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具体例で振り返る、カケハシの新たな兆し(2023年末編)

カケハシの西田です。今年の頭、シリーズC資金調達のときに書いて以来、久しぶりのnoteです。

今回は、2022年5月に入社してから一貫して取り組んでいる、カケハシの調剤薬局向けプラットフォームをもとにした新規事業の立ち上げについて、現在の思いをまとめてみたいと思います。

クリスマスイブにこんな真面目なエントリーはいかがなものかと思いつつも、ぜひお付き合いいただけると幸いです。

そもそもヘルステックベンチャーの存在意義とは?

以前のエントリーに記したとおり、私はコンサルティングファームからカケハシへと移ってきたベンチャー初心者ではありますが、そんな私も、ベンチャーの存在意義は「既存プレイヤーにはできない・やらないような、業界・市場にとって必要な進化を、テクノロジーを駆使してすごいスピードで実現すること」にあると思っています。

これは医療・ヘルスケアに限った話ではなく、どの業界でも成り立つことです。この条件が満たせないと単に中小企業が増えるだけに終わってしまいます。私たちカケハシとしても、薬局業界ひいては日本の医薬品業界、医療システムの進化に貢献できないと、存在価値はゼロに等しいわけです。

私自身を振り返ると、長年にわたるコンサルタントとしてのキャリアのなかで、日系製薬会社がグローバルに戦っていくための体制・ガバナンスづくりなど、日本のヘルスケア企業の重要なアジェンダに取り組んできました。それ自体は、日本の医薬品産業として大きな価値のあるミッションであり、私個人のライフワークとしても深い意義を感じていました。

一方で、日本の医療システムの継続性が難しくなってきているなか、それを患者視点で改革しようとする企業が見受けられないことに、強い危機感を持っていたのも事実です。とはいえ、自分自身がそこにアドレスすることはできなかったし、それができる既存企業も日本には見当たりませんでした。

そんな中で出会ったのが、CEOの中川でした。そしてカケハシが、薬局・薬剤師さまと連携し、今までになかった患者さま向き合いのプラットフォームを構築しており、それを活用して日本の医療に貢献しようとしていることを知り、ここだったら自分が思い描く日本の医療システムの進化を実現できるかもしれない、と飛び込んだのです。

入社していろいろな文化の違いを感じたり、もともと考えていたものとは異なる進め方にピボットしたりと紆余曲折は少なからずありましたが、いまこの瞬間も、思い描いてきたあるべき姿の実現に向けて前進を続けられていることを、とても幸せに思っています。

2023年に芽吹きはじめた、カケハシの第二章

この一年、新規事業の立ち上げを、薬局・薬剤師の皆さんとはもちろんのこと、医療機関・医師・コメディカル、製薬・医療機器メーカー、医薬品卸、官庁、政治家、業界団体の方々など、医療に関するさまざまなステークホルダーの皆さまとお話ししながら進めてきました。

その中で、カケハシがやるべきこと、求められていることがより具体的になり、いろいろな方とのご縁やサポートがあって、事業立ち上げは加速度的に進んでいる状況です。

カケハシが実現したいのは、薬局・薬剤師の方々とともに日本に今まで存在していない患者プラットフォームを構築し、患者の健康管理・アウトカムの最大化、治療・薬剤の価値最大化、ひいては日本の医療システムの持続的な成長・進化に貢献することです。

その基盤となる調剤薬局向けサービスも、担当するチーム・メンバー、そして他ならぬ薬局・薬剤師の皆さまのおかげで、さらなる成長を続けています。

こうした調剤薬局向けサービスに基づく患者・処方データや、患者さまとのタッチポイントを、患者さまへのより深い価値提供の追求という志をともにする多くの薬局さまと連携しながら、多面的に活用することのできる医療プラットフォームとして構築することが、カケハシとしての使命だと考えています。

このプラットフォーム活用の取り組みとして、詳しくは後述しますが、例えば製薬会社さまと特定の疾患・薬剤に関する価値提供に向けた議論もスタートしました。すでに多くのプロジェクトが立ち上がっており、このスピードはヘルスケアベンチャーとしても屈指のものと自負しています。

その他にも、医薬品産業への貢献という形で実を結び始めた事例がちらほらと生まれてきています。あくまで一部ではありますが、いくつか例をご紹介していきましょう。

1. 薬局・薬剤師さまを通じた患者接点を活かして、患者さまの行動変容を促進

カケハシのプラットフォーム活用の大きな柱の一つとなるのが、プロジェクトに賛同くださるユーザー薬局さまとの協働による、患者さまの行動変容を促していくための取り組み。

