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第9回目の今回は、臨床心理学の専門家でありながら、組織開発事業部のコンサルタントとしてもお仕事されている佐藤さんにインタビューさせていただきました。
株式会社リーディングマーク 組織心理研究所 所長
組織開発事業部 コンサルタント / 臨床心理士・公認心理師
佐藤 映(Utsuru Sato)
京都大学大学院教育学研究科博士後期課程を単位取得退学後、京都文教大学で教鞭をとり、2020年にリーディングマーク入社。適性検査クラウド「ミキワメ」のアルゴリズム開発責任者を務める。臨床心理士・公認心理師の資格を持ち、心理学の実践研究者でありながら、100社以上の組織分析やコンサルティングを行っている。
ーまず、現在どのようなお仕事をしているのかをお聞きしたいです。
組織心理研究所の所長という立場で、ミキワメの性格検査データベースの分析や精度向上のための研究、新しいコンテンツ開発などのR&Dを行いながら、組織開発事業部カスタマーサクセスチームの一員として、お客様である経営者や人事の皆様がミキワメを利用される際の組織分析や、結果の解釈・活用のお手伝いをしています。
もともとは臨床心理学の実践研究者として、現場でカウンセリングやコンサルテーションなどの面接相談実務を行ったり、大学で講義や演習などの教鞭をとっていたのですが、ミキワメの開発に外部から関わっていたことがきっかけで、2020年4月からリーディングマークにジョインして働いています。
ーその具体的な入社理由についてお話いただけますか?
ミキワメの性格検査は、2015年当時、株式会社人材研究所社長の曽和利光さんという方から依頼を受けて開発が始まりました。曽和さんは僕の大学の先輩なのですが、元リクルートの採用責任者で、心理学と人事実務をクロスさせた手法で著書なども出されたりと、精力的に活動されていて。曽和さんは、当時から適性検査の情報を企業がうまく使えていない場合が多いことや、候補者に過度な負担がかかるわりに有益な情報が得られていないような状況に課題を感じておられました。もっと手軽に使えて、有益な情報提供がなされ、採用活動や就職活動をもっと効率よく、かつ個人のポテンシャルを最大化できるような検査をつくりたいということで、一緒に開発をはじめました。
当時は「キャリアベース」という名前の検査でした。僕は臨床心理士として働きながら、心理学の研究も専門としていて、性格検査を開発するための心理統計学にも詳しかったため、そのあたりの技術を駆使して開発を行い、その後も定期的に外部研究員としてサポートをしていました。
その後は大学で教員をしていましたが、2018年にリーディングマークがキャリアベースを買収しまして、もっと企業さんに有益に使っていただくために事業を進化させていくという段階になり、僕も引き続き精度向上などでお手伝いをしていました。
2019年には、僕は別の大学に移るための活動をしていたのですが、そのタイミングで現在のミキワメ組織開発事業部長で執行役員の山田桐汰さんが京都に来てくれて、キャリアベース事業の今後の展開についてお話を伺いました。その時に僕も別の大学を探しているという話をしていたのですが、ほどなくして代表の飯田悠司さんから、キャリアベース事業を拡大する関係で開発者の佐藤さんにもぜひ来て欲しいということでお声がけをいただきました。
僕としては、自分で作った検査の行く末に責任を持ちたかったことと、せっかく作った検査なので臨床心理学的な倫理なども含めて正しく使ってほしいと思っていました。ただビジネスの世界は学問や医療・福祉・教育などの領域とは違うため、近くで見ていないと正しく使ってもらうのはかなり難しいだろうと感じていました。
あとは、臨床心理学にも医療や教育など複数の領域があるんですが、会社で働く人の支援は産業領域と呼ばれていまして、その領域にももともと興味があったんです。
18歳から24歳ぐらいの後期青年期といわれる、親元を離れて自立していく段階の心理発達の課題だったり、就職や転職の悩みを抱える人が多いこと、働いて自律すること、幸せに働くことってなんだろうっていうテーマがあって。そこに自分が心理支援者の立場で貢献できることがあるんじゃないかなと。
