Mellowでは今期から「自分がいくら給与を貰うのか」を自分で決めるようにしています。ちょうど昨日、1周目のプロセスを終えて給与改定額が決定したので経緯と感想をまとめました。
経緯その1:経営方針と合った仕組みづくり
まず、Mellowは一緒に働いてる人同士がお互いの人生ややりたいことを応援しあえる組織にしたいという想いを持って経営されている会社です。
その方がみんなエネルギッシュに安心して働けるし、結果として事業も伸びると思っています。(かといって皆が完全に好きに働いているわけではなく、大まかな方向性の意識をあわせるために会社として目指したい方向性を共有するなどの努力は前提ですが。)
ですが、この想いを実現するためには社内からできる限り利害関係を無くす必要があります。利害があると、自分にとってメリットのあることしか応援しづらいからです。隣の部署の友達を手助けしても自分の給与上がんないし、みたいな。
そこで、インセンティブ設計という経営の考えを捨てて「自分の本心や信頼してる仲間たちに胸を張れる仕事をできたか」という問いを軸にした給与自己決定制を試してみよう。という経緯で、今回のトライは実現しました。
経緯その2:人が人を評価するシステムの限界
他人からの評価が最終決定になって、それに自分が心の底からは納得できていない時、そういうモヤモヤは徐々に溜まっていきます。そもそも評価ということをやっていく上では、周りの評価と自己評価のギャップが小さくなるようにお互いを知る努力を効率よくしていくのが大事で、それが評価制度の運用そのものだと考えています。
という風に考えると、上司が決める評価の仕組みにおいては「評価制度運用の失敗=納得できない評価結果」を従業員に押し付けてるという話ではないか? そしてその結果を従業員に押し付けることによるリスク(退職や不満を周りに漏らして空気が悪くなるなど)って、給与を「上司が決めるケースより払いすぎちゃうこと」よりも深刻じゃないか? という懸念が現れます。
上記の経緯から、いきなり10億とか言われて会社が潰れるとか、給与インフレとか、そういうやつを回避するための最低限のリスクヘッジだけすれば、給与自己決定制は組織運用上のリスクマネジメントとしても現実的なのではという仮説を立てました。
その結果、周りの評価と自己評価のギャップがない状態を目指すという点は変えずに、決定権だけ各自が持つ状態を作っていくという方向性でトライをしていくことに。
やったこと:コミットメントベースで、信頼関係を通じて給与を自己決定していく
① 期初に以下の2つを定める(各自が叩きを作成。最低3名以上からフィードバックをもらって決める。)
・「今の給与に対して最低限果たそうと思っていること」(ベースコミット)
・「プラスαでチャレンジすること」(チャレンジコミット)
② 月1で三人一組になって振り返りをして、事業環境の変化や個人のライフステージの変化などでコミットが変わる場合は反映をする
③ 半期たったら半年間をコミットメント毎に振り返りをしてそれぞれどうだったかを自分の中で整理する
・ここはみんな自由なやり方で。他の人と話しながらとかもあった。
・ベースを果たせていたら基本ステイ。チャレンジを果たせていたら基本アップ。を指針に自分自身で給与を前期比で何%に給与を変更するかを決める。この際、全公開されている会社の財務データなどを参考にしても良い。
④ 決めた内容を振り返りと共に全社員で輪になって発表
・意図として、しっかり振り返った上で、日頃信頼し合っている仲間に胸を張れない仕事しかできていなかったのであれば、自分の欲だけに従ってアップにしたりはしない
・それぞれに対してフィードバックがある人は自由にする。フリートークに近い。
⑤ 上記を終えた上で、改めて自分の給与をどうするか決める。初期決定から変えてもいいし、変えなくてもいい。周りに相談してもいいし、しなくてもいい。ただし、変更の根拠はログとして残す。
⑥ 各自の最終申告を元に給与額変更完了
結果
・今回は今のところステイおよび微増が多かった
(「きもち的にはがんばったからアップ!って言いたいけど、コミットをそれぞれ振り返って冷静に色々考えるとステイかな」とか)
・フィードバックはあたたかい内容がほとんどすべて。場の空気もあたたかい。伝え方によっては批判的フィードバックにもなる内容でも建設的に伝えていた。
・ステイが多かったのはベースをやり切るだけで割といっぱいいっぱいになるくらい事業が急成長している最中というフェーズにも起因するとは思うが、「金のために働く」的なカルチャーが強い人がそもそも少ないことも要因かもしれない。
感想
仕組みを考えた人間としては、みんながチャレンジにもっと時間を使える環境 (≒給与を上げやすい環境) 作りが大事だなと思った。
ベースの仕事の中の「コアバリューに触れないタスク」を外注したりシステム化したりをさらに加速させることに注力すると決めた。
ps. メンバー数が20名程度までは全員のコンセンサスベースで進めて行けるが、20名を超えてきたら給与改定のグループ (業務文脈ではないグループ) を複数作って、グループ毎に進めていくことを想定している。グループを半年毎に組み替えることで硬直化を防ぐなど。また「給与の決め方」そのものを各自が選択できる仕組みについても取り組んでいきたい。