社内のキラリと光る人材にフォーカスを当て、代表の堀江と仕事哲学を語る「#with_horie (ウィズホリエ)」。第1回目のゲストは、delyのブランド部ゼネラルマネージャーでデザイナーの小林 和央(こばやし かずひろ)さんをお呼びしました。
聞き手: 堀江裕介(dely株式会社 代表取締役社長 CEO) 語り手:小林和央(dely株式会社 ブランド部ゼネラルマネージャー/デザイナー)
堀江 :こばさんは、僕と同じ92年生まれで、元々学生時代はスタートアップをやっていたんですよね。delyに入るまではどんなことをしてたんですか?
小林 :大学時代に工業デザインという分野を学んでいました。当時はアプリがすごく伸びている時代で、「サービスを設計する」という、広い意味でのUXデザイン(ユーザー体験)に興味を持ちはじめたんです。それで、ITの道に進もうと思いました。実際に在学中に医療系のプロダクトを作ったのですが、いざマネタイズ化していくというところまで力が及ばず...。結局新卒でメガベンチャーに入社して地図アプリのUI/UX設計を担当していました。
堀江 :delyを知ったきっかけはなんだったんですか?
小林 :1億円調達したくらいのタイミングで、たまたま勉強会でデザイナーのredさんと話す機会があったんです。堀江さんがクラシルをやっているのを見て、「同い年なのにすごいなあ」と思っていたところだったので、redさんからクラシルについて深く話を聞いて、より興味を持ったのがdelyに入社するきっかけでした。まだ現職でのプロジェクトが進行中だったので、最初は夜だけの限られた時間だけジョインしてました。
堀江 :そこから1年近く、毎晩来てもらっていましたね。
小林 :前職を定時まで働いた後にdely本社がある五反田に移動してきて、遅くまで働く、みたいな生活を送っていましたね(笑)
堀江 :この人は根性あるなと思ってました(笑)その当時は、どんどん組織が成長し、人員数も30人、50人、100人と増えていく中で、delyとしてのアイデンティティを明確にしなければならないと思っていたタイミングでした。そういうタイミングだったので、こばさんには、無茶振りではあるものの、いきなりdelyのCIデザインを依頼したんです。ビジョンの「BE THE SUN」やバリューの「LAB」は、こばさんとの対話の中で磨き、生み出されたものなんですよね。当時からかなり重要な仕事を任せていたなーと思います。
小林 :そうでしたね(笑)。僕は、デザイナーの仕事の本質は、これを作る事で何を目指しているのか?きちんと対話し、抽象的なものを具体的な形に落とすことだと思ってるんです。事業を通してどんな世界を実現したいのか。組織としてどういう存在でありたいのか。目に見えない経営者の「想い」を表現していくことがデザインを仕事にする醍醐味です。だから、難しい仕事ではありましたが、本当にチャレンジングで面白かったですね。会社のコアとなる領域を任せてもらえたことで、delyのカルチャーへの理解も深まり、みるみるdelyという会社に惹かれていきました。最終的にフルタイムで飛び込もうと決意できたのも、この「人を信頼し、任せてくれる風土」があったからだと思います。
デザインに今後も注力したいからこそ、デザイナーをコンテンツ制作のトップに据えた 堀江 :いまはプロダクトのブランディングを中心に見る、ブランド部のゼネラルマネージャーとして働いてもらっているのですが、そもそもブランド部ってどんなことをしているんですか?
