2026年9月16日の社内報を公開しています
映像ディレクターをしています。最近は小中学校で使われる動画教材を作っています。 観やすい動画にするために、シンプルな映像と短い言葉で、認知負荷を抑えながら教育効果の高いものにしようと日々試行錯誤しています。
さて、教材といえば私の場合は映画でした。学生時代に映画の各ショットを見ながら、どういう意図で設計されたものなのかを分析する授業があり、とても面白いと思いました。
映像は、書かれた言葉ほどに意味を明示したり限定したりしないので、明確な正解があるわけでもない。それでも確かに意図が感じられる。小道具、衣装、場所、音、人物や車の動き、カメラアングルなど、作った人たちが差し出す1つ1つのピースに、観客自身の経験や知識などの情報を組み合わせて完成させていくパズル。
それを解くことになんの意味があるのかはわかりませんが、とにかくハマったんです。
そんな経験をなるべく手軽に共有できないかなと思って作ったのが下記の「映画ドリル」です。最初に作ったのは随分前で、4年に1問くらいのペースで更新しています。未だに教材としての完成度が上がらないのですが、数年ぶりに1問追加したので紹介します。
映画ドリルは映画のワンカットを題材に、映画的に物事を考える正解のないクイズです。
「映画的に物事を考える」とは、なるべく言葉(=セリフ)に頼らずに、人物の身振りや物の動き(=アクション)に工夫をこらすことで課題の解決を試みる、ということ。
クイズの後には、実際の映画の例を模範解答として示しています。
ただし、それはあくまで一例。
皆さんも映画監督になったつもりで、この正解のないクイズに挑戦してみてください。
Q1. 高校生MとJは学校からの帰り道。通りのベンチでひと休みしようとしている。
ちょうどそこへ、Mの憧れの車を積んだトラックが通りがかった。車に気づいたMの気持ちの高ぶりを動作で示す場合、どのようにすればよいか?上の図をもとに答えなさい。
Q2. EとCは恋人同士。Eはリビングで、誠実だが気弱な彼氏Cの仕事の愚痴を聞いている。
何とかCの気分を変えたいと思っているEの大胆で無邪気な性格を、この後の動作で示すとき、どのようにすればよいか?上の図をもとに答えなさい。
Q3. 女性Aは、不意に自分の頭の中で鳴り始める謎の音に悩まされている。音の正体を突き止めようと、友人の音響デザイナーBに協力してもらい、音の再現を試みている。
Bが用意した音を聴いていく中で、Aの記憶に近い音が流れたとき、そのことをセリフを用いずAの動作で示す場合、どのようにすればよいか?上の図をもとに答えなさい。
Q4. Qは入院している息子との面会を終え、自宅マンションのエレベーターに乗っている。 息子は難病を患い不自由な生活を余儀なくされ、その苛立ちを母親であるQにぶつけた。
病院での出来事を引きずっているQの、内面の動揺や、心ここにあらずであるさまをその動作で示すにはどのようにすればよいか?上の図をもとに答えなさい。
それでは実際の映画ではどのように描かれているのか観てみましょう。
Q1 解答例
Mがベンチの上に跳び乗る。
ー『Back to the Future』(1985)監督:Robert Zemeckis
(動画 08:25〜)
Q2. 解答例
EがCのズボンを下ろす。
ー『The DRAMA』(2026)監督:Kristoffer Borgli
https://www.youtube.com/watch?v=Cx-H58-lGq4
(上記YouTubeリンク 00:18〜)
Q3. 解答例
AがBの手を握る。
ー『MEMORIA』(2021)監督:Apichatpong Weerasethakul
Q4. 解答例
Qは、ボタンを押してはエレベーターを上下させ、いつまで経っても降りようとしない。
ー『河』(1997)監督:蔡明亮