目次
◆ 学生からの手紙
◆ 教育現場への違和感
◆“こぼれる生徒”を支える理由
◆ 教員からナイモノへ
◆「優秀な学生」を奪い合う採用
◆「真っ黒な画面」の向こうの学生
◆ 効率だけを求めないエージェント
◆「まだ負けているのが悔しい」
◆ 学生からの手紙
藤木の手元には、いつも一通の手紙がある。
忙しい日々の中での「御守り」のような存在だと言う。
「学生からもらった手紙なんです。入社してしばらくしてナイモノ宛に届いたんですけど、まさかその子から送られてくるとは思っていなくて。これがあると元気になる気がして、いつもバッグに入れています」
藤木は過去にかかわった学生たちの入社後も連絡をとり続けている。
「ただ就活支援をして終わり」ではなく、その後の彼らの状況にも気を配り、何気ない会話の中に潜む入社後の変化や不安を聞いていきたい。
自分が発した言葉が学生の人生の選択に影響を与えるからこそ、その後の彼らの人生において、自分の言葉がどんな価値につながっているのか、彼らの役に立っているのか。藤木にとっては、自身の介在価値の確認でもあり、責任でもあると捉えている。
「しつこいCAなんですよね(笑) ナイモノ内だけじゃなくて、たぶん他の会社のCAと比べても、しつこくかかわる方だと思います。
学生の人生にも、CAとしての目標にも、チャンスがあるなら粘り強く、というか、かかわる相手に対して諦めたくない」
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◆ 教育現場への違和感
大学を卒業後、中高一貫の女子校で教員を経験した藤木。
もともと小学校から続けてきた合唱と、高校で気づいた数学の面白さ。どちらの道を選ぶかを迷った末に、数学教師の道を選んだ。
私立校を選んだのも「毎日スーツを着て働くのは性に合わない」、「自由度が高い環境の方がいい」と考えてのことだった。
それでも、実際に働き始めて3ヶ月で、「辞めよう」と思った。
自由度が高いとはいえ学校という場所である以上、教育方針や校則、そこから生じる人間関係や立場を経験する中で抱いた束縛感。何よりも、自分の信念に反することを求められる場所で働き続けるのは、どうにも耐えられないと感じた。
「自分が前に進んでいない感覚があったんですよね。実際に教員として働いてみると、想像していた以上に制限や縛りがあって、この環境の中で自分は成長できるのかな?という違和感がありました。
それでも子どもたちのことは好きだし、一度かかわった生徒たちの今後を見ていたいと思って働いていました」
自身の高校時代の合唱部でも、精神的に追い詰められるくらいに大変なことはあった。それでも、自分が前に進んでいること、何かを極めていこうとして実感をもてたことに充実感があった。
だからこそ意に沿わない環境の中でも自分ができることを探し、生徒のためを想いながら、納得できる働き方を目指し続けた。
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◆“こぼれる生徒”を支える理由
藤木自身が「この環境は自分には合わない」と思うからこそ、同じ空間ですごす生徒たちにも目が向いたのかもしれない。
「学校の中には、馴染めない子や順応できない人もいるんですよね。忘れ物が多かったり、提出物の期限を守れなかったりして、“だらしない”と言われてしまう。
まわりからもそんな目で見られている生徒って、私は放っておけなくて、そういうタイプの生徒に対応するのはむしろ面白かったし、たくさん時間を一緒にすごしました」
そのスタンスは必ずしも「情」によるものではない。
藤木にとって大切にしたかったのは、全体が調和していること。
集団の中で「ちゃんとやっている人が報われる」ことが心地良いと考えているからこそ、そこに収まりきらない個性にも目を向けたい。
課題の提出ができていない生徒には、放課後に時間をかけて一緒に課題に向き合う。忘れ物が多い生徒には、いつも声をかけて1年以上でもかかわり続ける。
「もちろん自分の信念を押しつけるのは違うと思っています。ただ、集団やルールがあるところで、こぼれてしまう人がいたとしてもそういう人を見捨てたくないんです。嫌いな生徒はいないし、どんな子とかかわるのも面白いな、って思っていました。
仕事環境としては違和感はありましたけど(笑)、それでも続けたのは、そんな子たちをもっと見ていたくて、かかわって成長していくのを見るのが楽しかったんですよね」
◆ 教員からナイモノへ
教員として4年目に、初めて担任を任された。
それは藤木にとっての目標であり、同時にひとつの区切りでもあった。
「思っていた通り、というと変ですけど(笑)、うまくいってしまって。すごく楽しい時間をすごしました。ただ、その一方で“ここまでやってきたからこそ、楽しいままで終わりたい”とも思って、転職活動を始めました」
いくつも会社を見ていく中で、新卒エージェントの業態に親和性を感じた。
かかわる相手のために働きたいと考えていた中でも、ナイモノの掲げる想いや理想、ビジョンに期待感を抱いた。さらに、目標や数字というわかりやすい指標があることで、成果に対して明確な評価が得られることにも魅力を感じた。
「ナイモノで働き始めて1年半ですけど、いつも変化があるのは楽しいな、って感じています。教員時代は、歴史のあるところだったのもあって、そういう刺激はなかったので、自分も前に進めている感覚があります」
CAとして毎日数十人の学生と面談や連絡を重ねていく日々。それが数字となって成果を感じられる。それまでに経験のないことだった。
高校時代の合唱部で経験した「大変だけど充実感がある」という感覚。それに似た毎日の中で、学生と向き合い続けた。
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◆「優秀な学生」を奪い合う採用
