東大の卒論は「アウトサイダーアート」。社員6人のスタートアップで、今、人生をかけてやりたいこと。 | 大切にしていること
絵が好きだったので、中学時代から美術部だったのですが、街のギャラリーで草間彌生さんの作品に衝撃を受けて、現代アートに惹かれるようになりました。 ...
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こんにちは、川上真生子です。
キッチハイクというスタートアップで役員をしています。
先日、社内で「妊活宣言」をしました。
この宣言にいたるまで、自分にとってたくさんの葛藤と、長い道のりがありました。仕事も子どもも諦めたくない30代女性の一例として、どなたかの参考になればと、ここまでの歩みを書いてみることにしました。
年齢から逆算して目標を立てるのが好きな私。
キッチハイクへのジョインで「30歳までに転職」という目標が叶い、次の目標は「35歳までに子どもを持つ」でした。
とはいえ、まだ事業が軌道にも乗っていない、超アーリーフェーズのスタートアップへの転職。当時の事業計画では、そこから3年後(2019年12月)が成長のマイルストンに置かれており、ジョインする際に、代表・山本と「その時までは仕事に100%専念します」と話したことを覚えています。
当時はそもそも結婚もしていなかったし、3年後なら33歳だから、まだ間に合う。そう考えたのでした。
▼ジョイン時のインタビュー記事
大企業からスタートアップに転職し、めまぐるしく過ぎていく毎日。ジョインの翌年、31歳で結婚し、充実した日々を過ごしていました。
マイルストンの2019年12月が刻々と近づいてはくるけれど、そこは予測の難しいスタートアップの世界。全力で頑張っているつもりでも、描いた通りにはいかないものだな、と思い知らされる日々でもありました。
いよいよ33歳になり、自分の年齢と会社の状況を天秤にかけ、どうしようかと悩んでいたとき、執行役員のオファーを受けました。
これまで経験したことのない責任あるポジションに、子どもと両立できる自信が全く持てませんでした。オファーを引き受けるからには、責任を果たしたい。そのためには、200%で取り組むくらいのスタンスじゃないと無理だ、と。
ご存じの方も多いと思いますが、35歳以上の出産は「高齢出産」と呼ばれ、年齢があがるほど妊娠確率が下がります。だからこそ「35歳」という年齢はずっと意識してきたし、その年齢が近づくにつれ、1年1年の重みが増していました。
ここで先送りして良いのか?夫婦で話し合い、判断材料のひとつとして、私はプレコンセプションチェック*、夫は精液検査を受けました。幸い、二人とも特段の異常なし。1年くらいの先送りは許容範囲だろうと考えて、妊活を保留することにしました。
*プレコンセプションチェック将来の妊娠や出産に備えて、健康であるかどうかを知るためのチェックのこと。女性ホルモン検査や甲状腺検査、AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査などを行います。
その数ヶ月後、世界中をコロナが席巻しました。2020年3月のことです。オフラインの食イベントがメインだったキッチハイクは真正面から影響を受け、既存事業がストップ。「売るものがない」状態に陥り、ニューノーマルに対応した事業への転換を余儀なくされました。
会社どころか、世の先行きもまったく見えなかったあの頃。それでも、キッチハイクが果たすべき役割に向き合い、飲食店を前売りチケットで支援する「勝手に応援プロジェクト」、地域の食材が届くオンラインイベント、ECサイトなど、矢継ぎ早に新規事業を立ち上げました。
もしも妊活を保留せず子どもができていたら大変だったろうと思う一方で、リモートワークで在宅時間が増え、逆にチャンスだったかも、とも。いずれにしても、それは「たらればの話」であり、当時は仕事で頭がいっぱいだったのですが。
幸いにも、オンラインイベントが世の中のニーズに合致し、会社はV字回復どころか、それまで以上の成長を遂げました。その間に学んだのは、未来がどうなるかなんて誰にも分からないし、会社は「今が一番大変」を常に更新していくものだということ。会社が成長するかぎり責任は大きくなる一方だから、「今が産みどき」なんていうタイミングは来ないんだなと。
そう気づいてから、2021年、34歳の時に妊活をはじめました。役員という立場上、子どもができたときの影響を考え、代表・山本にだけは伝えたうえで。
妊活スタート後わずか3ヶ月で、妊娠検査薬の陽性反応が出ました。あまりに順調な展開に拍子抜けしつつ、夫婦で飛びはねて喜んだのを覚えています。
さあ、ここからどうしよう。チームにどう伝える?
