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【アフリカスタートアップ訪問記①】スタートアップ転職前に、アフリカのファウンダーと出会って得たもの~エジプト・ナイジェリア編~

こんにちは!12月にケップルに入社した多田と申します。

Kepple Africa Ventures(以下KAV)の協力のもと、入社前期間にアフリカのスタートアップを訪問させていただいたので、当時の体験をアフリカスタートアップ訪問記と題して紹介していきたいと思います。

《はしがき:アフリカ訪問の背景》

私自身は、日本で生まれ育ち、9月まで国内証券会社に勤めていたドメスティックな人間ですが、観光でアフリカ数か国を訪問した経験があり、そこでの体験や雰囲気に魅了されていました。コロナの影響でプライベートな領域でアフリカに関わりにくくなり、また自分が何をしたいのか改めて考えた結果、アフリカ或いは新興国という要素をキャリアに入れることを考えるようになりましたが、そんな折、知人からKAVを紹介いただき、紆余曲折を経てケップル入社に至っています。

ケップルではアナリストという役職を担っておりますが、①スタートアップに関する知識・理解を深める、②アフリカのエコシステムに対する知識・理解を深める、③現地ファウンダーを中心にローカルなリレーションを持つ、といったことを目的に、2021年10月から入社前の期間を使って、カイロ(エジプト)・ラゴス(ナイジェリア)・ナイロビ(ケニア)を訪問しました。

滞在期間中は、エジプト8社、ナイジェリア11社、ケニア11社のKAV投資先との訪問/オンラインミーティングのほか、投資候補先企業とのミーティングやコール、投資家同士のネットワーキングへの参加等、充実した日々を送ることができました。

KAVは昨年「アフリカで最も投資したVC」に選出され、2021年12月21日時点で101社をポートフォリオに有しています。その投資先として最も多いのが今回訪問したナイジェリア、ケニア、エジプトです。

日本から見るとアフリカは物理的にも心理的にも遠く、自然体ではなかなか情報に触れにくいと思います。この記事では、ビジネス面でも、また人・自然・文化といった面でも魅力あふれるアフリカにおいて、スタートアップと面談を重ねながら見聞き感じたことを紹介していきます。

《真摯な人々と異国情緒の街並み カイロ》

最初に訪れたのはエジプト、世界銀行によると2020年時点で人口1億233万4,403人、GDPは3,631億米ドルbillionの国です。一人当たりの名目GDPは3,548米ドルとなりますが、この数値はサブサハラアフリカ(サブサハラ全体1,486米ドル、ナイジェリア2,097米ドル、ケニア1,838米ドル)よりも高く、東南アジアに近い(インドネシア3,870米ドル、ベトナム2,786米ドル)です。イスラム教・アラブ人国家で、ピラミッドや考古学博物館が有名ですね。投資先訪問の合間に観光もしてきました!

そんなエジプトは今回訪問した3か国の中では最も治安がよく、街中を不安なく歩くことができます。ムスリム文化が影響しているのか否か、人々は非常に親切で、ミーティングアポ入れ時には殆どの先から「何か滞在中に困ったことはないか、手助けできることはないか」との申し出を受けました。

エジプトのスタートアップマーケットは近年急速に盛り上がりを見せており、出会う投資家・創業者は口をそろえて"Hot"であるといっています。実際にエジプトのスタートアップによる資金調達金額はこの数年間で急速に伸びています。

エジプトのビジネスの特徴としては、やや古いものの比較的整ったインフラの下で、それをうまく活用するビジネスがHotになっていると言えるかと思います。

例えば投資先にCartonaというロジスティクスのサービスを提供する企業があります。Cartonaは自身でアセットを持つことなく、小売りが仕入れを効率的に行うための卸のマーケットプレースを展開しています。ゼロからインフラを構築するのではなく、存在しているインフラを効率的に活用するためのテックが盛り上がっています。

