4月からスタートしたファンドレイザーとしてのお仕事。
ファンドレイジングスクールでつながった「NPO法人ダイバーシティ工房」さんにジョインして活動しています山中です。
そこで私が行っているのは、ファンドレイザーなのに寄付金を集めずに組織づくり…。なぜ?ってところをご紹介します。
【ファンドレイザーってなんぞや?はこちら】
目次
- 創業11年、千葉のNPO法人「ダイバーシティ工房」って?
- このNPOすごい、と思ったのはビジネスモデル
- 「代表、本当に寄付を集めようと思ってますか?」
- 欲しいのは寄付より対等な関係性のパートナー?
- そして、寄付金を集めないファンドレイザーが誕生!
1, 創業11年、千葉のNPO法人「ダイバーシティ工房」って?
「すべての家庭が安心して暮らせる社会」の実現をビジョンに掲げ、「子どもと家族の成長に合わせた暮らしやすい環境を創る」をミッションに活動する2012年創業のNPO法人です。
2022年度の財政規模は4億弱、従業員・アルバイト・パート含めると130名超えの、日本のNPOとしては大きな団体です。
0歳から成人まで、切れ目のないサポートでいつでもつながれる事業デザイン
2, このNPOすごい、と思ったのはビジネスモデル
ダイバーシティ工房のユニークな点は、ビジネスモデルの秀逸さです。収入のうち、外部からの助成金・補助金が8千万円弱ありますが、それ以外はほぼ事業収入が締めています。
国の制度事業である放課後デイサービス、保育、グループホーム等の事業を安定的に運営することで財源を確保しています。
また、事業の柱が全てビジョンの実現のために行われています。つまり、活動をして、サービスの受益者を増やして行けば行くほどビジョンが実現していき、財源も確保されるという、NPOとしても理想の形をしています。
一方、アウトリーチ事業部という、地域にでかけて課題を発掘し、事業化するというアンテナ機能を備えた事業部があります。今年度は千葉県のヤングケアラー事業の委託事業をうけたり、学習支援教室では外国籍の子どもの学習支援を行ったりと、常に社会課題の最先端に触れ、次の事業の方向性を考え続ける部署があるのも特徴的です。
地域にとけ込み、誰もが気軽に集まれるコミュニティスペース「地域の学び舎 プラット」を運営。
カフェや中高生のための個別学習指導塾・グループ活動支援プログラムが開催されています。
ダイバーシティ工房は、1つのサービスに特化せず、団体が社会や人に出会い続けることで発見した課題を次々に事業化・収益化することを繰り返してきた団体です。
一つのサービスに特化して事業を行うことも可能なのに、気になるところに突っ込んでいく、その突破力も好き。
そして、新しい事業をスタートして起動に乗せるにはもちろん難しいのに、それをやりこなしてきてる。そのビジネスモデル構築力、アンテナ力・バランス力も工房の素敵なところだと思います。
まさに「すべての家庭が安心して暮らせる社会」の実現に向けて、多面的な展開をしています。
3, 「代表、本当に寄付を集めようと思ってますか?」
そんなダイバーシティ工房に出会ったのは、前述したファンドレイジングスクールのある課題の中での出来事。ダイバーシティ工房に対してファンドレイジング計画を立案してプレゼンするというチーム課題の時でした。
2ヶ月ほどかけて、工房からの話をきいたり、こちらからの質問を投げかけたり、情報を調べて、本質的な課題を抽出して、解決策を提示します。
わたしたちのチームは、変わった提案をしました。
というのも、調べれば調べるほど、代表の不破牧子さんことマッキーは、「寄付をほしいと思ってないんじゃないか」と思ったからです。
そもそも工房は事業型NPOで、法人格はNPOですが、きっと私がずっと専門にしてきたソーシャルビジネスの文脈で起業をされているなと思いました。なので、寄付より、「事業で資金を集めるほうがしっくりくる」タイプの方かと思いました。
マッキーが働く上で一番大切にしていることが何か、HPや過去の記事を読み込んで思ったのは、仕事を通じて本当の意味で人と出会うこと、じゃないかなぁと思いました。
