多種多様な個性やカルチャーが交差するFIKAで、日々生まれる「予期せぬ出会い」にスポットを当てるインタビュー連載。今回は、コーポレート部門で人事を担当する山本佳苗さんに話を伺いました。
外資系ホテルでキャリアをスタートした山本さんは、一度異業界へ転職したものの、「もっと人に寄り添う接客がしたい」という想いからFIKAへ入社。現場クルーとして働きはじめ、わずか1年でマネージャーに抜擢されました。
白馬や福岡の拠点で運営改善を進める一方、多国籍なチームのマネジメントでは、自分の当たり前が通用しない難しさに直面することもあったといいます。
異なる文化や価値観を持つ仲間と向き合いながら、自分自身の考え方もアップデートしてきた山本さん。これまでのキャリアの変遷と、事業拡大フェーズにあるFIKAで実現したい人と組織のあり方について聞きました。
「やっぱり私は接客が好きなんだ」──コロナ禍の葛藤とシェアハウスを経て出会ったFIKA
―山本さんのこれまでのキャリアと、FIKAとの出会いを教えてください。
山本:もともとは、都内の外資系ホテルで働いていました。「英語が好き」「観光が好き」「接客が好き」という自分のやりたいことをすべて叶えられる場所だと思ったんです。
でも、入社から2年ほど経った頃にコロナ禍に入り、電話対応などの内勤業務が増えていきました。「このままここで働き続けたら、自分の可能性が狭まっていくかもしれない」と次第に感じるようになり、将来のイメージを持てなくなってしまって。
そこで一度ホテル業界を離れ、シェアハウス運営会社でアルバイトをはじめました。ホテルは短期滞在のお客様が中心ですが、当時はもっと中長期的に人の暮らしに関われる仕事に興味があったんですよね。
でも実際に働いてみると、その会社は運営や管理の比重が大きく、効率的なオペレーションについて学べた一方で、自分が大事にしたいホスピタリティの部分とは少し違う感覚もありました。
そこで「やっぱり私は、人に寄り添う接客やサービスが好きなんだな」と実感し、接客やサービスに関わる仕事をもう一度したいと思って転職先を探していたときに出会ったのが、FIKAでした。

ーFIKAのどのような部分に惹かれたのでしょうか?
山本:カジュアル面談を担当してくださった方の印象がとてもよかったんです。正直、最初は「もっとパーティーピーポーみたいな人が出てくるのかな」と少し身構えていたのですが、そんなこともなくて(笑)。とても自然体で「あ、こういう人たちが働いているんだ」と安心しました。
さらに面接を通じて、働く人たち一人ひとりが大きな裁量を持ち、生き生きと働いていることを知ったのも大きかったです。それぞれが自分の強みを活かしながら、「こういう価値を生み出したい」「こういう施策をやりたい」と主体的に動いている。単なる接客にとどまらず、価値づくりや施策設計といったマネジメントにも関われる環境だと知り、「ここでなら自分も挑戦してみたい」という気持ちがどんどん強くなっていきました。
「自分はチームづくりが強み」──古民家ホテルの立ち上げで掴んだ、マネジメントの手応え
ーFIKAに入社してから、最初に担当した仕事を覚えていますか?
山本:最初は、UNPLAN Kagurazakaで研修をしました。清掃業務からスタートして、その後はフロント業務。現場に入る社員は、まずそこからはじめます。運営の基本的な部分を理解し、最低限の現場業務ができるようになることが最初のステップなんです。そこから段階的に仕事の幅を広げて、入社から1年ほどでUNPLAN Kagurazakaのマネジメントを任されるようになりました。
ーかなり早い段階で、大きな裁量を持って働くようになったんですね。
山本:そうですね。とはいえ、当時はコロナ禍で人手不足だったこともあり、いわゆる管理職というよりはクルーたちと「何か楽しいことをやりたいね」と話しながら、みんなで現場を盛り上げていくような感覚で働いていました。
たとえば、街歩きやスイーツ巡りのプランをつくったり、イベントを企画して人を呼び込んでみたり。拙い部分も多かったと思いますが、FIKAにはチャレンジそのものに価値を置いてくれる文化があって、「失敗してもいいから、まずはやってみよう」と背中を押してもらえたことが、当時の自分としてはすごくありがたかったです。

