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6年間 新規校舎を開校しなかった理由

(写真左:山田 写真右:渋谷校 新校舎長 屋嘉比)

2016年に麻布の地に新校舎を構えようと新たな教室を探していた。場所も決まり、仮契約まで進んだが、辞めることにした。それから1年経った今、麻布の地に新校舎を開校することになった経緯を書く。

 〜〜6年間渋谷の指導現場にどっぷりとつかって〜〜

「仕事の9割が対話」

 私は経営者でもあるが、おそらく一般的な企業の経営者というイメージは全くないと思う。講師という毛色の方が強いのではと思う。先日も後輩や同期と会う機会があったが、「相変わらずよしおだよね」とよく言われるw

 その原因を考えてみると、私の話し相手の平均年齢は同世代の社会人の中でトップクラスで低いこと、そしてバラエティーに富んでいる。朝起きたら子供2人と妻と会話する。出社して20代〜30代の社員と会話。その後は小学生(8歳〜12歳)との授業(対話)になる。そこに生徒のご両親様(30代〜60代)との面談や電話などもある。さらにはアルバイトの大学生(18歳〜25歳)。つまり1日中色々な年代の人と話はするのだが、小学生がメインである。年齢層の低い誰かと対話しているのだ。それが会話している時の私の変わらなさなのかもしれない。

 一般的なビジネスマンがこれほどまでにバラエティーに富んだ年代と会話することはないだろうし、仕事の9割以上が対話な仕事はほとんどないのではないか?それが「相変わらずのよしお」を形成しているのだと思う。

「子供が休みの時が私達の仕事の時間」

 私は塾を開校して以来、基本的に土日や祝日の定期的な休みはない。今年も受験を終えた2/4に1回休んだだけで、来年の受験が終わるまで基本土日の休みはないだろう。そして土日は朝9時から夜8時までみっちりと授業が詰まっている。創業当時は朝8時から夜10時まで指導してきたが、正社員も雇用することになり、勤務時間や休暇なども労働基準法以上に良い労働環境を整備した。だが基本現場の第一線で子供達の指導に当たってきた。

 〜〜現場にいすぎることは悪?〜〜

「経営者が現場に出すぎたらダメでしょ。」

多くのコンサルタントの方々や先輩方にさんざん言われてきた。これについてみなさんはどう思うだろうか?先ほども述べたが、私たちの仕事は「対話」が命だ。対話にも技術とセンスはあるのだと思うが、要点を得たらあとは場数が大切。高い意識をもっていろいろな子供や親御様との対話時間こそがその講師の価値をあげていく。それ以外の近道はないように思える。その対話を徹底的に磨くように講師(社員)にも日々指導をしてもらっている。そこでフィードバックし、さらに現場で経験を重ねる。そうすると子供たちも講師を見る目が変わってくる。良い対話ができている講師に子供たちは集まる。そうでない講師から子供は自然と離れていく。このように子供達は非常にシンプルなアンサーをしてくれる。

 優れた講師の条件は

「複数人の生徒から信頼が厚い」

「指導したお客様が新たなお客様を紹介をしてくれる。」

「受験が終わっても継続してくれる」

この3つのうち2つがコンスタントにクリアできていれば一流だと思う。この1人前を3年あれば達成させることができるなと実感して渋谷校を屋嘉比に任せることにし、麻布校の開校を決めた。そして第二、第三の屋嘉比を育てることが今後の私の経営の仕事だと思う。

 前置きが長くなったが、まず現場での授業が楽しいから現場にいるのだ。理屈や合理性ではない。結果それが会社の強みになってきているのが現時点での結果。そのために私が現場でいることの意味がある。今後どうなるかはわからないが、9年目の私の解はこれである。

投資の世界では「アクティブファンド(人が介入する)」と「インデックスファンド(人が介入しない)」の2極化になっている。中途半端なファンドはほぼないのではないか?教育業界もこれからAI、動画、テクノロジーが変化していく中で、完全に現場系の塾と動画・システム系の塾の2極化が始まる。というよりもう始まっている。私たちはまず前者のチャンピオンを目指したい。現場が最適解になることは時代的にもありだと思っている。変な効率化に走る方が経営的にまずいと私は判断している。

  〜〜余談 漫才師=アスリート=講師〜〜

 少し話は脱線するが、私はお笑いが大好きだ。特にM-1グランプリは毎年録画して、家族で見ている。私は博多華丸大吉という漫才師が好きだ。彼らはM-1のチャンピオンになったことはご存知の方も多いと思うが、それ以前にもすでに売れていた。優勝する前でもテレビにも引っ張りだこの彼らであったが、毎週1回地元の漫才の舞台に立っているそうだ。いくら売れてようが劇場でお客さんからシビアな反応をもらうことも今だにあるらしい。そういう現場と彼らの意識が彼らを面白くし続けているのだと思う。私は講師としてそのことにシンパシーを感じる。漫才師も講師もある意味ではアスリートみたいなもので、常に現場でトレーニングをしていなければ、実力は向上することはない。そして維持も難しく、落ちていく一方なのだと思う。昔取った杵柄、元プロはアスリート同様、教育現場でも通用しない。今を夢中に生きている子供たちに昔の話をしても価値はない。

 〜〜個別指導塾の急増する中私達が目指すもの〜〜

 今多くの大手・中小の教育会社にコンサルティング会社が入っている。メソッドを確立し、指導法のマニュアルを作り上げる。教材も均一化し、指導のバラツキを失くす。経営的にはリスクなく売上と利益を上げるため、教室もフランチャイズ化し、教育未経験者をオーナーに規模を拡大する。CMを流し、個より塾のブランドの認知度を上げることに余念がない。その結果、驚くことに私が子供の頃になかった個別指導塾が嘘のようで、今やどの駅の近くにも3〜4校舎乱立している。