薬剤や疾患領域にもよりますが、処方時にユーザー薬局にて「Musubi」を活用して服薬指導を行なったり、オンラインで「Pocket Musubi」での介入(服薬期間中にLINEメッセージ等で副作用の確認やフォローを実施など)を行なうことによって、薬剤の適正利用を促したり、重症化する可能性のある患者さまへの疾患啓発につなげたりするためのアプローチが始まっています。

こうした取り組みが、薬剤の価値最大化だけでなく、患者さまの再発・重症化回避などによるアウトカムの改善につながる可能性も見えてきており、正式に論文としてまとめるプロジェクトもスタートしました。

重要なのは、これをさらに広げていくこと。それこそが、患者さまの治療の最適化、そしてそれに伴う国レベルでの医療コストの最適化につながるはずだと信じています。

2. 処方データをPHR(Personal Health Recored)として活用し、患者さまの健康管理に貢献

一例として、イオンリテールさま、大塚製薬さまとコンソーシアムを構築し、経済産業省ヘルスケア産業課での実証事業を行なっています。

経済産業省「PHR利活用推進等に向けたモデル実証事業」に採択株式会社カケハシのプレスリリース(2023年11月8日 11時00分)経済産業省「PHR利活用推進等に向けたモデル実証事業prtimes.jp

具体的には、患者・処方の情報を活用することで、その方の健康状態に関連したコト・モノをご提案し、処方とは別の形で健康促進を促していく。言わば、継続的なサービス利用で、意識することなく健康になっていくヘルスケアサービスです。

例えば、睡眠障害に関する薬剤を処方されている方に、医療行為以外で睡眠をサポートする製品、機能食品、必要な運動などを含めた健康アドバイスをご提案することで、その患者さまにより健やかな生活を送っていただく——このようなイメージです。

この取り組みは、風邪や花粉症のような比較的軽めの症状まで含めると、ほぼすべての生活者が対象になってきますし、それだけに重症化の兆候を察知して事前に対応することも可能になってくるでしょう。そういう意味で、処方というタイミングでのデータ活用の手法を確立することが、PHRの活用の幅を拡げることにもつながるはずだと考えています。

処方データは、疾患や症状など患者さま一人ひとりの背景と深くつながっているものです。そのデータに基づくことで、患者さまへのご提案の精度は自ずと高くなります。患者さまご自身の健康になるためのインセンティブも大きく、健康増進に効率的・効果的に貢献できるはず。

患者さまへの直接的な医療価値の提供に意欲的な多くのユーザー薬局さまとともにこの基盤をさらに成長させることで、日本最大のPHRプラットフォームへと進化させていきたいと思っています。

3. 薬局による継続的なモニタリングが患者さまの状態・課題把握に

処方後、次の来院・来局までの間に患者さまがどのような状態であるのか。どのようなことに困っているのか。これまでなかなか把握することができなかったこの課題に、今、薬局・薬剤師の方々が服薬期間中の継続的なフォローアップという形で向き合ってくださっています。

その取り組みを支援するのが「Pocket Musubi」というフォローアップシステムですが、ここに製薬会社さまを交え、もう一歩踏み込んだ取り組みにも着手しました。薬局・薬剤師さまによる継続的な患者さまのモニタリングから得られた情報を、治療の費用対効果の検証や薬剤の最適なデリバリーにつなげようというものです。

特に、今後ローンチされていく革新的な薬剤への対応を目指しています。革新的な医薬品は往々にして高額であり、副作用の管理が難しく、そもそも対象となる患者さまが少ないこともあって、限りある貴重な薬剤をどう差配すべきか、デリバリーシステムが難しいという課題を抱えることになります。こうした課題の解消に、患者さまの継続的なモニタリングデータは非常に有効だと考えています。

Musubiを通じて管理される患者・処方データ、Pocket Musubiを活用したオンラインでの患者接点、Musubi AI在庫管理による薬局ごとの医薬品在庫データ・需要予測……カケハシが提供するプロダクトを総動員し、薬局・薬剤師さまとともに「患者さまと医薬品のE2Eの見える化」と「それに基づく最適な薬剤・患者管理」を実現することが、次の時代の医療を支えることになると信じています。

ヘルステックベンチャーとしてさらなる貢献を

入社前にざっくりと思い描いていた、日本の医療システムの進化に向けた貢献。そのイメージがどんどん具体化され、実現に向かって着実に前に進んだ2023年。改めて、変化をいとわず患者さま一人ひとりと向き合いつづけるユーザー薬局さまの存在、そして頼もしいカケハシメンバーたちの存在の大きさを実感した一年でもありました。

もちろん簡単な道のりではありませんが、こうした社会に対するインパクトを作り出せることこそがベンチャーならではの幸せですし、逆にそれがないとベンチャーやっている意味がない! この覚悟を胸に、2024年もこれからの時代にあるべき医療の実現に向けて邁進していきたいと思います!

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