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「エネチェンジ・マイエネルギー」開発秘話。スマートメーターのデータ活用でサービスはどう進化する?

2022年4月に施行された電気事業法の改正により、これまで活用が期待されてきたスマートメーター由来の電力データを、一定のルールの下、電気事業者とそれ以外の事業者も活用が可能となりました。この電力データ活用制度により、2023年10月から需要家の同意を個別に得た30分刻みの電力データを、国が認定する認定協会を介して、企業などが有償で入手・利用できるのです。

このたび、ENECHANGEでは電気・ガス比較サイト「エネチェンジ」を運営しているプラットフォーム事業で、新たなサービス「エネチェンジ・マイエネルギー」を開始します。電力データから得られるより精緻なデータを活用することで、電気の最適な使い方と電気料金プラン選びをサポートします。

今回はこのプロジェクトに携わった、エネチェンジ事業部所属のVPoE 兼 副事業部長の亀田 大輔とフロントエンドエンジニアの小野 優人、サーバーサイドエンジニアの西岡 英明に話を聞きました。

スマートメーターのデータ活用によりサービスの利便性を向上

――新サービス「エネチェンジ・マイエネルギー」では、スマートメーター由来の電力データを活用することでさまざまな機能を実現しています。まず、スマートメーターの電力使用状況を事業者に提供して活用する制度(以下、Cルート開放)についての概要を教えてください。

亀田:最初にスマートメーターの概要についてお話しすると、これは30分ごとの電力使用量をデジタルで計測する、通信機能を備えた電力量計のことです。計測した電力使用量のデータは、主に電力会社が料金計算や需要予測などのために活用しています。2022年4月に施行された電気事業法の改正によって、こうしたスマートメーター由来の電力データが、一定のルールの下に電気事業者とそれ以外の事業者も活用可能になりました。

そして、2023年10月から東京や関西、中部エリアでシステム連携・データ提供が開始されます。それ以降は一般送配電事業者各社との連携を順次行い、2024年中には全国でデータの活用ができるようになります。当初は過去データや日次・月次データが提供されますが、2025年からリアルタイムのデータ提供が予定されています。

――ENECHANGEは、このデータを活用することでどのようなサービスの提供を構想していますか?

亀田:「エネチェンジ」では電気料金のシミュレーションを提供しており、機械学習を用いた予測値をもとに料金を計算しています。この機能では、ユーザーの住むエリアや電気の契約状況などを入力してもらい、その情報を利用してシミュレーションを行っていました。

しかし、この方式だと「しばらく時間が経ってから、現在のプランが最適でなくなった場合に電気料金プランの切り替えをユーザーに促す」ことがうまくいきません。たとえば、結婚してその住居に住む人が増え、電気使用量そのものが変わっている可能性があるためです。

ですが、スマートメーター由来の電力データを用いれば「エネチェンジ」を利用したユーザーの数カ月や数年にわたるデータを継続して取得できるようになるため、その情報をもとに予測が立てられるんです。この機能を「マイエネルギースイッチ」として提供しています。

また、それぞれの電力会社が保持している電気使用量のデータはこれまで各社が別々に管理していたため、ユーザーが電力会社を切り替えると、Webのマイページなどで過去の履歴情報を追うことが困難でした。しかし、「エネチェンジ」側で過去の電力データをすべて保持しておけば、仮に電力会社を切り替えたとしても継続的に電気の使用量や電気料金の確認ができます。この機能が「マイエネルギーナビ」で、2023年中に順次サービス開始予定です。

そして過去の電力データを活用することで、たとえば電気の使用量が増えたときや使い方が変わったときに、節電情報や電気の使い方のアドバイスなどをユーザーに届けることができます。この機能が「マイエネルギーアラート」で、これも2023年中に順次サービス開始予定です。

▲VPoE 兼 エネチェンジ事業部 副事業部長 開発責任者 亀田 大輔

――各家庭の電力データを取得するとなれば、規模の大きなデータ量になりそうです。

亀田:1世帯あたりのデータ量としては、30分ごとにデータが生成されるため「1時間につき2回×24時間×365日」になり、年間で17,520レコードですね。そうすると、仮に10万世帯ならば年間17.5億レコードになります。2024年まではこれらのデータを日次で取得するのですが、2025年からリアルタイムでの取得になります。大量のデータをどのように処理するか、設計方針を考えていく必要があります。

タイトなスケジュールのなか、品質の高いシステムを構築するために

――Cルート開放のプロジェクトを推進するにあたり、前提条件となっていた制約や要件などをお話しください。

亀田:ENECHANGEは「電力データを活用した機能を日本で一番早くリリースする」という方針を掲げており、2023年10月上旬のリリースが必須でした。Cルート開放のプロジェクトにおいては、データを提供する側である認定協会のWeb APIなどのシステムも同時並行で開発が進んでいました。私たちはENECHANGE側のシステムを開発するだけではなく、データ提供元のシステムとの結合試験に参加して動作検証しつつ、プロジェクトを進めました。