「妊娠報告 職場」などで検索すると、安定期に入る妊娠12週目以降に報告するのが一般的なよう。代表・山本や他役員にも相談しながら、チームメンバーへの共有はまだ控えることになりました。
当時、フルリモートワークを行なっていたので、つわりで体調がすぐれなくてもメンバーには知られずに済みます。当時は体力がびっくりするほど落ちて、zoomで1時間MTGしただけでフラフラになっていました。
周囲には「体調最優先で」と言ってもらえていたけれど、頑張っているチームメンバーをよそに、こっそり横になったり通院したりするのは何だか気が引けました。
久しぶりに出社したとき、オフィスまでの階段で息切れして、吐き気で仕事どころではなくなってしまいました。心配してくれたメンバーに適当な理由をつけて、滞在時間30分ほどでそそくさと帰宅したときには、「こんなにコソコソと、一体何をやっているのだろう」と自分が滑稽に思えました。「何を守りたくて、私はこんな隠し事をしているんだろう」と。
そんな私の妊婦生活は、妊娠9週目にあっけなく終わりを告げました。
6週目のあたりから胎嚢(赤ちゃんが入っている袋のこと)の大きさが変わらず、心拍が確認できないのです。
医師から正式に稽留流産*の診断を受けたのは、金曜日の朝のことでした。コロナで病院の立ち会いができない中、夫が外で待っていてくれて、二人で泣きながら歩いた家までの道のりは、とてもとても長かった。あんなに涙する夫を見たのは、後にも先にもあのときだけです。
稽留流産*胎児は死亡しているが、まだ、出血・腹痛などの症状がない状態のこと。入院して子宮内容除去手術を行う場合と、自然排出を待つ場合があり、私は後者を選択しました。
流産は6分の1の確率で起きると聞いてはいたけれど、まさか自分がその立場になるとは思いもよらず。もう区役所で母子手帳をもらい、かばんにマタニティマークをつけている自分のせっかちさを恨みました。
流産を告げられた日、午後にもMTGが入っていました。私がどんな状態だろうとも、チームのみんなは知る由もないし仕事は止まってくれない。夫は涙を拭って仕事に戻り、私も力いっぱいスイッチを切り替えて、いつも通りにMTGをこなしました。
誤解のないように言うと、周囲は「無理せず休んで」と言ってくれていたのです。精神状態は最悪だとしても体調は普通だったし、あくまで自分の意思として、仕事はプロとしてやり遂げたいと思ったのでした。
何も知らないチームのみんなに、心配や迷惑はかけたくない。よく分からない意地のようなものが、その日の自分を突き動かしていました。それが当時の私にとっての「仕事と子どもの両立」だったのだとも思います。
でも、今振り返って思うのは、仮に自分のチームメンバーが妊娠して、私の知らないところでつわりに苦しんだり、流産したりしていたら?それを周囲に言えないまま、笑顔をふりしぼっていたら?
想像すると、胸が張り裂けそうになります。そんな辛い思いはさせたくないし、私と同様、チームのみんなもそうだろう。つわりの辛さや流産の悲しみごと、チームのみんなで受け止めて、乗り越えていこうとするだろう、と。
「チームが混乱したり悲しんだりしないように」と安定期に入るまでオープンにしなかったけれど、自分にとってもチームにとっても、それが最善だったのか?今ではそうは思えません。
実際、流産のことを役員の大野に伝えたとき、彼女は涙を流して悲しんで、一連の体験をメンバーにもシェアすることを提案してくれました。「命について考える機会になるから、みんなにも知ってもらいたい」と。
慌ただしい日々の中でその話は流れてしまったのですが、そんな風に受け止めてもらえたことは私にとって救いであり希望でした。
キッチハイクには、子育て中のメンバーは男女問わず多くいるけれど、妊娠・出産した女性はまだいません。「子どもがほしい」「妊活中」といった話題も、私の知るかぎり、まだ誰かから聞いた記憶がありません。
年齢的にも立場的にも上の私が「言わない」選択をすることで、それが通例となり、言いづらい空気を作ってしまうのは、絶対に避けたいと思いました。
これから子どものことを考える若いメンバーには、私を身近な例として早いうちから向き合う機会をもってほしいし、私の経験が役に立つならどんどんシェアしたい。
それに、私がオープンになることで、もし「言いたい」と思うメンバーがいたら遠慮なく言ってほしい。
子どもに関して、言う / 言わないの問題は、いくつかのポイントで訪れます。「将来子どもが欲しい」と言うか言わないか。「妊活中」と言うか。「妊娠した」ことを、いつのタイミングで言うか。
そのどれもにおいて一人一人の考えが尊重されるべきで、「誰に言うか」「どこまで詳細に言うか」など、言い方にもグラデーションがあります。何が正解という類のものではないですし、「みんなでオープンになろう」というつもりは毛頭ありません。