自分がどういう人間なんだろう、とか、自分には何の仕事が向いているんだろうとか、自分は何をしたいんだろうとか、やりたいことなんて特にないです、みたいな若い人がいっぱいいる中で、ただ適当に、その後何年も続く仕事人生を惰性で選んでいる人はいっぱいいるだろうと思っています。とにかく給料のいいところとか、楽なところとか、いろいろな基準があるとは思うんですけど。生産的に仕事を選んでいる人ってどれくらいいるのかなと思って。できれば前向きに仕事を選んで、モチベーション高く働ける方が幸せじゃないですか。キャリアを決めていくってすごく重要なことだよなと思っているんです。
他の理由としては、僕は臨床心理士でカウンセラーであり、研究者・教育者だったんですけど、一般企業での就業経験はなく、ビジネスの世界がどういうものなのかを知りたかったというのもあります。営業の人ってなにやってるの?とか。
しかもリーディングマークは、ビジネスの世界を知れるだけじゃなくて、組織支援の心理学的な研究もさせてくれるし、臨床心理士としてのカウンセラーの相談業務もさせてくれるとおっしゃってくださったので、それは大きかったですね。
カウンセリングの実践や、心理学研究者としての研究活動に加えてビジネスや人事領域の実務の世界も知れるということで、これ以上にないフィールドだなと思ったので、カウンセラーとしての実務経験と、研究者としてのキャリアを積むために、産業領域の実践研究を行うつもりで入社を決めました。
ー適性検査の課題感や、こういうふうに使ってほしいなどの想いがあればお聞きしたいです。
適性検査を使う場面というのは、昔から候補者と企業の対立構造が生じやすいんです。要は、「いい人を採用したい会社」VS「いい人材と思ってもらいたいの候補者」の構図です。これはあまり生産的じゃないんですよ。企業はそれっぽい適性検査をそれっぽく使って、それっぽい結果が出ていたらOKだし、候補者もそれっぽい回答をして、それっぽくOKをもらえたらOK、みたいなことになりやすい。形骸化している事が多いんですよね。きっちり解釈や数値分析を行って成果が出せている場合も、もちろんあると思いますが、本当に生産的な構造で検査を使えているのかなと。
片や、臨床心理学では、心理検査というのは個人が自分の性格を開示してくれる貴重な機会で、受検した人が利益を享受しなければならないものというふうに僕は教えられてきました。受検者は、普段は人に見せない性格について、検査を通して語ってくれるわけで、あまり自分のことを喋りたくない人にとっては、無理やり引き出されるという側面もあるわけです。
心理検査は、個人のいろいろな側面を教えてくれますが、「教えてもらっている」という感覚なので、受検した人がまず第一に利益を享受できるものでないと、受ける人がただ情報を取られるだけで終わってしまう。
そういう構図だったら、受検者も自分を出さないようにしたり、よく思われようとして受けたりして、正当な結果が出ないわけですよね。そのほうが受検者が得するわけですから。
その構造に対して課題感が強くて、ミキワメを開発したということが根本にあるので、ミキワメは受検者が幸せになる検査として使っていただきたいと思っています。
性格というのは本当に多様で、想像以上にいろいろな人がいます。エネルギッシュな人は営業向きかもしれないし、おとなしい人は事務職向きとか、地道に細かいこともきっちりやってくれる能力に長けている人とかいっぱいいるわけです。その背景には全く異なる性格や価値観があるわけですが、それを人間が判断しようとすると様々な思い込みやバイアスに巻き込まれてしまうリスクがあるので、検査を使って数字を参考に判断したほうが精度があがるということです。ただし、数字ですべて判断するのも危険です。数字や「この人はAタイプです」みたいにラベルを貼ったように人を決めつけて判断してしまうことも、これまたリスクがあるんですね。
大前提として、受検者が「受けてよかったな」とか、「この検査すごいな」とか「他の人もこの検査をやっている企業を応募すればいいのに」と勧めてもらえるぐらいの、受検者の人が幸せになれる検査にしたいと思ってますし、今もそうできるように工夫をしています。それでもやっぱりビジネス界では、適性検査は企業が候補者に受け「させ」て、結果を一方的に評価する、いわゆる「テスト」の印象がまだまだ強いので、僕はその文化に変革を起こしたいと思っています。
その文化を根本から覆して、適性検査とか性格検査は、こういうふうに生産的に使うものですよ、ということをもっと世の中に広められるといいですね。それが心理学的にも正しく、出来るだけ多くの人が幸せになる使い方だと思うので。ビジネス的にも心理学的にも適切に運用できる検査になるといいなというか、そのために頑張りたいという感じですね。
ーそのために具体的に工夫していることは何かありますか?