 結果、本当に今の塾の教育の質は上がっているのだろうか?動画が流行り、システム化された今の子供達は昔の教育より良い教育を受けられているのか?少なくとも教育現場では人不足のため、誰でも塾講師にし、素生を明かさないフリーターで個別塾はあふれ、確実に講師の質は落ちている。そんなメッキだらけの講師たちが「先生」と名乗り一番大事な初等教育にメスを入れているのが現状だ。

 当塾の卒業生に大森二葉さんという卒業生がいる。(実名でHPでも紹介させて頂いている) その方は私たちの塾を応援してくれ、これまでに複数人のお客様を紹介してくれたばかりかお兄さんも入塾した。(当塾は小学生専門であるのだが、「とにかく塾の空気を吸わせてやってほしい」と半ば強引に入塾となった)それほど気に入ってくださった。

 その大森さんが入会するは受験3ヶ月前で算数が苦手で完全に自分は文系なのだと思い込んでいた。これは今では絶対に言ってはいけないことなのだが、面談をさせていただき、ご両親の前で体験授業を実施した際に彼女の非凡な算数の圧倒的な能力に気づいた。それで「絶対に合格させますよ!」と口を滑らせてしまった。彼女はとても数理処理能力にたけ、思考力も高い。これまで塾の先生達は何をしていたのだろうと驚いたことがある。最終的に算数が最も得意科目となり、算数で第一志望校の合格を勝ち取った。今後彼女がどのような道を歩むのかどうかはまだこれからだが、お母様からは「運命の帰路だった」というお言葉を頂いた。「たかが中学受験、小学生への教育」という大人も多いと思うが、幼少期に受けた影響はかなり大きいものだと身の回りからも私は実感する。

*実際の声は以下ページ

http://kobetsushido-shibuya.com/

 〜〜「人」にこだわった結果〜〜

 実は昨年の麻布に校舎を構えようとした時に、少し規模や売上を意識してしまった背景がある。その時に大森様やその他大勢の応援してくださるお客様。色々なご紹介して頂いてきたことを思い出し、絶対にみなさまにも胸を張って任せられるメンバーでなければ校舎を増やすことは辞めようと胸に誓った。いくらお金をかけてでも「良い人」を集め、「良い人」を育てようとココロに誓った。それも「現場」に居たから踏みとどまれたことだ。もし私が現場に出ていないで経営ばかりしていたら、昨年どころかもっと前に規模を拡大していたかもしれない。ただ現場にいると、子供や親子様からほめられたり、怒られることもある。そこでまだまだ甘いなと自戒し、さらに精進してきたから今の私も、社員もついてきてくれたのだと思う。

 恵まれたことに、すでに私や屋嘉比、その他講師の担当生徒も新規募集から3週間で来年の2月までのお客様の6割以上の枠が埋まっている。これは普通の塾ではありえないと思う。今までのお客様のご兄弟。紹介など非常に多く、リピートして頂ける非常に恵まれた環境にある。

 新しく開く麻布校は渋谷駅から便も悪く、距離もそれなりにある。これまで担当してきたお客様に私が麻布校にいく旨を伝えると

「おめでとうございます!じゃあ麻布に行きます!」

と住所を告げてもいないのに私が渋谷で担当していた全お客様が遠方より麻布に来ることになった。「麻布駅って調べたらなかったんですけど」と後からメールで問い合わせが来たりと。また屋嘉比についていたお客様も屋嘉比に指導してもらいたいから屋嘉比でと。この時は嬉しかった。そこで私は「ココロ・ミルはすでに普通の塾ではなく、1人1人講師による塾になってきたのだ」とものすごく実感できた。普通の塾であれば「じゃあ同じ校舎で違う先生で」となると思うし、辞める人も出ると思う。まず1人も辞めるお客様はいなかったし、全お客様が「おめでとうございます!」と開口一番お祝いをしてくれた。私は「なんで麻布に行ってしまうんですか?」とクレームもあるのではと思っていたほどだ。本当にこれまでやってきてよかったと実感した瞬間であった。

 仕組みやメソッドを構築することが確かに効率的であり合理的であるのかもしれないが、それを伝える講師・社員のやりがいというものを私はどうしても考えてしまう。誰でもできると思う仕事をやっている仕事より、「⚪⚪さんがいて良かった」と言われる仕事の方がやはり嬉しいのではないか?一生の仕事をするにはそういう仕事を選んでほしいし、私もそういう仕事を一生したいから今の仕事のスタイルをとっているのが本音である。

 だから私はやりがいが持て、人に感謝し、感動できる。そんな「人」による塾を創り上げることが講師のモチベーションをあげ、お子様が劇的にかわれる良い塾になるのではないかと思っている。今もココロ・ミルには過去に教え子だった子が大学生になり、アルバイトのアシスタントとして手伝ってくれている学生が数人いる。そういう良い「人」の循環ができたのも、「人」にこだわった教育をしてきたからだと思う。その姿勢を長い間屋嘉比もみてきてくれたんだと気づいた。

 これまで色々なジャッジをする際にも目先の利益にまどわされず、辛抱し、誰よりも指導現場に居続けることができたことを、今少しだけ褒めたい。現場にいたことでお客様のことを想い続けることができた。今後はそれだけに甘んじることなく、これまで以上に前と上を向き、新天地の麻布でも良い教育を提供できるように「現場」で指導をしていこうと思う。

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