「もしまだ知らない可能性があるとしたら?」
メンタルヘルスラボ株式会社で、うつや発達障害のある方の「働きたい」という思いに向き合いながら、社内のマーケティングにも携わる彭暄翔(以下、HOU)さん。
彼の根本にあるのは、心理学の研究者として身につけた「人から聞いた答えをそのまま信じず、まず自分で試してみる」という姿勢です。
中国で育ち、ストリートカルチャーの中で自由と自己表現を大切にしてきたHOUさんは、なぜ心理学を学び、日本の障害福祉の現場を選んだのでしょうか。
研究、支援、マーケティングなど、一見異なる領域をつなぐHOUさんの好奇心と自由を追求する生き方に迫ります。
目次
「人間は、なぜそう考え、行動するのか」
―まずは現在の仕事を教えてください。
メンタルヘルスラボ株式会社で、就労移行ITスクール平塚のリーダーをしています。
利用者さん一人ひとりの「働きたい」をかなえる支援や行政対応などが主な仕事です。
また、社内ではマーケターの仕事も担っています。
就労移行ITスクールには、「働きたい」と一歩を踏み出す方からのお問い合わせをいただいています。
その内容をひとつひとつ細かく見ながら、本当に支援を必要としている人へ、私たちのサービスを届ける方法を考えています。
―「人の心や行動」への関心は、どのように生まれたのでしょうか?
原点は、中国で暮らしていた小学生の頃にあります。
2008年の四川地震のあと、被災した地域から一人の生徒が転校してきました。私はその生徒とうまく関係を築くことができず、いじめられている場面も目の当たりにしました。
その経験から、目に見える行動だけで人を判断するのではなく、被害を受ける側と与える側、それぞれの心や周囲との関係まで知りたいと思うようになりました。
「なぜ、この人はこう考え、こう行動したのだろう」
そんな問いを持ったことが、今につながる原点です。
高校までは、その問いを深く掘り下げる方法がわかりませんでした。
そこで大学では、人の心や行動を一つの学問として学びたいと考え、日本への進学を機に心理学の道へ進みました。
大学では臨床心理学や社会心理学、認知心理学などを幅広く学び、大学院では脳波実験を通して、言語環境と認知機能の関係を研究しました。
小学生の頃に抱いた「人はなぜそう考え、行動するのか」という問いは、心理学の研究を経て、現在の支援やマーケティングの仕事にもつながっています。
研究室を飛び出し、障害福祉の現場へ
―なぜ研究というアカデミックな世界から、障害福祉の現場へ飛び込んだのですか?
これまで研究に打ち込み、実験を通してさまざまな結果を見てきました。
そして、「理論として成り立つのと、実在する人間に対してそれが当てはまるのかは、全くの別問題である」と気づいたのです。
研究室という「自分が気分よく物事に打ち込めるコンフォートゾーン」を抜け出し、研究で得たものが現場で本当に役立つのか、自分自身で実証したいと思いました。
さまざまな人と関わり、理論を実践に移して確かめることで、少しでも「人の心」の真理に近づきたい。
そう考えて、障害福祉の現場に飛び込みました。
―研究者として得たものが、支援に活きたと感じる瞬間はありますか?
特に「論理的思考のプロセス」は、対人支援に活きていると日々感じています。
たとえば、困りごとを見つけ、「なぜ起きているのか」と仮説を立て、試しながら確かめていく。
この考え方は、研究も支援も同じです。
生活リズムに課題を抱える方との関わりでは、日々の行動を一緒に可視化し、食事時間などの生活習慣を見直しました。
その後、ご本人から睡眠にも良い変化があったと聞き、仮説と検証のプロセスを支援に生かせたと感じました。
何気ない会話の中にも、困りごとを解くヒントはあります。
少しずつ試しながら、その人に合う方法を一緒に探していく。
それは、私が求めていた「実際の人を相手に、理論の実践を行う環境」だと感じています。
支援を軸に、関心の領域を広げていく
―支援やマーケティングの仕事で、「おもしろい!」と感じるのはどんな瞬間ですか?
外から見たら小さな改善と思われることでも、利用者さん自身が「それでもいいんだ」と気づくこと。
それこそが、支援の価値だと思っています。
小さくても利用者さんの変化を感じられたとき、その方自身が変化に気づいたときが、一番おもしろいと感じますね。
マーケティングに関わり始めたきっかけは、自分の担当していた平塚事業所への問い合わせが少なかったことです。
「なぜ来ないのか」と考えぬいて、まず試してみる。
うまくいかなければ、また別の方法を考える。
自分で考えたことが数字や変化になって返ってくる瞬間は、とてもおもしろいですね。
支援とマーケティングは別の仕事に見えますが、僕の中ではどちらも同じです。
困りごとの理由を探り、ほかの可能性を考え、実際に試してみる。
その繰り返しです。
―自分の興味や「やってみたい」を、どのように仕事へつなげていますか?