ーFIKAで仕事をはじめてから、印象に残っている仕事や経験はありますか?
山本:特に印象深いのは、長野県・白馬にある古民家ホテルをFIKAで引き継ぐことになり、運営改善に携わった経験です。
白馬は、地域との関係性がとても大事な場所で、地元で長く働いているクルーの方々もたくさんいたんですね。だからこそ、単なる運営改善だけではなく、一緒に雑用をしたり、細かにコミュニケーションをとったりと信頼関係を丁寧につくっていくことを意識しました。
そうして1ヶ月ほど経った頃には、少しずつ連携が取れるようになり、現場にも前向きな空気が生まれはじめたんです。クルーのみなさんが楽しそうに働いている姿を見たときは、本当に嬉しかったですね。
後から振り返ると、この経験を通じて、「自分は人と人との関係性を整え、チームをつくることが強みなんだ」と実感できた気がします。その手応えを得られたことが、今でも役立っています。
「佳苗さんの言い方は嫌です」──自信と空回り、福岡での失敗から見つけた理想のマネージャー像
ー逆に失敗談や壁にぶつかった経験はありますか?
山本:白馬の次にUNPLAN Fukuokaの業務改善に入ったとき、自分自身のコミュニケーションのあり方を大きく見直す出来事がありました。
当時、UNPLAN福岡はチーム内の意思疎通に課題があり、「改善に入ってほしい」と声をかけてもらったんです。白馬での成功体験もあったので、その頃の私はかなり自信がついていて、「私が変えてやる!」くらいの勢いで現地に入りました。でも、既存メンバーからすると、私は突然やってきた人間です。当然、最初から歓迎されるわけではなく、思うようにコミュニケーションが取れない時期がありました。
それでも積極的に対話を重ねたりしながら、半年ほどかけて少しずつ距離を縮めていきました。結果的にチーム改善自体はうまくいったのですが、あるクルーから「佳苗さんの言い方は直接的すぎて嫌です」とフィードバックをもらったんです。
以前の私は、自分の正義や信念から、かなりストレートに物事を伝えるタイプでした。自分ではよかれと思って伝えていることでも、相手の文化や背景によっては深く傷つけてしまうことがある。そのことをはじめて強く実感しました。
それからは「正しさを伝えること」だけではなく、「どうすれば相手に伝わるか」「どうすれば安心して話せる関係をつくれるか」をより意識するようになりました。

ーちなみに、人との距離を縮めるときに意識していることはありますか?
山本:私が大事にしているのは、言いづらいことも明るく言い合える関係をつくることです。
誰しも衝突は避けたいですし、嫌われたくない気持ちもありますよね。でも、課題を言わずに溜め込んでしまうと、チームはよくなりません。だからこそ、言いづらいこともできるだけ明るく、ときには冗談も交えながら伝えるようにしています。「私はちゃんと話したいと思っているよ」という姿勢を示すことが大事なんです。
そのうえで「この課題を解決するには誰の力を借りればいいか」「それぞれの得意・苦手は何か」を見極めながら、チーム全体で成果を出していくように務めています。
マネージャーというと、何でも一人でこなさなきゃいけないというイメージがあるかもしれません。でも、全部を一人で背負う必要はなくて、周囲の得意な人に頼りながら、最終的に施設全体がよくなればいいと思うんですよ。それぞれの強みを活かしながら、チームを前に進める存在でありたいと考えています。
ー山本さんが思い描く理想のマネージャー像のようなものはありますか?
山本:明確なロールモデルが一人います。ホテルで働いていたとき、クラブラウンジのマネージャーをされていた方です。
クラブラウンジは、通常の宿泊以上に高いサービスレベルが求められる特別な空間なのですが、その方が本当に印象的でした。いつも穏やかで、ご機嫌で、場の空気を柔らかく整えている。その方がいるチームはクルー同士の雰囲気もすごくよくて、空気感そのものが質の高いサービスにつながっているように見えたんです。
さらに驚いたのは、激しく怒っていたお客様でさえ、そのマネージャーが対応すると最後には穏やかになり、満足して帰っていかれることでした。当時の私は「この人、一体何者なんだろう」と思いました(笑)。でも同時に「こういう人になりたい」と強く感じたんです。
自分自身がご機嫌でいると、それがチームの雰囲気にも影響し、その空気がお客様にも伝わっていくと思うんです。仲がいい、言いたいことも言える、でも空気は柔らかい。そんなチームづくりを、自分も目指したいと考えています。

