に作るのか、取捨選択しながら開発していきました。
同時に、システム導入の高いハードルをどのように下げていくか、どんな提案をしたらお客様が動いてくれるかなども考えながら、様々な施策を試してきました。
この期間は、むちゃくちゃ不安でしたが、目の前の開発に必死で心配している暇もないほどに考えて、動き回りました。
この取り組みの方が、必ず日本の製造業の将来のためになる。
ただそれだけをエンジンにして突き進んでいました。
ようやく見え始めたPMFと目指すべき道
本当にきちんと売れていくかどうかわからないまま、さらに1年かけて開発に注力した結果、ようやく一通りの機能ができてきました。
累計粗利2億以上の製造業向けシステムの受託開発のチームとノウハウがあったからこそ、この生産管理という複雑でたくさんの機能が必要なシステム開発を効率良く開発できたのだと、改めて実感しています。
日に日に、商談時のお客様の評価が高くなり、今までの3倍以上の見積単価になる案件もかなり増えました。
打合せ後にすぐにトライアルしたい!こういう製品を探していた!という声も出てくるようになりました。
そうして急にトライアルや導入が増えた結果、次は “導入支援(オンボーディング)” が一気に増えました。
ただ、この導入支援の仕事が、さらに大変でした。
「スマートF」の機能はどんどん増えるので、まずは営業担当自身が追いつくのも必死で、現場がうまく運用できるようになるまでに頻繁に問い合わせがあるので、それを密にサポート。
その中で一番重要なのが、お客様がどのように運用するかの提案です。
今までの経験上、単に「スマートF」の操作説明をするだけでは、上手く使いこなせないお客様もたくさんいました。
実際の商談でも、既存で1,000万以上の他社システムを導入して、上手く活用できています!今の機能で満足しています!というお客様を聞いたことがなく、ほとんどがまだまだ上手く運用できておらずに、ネクスタに声かかる案件も少なくありません。
つまり、どんなシステムかはもちろん大事ですが、それをどうやって運用するのかの方がもっと大事だということがわかってきました。
そのため、ネクスタは現状の現場運用を細かくヒアリングし、
どんな業務フローが良いかを考え、
どんなデータと操作がどのタイミングで必要か、
それをどのように運用するかまで提案するようにしています。
当社では、この一連の “導入コンサルティング” こそが、製造現場が IT 活用する上でとても重要だと、認識しています。
しかし、この「現場もシステムも熟知」している必要がある導入コンサルティングができる人は、世の中にほとんどいません。
もちろん、この導入コンサルティングは簡単ではありませんが、だからこそ、そこにチャンスがあります。
ネクスタでは、業界ごとの「現場の運用」と「システムの機能」の両方を熟知し、業界や課題ごとに「最適な運用フロー」をパターン化し、それを誰でも同様の提案ができるように仕組化していきます。
本当にとても長かったですが、ようやくお客様から評価されるようになり、進むべき道も見えてきました。
最近も売上40億規模のお客様から導入予算4,000万の商談引合があったり、売上1,000億以上のお客様からの引合は、大手 SIer が競合で他社見積はおそらく5,000万以上の規模の提案のようです。
製造業には、こういう案件がたくさんある中で、ネクスタでは絶対にどの会社にも負けない良い提案ができるようになる自信があります。
ネクスタのミッション
「製造業の教科書を、デザインする」
これが、私たちのミッションです。
製造業は、かつて GDP の 1/3 以上を占めるほどの日本の基幹産業でしたが、いまやその存在感もなく、どんどんと衰退しています。そんな製造業ですが、世界に誇れるたくさんの技術力があります。
それなのに、現場ではがまだまだ驚くほどのアナログで非効率な業務がたくさん。
IT 化したくても高額で導入できない、導入しても上手く使えこなせていない、をたくさん見てきました。
そんな現場を劇的に変えていくのが、私たちの使命です。
現場のあらゆる作業をデータ化し、見える化することによって、多くの業務が効率化。本来の日本の製造業の強みである「改善する現場力」を最大限に引き出します。
ネクスタでは、”システムはあくまでもツール” として考え、製造業の最適な業務フローとデータ経営を浸透させ、多くの製造業の収益改善や人材教育など、あらゆる課題解決に貢献します。
さらに、最終的には製造業も「人」が大事です。
改善や頑張りの見える化で、現場の意識向上を行い、IT 活用で「人が育つ」組織作りまで行いたいと考えています。
今後、製造業の生産性向上を行うのは、ロボットかシステム化しかありません。ハードウェアメーカは大手ですごい企業がたくさんあるのにも関わらず、現場改善に力を入れたソフトウェアベンダーはほぼありません。
ネクスタは、システム導入のノウハウが少ない製造業に対して「スマートF」を導入し、ネクスタのコンサルティングを受ければ、最適な工場経営を実現で・必ず収益改善できるようなサービスを目指します。
私たちは、業界一優れたクラウドサービス(導入支援も含む)の提供を行うことによって、製造業 DX を真正面から取り組み、日本経済にインパクトを与えるデジタルイノベーションを実現します。
採用を加速し、仲間集めを本格化
ようやくお客様からの評価が頂けるようになり、ようやく来月に正式リリースをし、ネクスタの第2章が始まります。
今後、さらなる開発スピードアップ、営業や導入支援(オンボーディング)の仕組化、業界別の最適な業務フローのパターン化など、様々なことを同時並行で行う必要があります。
これだけ大変な事業ですが、この超巨大市場の可能性を信じて、一緒にチャレンジしてくれる仲間を募集しています!
いままではほとんど採用活動をしてこなかったので、ネクスタはまだ社員数15人以下のドベンチャーです。一緒に事業を大きくしてくれるボードメンバーやマネージャーをどしどし募集しています!
・ネクスタの事業に可能性を感じて一緒にチャレンジしてみたいと思った人
・ベンチャーの初期フェーズに JOIN して、自分で事業や組織を作っていきたい人や、経営に近い立場で仕事をしたい人
・製造業向けの営業経験があるなどで製造現場のアナログさを知っていて、ネクスタミッションに共感しまくってくれる人
・業務改善コンサルや業務システム SIer の経験がある人
こんな方は、ぜひご連絡ください!
今回もかなりの長文でしたが、最後までお付き合い頂きまして、ありがとうございました。
引き続き、応援よろしくお願いします!!
株式会社ネクスタ
永原 宏紀