温暖化で、農業の「適地」が北へ動いている
新潟のコシヒカリといえば、日本で一番有名なお米の一つです。
そのコシヒカリが、2023年の猛暑で大きな打撃を受けました。
暑さで米粒が白く濁り、等級が一気に下がってしまったんです。
このニュースを見て、作物と土地の関係が、静かに変わり始めているんだと感じました。
1等米が、79%から3.6%へ
2023年の夏、新潟は記録的な暑さと雨不足に見舞われました。
8月の平均気温は30.6度で、平年より4度以上高かったそうです。
その結果、2023年産の新潟県産コシヒカリで、一番いい等級の「1等米」の割合は、9月末時点の速報で3.6%。
前の年は79.2%だったので、桁が一つ違う落ち込みです。
新潟だけではなく、この年は全国でも1等米の割合が前の年より16ポイント以上下がりました。
産地として長く築いてきた評判も、気候が変わると一年で揺らいでしまう。
農業が自然を相手にした仕事だということを、改めて思い知らされる数字です。
産地は、北へ動いていく
これは一年だけの話ではないかもしれません。
農研機構は、温暖化が進むと果物の栽培に向いた土地がどう動くかを予測しています。
たとえばリンゴは、2060年代には東北の平野部のほぼ全域が、今の基準では栽培に向かない気温になるとされています。
逆に、温かい地域の作物であるミカンは、同じ頃に東北の南の沿岸部まで栽培できるようになる見通しです。
つまり、これまで「寒すぎる」と言われてきた北の土地が、作物にとってちょうどいい場所に変わっていく。
北で農業をやることの意味が、少しずつ増えているということです。
秋田でも、暑さは他人事じゃない
ただ、東北にいれば安心、という話でもありません。
椎茸がよく育つのは10度から20度くらいの、少し肌寒い温度です。
うちのハウスでも、ここ数年の夏はエアコンが悲鳴をあげるほどで、冷やすための電気代は年々重くなっています。
秋田でも、昔ほど涼しい夏ではなくなってきました。
外が35度近くある日に、ハウスの中を20度以下に保つ。
冷やす幅が大きくなるほど、電気代は膨らみます。
それでも椎茸は生き物なので、電気代が高いからといって冷房を弱めることはできません。
菌床は熱に弱く、温度管理を少し誤れば、すぐに品質に出てしまうからです。
それでも、関東や西日本の暑さと比べれば、まだ条件はいい方だと思います。
これから先、作物を作る場所を選ぶときに、北の土地の涼しさは確実に価値になっていく。
問題は、その価値を生かせるかどうかです。
伊勢社長は、八峰町で事業を続ける理由について、こう話していました。
「やっぱり地元に貢献するっていうのは、すごい重要だなと思ってて」
気候が変わっていく中で、この土地で作り続けること。
それ自体が、これからの地元の強みになっていくのかもしれません。
備えは今後の課題の一つ
温暖化にどう備えるか、うちにも決まった答えはありません。
設備をどこまで更新するか、暑さに強いやり方をどう作るか、廃菌床を使ったいちごの栽培を気候の変化にどう合わせるか。
考えなければいけないことは、増える一方です。
去年うまくいったやり方が、今年も通用するとは限りません。
産地が動いていく時代に、北の土地で新しい作物や作り方を試す。
変わっていく気候を、ピンチではなく次の手を打つきっかけとして考えられる人と、一緒にやれたらと思っています。