廃菌床とCO₂循環から生まれた、新規事業の模索
椎茸農家が、なぜ"いちご"をやるのか。
正直に言うと、僕らの中では「自然な流れ」でした。
これまでやってきたことの延長線に、その答えがありました。
これまで、椎茸だけをやってきました。
平茸から椎茸への転換。
火災による全焼。
そこからの再建。
そして、「黑椎茸」という新しい価値の立ち上げ。
一つひとつはバラバラに見えるかもしれませんが、自分たちの中では、全部つながっています。
「今あるものを、どう活かすか」
ずっと、それを考え続けてきました。
例えば、椎茸を育てるときに使う菌床。
収穫が終わると、大量に残ります。
これをどうにか価値にできないか。
ペレットにする。
家畜の飼料にする。
他にまだ使い道はないか。
ずっと考えていました。
もう一つ、ずっと気になっていたことがあります。
椎茸は、多くの二酸化炭素を出す作物です。
だからこそ、24時間換気をして環境を整えています。
一方で、いちごは違う。
二酸化炭素を吸って、成長する作物です。
だったら、この二つをうまく循環させることはできないのか。
ずっと頭の中にあった発想でした。
そこに、地域の流れも重なりました。
八峰町として、いちごを一つの産業にしていこうという動き。
新しい産業をつくる必要性。
点だったものが、少しずつ線になっていきました。
正直に言うと、最初から「いちごをやろう」と決めていたわけではありません。
椎茸でようやく形になってきた中で、新しいことに手を出すリスクも当然ありました。
「まずは椎茸をもっと伸ばすべきじゃないか」
そういう考えも、何度も頭に浮かびました。
それでもやろうと思ったのは、これまでやってきたことが、すべてつながっている感覚があったからです。
菌床をどう活かすか。
環境をどう活かすか。
地域とどう関わるか。
その延長線上に、「いちご」があった。
新しいことを始めるというより、これまで積み上げてきたものを、もう一歩先に進める感覚に近いのかもしれません。
椎茸でやってきたこと。
「火災」を一緒に乗り越えてくれた地域との関係。
「黑椎茸」の誕生から積み上げてきた技術。
そして、関わる人。
全部が、次につながっている感覚があります。
もちろん、簡単ではありません。
椎茸とは全く違う作物。
ゼロからの立ち上げ。
失敗もすると思います。
それでも、やる意味があると思っています。
「椎茸農家で日本一になる」
その言葉は、単に生産量を増やすことではありません。
今ある資源をどう活かすか。
どうすれば、より価値を生み出せるか。
どうすれば、関わる人が豊かになれるか。
それを考え続けた先にあるものです。
いちごも、その一つです。
それが、今やろうとしていることです。
そして、その中心に立つ人が、これから必要になります。