工房は創業時から「合宿文化」があります。泊まり込みで同じ釜の飯を食べながら飲んだり語ったりして、人として出会い直していく。なぜ働くか、生きるかなんてこともずっと話してきたんじゃないかなぁと思いました。
とくに印象に残った記事はこちらでした。
一般企業と比較したときにNPOで働く価値って、安定した収入とか福利厚生とかではなく、第一に社会の課題を解決している実感や貢献欲が満たされることだと思うんですね。
そして、解決すべき社会課題に対して一緒に向かっていく仲間の存在や、自分自身の成長も働く価値だし報酬だと思うんです。
<中略>
働く価値って、質の高い会話ができる仲間がどれだけいるか、だと実感する機会がありました。
工房HPより https://www.diversitykobo.org/post/story4
過去の合宿風景
これを読んで思ったのは、「あ、私と似ているな」ということでした。
私も一緒に働く人とのつながりをすごく大切にしています。今や周りは仕事仲間なのか友達なのかわからない人だらけです。そして、友人とイベント企画運営するのも大好き。なんでかって、普通の遊びでは味わえない面白さと、達成感、生まれる繋がりの深さだと思います。
ミッションや働く目的が同じ人と一緒に仕事できた時は、「人間的につながれたなぁ」って思いますし、今は日本中にそういう友人が沢山いて、すごい豊かなことだなって思います。
一方、工房の課題を考えたとき、事業ごとが国の制度事業で確立しているがために、どうしてもスタッフが目の前の事業の効率的なオペレーションを行うことに集中して、その結果工房全体としてのビジョンの達成を考える機会が減っているのではと思いました。
そこで、もう一度工房全体のミッション・ビジョン・バリューを再浸透する提案を行うことにしました。
4, 欲しいのは寄付より対等な関係性のパートナー?
もう一つの視点は、外部とのつながり方です。
代表への質問を通して、今工房が求めているのは寄付金というより、他団体や地域の企業、市民の方々との対等なつながりではないかと感じました。
「寄付をあげる」「もらう」の関係性ではなく、同じ課題を一緒に解決していくパートナーがたくさん欲しい。その結果、寄付に繋がり、仲間が増えてますます課題解決・価値創造に向けてのパワーアップができる、というイメージです。
それらの議論の結果、わたしたちは寄付を目的とするのではなく、工房のメンバーがビジョンと再度つながる、そして工房が外部と有機的につながる。そんなつながりづくりを目的としたファンドレイジング計画を提案することにしました。
その結果、我々のチームの提案をとても喜んでもらい、私は4月から工房に外部ファンドレイザーとしてジョインすることになりました。
5, そして、寄付金を集めないファンドレイザーが誕生!
2月ごろから工房のミーティングや合宿に参加させていただき、最初は広報やファンドレイジングをどう進めるのかを考えていたのですが、ビジョン浸透のための全体会の企画運営、合宿の全体統括などをしているうちに、やっぱり今年ってこれが大切だよね、という認識に変わってきました。
今は外に向けて寄付金を募る発信をするよりも、内部のビジョン浸透に注力したい。内部を固め、その後、外に向けての発信を行っていく。
たくさんの話し合いの結果、私はビジョン浸透のために、全体会や合宿を統括する役割に変わりました。
あれ、それってファンドレイザーの仕事と違うじゃん、と思われるかもしれませんが、わたしたちの中では繋がっています。それは、人や組織が同じ方向性を見つめ、内部が固まり、新しいカラーが生まることで初めて、そこに共感して仲間になったり、人をつないでくれたり、寄付をしてくれる人が生まれてくるんじゃないか。まさにスクールの中でご提案した内容を今実践している、というイメージです。
こないだは夏合宿を行ったんですが、なんかある意味楽しすぎました。
(楽しんでるだけやん)
古民家貸し切り合宿!
工房全体で各事業部の課題を考えました
ワークショップ
合宿についてはたくさんの工房スタッフの方がnote書いておられるのでぜひお読み下さいね。
《合宿の様子はこちら》