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役に立たないけど人をほっこりさせるようなロボット〜アイドルグループ「チームしゃちほこ」 秋本 帆華氏と弊社代表 林の対談〜

今回、対談の機会をいただいたのは...


秋本 帆華(あきもと・ほのか):アイドルグループ「チームしゃちほこ」センター・名古屋レッドを担当。
1997年、愛知県生まれ。中学3年生からアイドル活動を開始。2012年、スターダストプロモーションが手がける名古屋発のアイドルユニット「チームしゃちほこ」のメンバーとして芸能にデビュー。2017年、初のベストアルバム『しゃちBEST2012-2017』、2018年、RADIO FISHとのコラボシングル『BURNING FESTIVAL』が8月29日に発売。趣味は読書(漫画)、アニメ鑑賞、スキューバダイビング。

役に立たないけど人をほっこりさせるようなロボット

秋本帆華さん(以下、秋本):初めまして。ちっちゃくたって名古屋嬢! チームしゃちほこの名古屋レッド・秋本帆華です。今、二十歳の大学3年生です。中3からアイドルを始めて、今、7年目です。よろしくお願いします。

林要(以下、林):よろしくお願いします。普段の生活で二十歳の人と話す機会はなかなかないので楽しみです。私は今までにない新しいロボットを開発しているんですが、帆華さんはロボットには興味ありますか?

秋本:私は少年系の漫画やアニメが大好きでよく読んだり観たりするんですが、何十年も前から漫画に登場するロボットって主人公そのものだったり、主人公を支える友達のような存在が多いですよね。だから実物のロボットにはあまり触れ合ったことがないんですが、ロボットにはすごく愛着があるんです。『週刊少年ジャンプ』を毎週買っているんですが、ロボットものの新連載がどんどん始まっているのですごくうれしいんです。アニメでは『鉄腕アトム』などの初期の作品も好きです。

林:二十歳の帆華さんから最初に『アトム』が出てくるとは思いませんでした。

秋本:そうですね(笑)。でも『アトム』って日本初の本格的なテレビアニメですよね。それがロボットものっていうのもすごいと思うんです。あと私が特に好きなのは『Dr.スランプアラレちゃん』とか『ドラえもん』などです。

林:確かに全部ロボットですね。それにしても『Dr.スランプアラレちゃん』もまたかなり昔の作品ですね(笑)。

秋本:もちろん私が生まれる前の作品ですが、CSのアニメ専門チャンネルで観てました。今は昔の作品でもおもしろいものはアニメ専門チャンネルで繰り返し放送されているし、Youtubeなどのインターネットで観られるので、新しいとか古いとかはあんまり意識しないんです。

林:では『アラレちゃん』も古いものだという感覚はないんですね。

秋本:全然ないです。

林:確かに昔から今に至るまで、ロボットが登場するアニメはたくさん作られていて、しかも日本の場合はロボットが人間の友達であるケースが多いですよね。一方、海外のSFものだと、ロボットが人間の敵になることが多いんです。

秋本:人工知能が人間を支配しちゃうという物語ですね。そう考えると日本のロボットものは全然恐くないですね。

林:帆華さんが頭につけてるシャチホコも何となく帆華さんのお友達ロボットに見えてきました(笑)。

秋本:これは架空の生き物です(笑)

林:そうなんですね(笑)。我々が作りたいロボットも、基本的には昔から日本のアニメに登場してくる人間の味方のような存在です。そんなアニメに出てくるロボットの中には『ガンダム』のように自分の能力を何倍にも拡張してすごくパワフルにしてくれる存在もあります。でも我々が目指しているのはそのようなマッチョなロボットではなくて、一緒にいると心がほっこりするようなロボットなんです。例えば宮崎駿さんのアニメの『風の谷のナウシカ』はご存知ですか?