工夫していることとしては、例えば、当社には採用支援事業部という別の部署がありまして、そこでは新卒の学生と企業に出会いの機会を提供する、いわゆる合同説明会や交流イベントを提供しているのですが、そこは適性検査を受検する学生と距離が近いわけですよね。学生たちは、登録すればミキワメを自由に受けられる環境が用意されているんですけど、受検をするときに同意をしてもらうんです。この情報はこういう風に使います、という。そこで、結果がフィードバックされることで自己分析に使えることや、その情報を企業に提供してもらえれば、企業から声がかかるかもしれないことも伝えて同意してもらいます。
その説明と同意の文章を、僕が考えて、どう説明すれば学生がより安心して受けてもらえるかとか、より生産的に使ってもらえるかなどの工夫をしています。組織開発事業部の方でも、企業の方に、ミキワメはこういう仕組みですよという説明をきちんとして、そこに共感していただいて安全に利用してもらうということをやっています。お客様の中には、テストという感覚や考えが強くて、社員や候補者に結果を返したくない、見せたくないという方もいらっしゃるのですが、ミキワメはこのような考え方なのでと、こういうところをプラスに考えて、生産的にやってます、ということをきちんと伝えたりとか、わかってもらった上で使ってもらうようにしています。
今までの検査とは少し違うということを、できるだけ僕は出すようにしているかなと思います。受検者に利益を返さなきゃいけないものとして使ってもらうという感じですかね。
ービジネスの世界に入ってよかったなと思うことはありますか?
まず、ビジネスの世界を体験できていることですね。会社で働くということについての曖昧なイメージがすごく具体化されました。立場上、人事の人とたくさん話すのですが、1年で150社以上の企業の組織分析やサポートをさせてもらう中で、人事の人がどんな世界に生きていて、いろんな社風の企業があって、いろんな立場があって、検査の考え方もいろいろあって。
それだけやると、その世界のことが見えてきて、人事の現場ってこんな感じなんだな、みたいなことをリアルに理解できたことが良かったですね。ここは非常にカウンセリング的というか、臨床的な部分でもあって、僕はカウンセリングの実務家のアイデンティティが強いなということが逆に実感され、人事実務ではどんな心理が動いていて、どんな枠組みの中で仕事が進んでいくのか、人を見る、人を動かす、人を支える、という実務そのものが臨床的ですね。
あと、そこに対してカウンセリング的なアプローチが可能かどうか考えるということも、勉強になります。カウンセリングってメンタルヘルスとか調子が悪くなってしまった人の面談をするイメージが強いと思うんですけど、従業員のパフォーマンスを底上げするために何ができるかとか、ポテンシャルを引き出す仕事も臨床心理士にできることだと思っています。
そういう意味で、ビジネスの中で、臨床心理学的な経験や知識が役に立つんじゃないかなと考えられていることは収穫というか、ここにこないと分からなかったことだったと思いますね。臨床心理士や公認心理師の方は、ぜひこういった領域も考えてみると可能性が広がると思います。
ーありがとうございました。最後に何かお伝えしたいことがあればお伺いしたいです。
転職を考えている人は、迷ったら新しい世界に行くのも面白いと思います。
落ち着いているところに安住していたいとか、人間は慣れたことを続けたいと思うものなので、それはそれで良いと思いますが、何か現状に課題があって、何かを変えたい、何か新しいことに挑戦したい人は、環境を変えて得することはあっても、損することはそんなにないんじゃないかなと思います。
全然知らない世界に入ってみて、自分がどこまでできるか試してみる、迷ってる人は一回何でもいいからやってみる。
リーディングマークはそんな挑戦者を全力で応援している会社です。組織のことを考えながら、人のことを真剣に考え支援したいという人達の集まりなので、そういう面でもおすすめです。僕としては、心理学の専門家仲間が増えると嬉しいです。