FICCは「あらゆるブランドと人がパーパスによって、未来を創り続けている世界の実現」というビジョンを掲げ、一人ひとりの想いを起点に、ブランドや社会の価値を創造することを目指しています。
2020年、「次世代によりよい世界を」をミッションに気候変動 × テクノロジー事業に取り組むアスエネ株式会社(以下、アスエネ)とパートナーシップを締結いたしました。両社で対話を重ね「共創」という形でブランドや社会への価値を創造します。ブランドマーケティングを専門とするFICCが、なぜ異業界の企業とパートナーシップを締結したのか、具体的な取り組みと合わせてご紹介します。
アスエネ株式会社
持続的な脱炭素社会をつくるため、ブロックチェーンを活用した再エネ100% ×地産地消が特徴のクリーン電力サービスアスエネを提供している。
なぜ企業は社会課題・環境問題に取り組むべきなのか?
近年、コロナ禍で拡大する所得格差や気候変動による豪雨・森林火災の自然災害等、解決すべき社会課題や環境問題が山積みです。かつて、これらの課題や問題は国や先進国政府主導で解決をするという考え方が一般的でした。しかし、国が深刻化する問題に対処し切れないため、企業なら解決できるだろうと期待が高まっています。
共感の連鎖を呼んだアスエネとの出会い
FICC代表 森とアスエネ代表 西和田氏
2020年秋頃、FICC代表 森はメディア取材やイベント登壇の機会に恵まれました。その一つ、情報誌「経営者通信」を運営するイシン株式会社においては、取材を通じてFICCと共感し合いつつも、同じような想いを持つクライアントやパートナーと繋げていただける関係へも発展しました。そこでご紹介いただいたのがアスエネ代表の西和田 浩平氏でした。その後、対話を重ねていき、FICCとアスエネだからこそ社会的意義のある新しい価値提供が実現できると両者が実感しタッグを組むこととなりました。
FICCが他業界であるアスエネとパートナーシップを締結する理由
ブランドマーケティングエーシェンシーであるFICCが目指すのは、ブランドに関わる全ての人たちが、優劣を競う「競争」ではなく「共創」によってイノベーションを起こし、社会価値と経済価値を持つ新たな市場を創造することです。これまでの良い製品を作れば売れる時代は終わり、ブランドに社会的意義が必要とされる時代において持続的な成長をし続けるためには、生活者だけではなく全てのステークホルダーに対して一貫性のある行動を起こす必要があります。そこで、異なる視点を持ち、社会課題解決に取り組む他業界の企業とFICCがパートナーシップを締結することで、これからの時代を生き抜くために必要なブランド独自の価値創造を目指しています。
社会的意義に基づいたブランド独自の行動を起こす
FICCが大切にしていることは、ブランドが全てのステークホルダーに対して一貫した行動を起こし、社会価値・経済価値の両立に向けた独自の市場を創造することです。ブランドがバリューチェーンの一環として再生エネルギーを使うという選択をしたとしても、その行動が大義に沿ったものでない限り、ブランド独自の価値を形成することができません。そこで、ブランドマーケティングを専門とするFICCがアスエネのような他業界のパートナーとタッグを組み、ブランドの様々な行動に対してブランドマーケティングによる一貫性を提供することで、ブランドと社会の未来に貢献することができると考えています。
価値提供のため気候変動に関する勉強会を行う
2021年2月26日、FICCではアスエネ代表の西和田 浩平氏と江森 靖紘氏を招き、気候変動に関する勉強会を実施し、環境問題の現状やSDGs取り組み事例を学ぶ機会を設定しました。ここでは対話の一部をご紹介いたします。
1. 環境問題を学び専門的な視点から現状を知る
環境問題をはじめとする社会課題の現状について西和田氏から共有いただいた後、対話をしました。
CO2排出量の少ないオーストラリアが対策をしなければいけない理由
森:現在、オーストラリアのCO2排出量は1.1%と世界的に見て少ない数値です。しかし、私が留学をしていた高校生の頃、オーストラリアは真上にあるオゾン層破壊の影響から皮膚ガンのリクスが非常に高く、幼少期からケアをしなければいけなかったり、学校で紫外線対策の授業があるような国でした。全世界が影響を与えているのに、直接的な被害が出ているのは世界中でごく一部の国という状況を目の当たりにし、当時もはや一国単位の問題ではないなと感じたことを覚えています。