ただ、もし「言いたい」のに、社会とか会社とか、自分の外側にあるものを理由に「言えない」のは違うと思うし、仮に「言いたい」と自覚的に思っていなかったとしても、「みんなが言わないからそれが普通」と無条件にレールに乗るのも、何かが違うのではと思います。
女性の働きやすさは少しずつ好転してきたけれど、出産や育児に対する支援は目についても、そこに至るまでの過程は、デリケートな話題であるぶん対象から外れがちだと感じています。
でも、働く女性にとって、「子どもが欲しい」と思ったときから「仕事と子どもの両立」は始まっていると思うのです。出産、育児などハッピーな側面ほどオープンにしやすいのは当然ですが、その背後には、「産みどき」を見出せずに悩んでいる、妊活に励んでいる、流産で辛い思いをしている、たくさんの女性がいるはずです。
そういうすべての女性に目を向けてこそ「女性の働きやすさ」だと思うし、ひいては日本社会の少子化の改善にもつながってくるのではと考えています。
これは、キッチハイクの採用ページに、代表・山本のメッセージとして書かれている言葉です。コロナで社会も事業も激変する中で、また、山本自身が子育てを経験する中でたどり着いた、大切な言葉です。
私自身も、仕事の上で、また生きる上での指針として少なからぬ影響を受けているので、ここに引用してみます。
人生を謳歌する。キッチハイクが大切にしている言葉です。それは、創造性を解放して、よりよい未来を自らつくる行為そのものです。私たちが生きる社会は、まだまだ沢山の当たり前にとらわれています。変革を起こすには、「本当の意味でどんな暮らしや未来がわくわくするか」を求め、
熱狂的に矛盾を越えていくことが重要です。その過程で発見した価値は、家族や仲間、地域、社会に伝播します。人生を謳歌することは、他者の謳歌につながり、未来を変える大きな力になるはずです。一方で、謳歌するのはそう簡単ではありません。生きることに向き合い続ける、とてつもなくタフな道でもあります。だからこそ、日々アイディアと勇気を振り絞ることと、「ともに謳歌する仲間」が不可欠なのだと痛感しています。キッチハイクは今、新たなステージに突入しました。自分の未来と地球の未来を地続きにとらえる、すばらしい仲間たちが集まっています。ここからさらなる発明と実装を起こすためには、ともに謳歌できる新たな仲間が必要です。自分のために。家族のために。仲間のために。そして、まだ見ぬ誰かのために。ひとりでも多くの人が、人生を謳歌できる社会へ。人生を、謳歌しよう。
私にとっての「人生の謳歌」とは、まさに「仕事」と「子ども」という、ともすると矛盾しかねない二つを「熱狂的に越えていく」こと。
当たり前にとらわれず、子どもが欲しい30代後半の女性として、役員という会社を率いる立場として、未来をつくる一人として、勇気を振り絞って、自分がありたい道を歩むこと。
社会を変えるには大きな力がいるけれど、まずは自分の行動を通して、ありたい社会に一票を投じたい。そして、自分がいるキッチハイクにおいては、「こうありたい」環境を、自分自身の手でつくりたい。
私にとって、「妊活宣言」は、そのための第一歩なのです。
そうして迎えた、社内での「妊活宣言」。zoomでの全社MTGの場で、私から全員に、子どもが欲しいと思っていること、妊活をしていること、働く女性として、仕事も子どもも全方位やりきりたいことを伝えました。
当然のことながら、妊活を告げるということは、「近いうちに私が仕事を抜けるかもしれない」「そうなったら自分の負担が増えるかもしれない」とメンバーに思わせてしまうことを意味します。
その心苦しさはもちろんあるし、みんなにどう受け止められるのか、内心不安でした。
蓋をあけてみると、まだピンと来ないのではと思っていた二十歳過ぎの男性メンバーから「共感します!」とコメントがきたり、「実は涙ポロポロしていました」とDMをもらったり。「私も子どもについて悩んでいました」と打ち明けてくれるメンバーもいました。
自分が思っていた以上に、このテーマは性別年齢問わず、心に響くのかもしれないと思い、このnoteを書くに至った次第です。
今回の「妊活宣言」を機に、山本のアイディアで、キッチハイクにおいて、子どもができる前の女性に向けた新しい制度を検討しようとしています。具体的にはこれからですが、ありたい社会をつくるために、一歩ずつ動いています。
「うちの会社ではこんな制度を取り入れているよ」「こんな制度があったら嬉しい」など、何か情報をお持ちの方がいたら、ぜひ教えてください。一緒により良い未来をつくっていきましょう。
キッチハイクは「地域の価値を拡充し、地球の未来へつなぐ」をミッションに、共に人生を謳歌する仲間を募集しています。
社員候補の新メンバーだけでなく、業務委託や副業での参加もOKです。
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