- テックリード
- ハードウェア
- フロントエンジニア
- Other occupations (5)
- Development
- Business
株式会社フリックフィットはインソール型ウェアラブルデバイスの企画・開発から販売までを手掛けており、現在はセンシングモジュールardiの開発を進めています。今回はCEOである廣橋博仁に組織作りについてインタビューを行いました。
センシングモジュールardiの開発はどのようなチームで行われているのでしょうか?
僕は、プロダクトをカタチにするために、エンジニアやデザイナーを社員として起用しています。しかし社員だけでなく、業務委託している人たちもいます。
社員は僕のイメージをカタチにする役割を果たし、その上で外部のプロフェッショナルたちとセッションするというイメージを持っています。アイディアを広げていくために、中にいる人と外にいる人の両方が必要です。
ardiについては、スマートインソールだけでなく、靴としても売り出していくことを検討しており、世界的に有名なプロダクトデザイナーとセッションを始めようとしています。
新しいアイディアを生み出す過程において、他者との対話はどのような影響を及ぼすのでしょうか?
人のインスピレーションの源泉は、見てきたもの、経験してきたことがベースにあると思います。僕には365日×48年分のベースがあり、僕と誰かのベースを掛け合わせることによって偶発的に生まれる部分に面白さを感じます。
昔、誘われてバンドで活動していたことがありました。バンドのセッションで、僕が考えてきたアイディアに別の人がインスピレーションを受けて異なるアイディアを出したとき、僕は自分のアイディアに固執せず、そちらをベースにしたほうがいいと考えられる人間です。
人と人との対話や関わりを通じて生まれたアイディアを育てていく感じが好きで、事業でも同じような感覚を持っています。
ビジネスで人とつながるためには、発信力が必要でしょうか?
僕はもともとスポットライトを浴びたいとか目立ちたいという気持ちがあまりありません。出たがりでもSNSで発信したがりでもありません。メディアに出るのも仕方がないから出る感じです。
しかし、僕は発信力がないのによくいろいろな人とつながっているなと思うくらい、たくさんの人とつながっています。発信はしなくても、知り合いに人を紹介されたり紹介したりすることが非常に多いのです。紹介されたいから紹介しているわけではなくて、本当によかれと思って紹介しています。
いつでも誰かと会うことに慣れていて、どこにでもつながれるというスタンスです。一人でイスラエルに行ってビジネスできるような自信もどこか持っています。それはたぶん、知り合いがいるからではなく、人との知り合い方、つながり方を知っているからだと思います。
チーム内の人間関係についてどう考えていますか?
プロジェクトがうまくいくために人間関係をより良くしておくことは、戦略的に当たり前だと思います。単に人間関係がうまくいくようにするために何かしらの努力をするのは、自分のエネルギーの放出だと思っていて、そこまでのモチベーションはありません。
しかし、何か新しいものを産み出すために人とうまくやる必要性が存在しているなら、そのための努力はもちろんします。モチベーションが人に向いているというよりは新しい何か、事業や製品・サービスに向いているのでしょうね。
チームの環境づくりに注力されているのはなぜでしょうか?
ここ数年は、フリックフィットも含めてクリエーションの入口に携わって、後は人に任せるという感覚を持ち始めました。クリエイティブのど真ん中にいるというより、もう少し引いたカタチで、みんなが働きやすい環境を作ることのほうに意識を向けています。
それは、僕が持たないほうが、会社が大きくなる場合があると思うことが多くなったからです。初期は僕が何でも仕切っていくほうがいいだろうという思いは変わらないのですが、その後は、僕がやるのがよくないというより、世の中には僕よりうまくやれる人がいるなと感じているからです。
少し引いた位置で、Aさんにカタチを作らせたほうがきれいなものができそうだからとAさんという人材を連れて来て、そこにBさんがサポート的に入ったほうがいいなということを考える。彼らがやりやすい環境を整えていくことが僕の仕事だと思っています。
最近になって外部との関わりを増やそうとしているそうですね。それはなぜでしょうか?