小林 :ブランド部は、クラシルのブランドや価値を上げていくために、デザインや動画コンテンツの制作など、全体の品質を向上させる役割を担っています。「映像制作チーム」「調理チーム」「カスタマーサクセス」「ブランドチーム」と4つのチームに分かれていて、パートタイムを含めると、90名強所属しています。delyの部門の中で最も多くの従業員が在籍している部署ですね。
堀江 :クラシルは、月に1000本以上のレシピ動画をつくっていて、これって業界でも最多なんですよね。多くのメンバーが在籍し、大量の動画をつくっていると、放っておけば作り手の好みによって動画のクリエイティブがぶれてしまうと思っていて。
それは問題だなーとずっと思っていて、「クラシルらしい」と思われるような統一したブランドをつくり、それを浸透させる「仕組み」もつくりたいという構想が僕の中にあったんです。CIデザインの時に発揮してもらった具現化能力を、クラシルのブランディングでも生かしてもらえるんじゃないか。そう思って、デザイナーのこばさんにブランド部のトップを任せることに決めました。
小林 :ブランド部のGMになって最初に取り掛かったことが、「クラシルってどういうことを目指したいの」という、今後の指針となる土台をしっかりと定めて、共有することでした。最近では徐々にメンバーの意識が統一されてきたように思いますね。
堀江 :ブランドとしての指針が明確になったことで、動画の質が確実に上がった。あと、最近だと、クラシルのインスタ投稿(ストーリーズ)も劇的に改善されてると感じます。
小林 :環境によって適したクリエイティブは変わるので、インスタのストーリーズは「一瞬で目を引くもの」を意識して制作しました。一方で「クラシル」的な温かみも大切にしています。
堀江:白と赤を使うとSupremeのロゴを思い浮かべる、みたいな。ブランド部をつくったことで、各部門でわずかにズレていた「クラシルらしさ」のイメージが整いつつありますよね。
ブランドは、たった一度でも「ださい」と思われてしまったらそこで終わり 堀江 :入社してみて色々と感じるところもあると思うんだけど、delyはデザイナーからみてどんな会社ですか?
小林 :色々といいところはあるのですが・・・。何より、経営層がデザインやブランドというものに対しての理解がある、というところが1番ですね。ここまで積極的にブランドに投資しようと考えるスタートアップは国内だと本当に僅かしかないと思います。
堀江 :それは嬉しいな〜。
小林 :ユーザーからすると、ほんのちょっとの差が、最後に選ばれるきっかけになるんです。そこを経営陣が深く理解しているからこそ、すべてのアウトプットに対して絶対に妥協しない。変なものを世に送り出すくらいなら、じっくり腰を据えて作ろうよ、とよくミーティングでも話していますよね。
堀江 :そうですね。クリエイティブ1つ、動画1秒、写真1枚の積み重ねが僕らのブランドをつくっていると考えています。アプリケーションの開発はスピード重視で、すぐに出してユーザーからフィードバックをもらう、というループを早く回すことが正しいのですが、ブランドは「100-1が99点」ではなく「100-1が0点」の世界。たった一度でも「ださい」と思われてしまったら、そこで興ざめされて終わりなんですよ。後戻りできることについては、僕はどんどんスピーディーに世の中に出して、極力メンバーに自由にやらせていくべきだと思うけど、後戻りできないことは慎重に、大切にやるべきだと思ってるんです。
小林 :ちなみに、堀江さんがdelyのデザイナーやクリエイターに求めていることは何でしょうか?
堀江 :僕が、どんどん途方もなくアイディアが出てしまうタイプの人間なので、それらをまとめ、言語化し、思想化させて、細かなクリエイティブに落とす、という一連のプロセス全てを任せられることですね。
小林 :そういう意味では、僕の考える優秀なデザイナー像と同じですね。よく、『デザイナーは医者』だと言われるんです。風邪の症状もろくに聞き出さず、いきなり処方を出す医者がほとんどいないように、デザイナーも、依頼主の話を聞き出し、整備して、最終的なアウトプットにまとめていくことが本質的な役割だと思っています。
堀江 :そうそう、ブランド部をつくろうと考えて、一番最初にその部署のトップをまとめるのは誰だと考えたときに、自分みたいなリーダーシップをガンガンと発揮するタイプよりも、こばさんみたいな、まさに「医者」になれるような人がいいなと思ったんですよ。
小林 :ありがとうございます(笑)。ちなみに、デザイナーに対しての関わり方として、堀江さんが決めていることはあるんですか?