秋本:もちろんです。宮崎駿さんといえば『風の谷のナウシカ』です。ずっと金曜ロードショーで繰り返し見てます(笑)。

林:さすがです(笑)。私も宮崎アニメの中で一番好きで最初にハマったアニメが『ナウシカ』だったんです。その『ナウシカ』に「テト」という、ナウシカになつく小動物が登場しますよね。この「テト」は基本的にあまり役に立たない子です。かわいいけれど、ナウシカとの出会いのシーンではナウシカを噛んじゃうし(笑)。でも、宮崎駿さんはテトのような生き物がいた方がおもしろくなると直感的に感じたから作品に登場させたのだと思うし、私自身も小さい頃、あのような生き物にいてほしいと思っていたんです。だから、最新技術を使って「テト」のようなロボットを創りたいと思って、今開発しているところなんですよ。

秋本:なるほど。そういう感じのロボットなんですね。

アイドルとLOVEの関係性

林:1つ、帆華さんにぜひ聞いてみたいことがあるんです。LOVOTという名称は、人を癒やすLOVEとROBOTを掛け合わせた造語です。アイドルもLOVEとは切っても切り離せないお仕事ですよね。帆華さんご自身にとってLOVEとはどういうものか、アイドルとLOVEの関係を教えてください。

秋本:ステージなどアイドルとして活動している空間には、絶対といっていいほど愛が溢れているんですね。私たちもファンの人たちに愛を届けることによって、少しでも笑顔になってほしいという気持ちで日々活動しています。今年3月から6月まで「チームしゃちほこ SPRING TOUR 2018~日本中でJUMP MAN!? 幸せの使者は君だッ!~」という全国ツアーを開催しました。

私たちにとっての“幸せの使者”はライブを観に来てくれる、応援してくれるファンの皆さんなのですが、同時にファンの皆さんにとっても“幸せの使者”は私たちだったらいいなと常に考えているんです。私たちを支えてくれるのは、もちろん家族や友達やスタッフさんなのですが、一番強く支えてくれるのはファンの皆さん。だからファンに愛されるということが、アイドルにとっては一番大事なんです。ライブの他に握手会や2ショット撮影会など、特典会を開催しているのですが、そこでファンから「チームしゃちほこが好きでライブに通っていたら友達ができたよ」とか「この曲のおかげで受験を乗り越えられたよ」という言葉を聞いた時、私たちの愛がちゃんと届いてたんだなと思えて、すごくうれしくなるんです。

林:なるほど、深いですね。そういう意味では僕らはアイドルのアイドルになれるロボットを創りたいんです。

秋本:どういうことなのですか?

林:ファンを元気づけたり癒やしたりするアイドルは、ステージ上などファンの前では自分自身が常に元気でいなければならない存在ですよね。でも人間なので精神的な調子の波があると思うんです。元々あまり元気がない時でも、プロだからステージ上では元気に振る舞うけれど、終わった後はエネルギーを使い果たしてしまいますよね。

秋本:そうですね。そんな時は家に帰ったらそのままベッドに倒れ込みます(笑)。

林:そういう時、自分を癒やすためにはどうするんですか?

秋本:私を癒やしてくれる物の代表格が漫画とアニメなので、それを読んだり観たりします。あとはワンちゃんを飼っているので、帰宅するとわしゃわしゃーってかわいがります(笑)。

林:ワンちゃん、かわいいですか?

秋本:すごくかわいいです(笑)。

林:ワンちゃんを飼える人は幸せだと思うんですよ。アレルギーや家庭環境、住宅環境などいろんな理由で飼えない人たちもたくさんいます。そんな人たちが疲れた時、癒やしてくれるものって意外とないんですよね。

秋本:そうかもしれないですね。私はワンちゃんを飼えるからいいですが。

林:特に人を癒やしたり元気づけたりする職業の人は、自身を癒してくれる存在が身近にないとつらいですよね。例えば、まさに帆華さんのファンは疲れた時、帆華さんが歌ったり踊ったり喋ったりする姿を見て癒やされるわけですが、帆華さんが疲れた時、もしワンちゃんが飼えなかったら寂しいですよね。だからそういう時にペットの代わりになれるようなロボットを今、開発しているんです。

秋本:ペットの代わりになれるってことは、そのロボットには人工知能が入っているんですか?