これまでの5〜10年は昔ほど人に会っていませんでした。それはR&Dに時間がかかっていたからです。今、センシングモジュールArdiの開発に光が見えてきて、自分の核になるものができてきた気がします。
核になるものがあり、自分は今こういうことをやっているという状況なら、こんな人を紹介しようかという話が来たらすぐに会いに行けます。外の人と会うこと自体が自分の仕事のひとつだと思うようになりました。
今後は組織作りに注力されるのでしょうか?
僕は人やメディアが寄ってくるようなものを作る自信があります。しかし、ずっとそのままでは一定のレベルを超えられないとも思っています。なので、僕の次のテーマは組織の作り方に自分のエネルギーを注ぐことです。
僕より別の人のほうが得意そうな分野でも、今までは責任感で頑張っていた気がします。しかし、それが得意な人が世の中にはたくさんいるので、僕は自分が得意なところをやっていこうと思います。
人のことはよくわかるんです。Aさんはこうしたほうがいいというのが想像できます。Aさんらしさを引き出し、Aさんに足りない何かを提供することが得意です。Aさんに足りないエッセンスを裏側から黒子的にサポートしていきます。
最近新たに興味を持つようになったことについて教えてください。
これまでけっこう自分がやりたいことをやってきた人生ですが、最近は何かに導かれて興味を持ったことのほうが面白いと思うようになりました。
人に誘われてマラソンに挑戦するのは重い腰を上げるような感覚がありますが、やってみたら好きになるかもしれません。すごく臭いラーメン屋さんだけど3回行ったら好きになると言われて行ってみたら本当に好きになり、今では自分の一番好きなラーメン屋さんになったこともあります。
ぜんぜん興味がなかったことでも、誘われてやってみると面白い世界だったと感じることがあります。今思えばバンドもそんな感じでした。
誘うのと誘われるのではどちらが多いですか?
誘われてやってみて好きになったパターンもありますし、自分からやろうと声をかけたものもあります。案外誘われるほうが多いかもしれません。誘われて始めるのですが、結局僕がリードするパターンが多いですね。
センシングモジュールardiの開発にしても、もとは取引先企業の方が始めた事業を業務委託のような形で請け負っていたのですが、今では僕がリーダーとなって開発を進めています。
廣橋さんにとってスタートアップ企業とはどのようなものでしょうか?
LinkedInの創業者リード・ホフマンの名言の1つに「スタートアップとは、崖の上から飛び降りながら飛行機をつくるようなものだ」という言葉があります。僕もまさにその通りだと思います。
製品が未完成でも組み立てやリリースを全部一遍にやり、完成できないなら飛行機は落ちて全滅するという話です。リスクテイクであるということかもしれないし、リスクを背負いきれる人がいないと難しいという話かもしれません。
起業家としての道のりで、支えてくれる人や新しいチャンスはありましたか?
これまで、僕はずっと片道切符で来ていました。しかし実は、新しい往復の切符が得られたと感じることが多いのです。新しいリターンの戻り先、助けてくれる先がなぜか出てくるんですよ。
往復切符で確実に戻れる場所があるからチャレンジするわけではなく、チャレンジを繰り返すからこそ出会える人もいるということです。
大企業の新規事業とスタートアップ企業を比べるとやはり大企業のほうが強いのでしょうか?
大企業が新規事業を始めるにしても、ベンチャーが新しく事業を立ち上げるにしても、同じカテゴリーだったら競合する可能性があります。そのときどちらが勝つかといったら一般的には財力があるところが勝つでしょう。
ベンチャーが飛行機を組み立てながら崖から飛び降りるようなことをしつつも、最近は資金が集まってきやすいような状況もあるので、そのカテゴリーにおいて大企業と張り合える可能性はあると思っています。
今後はどのような活動を目指していますか?
今は外を出歩くことが自分にとって価値があります。出歩くと面白い話を拾う性質で、セレンディピティなドアがどんどん開いていくようなことが多いのです。
僕にはardiのプロジェクトをやっている会社の社長だという軸があります。その前提で人に会いに行き、コラボレーションの話をすることができます。Ardiを名刺代わりに自由に出歩いて、ビジネスのシナジーを作っていきます。