堀江 :ださい・かっこいい、と率直に感想を伝えることですね。「デザインって専門領域だから口を出せない」っていうのは正しくなくて、アウトプットに対する率直な意見を持ち、建設的に議論できるのが、健全な組織だと思ってるんです。なので、デザイナーに対しても率直に感想を伝えるようにしていますね。僕がデザインに対してのディティールを深めたり勉強するというよりは、「ださい」「かっこいい」の感性をずっとキープし続けて、判断できるようにしておく、という割り切りをしていますね。社長である自分の役割はそこだと思っています。
いい意味でクラシルという舞台をつかってもらいたい 堀江 :こばさんは、今後、ブランド部をどういう組織にしていきたいですか。
小林 :まだまだ、動画も写真も、あらゆるクリエイティブの質は向上余力があると思っているので「クラシルらしさ」を追求しつつも、撮影・編集・調理のあらゆる側面で圧倒的なクオリティで制作できる体制にしたいですね。そのためには、強烈な個性と強いスキルを持ち、一緒にクラシルを盛り上げられる人に仲間になってもらう必要があります。
堀江 :「ドリームチームつくろう!」と最近よくメンバーに話していて。カメラマン、調理人、編集者、いろんな突出した能力を持っている方が世の中には、まだまだ全然いるはずです。
ちなみに僕は、delyの仕事以外もやってほしいし、いろんなインプットもしてほしいと思ってます。というのも、考え抜くことも大切なのですが、新たなアイディアが生まれるときは、旅行に行ったり、VRの映画をみたり、インスパイアされたもの同士が結合して、湧き上がってくるものじゃないですか。僕もそうですし、クリエイターの方々もきっとそうだと思っていて。うちの仕事だけ集中し続けるというよりは、様々な場所や機会に顔をだして、そこで得た力をクラシルにも還元していくような、そんな未来型のプロフェッショナルチームつくりたいんです。
小林 :クリエイター、デザイナーとしていいものつくっているのに、実際見られてなかったり、注目されていない人も多いと思います。そういう人にとってはdelyほど注目されているところはないですし、良い環境だと思いますね。
堀江 :知ってもらうことってすごく大切ですよね。僕らは良くも悪くも目立つチームなので、一緒にやることで、いい意味でクラシルを舞台として使ってもらえれば良いんじゃないかなって。僕らよりも頭がいい人、良いデザイナーは世の中にたくさんいる。僕らとやると注目を浴びますし、クラシルを通して何千万人のユーザーに自分のデザインやクリエイティブを届けることができるので、10のアウトプットも、100のアウトプットとして評価されることもきっとある。
ちなみに、こばさんは、今後5年でデザイナーの価値はどのように変わっていくと思いますか?
小林 :よく言われている事ですが、厳しい言い方をすれば「言われたものを作るだけ」の人の価値はどんどん下がっていくんじゃないでしょうか。逆にいえば「物事を俯瞰して捉え、クオリティの高いアウトプットを出せる」人はどんどん価値が上がっていくと思いますね。
堀江 :まったく同じことを僕も思っていて。去年のAdobe MAX 2017というカンファレンスの動画をみて、僕は衝撃を受けました。今まで数時間かかっていたクリエイティブが、Adobeの製品によって数分で自動で描写されていくんです。だから、こばさんの言う「作るだけ」の人ではなくその裏側にある問題とか解決策を考えられる力が大事になってくるかなと感じています。もちろん一方で、僕もアウトプットの精度というものも、きちんと大事だと思っています。
では、どんな能力がこれから求められるようになってくるかと言うと、デザインの意図や背景、ストーリーをきちんと人に説明できる能力だと思っています。それが人間にしかできない仕事で、いいかえれば、デザイナーでありながらも優れたマーケティング能力を持つ人、といえるのかもしれませんね。
小林 :アウトプットの品質はもちろん大事ですが、深く深く考えられるデザイナーの市場価値は更に上がっていくのでしょうね。今日はありがとうございました!
対談を終えて 堀江 :実は、ずっと「レシピ動画サービスでは、コンテンツは優位性がない」と周りには言ってました。なぜなら、表面上のデザインは簡単に模倣されてしまうからです。ただ、次のフェーズではコンテンツやクリエイティブも含めた、総合的なデザインの力に掛かっていると思っています。先ほども言いましたが、「最後に選ばれるきっかけ」は、一日一日のクラシルとユーザーのコミュニケーションの積み重ねの中から生まれる、クラシルへの安心感だったり、使い心地の良さからもたらされると思っているからです。 クラシルがいいよね、という理由を一緒に作りたいという方、ぜひご応募をお待ちしています!
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