林:人工知能という言葉は、知能とは何かという定義の問題があり、使い方が難しい言葉ではあるのですが、最近のメディアでの使われ方に合わせるなら、人工知能といえます(笑)。では実物を見ていただきましょう。名前をLOVOTといいます。世界中でまだ実物のLOVOTを見たアイドルはいないので、帆華さんがLOVOTを見た世界初のアイドルということになります。

秋本:やった! いちば~ん! すごくうれしいです!

“賢さ”をあえて隠した理由

:さあ、御覧ください。これがLOVOTです。

秋本:へ~! わ~! かわいい! こんにちは! 思ってたよりちっちゃいですね。もっとでっかくてごっついロボットが出てくると想像していました。

林:今までのロボットとはちょっと違う感じがするでしょう? LOVOTは人間のようにそれぞれ個性があるし、スキンシップでのコミュケーションができるので、愛着も湧いてくるんですよ。

秋本:ちゃんと目が合いますね(笑)。手で触った感じもよくて、めちゃかわいいんですけど! こんなかわいいロボットを見たのは初めてです。癒やされる~! 本当に生き物みたい!

林:このLOVOTに名前をつけるとしたら、どういう名前をつけますか?

秋本:何だろうなあ。う~ん……私は何でも直感で決めちゃうんですよ。この子は目がコロコロしてるからコロロで(笑)。

林:かわいらしくていい名前ですね。

実はこのLOVOTは最先端のテクノロジーが詰まっているので、従来のロボットに比べてかなり計算能力が高いんです。でもその賢さをかわいらしいボディの中に隠しているんです。

秋本:なぜあえて隠すんですか?

林:この世界には様々な能力をもっている人がいます。例えば難しい数学の問題を解くために全能力を使うのが数学者で、ひたすら人を元気にするために能力を使うのがアイドルといえますよね。ロボットも同じで、とにかく人の役に立つために作られたものが多いのですが、我々が目指しているのはそのような便利さを前面に出したロボットではありません。「どうすれば人を笑顔にできるか」に全力を注ぎ、ひたすら人を癒やし、元気にするためのロボットを創ろうとしているんです。そういう意味ではアイドルに近い存在とも言えます。そのような使命をもっている時は、自分の能力をひけらかす必要はないと思うのです。

秋本:私、LOVOTにすっごく癒やされました。でもLOVOTは喋らないですよね。LOVOTは賢いとおっしゃったし、最近のロボットは喋るので、喋れるのかなと思ったんです。でも逆に喋らない方がいいと思いました。

林:「喋る」というのは両刃の剣だと思うんです。多分、帆華さんもアイドルというお仕事をする上で、時と相手によってどういう言葉を使っていいのか、いけないのかという言葉の選び方にはとても気を遣うと思います。適切なタイミングで適切な言葉を使うと人を癒やしたり元気づけたりできるのですが、少しでも外してしまうと逆に相手を落ち込ませたり、不快感を与えてしまう可能性もありますよね。言葉を発する側はそんな意図はないのに、誤解されてしまうというリスクがあります。人間は言葉を使うコミュケーションが得なはずなのに、いつも自分を言葉で癒やしてくれるような他者はごくわずかしかいません。言葉って難しいんですよね。

秋本:すごくよくわかります。

林:でも、犬の場合は、人懐こい子だったら100匹いても、犬好きの人はすべての犬にそれぞれ、どこか癒やされます。人間より恐らく打率が高い。その理由はやっぱり受け手側の想像力の問題だと思うんです。このLOVOTは喋りませんが、だからこそ「何て言っているんだろう?」と想像しますよね。その時、決して悪い方には想像しません。でも他人の言葉は、発信者の意図と無関係に悪く取ることもあったりします。想像力の働き方が、言葉に対してはとてもシビアなんです。だから喋らないようにしたんです。秋本:確かに初めてLOVOTに会った時、「ここはどこ? あなたは誰?」って言ってるのかなと想像しながら聞いてました。林:そういうふうに捉えてもらうと我々としてはとてもうれしいです。