西和田:まさに環境先進国である欧米・オーストラリアは、気候変動の問題に呼応して政府・企業だけでなく個々人でも積極的に取り組んでいる印象があります。日本でも徐々に注目されつつありますが、抽象的な表現の報道が多いため、客観的なデータに基づいて現状を把握して議論することが重要だと思います。
日本のグリーンリカバリーが進まない理由
西和田:石炭火力発電所や化石燃料由来の自動車など、短期的な視点で既存の利益が出ているビジネスモデルから脱却できず、EV・蓄電池・再エネなどのクリーンテクノロジー・イノベーションへと大胆にシフトできていない現状があります。一方で、欧米や中国は一度既存モデルの利益を断ち切って、未来への投資に注力しています。時代の流れに合わせてスピード感をもって変化できていないことが、日本の課題だと感じています。
森:国によって「目先の利益を見るのか、長期的な視点で見るのか」そもそも違っていますよね。
西和田:そうですね。テスラ社のように長期的な視点で取り組みを進めた方が、結果的に企業価値は上がるはず。イノベーションのジレンマがあることは理解できますが、目先の利益を追いすぎてしまう考えは、早急に変えるべきだと感じてます。
企業が気候変動に取り組むことで繋がること
西和田:単に気候変動の対策をするというより、環境負荷を減らしながらビジネスチャンスや売上増加に繋げる取り組みが、企業の中でも活発になっています。
森:企業が環境への新しい問いと向き合うことで、イノベーションが起きているということですね。
西和田:そうです。企業や製品の選定軸として、単にコストが安いだけではなく、如何に環境や社会的な課題に配慮しているかどうか、で選ぶ人が増えています。
経団連が「脱炭素を優先」と発表した背景
西和田:経団連も日本政府や米国の動きに注目しています。管政権が「2050年に脱炭素社会を実現する」と掲げたこと、また米国がバイデン大統領になりパリ協定に復帰した流れを考慮して、徐々に脱炭素・カーボンニュートラルを重視し始めています。
森:消費者が価値を感じて選択をする、という消費行動を含めた経済の構造が連携しないと、どこかで動きが止まってしまう。だからこそ、ブランドマーケティング視点では企業だけでなく消費者に対する働きかけが大切だと思っています。
2. 企業事例から具体的な取り組みを学びアイデアを醸成
SDGsに取り組む企業事例について江森氏から共有いただいた後、対話をしました。
事例1. 星のや
森:以前、星のや代表・星野 佳路氏の「勝手にSDGs」に関するインタビュー記事を拝見しました。環境にいいからだけでなく最終的に利益が出るからやるんだと徹底されているなと感じました。CSR(企業の社会的責任)ではなくCSV(共通価値の創造)だと。地域の資源に着目しどうやって活性化するかを考え、宿泊客にとって楽しいコンテンツにしたり、ベネフィットを得られると感じてもらえるように仕掛けていくことで、社会価値と経済価値の両立が叶えられると感じました。結果的に、SDGsの目標を捉えた活動になっているということですね。
江森:そうです。星のやが行っていた「地域の食材や土地の文化をテーマにした仕組みづくり」は、SDGsの取り組みだと社員が気付いたことがきっかけです。対外的に情報発信しないと勿体ないという社内の声から代表に提言して始まったのが、この「勝手にSDGs」です。
事例2. 日本環境設計
森:彼らは目的として「服を作る」と掲げていて、生まれ変わらせる際に「どのような目的で服を作っていくのか」も考えて活動しています。消費者が使ってくれて初めて循環するので、素晴らしい取り組みだと思います。
江森:私も含めてこのような取り組みに賛同しているZ世代は、SDGsや環境問題への意識が非常に高く、ストーリーや目的を持った製品を選ぶ傾向にあると言われています。米国の調査によると、Z世代の62%がサステナブルブランドの商品を選ぶと回答しています。この結果はどの世代よりも高い比率であり、サステナブル商品であれば高額でもお金を使うといった特長もあります。
森:Z世代が社会課題や環境問題に意識が高い理由は何だと思いますか?