僕の場合、物事を考えるとき、常に「何か他の方法はないか?」と考えています。
教科書通りの回答はつまらないなと(笑)。
皆が言っていることが本当に正しいのか。そのまま受け入れてもよいのか。
つい、ほかの可能性を探してしまうんです。
みんなと同じであることを求められると、思考が止まってしまう感覚があります。
そのため、「問い合わせが少ない」という課題に対しても、これまで実行してきた施策をただ行うのではなく、
「ほかに要因はないか?」
「あるとしたら、どのような施策が有効か?」
を考え、他の人が試したことのない「オンリーワン」なことを実行してみるというのはやっていますね。
独自の施策や他の可能性を常に考えることは、支援の現場でもマーケティングでも大いに役立っていると思います。
「なぜ?」を追い続ける、HOUさんのルーツ
―人や社会への理解を深めるために、大切にしていることは何ですか?
「その人のルーツを知って、困りごとの根源を探ること」です。
ここが理解できていたら、利用者さんのことも理解しやすくなります。
僕にとってルーツとは、出身地だけではありません。
その人が読む本、聞く音楽、着ている服、お金の使い方までを含む、一人ひとりのナラティブ、つまり物語そのものです。
同じ場所で生まれ育っても異なる考え方になり、同じ経験をしていても異なる解釈が生まれることがあります。
その人が歩んできた物語を知ることが、その人自身を本質的に理解することにつながると思っています。
―HOUさん自身のルーツと、そこから生まれた価値観を教えてください。
「ストリート」。これが僕のルーツです。
幼少期から、学校ではない外で、友人とバスケやダンスなどをして遊んでいました。
僕が育った環境には競争が身近にあり、遊び場を確保するのにも勝負が必要でした。
そんな環境の中で、
「自由でいるためには、自分で考えて、自分で道をつくらないといけない」
と思うようになりました。
何か疑問を抱いても、周りが答えを教えてくれるような環境ではなかったのもあり、自分で考える力は自然と身についたのかなと思います。
他人と比較されて生きることに息苦しさを感じ、「言われたとおりの人生は歩みたくない」と、自由を追求してきました。
これが、先に述べた「オンリーワン」志向にもつながってきているかもしれないですね。
―この仕事を始めてから、自分の中に生まれた変化はありますか?
めちゃめちゃ健康志向になりましたね。体に気を使うようになりました。
利用者さんに体調管理法などを提案するにあたって、自分でも試し、納得できていないことを人に提案することはできないと考えているからです。
また、物事を考えるときに感情と思考を切り分け、一喜一憂しないことを利用者さんに伝えてきました。
そうすることで、自分もその境地に近づくことができたと感じています。
知ることの先に、HOUさんが描く未来
―これから、どんな人でありたいですか?
周りと比較せず自分を貫き、自己表現をし続けられる人です。
人や環境やキャリアは変わっていってしまうけれども、自分のライフスタイルを貫けるようにしたいですね。
僕のダンスの先輩で、人に与えることを続けながらも、キャリアも人生全体も自由に過ごしている人がいます。
誰かの言うことに従うのではなく、自分でいいと思った人生を貫いている姿は、とてもかっこいいなと。
その人のように、ライフスタイルを変えずに自由に過ごしながらも、人に影響を与えることが僕の願いです。
―最後に、この世界に残したいメッセージをどうぞ!
「宇宙の138億年の歴史の中で、一人の100年は塵にすらならない」
そう考えると、人の目や世の中の「正解」に縛られすぎる必要はないと思うんです。
我々の人生はちっぽけで儚い。
だからこそ、自分で選び、やりたいことをやっていい。
僕も自由に自分を表現しながら、誰かの行動や社会の見方を変えるような考え方や、新しい価値をこの世界に残していきたいです。
あなたの「なぜ?」を、誰かの「働きたい」につなげてみませんか?
就労移行支援の仕事は、利用者さん一人ひとりの状況や価値観を理解し、その人に合った方法を一緒に探していく仕事です。
福祉業界が未経験でも、これまでの経験や得意分野を活かしながら、支援の専門性を身につけていくことができます。
人の行動や成長に興味がある方。
ITや教育、人材、接客などの経験を新しい領域で活かしたい方。
自分で考え、試しながら、新しい可能性に挑戦したい方。
ぜひ一度、私たちとお話ししてみませんか?
HOUさんの働き方や、就労移行支援の仕事について、ざっくばらんにお話しできればと思います。
▼就労支援員の求人・カジュアル面談はこちら