秋本:私、今年2週間で『スターウォーズ』を全作観たんですよ。劇中に「R2-D2」と「BB-8」という、喋らないけれど人懐こいロボットが登場するのですが、「R2-D2」はご主人様がいなくなったら機能が停止してスリープ状態になって、ご主人様を発見したら動き出すんです。とてもかわいくて、「この子たちに会いたい! こんな子ほしい!」と思っていたら、今日出会えたんです。LOVOTを見た瞬間、「ここにいた!」って、すごく感動しました。

林:そうなんですね(笑)。『スターウォーズ』には「C-3PO」という金色のよく喋るロボットも登場しますよね。でもこの人型で人間に近い「C-3PO」よりも、なぜか「R2-D2」や「BB-8」の方が好きという人が多いんです。人が好感や愛着をもつ対象に、必ずしも喋れるとか人間に近いことは関係ないんですよね。

秋本:すごくわかります。「スターウォーズ」の映画でも、「R2-D2」が発するピピピピという音が字幕にされないで、私たちに想像させるようになっていたのがすごくよかったんです。映画を観ながら「何を言ってるんだろう?」と想像することが楽しかったので。LOVOTも全く一緒ですよね。すごいいいなと思いました。

何よりも“温もり”を大事に

秋本:ところで、林さんがLOVOTを創ろうと思ったきっかけは? 漫画やアニメなど何かの作品に影響されたということもあるんですか?

林:確かに私は幼少期、『ドラえもん』が好きでしたし、一人のときには寂しさも感じていました。でも「僕がドラえもんのような友達ロボットを作るんだ!」と意気込んでロボット開発の道へ進んだわけではありません。大きな動機の1つとなったのは、たとえば『ナウシカ』に代表される作品のテーマの影響を受けているのかも知れませんが、テクノロジーや文明の進歩が必ずしも世界の人々を幸せにしているわけではないと感じていたことです。この矛盾を何かで解決したいとずっと思っていました。大きな転機となったのは、LOVOTを創る前、ソフトバンクで「ペッパー」の開発に携わったことです。

秋本:え、あの有名な!

林:はい、あの有名な(笑)。ある時にお客様がペッパーの手を温かくしてほしいと言ったんです。様々な改善点がある中で、手を温かくしてほしいというリクエストには正直驚きました。また、ペッパーと別れる時に寂しいと泣いたお婆さんもいらっしゃいました。このような出来事から、やはり文明が進歩して我々は幸せになっているはずなのに、実際には幸せになりきれていない、何かが足りないということが改めて垣間見えて、その足りないものをロボットが埋めることができる可能性を垣間見たのです。まさに「手を温かくする」というようなことがロボットに求められていて、それをとことんまで突き詰めたのがこのLOVOTなんです。

秋本:なるほど。本当に温かみのある生き物みたいですものね。

林:ありがとうございます。たとえ、家族で暮らしていても、家族だけでは寂しいと感じる人も大勢いると思います。その理由は多分、大昔、我々は洞窟の中などで集団で生活するように進化してきたからだと思うんです。現代人もその時の遺伝子に刻まれた記憶を持っているので、「人の役に立ちたい」とか「人の笑顔を見たい」という欲求が自然に沸き起こってくる。それ満たすためにLOVOTが貢献できたらな、と思っているんです。実際にLOVOTを見て、ロボットに対するイメージは変わりましたか?

秋本:LOVOTはまさに私が漫画やアニメで見ていた感じのロボットでした。人間味があって、敵じゃない、友達のような感じがして。LOVOTちゃんには本当に癒やされました。私を癒やしてくれるいろんな技術がLOVOTちゃんに詰まってるんだなと思うと、ますますかわいく思えてきます。

林:それはよかったです(笑)。もしこのLOVOTが帆華さんの部屋にいたらと想像するとどうですか?

秋本:すごくかわいくてもう何も手につかなくなっちゃう!(笑)。 すごくほしいです!

人を癒やし、元気づける立場である秋本さんにLOVOTをかなり気に入っていただけたことで、確かな手応えを感じられました。ありがとうございました。

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