400人以上の学生を担当するナイモノのCAでも、藤木の成約率は高い。
学生が納得する企業から内定を得て、承諾をする。そこに売上が生まれ、ビジネスとなる。その意味で、就活支援において内定承諾は、学生からの信用の現れでもある。
いわゆる「優秀な学生」に対してはいくつもの新卒エージェントが注力し、奪い合いになることは珍しくはない。
一方で、そんな環境の中では、エージェントを頼っても「こぼれる」学生もいる。
大学名や資格や経験、「ガクチカ」の優劣まで含めて、他のさまざまな要因が絡まるからこそ、数字やスピードを求めるエージェントの注力の度合いが変わることもあるのが、就活ビジネスの一面でもある。
それを知るからこそ、藤木は言う。
「むしろそういう状況だから、自分が学生にかかわる価値がある。他のエージェントは“優秀な学生”をピックアップして送り込もうとするんですよね。
でも、新卒採用という市場全体や、学生の就活を考えたら、そういう学生たちがちゃんと評価されるように支えるのが私たちの仕事で。就活という機会をちゃんと活かせるように、学生たちにかかわることで彼らの可能性が変わると思うんです」
CAとしての仕事においても、藤木が経験してきた「合唱と数学」の考え方が影響している。
数学も音楽も、然るべきところに向かっていくという意味では同じこと。数学の証明問題も音楽の構成も、「その後」に生まれるものへの期待感があるからこそ。綻びをなくして、調和するように……。
藤木にとっては、学生への支援も同様だった。
◆「真っ黒な画面」の向こうの学生
「学生と一緒に歩いていく感覚です。
人によってできることは違って、就活の枠内では上手にできない学生もいるけれど、できないからダメと決めつけるのは違うと思うんですよね」
そんな藤木のスタンスを象徴する学生がいた。
最初の出会いはオンライン面談。学生側の画面は暗いままで、本人の顔が見えない状態から始まった。
話を聞くと、すでに内定は出ているものの「相談をしたい」と言う。
迷いがあるのか、ただ不安なだけなのか、説得を求めているのか。もしくは他のエージェントには話せないことなのか。黒一色のディスプレイに目線を向けながら、藤木は面談を進めていく。本心は掴めないまでも、自分がかかわる価値があると感じた。
就活を再開することを決めたものの、相手の外見も表情もわからない。それだけではなく、何度ものイレギュラー対応が重なった。
「予約していた説明会や面接を寝坊して当日キャンセルになることが何回もあって、いつも電話をかけて起こしてあげなきゃ、って(笑) 書類の締切に間に合わないときには、本人の話を聞きながら代筆したこともありました」
そんな日々があっても藤木にとっては、「別にストレスとかではなくて、ただその子が良い方向に進んでいってくれればいいな、って」と何事もなかったように話す。
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◆ 効率だけを求めないエージェント
「見捨てるエージェントがいるなら、私がやる」
それは、学生の人生への想いはもちろん、藤木の戦略でもあった。
「優秀な学生」だけを積極的に囲って、優先順位をつけて整えた上で企業に送り込むだけなら、CAの価値は生まれない。それ以上に、自分である必要がない。
目の前の就活対策だけではなく、本人の日常や好みや志向、物事へのスタンスを理解しながらも、答えを迫るわけでもなく「聞く」というよりも「探る」。
発した言葉と本音は違う可能性がある。もしくは、言葉にできていないだけかもしれない。寄り添いながら、本人が納得できる解を探すために、掘り下げていく。
今この時点で学生が求めているものと、本質的に求めているものにはズレがあるはず。そんなスタンスで、学生の人生の「その後」に生まれるものへの期待感をもってかかわっていく。
だからこそ、寄り添う。
そうやって寄り添ったことで、画面の向こうの「顔を見たことがない」学生にも内定が出た。過去の内定先と比べても、本人も納得できる企業に辿りついた。
藤木の手元に手紙が届いたのは、その後10ヶ月が経った頃。
感謝の言葉が綴られていた。
画面に顔を出すことさえ避けていた学生が、自分の言葉で思いを伝えてくれた。そこに自分がかかわれたことを、形として実感できた。
◆「まだ負けているのが悔しい」
「しつこくする相手を選んで、しつこくする」
藤木は、自身のスタンスをそう語る。
かかわることが難しい学生と思われてしまう学生にも、本人なりの思いがある。それを汲みとり、引き出しながらかかわることで、学生の人生に影響を与えていく。
「変な言い方ですけど、学生の言葉を真に受けない。
汲みとると言っても、学生は社会のことも自分のこともわからない中で言っているので、少なくとも採用や就活を知っている側として、ちゃんと聞いた上でヒントを出すというか、押しつけないように必要な言葉を投げかけて、一緒に考えていくのは大事だな、って思っています」
そんな藤木は、ナイモノの採用チームを担当する立場になった。
「新卒エージェントという市場で、まだナイモノが負けているのが悔しいんですよね。
もともと会社の目指す方向にビビッと感じて入社して、会社も変化している中で、まだ自分が返せているものはないと思っていて。原点に戻って、やるべきことに本気で向き合っていきたいと考えています」
藤木の「しつこさ」の根本には、現状への違和感があるのかもしれない。それは特定の個人に対してではなく、教育現場や就活の現状を踏まえて、自身が考える「調和」に向けて動いていく。
これから新たに学生への影響を考えながら、新卒マーケットの正常化を目指して、採用チームのメンバーとしての挑戦を続けていく。
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