皆さんは「うつ病かもしれない部下にどう接すればよいか分からない」といった接し方や対応に関する悩みを持ったことはありませんか?
メンタルヘルス不調は決して珍しくありません。日本では、毎年1年間にうつ病の診断基準を満たす人の割合は約2%といわれています。これは1,000名規模の会社においては、1年間で20名程度がうつ病を抱えていることになります。メンタルヘルス不調はうつ病だけではなく適応障害なども含まれますから、その数はもっと多いといえるでしょう。(参考:厚生労働省ホームページ)
今回は、部下にメンタルヘルス不調の可能性がある場合の、上司としての関わり方・対応方法のポイントをお話ししたいと思います。
本記事は弊社オウンドメディア「リヴァマガ」から引用をしています。
https://liva.co.jp/magazine/7157
目次
- “サイン”をいち早く察知する
- 声掛けなどの接し方はシンプルに
- 部下の話を丁寧に聞く
- 上司としての姿勢やルールを明確にする
- 最後に
“サイン”をいち早く察知する
メンタルヘルス対策は「早期発見」が重要です。
部下の不調を見分けるには、次のようなサインに注意してください。
- サイン①:以前と比べて表情が暗く、元気がない
- サイン②:体調不良の訴え(身体の痛みや倦怠感)が多くなる
- サイン③:仕事や家事の能率が低下、ミスが増える
- サイン④:周囲との交流を避けるようになる
- サイン⑤:遅刻、早退、欠勤(欠席)が増加する
- サイン⑥:趣味やスポーツ、外出をしなくなる
- サイン⑦:飲酒量が増える など
上記は、重要なサインではあるのですが、「一つでも当てはまればメンタルヘルスに問題がある」というわけではありません。
問題があるかどうかを見極めるには「いつも快活なのに最近は元気がない」「いつもはミスなく仕事をする人がミスを連発している」など「いつもの様子との違い」に気づくことが必要です。そのため、上司としては「いつもの部下」を知っておくことが欠かせません。
職場での普段の様子をよく見ておくことに加え、「何に興味を持っているのか」や「仕事のモチベーション」「大切にしていること」など、面談などを通じて人となりを理解しておくよう心がけましょう。そうすれば社員や部下のうつ病らしきサインをいち早く察知でき、早期対応として手を打つことができます。
声掛けなどの接し方はシンプルに
最近はパワハラやセクハラ、アルハラなどのハラスメント対策もマネジメントの課題として語られるようになりました。その影響で、部下に対して過度に気を使う上司が増え、飲み会などが減った職場も多いようです。職場での踏み込んだコミュニケーションの機会が減ったことで、調子が悪い部下に声を掛けることも難しくなり、接し方や対応の仕方に頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。
例えば、遅刻が目立つ若手社員がいるとします。口では「すみません」と言うものの、あまり悪びれた様子はありません。そうした場合、昔なら厳しく注意されたでしょうが、最近の上司は体調に問題がある可能性や周囲への影響も考え、注意するのを躊躇するケースが多いようです。
原因が分からない場合は「最近は遅刻が多いし、仕事にも影響が出ているようだね。心配しているけど、何か困っていることがあるの?」とシンプルに聞いてみましょう。頭ごなしに注意したり、放置したりするのではなく、原因を把握するために、仕事への影響を指摘しつつ、「心配している」という文脈で伝える接し方・対応が良いでしょう。
以下に声かけ・接し方の具体例を記載しました。まずは、シンプルな言葉でいいので声を掛けてみてください。
部下の話を丁寧に聞く
マネジメントが上手な上司は、部下に話をさせることが得意です。部下から相談を受けると先回りしてアドバイスしたくなりますが、まずは、しっかりと部下の話に耳を傾けてください。話を聞く目的は「情報を集め、状況を把握すること」と「安心して、仕事に前向きに取り組んでもらうこと」と理解して対応しましょう。話をする割合は「部下8割:上司2割」くらいが丁度よいでしょう。
仕事や職場環境が原因だと分かった場合は比較的、解決策を提示しやすいかもしれませんが、家族との不和や健康問題など、すぐには解決できない問題もあるでしょう。正解のない問題の場合、話を聞くだけでも十分な効果があります。「それは大変だったね」など共感しながら「一緒に考えたり、悩んだりする」ということ自体に意味があるのです。
時には、声を掛けても「大丈夫ですから」と話をしたがらない人もいます。そのような場合、私の経験的には8割方、大丈夫ではありません。
上司としては「せっかく、心配をして声を掛けたのに…」とモヤモヤすることもあるでしょうが、その気持ちは抑えて「いつでも相談してほしい」と伝え、相談の窓口を開いておくことが、うつ病の社員・うつ病の可能性がある社員や部下との接し方・対応方法では重要です。
上司としての姿勢やルールを明確にする
①職場で配慮すること・しないことの線引きを決める
産業医の立場で企業の職場を眺めると、上司が部下の要求に応じて配慮しすぎた対応をしているケースが見受けられます。 過去に遭遇した事例では、復職後2年が経過しても、まだ通常の就業時間より1時間短縮した勤務をしている方がいました。
