マネージャーの存在は言うまでもなく重要です。チームの生産性や志向性は、マネージャーによって大きく影響されます。
スタートアップを始めてから4年ほど経ちますが、スタートアップのマネージャーに求められる「考え方」「思考方」は大企業とかなり異なっているなぁと実感することが度々あります。
今回は、スタートアップならではのマネージャーに求められる「考え方」を簡単にまとめてみたいと思います。
大企業における「良いマネージャー」とは
私が大企業でサラリーマンをやっているときに考えていた「良いマネージャー」とは以下のようなものでした。
実際、下記のような特徴を持った人が良く出世するような印象が強かったのです。
- 常に数字を達成している
- 目標設定の交渉が上手い
- 部下を守る
- いつもスマート
一方で、もしスタートアップに上記のような特徴を持ったマネージャーがいたら、結構マズいのではないかと思います。
一つずつ考察してみます。
常に数字を達成している→目標が低すぎるのではないか
数字達成の意識というのはメチャクチャ重要です。
売れる営業マンというのは達成グセが付いていて、達成しないと気持ち悪いがゆえに、必ず達成するというメカニズムがあります。
ソフトバンクの前身であるボーダフォンを孫さんが買収した時も、社内に蔓延する負け犬ムードを無くすために何がなんでも目標数字を達成させたというのは有名な話です。
一方でスタートアップの売上は「T2D3 (Triple, Triple, Double, Double, Double)」で伸ばしていくべき、とする考え方があります。
サービスや商品がマーケットフィットしたならば、後は急速に拡大させて「5年で72倍」の売上を目指すということです。
そんなスタートアップの中で常に数字を達成しているということは、そもそもの目標設定が低すぎる、ディフェンシブ過ぎる可能性があります。
低すぎる目標設定は、圧倒的に成長する必要があるスタートアップにとって、達成出来ないよりも問題です。
目標設定の交渉が上手い→そんなことしているヒマがない
大企業の場合、昨年+◯◯%という形で目標が設定されることが多いのではないでしょうか。
また一つの部署に対して目標が設定された時に、部署内におけるチームの間で「そっちのチームが◯◯ぐらい目標数値を持ってくれ」と交渉し合う事もあるでしょう。
しかしスタートアップの場合、そもそもが死ぬほど成長することを目的としているため、「何を目標するか(OKR)」の設定は有効ですが、「どのくらいで良しとするか」を交渉するのは意味がありません。
仮に目標達成率が100%であっても、昨年に比べてそれほど数字が伸びていなかったら意味がないのです。
部下を守る→みんなで一緒に成長する
部下を守る上司というのはカッコいいものです。
しかし守るというのは「悪役」がいて、「悪役」の影響を排除するというニュアンスが含まれます。
スタートアップは「どでかいことをやろう」「面白いことをやろう」と集まってきているチームなので、悪役はいません。
問題があれば、みんなで考えて課題解決すれば済む話なのです。
いつもスマート→頭に汗をかいて成長する
毎年2倍、3倍の成長を目指していくと、難題が次から次へとふってきます。それらの難題を解決していくと、会社はドンドン成長していきます。
もちろんマネージャーは、できる限りこれから起きる問題を予測し、成長戦略を描き、なるべく上手く会社を成長させる必要があります。
しかし実際には、マネージャー自身も経験したことがないような「Hard Things」が次から次へと出てくるので、マネージャー自身も頭に汗をかいて成長していく必要があります。
もし仕事が常にコントロール出来ているのであれば、それはコンフォートゾーンの中で仕事をし続けているだけかもしれません。
スタートアップのマネージャーに必要な3つの考え方
それでは、スタートアップのマネージャーに必要な考え方とはどのようなものなのでしょうか。色々必要な資質はあると思いますが、最も大事な3つの考え方は下記だと思います。
「率」ではなく「絶対値」で考える
率はヘルスチェックや問題点を把握する上では有効な考え方です。
会員登録率、継続率、購入率など、率を上げることには大きな意味があります。
一方で、スタートアップにおける「現在地」を把握する方法としては「率」は相性が悪い考え方です。
「昨年対比+50%!」と言っても、元の数字が低かったら、実は大したことがないからです。
スタートアップにおいて「現在地」を正しく把握するためにはKGI(Key Goal Indicator)を「絶対値」にすることが重要です。
スタートアップの醍醐味は大胆な目標を追いかけられること。
昨年対比で考えるのであれば「T2D3」でいきましょう。
チームのコンフォートゾーンを抜けさせるリーダーシップを持つ
理想の仕事とは、楽な仕事ではなく、成長出来る仕事です。
成長するためには、今までの慣れきった仕事の進め方、考え方、取り組む領域を変えなくてはいけません。
つまり、自分にとって気持ちの良い「コンフォートゾーン」を抜け、不安と不確実性が充満する「ラーニングゾーン」に行く必要があります。
また「T2D3」の成長を実現するためには、否が応でもコンフォートゾーンを抜ける必要があります。
コンフォートゾーンに留まろうとする力は途轍もなく強いものです。
今まで通りのやり方を続ける理由や、成長できない理由を考えようとするなら、軽く10個は理由が見つかることでしょう。
予算がない、人がいない、体制が整ってない、ノウハウがない・・・
そのような状況を打破するためには、強いリーダーシップが必要です。
他社の成功事例を見て「○○○だから出来る話ですよね。ウチでは無理です」と考えるのであれば、いつまでたっても理想に到達出来ません。
予算を作り出すためにはどうすればいいのか、人を増やすためにはどうすればいいのか、体制を整えるためにはどうすればいいのか、ノウハウを獲得するためにはどうすればいいのか。
マネージャーはチームメンバーの視座を上げ、心理的安全性を確保しながら、コンフォートゾーンを抜けさせる必要があります。
部分最適ではなく全体最適を考える
それぞれのチームには、チームごとにミッションや目的があるため、メンバーはチームとしての部分最適を考えがちです。
しかし事業全体、会社全体で圧倒的成長スピードを実現するためには「顧客にとって何が重要か」という視点のもと、全体最適で仕事を進めていく必要があります。単純に自分のチームの要望を声高に叫ぶだけでなく、会社にとってどの選択肢がベストかを考えるのはマネージャーの役割です。
マネージャーは全体最適を実現するために、チームのミッションを考え、「なぜこれをやるのか」という視点をチームに持ってもらうことが重要になります。
逆に、今までやっていたことであっても、全体最適の中から無駄だと思うことはどんどん止めていく必要があります。
全体最適の考え方があれば、期末の予算消化などという行為は行われないでしょう。