西岡:試験ができる日程・時間帯に制限があったため、その時間内に結合試験を実施する必要がありました。また、テスト環境に置かれているデータも限られており、「各種の制約があるなかで、どうやってシステム連携を成功させるか」を考えなければならないプロジェクトでしたね。

亀田:なかには「結合試験でデータ提供元側のWeb APIはこの期間に呼び出す必要があるけれど、その期間までにENECHANGE側の特定機能のシステムができていない」というケースもあるわけです。そうした場合には、たとえばWeb API呼び出しのためのコマンドをcurlでたたいて連携できるかを検証し、後にENECHANGE側のシステムができたら再度同じテストを行うなど工夫していました。

西岡:今回のプロジェクトは、データベース設計を先に固めたうえで他の設計に入ったことでかなりうまくいったので、データベース周りの仕様を初期フェーズでどれくらい固めるかが重要だと痛感しました。

亀田:今回のプロジェクトでは、ロバストネス分析を行うなど業務フローやデータのやりとりの情報を全体的に可視化したうえでデータベース設計をしました。西岡さんがデータベース設計に不慣れだったので、私のノウハウを共有する意味も込めて一緒に作業を進められたのも良かったです。

▲エネチェンジ事業部 サーバーサイドエンジニア 西岡 英明

新しい技術や開発手法を積極的に取り込んだ

――フロントエンド関連の開発はいかがでしょうか?

小野:フロントエンドについては、デザインが早めにできていた申込フォームなどの部分を先に着手しました。亀田さんや西岡さんはデータベース設計やデータ提供元側のWeb APIとの疎通確認などに時間を割いていたため、その間に内部で利用するWeb APIのスキーマも、フロントエンド側が主導して定義していくことになったんです。

普段のプロジェクトではバックエンドのWeb APIが先に実装されていることが多かったので、新鮮な体験でした。この際に、チームメンバーから「REST APIの仕様を定義するフォーマットであるSwaggerのファイルを作成して共有してほしい」と提案がありました。

そこで、フロントエンドのエンジニアの側でWeb APIの仕様を考え、Swaggerを作るような形で作業を進めていきました。この方式でプロジェクトを進めるのが比較的うまくいったため、次の開発プロジェクトでも試してみたいです。

また、スケジュール面がかなりタイトなプロジェクトだったこともあり、社内のメンバーが担当した企画やデザインに考慮漏れや実装漏れなどが発生しました。そこで、システムの品質をなるべく高められるように、ビジネスサイドのメンバーやデザイナーたちと密に連携をとりつつ、不備や不明点などを解消していきました。私以外のフロントエンドエンジニアも、自主的に他のメンバーとコミュニケーションを取りながら進めてくれて、非常に助かりました。

それ以外のうまくいった点としては、フロントエンドでモダンな技術を導入することが円滑に進みました。これまでのENECHANGEのサービス開発では、所々jQueryを使っていたり、Vue.jsの2系を使っていたりとカオスな状況になっていました。ですが今回は新規開発のプロジェクトだったため、React+TypeScriptを採用してSPAの設計で開発を進めました。全体的にモダンな開発スタイルを確立できたことも、プロジェクトを通じた学びだったと思います。

▲エネチェンジ事業部 フロントエンドエンジニア 小野 優人

社会インフラをアップデートする稀有な仕事

――今回の話を総括して、この記事を読むエンジニアに向けてメッセージをお願いします。

小野:電力データ活用プロジェクトの開発を通じて、ENECHANGEが目指す「エネルギーの自由化」に貢献できている実感があり、やりがいが大きいです。また、先ほど述べたようにモダンな技術の導入も進んでいるので、二重の意味で面白さのあるプロジェクトだと思います。興味を持ってくださったフロントエンジニアの方は、ぜひ一度お話しできたらうれしいです。

西岡:こうした制度改正に伴うプロジェクトに携われるのは、ENECHANGEの仕事ならではの醍醐味です。他の会社がやっていないような新しいサービスをどんどん作って、今後さらにユーザーの方々に便利に使っていただけたらと思っています。

亀田:スマートメーターの電力データを活用して新しいサービスを開発するうえでは、これまで弊社が提供してきたプラン診断や料金計算などあらゆる機能に影響があるため、「エネチェンジ」そのもののユーザー体験を根本から見直す必要があります。それに伴ってサービスの作り直しも発生するので、システムの再設計に携われる面白いタイミングでもあります。

また、データ活用によって電気やガスなどの使い勝手を改善する仕事は、現時点ではどの会社もまだ取り組んでいない領域です。みなさんが普段から使っている電気やガスなどの社会インフラを良くしていくことに携われる機会はそうそうありません。「世の中を良くする仕事がしたい」という方がいれば、ぜひ私たちのチームに参加していただきたいです。

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