おかげで周囲の業務負担が重くなり、不公平に思う社員も多いようでした。 また、別の事例では「疲労が溜まった場合は、水曜日に休む必要がある」という診断書を提出し、当然のように毎週水曜日に休んでいる社員もいました。出社時の様子は至って元気で「残業をするたびに休む」というパターンを繰り返していましたが、上司は「診断書に記載されているから仕方ない」と諦めていました。
このように、配慮すべきことなのか、それとも行き過ぎた配慮なのか、線引きが曖昧であることは上司の対応としては望ましくありません。 うつ病などのメンタルヘルス不調と業務上のパフォーマンス低下に因果関係があるかどうかを判断するには、産業医に相談をして意見を求めるのも良いでしょう。
うつ病などメンタルヘルス不調の場合は「時間外勤務の制限」や「業務負荷の軽減」、「睡眠薬を服用した場合の営業車の運転の禁止」などが、就業上の配慮として必要となることがあります。 一方で、逸脱した遅刻や離席を大目に見たり、短時間勤務などがあまりに長期間にわたると、職場内での不公平感が高まる可能性も生じます。
②体調不調が続く場合は療養に専念させる
うつ病の疑いがある社員や部下など、本人が「問題ない」と言って出社していても、仕事が手についていなかったり、休みがちだったりする場合は、いったん仕事を離れて療養に専念した方が良いこともあります。体調の悪化を自覚していながら病院に行かずに放置し、やがて症状が悪化してしまう…というのは、よくあることです。職場の上司として「一度、病院にいって診てもらったらどうか」という提案をすることも、本人の助けになります。療養に専念させるべきかどうか対応に迷う場合は、下記を参考にしてください。
- ・勤怠が安定しない(週2日以上の休みが一定期間ある)
- ・「死にたい」といった言動が見られるなど希死念慮が高まっている
- ・リストカットするなどの自傷行為が職場で起きている
- ・大声を出す、喚き散らすなどの迷惑行為をしている
- ・他者への暴力行為など、他害行為がある
- ・すでに医療機関からの療養に専念すべきという診断書が出ている
また、うつ病であるとわかった場合は、療養と併せてリヴァトレのような就労移行支援事業所(リワーク)の活用も一緒に検討してみると良いかもしれません。就労移行支援事業所は、職場復帰や再就職に向けて様々なサポート・プログラムを受けられます。
③復職後は必要な配慮はしながらも、特別扱いをしない
うつ病の社員や部下が職場復帰する際、どのように迎えたらよいのか悩むこともあるでしょう。
ある研究によると、うつ病などの気分障害から復職した人が5年以内に再休職する割合は約50%、休職した者の約30%は復職後1年以内に再休職するようです。そのため、やはり復職時には、一定程度の勤務時間や業務内容に対する配慮は必要なのです。体力が低下している復職直後は、休職前と同じ業務量をこなせない場合が多く、段階的に業務量を増やしていく方が安全でしょう。
(参考:H29年度日本フルハップ研究助成報告書(公益財団法人日本中小企業福祉事業財団、2017年)
一方で、復職者に対して腫れ物に触るような扱いをし、手持ち無沙汰になるほどの過剰な業務軽減をしているケースも見られます。「職場ですることが無い」「周りは忙しいが一人だけ暇」といった状況にならないような配慮も必要です。チームの一員であることを実感できる「所属感」やチームに役立っているという「貢献感」はメンタルヘルスには重要な因子です。
「働かせすぎ」だけでなく、「働かせなさすぎ」もメンタルヘルス不調の再発リスクとなり得えます。復職から数か月~半年が経過した段階では、就業制限のない通常勤務となっていることが多いと思います。もちろん、体調によっては残業をさせるべきではないかもしれませんが、少なくとも通常の勤務時間中は特別扱いすることなく、周囲と同様の業務を行ってもらうのがよいでしょう。
復職後の1年間は再休職が多い時期です。定期的な面談を行い、体調確認をしながら、基本スタンスとしては「普通の対応をすること」が良いように思います。
最後に
うつ病の社員など、メンタルヘルス不調を抱えた部下への接し方は、本人のみならず周囲に対しても何らかの影響があります。「本人の気持ちは分からないし…」という管理職のなげやりな言葉を聞くことがありますが、本音だとしても、それを前面に出すのは得策ではありません。
メンタルヘルスやモチベーションを管理しないチームの生産性が低いことは明白ですから、対応を放棄した上司は、自らの職場を諦めているともいえます。人が人の気持ちを理解することは非常に困難ですが、誤解を恐れずに言うと「分かったふりをする」ことも重要です。
仮に分からなくても、うつ病の社員や部下にとっては「同じ目線を持ってくれる上司がいる」という思いが心の支えになり、仕事へのモチベーションに繋がるものなのです。上司の「感度の高さ」は職場の健康に寄与すると思います。
この記事の内容が、明日からの参考になれば幸いです。
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本記事は弊社オウンドメディア「リヴァマガ」から引用をしています。
https://liva.co.jp/magazine/7157
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今回は組織づくりに役立つお役立ち情報として、「うつ病かもしれない部下との接し方で気を付けること」をご紹介しました。
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