▪️インタビューイー
Graffity株式会社
代表取締役社長 森本 俊亨
リードエンジニア 松本 一輝(matz)
社長が語るGraffityのAI活用への想い
——今回のAIプロジェクトを始めた背景やきっかけを教えてください。
森本:きっかけは、サーバーサイドリードのmatzが、今年1〜3月にかけて猛烈なスピードでAIをキャッチアップし、その知識を社内で共有してくれたことでした。
僕自身が慶應義塾大学や東京大学松尾研究室にて、AI研究に従事したバックグラウンドを持っていることもあり、「人とAIがどう協調して働くべきか」というテーマには強い関心を持っていました。
AI活用に前向きで、AIを会社にどう取り入れるかを考えていた中、マネージャー会議で「AI活用を推進するためにきちんと予算を取り、プロジェクト化しよう」という話が正式に決まりました。
そこから4月に「業務効率化とAI活用推進」をテーマに、本格的なプロジェクトとしてスタートしました。
——GraffityとしてのAI活用に対するビジョンや使命感は?
森本:僕が持っているAI活用のビジョンは、社員一人ひとりがAIを使いこなし、業務を効率化できるようになることです。とはいえ、全社でChatGPTを導入しても、そのビジョンがすぐに実現するわけではありません。なぜなら利用率が思うように上がらず、その背景には「どう活用すればいいか」というAIリテラシーの不足があるからです。
この課題を解決するため、AIリテラシーの高いメンバーに絞り業務効率化を推進し、確立したユースケースを他のメンバーに共有するアプローチを取っています。
AIの進化スピードは非常に速く、ムーアの法則のように7ヶ月で性能が2倍になるとも言われます。つまり2年後には今の16倍の性能になる可能性がある。だからこそ、早くからAIを業務プロセスに取り込み、人とAIが協調して働く形を模索する必要があると考えています。
僕らはエンタメコンテンツを作る会社なので、制作プロセスのどこにAIを入れるべきかは慎重に考えています。全部AIで作るよりも、人間が関与するからこそ生まれる面白さがあります。「どこをAIに任せ、どこを人が担うのか」の線引きを見極めることが、これからの鍵です。
エンジニア・各部門が語るAI活用の実践と試行錯誤
——現場からプロジェクトを起案した経緯を教えてください。
matz:きっかけは「Cline」というツールに衝撃を受けたことです。AIに(今までと比べると)過剰なまでの権限を渡すことで開発が半自動化する体験を経て、「これは現場で活用できる」と確信。すぐに経営層へプレゼンを行い、プロジェクト化に至りました。
プロジェクト発足前は自分ひとりで動いていましたが、興味のあるメンバーを募って、いまでは個々が主体的に動くようになっています。
(※Clineについては別のnoteにも書いています )
——発足して5ヶ月、どんな活動をされていますか?
matz:まず社内のユースケースをヒアリングして洗い出しました。経費精算や議事録など、現場で求められているのは地味な業務が多いのですが、効率化することで本来の業務に集中できるようになります。その一方で、知識共有のためのAI勉強会を開いたり、開発手法としてVibe Codingを取り入れたりと、幅広く取り組んでいます。
AI勉強会は週1回開催しています。AIは技術の進化が本当に早いので、各メンバーが学んだことを発表し合い、知識共有や定期的なキャッチアップに役立っています。毎回テーマが違い、実際に試した事例や最新の研究トピックま
で幅広く取り上げています。
AIコーディングは、社内だけではなく、これからのエンジニア全体としての開発文化の中心になりつつあります。単にAIにコードを書かせるのではなく、レビューを前提に取り入れることで、従来の品質保証プロセスを崩さずにスピードを得られるのが特徴です。エンジニアにとっては「AIを正しく導き、レビューを通じて成果物を磨く力」が新しい必須スキルとなってきています。
一方で、アイデア出しや演出検討など初期段階ではVibe Codingも活用されています。普段コードを書かないメンバーでも自分の発想を直接アプリやゲームに落とし込めるため、エンジニアリングとクリエイティブの垣根を越えたコラボレーションが生まれています。その後、エンジニアがAIコーディングで堅牢化する流れが社内に定着しつつあります。
こうした文化は、先日の社内ハッカソンでも表れました。エンジニアのみでARプロダクトの開発の挑戦だったのですが、参加チームの半分以上がAIを積極的に活用し、その多くがVibe Codingを採用していました。結果として、(クオリティは色々でしたが)短期間でプロトタイプがいくつも生まれ、AIがエンジニアリングのスピードと発想力を拡張する可能性を、実践的に確認できる機会となりました。
——Vibe Codingに取り組む中での課題や工夫は何ですか?
matz:課題としては、AIにはコンテキストウィンドウの制約があり、大規模なコードベースを一度に理解することが難しい点、そしてハルシネーションによる出力のブレが避けられない点です。そのためテストが必須であり、特にUI部分については人間の手による検証と修正が欠かせません。
工夫としては、私たちはAIに「ガードレール」を敷いて正しい方向に作業させています。ここで言うガードレールとは、良いアーキテクチャ/良い資料/矛盾を指摘を人間の手で用意してあげることを指しています。
つまり「ガードレールをどう設計するか」が、AIをただの生成ツールではなく、プロジェクト全体の品質を保つための開発パートナーにできるかどうかを分けています。
——現場の手応えや熱量、成果について教えてください。
matz:経費精算や議事録、サブスク管理などでAIを導入し、少しずつ成果が見えてきています。現場の熱量も非常に高く、経営層との距離が近く風通しも良いため、メンバーが意欲的に参加してくれています。
最初は自分ひとりの動きから始まりましたが、いまではメンバーが主体的に動き、自分の熱量や興味がしっかりつながったことが大きな成果だと感じています。
全社的に広げるAI活用とGraffityの未来図
——個人利用からチーム、全社展開へと広げていくために、どんな工夫をしていますか?
森本:現在はAI利用率や業務の置き換え率をKPIとして設定しています。
Vibe Codingでは、エンジニアがプロトタイプ制作や技術検証に活用し、かなり定着してきました。最初は一部のリードエンジニアから始まり、勉強会やハッカソンを通じて利用が広がり、今ではエンジニア全員が使用する状態です。今後はデザイナーやPMなど非エンジニア職にも活用を広げ、社内全体の利用率を上げていきます。
展開のステップは、
- 個人利用での成功事例を作る
- チーム単位で展開
- 職種を横断して全社規模に拡大するという流れを意識しています。
実際の事例として、ある技術検証プロジェクトでは作業の9割をAI(Vibe Coding)で実施。通常4週間かかる作業を1週間以内で終わらせ、成果も良好でした。具体的には、画像処理を用いたリアルタイム物体認識と、その結果に応じた演出投影のプロトタイプを、リサーチから実装まで短期間で仕上げることができました。
——社員や採用候補者に伝えたいメッセージは?
森本:AI活用をGraffityのコア競争力に育て上げることです。
そのために会社としてもAI技術に前向きで、積極的に取り入れていく方針を掲げています。今後は、まだ僕ら自身も想像していないようなAIの使い方が生まれてくるはずで、それを仲間と一緒に見つけたい。
AIを活用できていること自体を、スピード・コスト・品質の面で競争優位へ転換していく。そんなワクワクする挑戦に、社員一人ひとりが参加しています。新しい働き方をつくりたい人や、AIを武器に面白い挑戦をしたい人にとって、Graffityはきっと最高に相性の良い環境だと思います。