〈Cartona〉

また、フィンテックサービスを展開する複数社から聞かれ、エジプトマーケットの特徴として印象に残った話ですが、他国において法律に規定されていないことはOKであるのに対して、エジプトにおいては法律に規定されていないこと=許可されていないのでNGになるそうです。もともと社会主義だったということが背景にあるのか、エジプトの人々は規制を破るということは殆ど考えないそうで、他のマーケットで過熱しているクリプトなどは話題に殆ど上りませんでした。こうした地域性を踏まえると、他国以上にエジプトにおいては政府や法規制の動向を抑える・巻き込む動きがポイントと感じました。

上のように考えた私は滞在中に金融規制について調べようと試みましたが、すぐに諦めました。エジプトマーケットのもう一つの特徴は言語であり、私が調べようとした規制についてはアラビア語で書かれている原本しか見つかりませんでした。こうした観点においても、現地の動向をしっかりと把握するためには、現地でのネットワークを張ることは非常に重要だと思いました。

海外から見れば、規制や言語の話は日本も似たような部分があるかもしれないですね。

《エネルギー溢れる都市 ラゴス》

次に訪れたナイジェリアはアフリカにおいて最も大きなスタートアップマーケットです。世界銀行によると2020年の人口は2億613万9,587人、GDPはUSD4,323億米ドル。アフリカでは人口が最も多い国であり、最大の経済大国でもあります。人口に関しては2050年にはインド、中国に次いで世界三位に成長するといわれています。

もともと石油で発展した資源国であり、銀行が強い力を持っています。空港では殆ど全ての職員が賄賂をねだるほど、賄賂文化の根強い国です。持つ者と持たない者の格差は激しく、政府への不信感もあり公共事業は進まず、人々の規制・ルールを守る意識は低いです。

こうした環境の中で新たなビジネスに挑戦するファウンダーに共通して私が感じたのは、強い意志とエネルギーでした。

ナイジェリアにおいては政府の手が全く届いていない空白エリアへのビジネスや、自国の生きづらさを背景にしたビジネスが爆発力を持っています。今回面談をしたスタートアップの中で、前者の例として、KAVの投資先であるTeamaptは銀行口座を持たない人々が銀行同等のサービスを享受できるエージェントバンキングを展開、Seso Globalは土地の所有権や取引の不透明さがネックとなって不動産の売買がうまくいかない状況に対し、ブロックチェーンを使って土地の登記を代替する形で売買を可能にし、透明なプロセスでの取引を実現しています。公共インフラが発展しているエジプトとは異なり、“そもそも存在しない状態”からスタートしています。

また、後者の例として、ナイラ安が進む中、自国通貨を保有するのでは保有資産が目減りしていくという不安(為替リスク)に対応し、ドル建てで海外資産に投資できるサービスを展開するbambooという会社があります。

〈bamboo〉

面談したスタートアップが解決する課題は幅広く、まさしくスタートアップが暮らしに寄り添って生活を改善している、そうした実感を強く得ました。

ところで、ナイジェリアについては犯罪が多い等、悪評を聞いたことがあるかもしれません。(ケニアに行った際には、ケニア人から「ナイジェリア人とは間違われたくない」という発言も聞かれました。)残念ながら間違いではないのでしょうが、必ずしも悪人が多いという訳ではないと思います。むしろ心根には優しさがあると感じました。とある日、道端で女の子が転んで泣いていたところ、周りの人がみんなで女の子を囲んで心配するという場面に遭遇しました。こうした光景、東京で見られるでしょうか・・

ラゴスは観光資源が多くないのですが、世界最大規模といわれる水上スラムMakoko、スパイシーで出汁のきいたご飯、都会のオアシスLekki Conservation Center、港町Apapaのマーケット、アートギャラリーなど、最大限空き時間を使ってEnjoyしました!

上:シーフードオクラスープとPounded yam
左下:Makoko(筆者が下手の横好きで描きました)
右下:Lekki Conservation Center

~アフリカスタートアップ訪問記② ケニア・総括編に続く~

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