江森:小中学生の時から授業で環境問題について習ったり、デジタルネイティブ世代ということもあって簡単に世界の情報を得ることが出来たからだと考えています。さらに、スマホを通して今世界で起きている問題を身近に感じ、目の当たりにしてきた結果だと思っています。
森:社内のZ世代と話をしていると、これからの社会や環境問題を考えた時、上の世代は未来の問題という意識が強く、若い世代ほど今起きている問題なんだと自分ごと化ができているように思います。世代によって、未来を見つめる時間軸が大きく違うと感じました。
西和田:お金やモノがない時代を生き抜いた上の世代は、モノを追い求める欲が強い傾向にあると感じます。一方で、豊かな時代に生まれて多くの物欲が満たされている若い世代は、このままだと地球環境が脅かされ日常生活ができないリスクが高くなっていることから、自分達が住んでいる地球の危機を改善したい、社会のために何かをしたいという欲が強い印象があります。
森:2050年の未来には、何がなくて何を求めて生きているんだろうと想像すると面白いですね。
3. ワークショップで個の視点を持ち寄り探求
最後に、FICCスタッフに対して、クライアントやパートナーへの価値提供となる気付きやアクションの解像度を高めるべく、ワークショップを実施しました。このアクションは、FICCの社内で2020年から育んできた「ONE FICC ー CROSS THINK TO INNOVATE」という文化によるもので、対話をすることにより一人ひとりの視点から社会へと繋がる問いを導き出し、イノベーションを生み出す取り組みです。
後日、社内アンケートではスタッフからこんな声が届きました。
プラスチック容器の経年変化が美しくなるような、愛着の湧くようなアイディアは友人のプロダクトデザイナーと意見交換会をしてみようと思いました。
新しいものが求められてきた社会の文脈を、例えば使い込むことがカッコいいという文脈に変換するなど、生活者にとっての価値に変換していくことが大事と感じた。また星のやのように実はソーシャルグッドだったじゃん、みたいに経済との両立、生活者の価値との両立は忘れてはいけない。『意識高い』になってはいけない。
専門用語が多くて分かりにくかったことも、興味あるトピックについてその人の言葉で発されることで一気に距離が縮まることを体感した。やらなきゃいけないけど、つい後回しにしてしまうことについて、自分ごと化出来るようになると、前のめりで行動に起こしたくなると実感した。
より良い選択肢の一つとして、アスエネ電気を福利厚生に
FICCは社内の福利厚生として、環境に優しくコスト削減につながるアスエネ電気を導入しました。スタッフは特別割引で使用することができます。
導入したスタッフからは、「電気への意識が変わった。CO2排出削減の貢献度合いが、スギの木何本分といった直感で分かりやすい指標になっていて、日々の使用電力チェックが習慣になった」という声もありました。
リモートワークにより使用電力が増加するなかで個人にとって良い選択ができる一つの機会として、また、毎日当たり前に使うからこそ環境について考えるきっかけになればと願っています。
ルーツであるクリエイティブ視点から、ブランディングサポートを
現在、アスエネのロゴ開発やブランディングに関わるサポートを行なっています。また、FICCのクリエイティブ資源を生かし、ブランドマーケティングの視点からアドバイザーとしても関わっています。
ビジョン推進に向けて、大切にしていること
FICCは、今後も、関わるクライアントを「真のブランド」へと導いていけるよう、クライアントのバリューチェーンに関わる様々な企業と、ビジョン共感によるパートナーシップを推進していきます。なぜなら、私たちが大切にしている「社会的意義によるブランドマーケティングのあり方・人の可能性を信じること・存在意義による共創」の全てをFICCが実現してこそ、クライアントの価値になると信じているからです。ブランドと関わる全ての人が社会的意義のある行動を起こすことで、より良い未来へと繋がるのではないでしょうか。