「正直、転職したくらいの感覚でした」──現場から人事へ移って直面した壁と学び直し
ー現在はコーポレート部門で人事採用を担当しているそうですが、どのような経緯で任されるようになったのでしょうか?
山本:UNPLAN福岡のあとに白馬に戻ったのですが、これまでと違う領域に挑戦してスキルの幅を広げたいという気持ちもあったんです。その意思を代表の福山さんに伝えたところ、現在のポジションへの移動が決まりました。
ーこれまでのキャリアとは異なる仕事ですよね。
山本:正直、転職したくらいの感覚です。いわゆる一般的なビジネス職やコーポレート業務について、想像以上に何も知らないんだと痛感しましたね。
現場では人との関係性や感覚でうまく回せていた部分もありましたが、人事では採用戦略の設計やワークフローの構築などのプロセスをロジカルに組み立てる力が求められます。私はそういう数字や構造で物事を捉えることが本当に苦手で。今まで隠れていた弱みが一気に表面化したようで正直かなり悔しかったのですが、だからこそ「ここは学び直さなければいけない」と強く思うようになりました。
ーその壁を乗り越えるうえで、支えになったものはありますか?
山本:やはり、周囲の存在ですね。福山さんも非常に忙しい中で、質問すれば私の理解度に合わせて丁寧に説明してくださいますし、上司も「何が分からないのか」を一緒に整理してくれるんです。できないことを責めるのではなく、「じゃあ、どこで詰まっているのか」を一緒に紐解いてくれる環境は、本当にありがたいなと思います。
自分自身、現場でマネージャーとして経験を積んできた分、「こんなこともわからないなんて恥ずかしい」と思ってしまう場面もあるのですが、未経験の私にこうして機会を与え、学びながら前に進ませてくれることがFIKAらしい価値であり、文化でもあると思います。

「現場を置いていかない」──事業拡大フェーズのFIKAで描く組織の理想像
ーこれから先、個人として伸ばしていきたいスキルはありますか?
山本:大きく二つあります。一つは、人事領域に関する知識や情報をしっかりインプットしていくこと。もう一つは、ロジカルシンキングを身につけることです。
私はもともと感覚で動くタイプなので、どうしても感情や直感に頼りがちなところがあります。でも今のポジションでは、構造的に物事を捉える力が求められるんですね。
何かアイデアを出したときにも、「この視点が抜けているよね」と指摘されることが多く、そのたびに「そこまで考えられていなかったな」と悔しくなるんです。だから、もう少し高い視点で会話ができるようになりたいと考えています。
ーその先に見据えているキャリア像もあるのでしょうか?
山本:現場からコーポレート部門に移ったので「経営側に行きたいのかな」と思われることもあるのですが、実はそこがゴールではないんです。
やっぱり私は、現場が好きなんですよね。お客さまの動きや、その場の空気感を感じられる距離で働けることが、自分にはすごく合っていると思います。
現場のリアルを理解しながら経営視点も持ち、しかも組織全体を見られる存在になることが、今の目標です。
ーでは、FIKAという組織に対して、今後こうしていきたいという思いはありますか?
山本:今のFIKAは、まさに事業拡大フェーズにあります。拠点を増やしていく動きもそうですし、既存拠点の価値をさらに高めていく取り組みだったり、飲食など新しい事業にもどんどん挑戦しています。
一方で、事業が広がっていく中でいちばん怖いのは、現場が置いていかれてしまうことです。経営陣が良かれと思って事業を広げても、現場クルーが方向性を理解できなかったり、自分のキャリアの先を描けなかったりすると、人は離れてしまう気がするんです。
実際、私自身も「マネージャーの次は何を目指せばいいんだろう」と悩んだときがありました。だからこそ、会社がどこに向かっているのかをきちんと共有すること、FIKAでどんなキャリアパスがあるのかを示すこと、そして事業成長と同じスピードで人の成長機会も整えていくこと。この三つを大事にしたいと考えています。
ー山本さん自身が、そのモデルケースになるかもしれませんね。
山本:そうなれたら嬉しいですね。FIKAにはエリアマネージャー、海外立ち上げ、人事など、さまざまなキャリアの可能性があります。必ずしも一つの型にはまる必要はなく、自分の「Will(やりたいこと)」と「Can(できること)」を掛け合わせながら力を発揮できるポジションを選んでいける。そういう柔軟なキャリアの選択肢があることを、これから入ってくる人たちにも伝えていきたいです。

ー最後に、今後どんな予期せぬ出会いをしていきたいですか?
山本:自分の当たり前が壊されるような出会いがしたいですね。ショックでもあるけれど、同時に嬉しさもある。そういう経験こそ、自分をいちばん成長させてくれると思うんです。
異なる国籍や文化、バックグラウンドを持つ人たちと働く中で、「自分はこう思っていたけれど、全然違う考え方もあるんだ」と価値観が更新される瞬間があるのですが、それってすごく刺激的ですし、自分の幅を広げてくれるんですね。
もちろん、ときにはぶつかることもあります。でも、それを乗り越えて理解し合い、一つのチームとしてお客様に価値を届けられたときの手応えは本当に大きいんです。
だからこそ、FIKAという環境の中で、そうした異文化や多様な価値観との出会いを、たくさん経験してほしいと思っています。私自身も、これからも予期せぬ出会いを通じて、自分を更新し続けていきたいです。
(文:村上広大/編集:藤村侑加)

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