椎茸を収穫し終わったあとの菌床が、どこへ行くのか。
この仕事に関わるまでは当然考えたことはなく、畑の肥料として再利用してました。
菌床というのは、おが粉に米ぬかやふすまを混ぜて固めた、椎茸を育てるための土台のことです。
ここから椎茸が生えてくる。何度か収穫すると力を使い切って、役目を終えます。
その後に残るのが、廃菌床と呼ばれるものです。
この廃菌床、実は業界全体で相当な量が出ています。
ある研究者の試算では、菌床椎茸だけで全国から年間およそ24万トンの廃菌床が排出されているそうです。
皆さんがよく食べるであろう、えのきやしめじなどのきのこ全体で見れば、もっと多い。
では、それがどう処理されているのか。
その多くがお金をかけて産業廃棄物として処分されているという事実でした。
一部は畑の土壌改良材になったり、家畜の飼料や敷料として使われたりもしていますが、それは全体の一部にすぎません。
残りは、処分費用を払って捨てられている。
しかもこの処分コストが、生産者の経営を圧迫している要因のひとつとして各地で指摘されているんです。
なんですが、ここが引っかかりました。
廃菌床の中には、まだおが粉が残っています。
栄養として加えた米ぬかやふすまも残っている。
分解しきれていないリグニンも残っていて、土づくりには有効だという研究もある。
つまり、資源として使えるものが混じったまま、費用を払って捨てられている状態です。
じゃあなぜ、みんな再利用しないのか。そこにも理由がありました。
ひとつは、品質がバラバラだということ。
ある県の研究では、生産者ごとに廃菌床の含水率やpHに差があることが課題として挙げられていました。同じ廃菌床という名前でも、中身が揃わない。
使う側からすると扱いづらい。
もうひとつは、水分の多さです。
おが粉と比べて水を多く含んでいるため、そのままでは運びにくいし、腐りやすい。
堆肥にするにも、90日ほど発酵させる必要があるという報告があります。
時間も場所も手間もかかる。
つまり「価値がないから捨てられている」わけじゃない。
「使えるはずなのに、使うための仕組みが整っていないから捨てられている」というのが実態に近いんだと思います。
この構造を知ったとき、なんというか、もったいないという言葉では足りない感じがしました。
毎日きちんと椎茸を育てて、収穫して、出荷して、その裏でまだ使えるはずの資源にお金を払って捨てている。
全国のきのこ農家が、同じことをずっと続けている。
椎茸そのものの品質を上げる話や、売り方を工夫する話は、外から見ていても分かりやすいんですが、収穫が終わったあとに何が起きているかは、業界の外にいる人はほとんど知らない部分だと思います。
表に出てこない場所に、こんなに大きな課題が転がっていたんだねって。
もちろん、簡単な話じゃないのは分かってて、運搬コスト、保管場所、受け入れ先の確保。どこかひとつが欠けると成立しない。
日々の栽培と出荷で手一杯の現場に、その先まで設計する余力があるかというと、正直厳しい。
だから多くの生産者が「分かってはいるけど手が回らない」まま来ているんだと思います。
この課題は、まだ誰も完璧な答えを出せていない領域です。
1990年代から研究が続いているのに、いまだに全国で処分され続けている。
逆に言えば、ここにはまだ手つかずのまま残っている問題があるということでもあります。答えが決まっていない場所には、考える余地がそのまま残っている。
うちも例外じゃありません。
だからこそ、今廃菌床を使った新規事業をしっかり腰を据えて進めていこうと思ってます。
この廃菌床問題が一歩前に進むだけで、椎茸業界は大きく変わるでしょう。
もしも、「あれ?これってこうすればいいんじゃない?」なんて思ったあなた。
ぜひ、この取り組みの中心となって私たちと一緒に進んでみませんか?